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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1170204
審判番号 不服2005-12080  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-27 
確定日 2007-12-10 
事件の表示 平成 8年特許願第508562号「眼球治療装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月 7日国際公開、WO96/06581、平成10年 6月16日国内公表、特表平10-506028号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1995年8月30日(パリ条約による優先権主張1994年8月30日、英国)を国際出願日とする特許出願であって、平成17年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項18に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年6月27日付手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「容器のシールされた内包体から治療用流体を放出するための装置において、該容器が、(a)第1壁部分と、(b)該第1壁部分に配置された少なくとも1個の開口であって、少なくとも10ミクロンの最小直径を有する開口と、(c)該第1壁部分の反対側に配置された第2壁部分と備えてなり、該1壁部分と該第2壁部分とが該流体のシールされた単位用量を限定する内包体を形成するように構成されている装置であって、該装置が、(i)ハウジングと、(ii)該ハウジングに配置された内包体の投与ステーションと、(iii)該投与ステーションにおける該容器内包体の内容物に圧力を印加するために操作される放出機構とから構成されていて、カウリングが、該投与ステーションと目標物との間に空間を確保するように該ハウジングに配置されていること、および該開口と該放出機構とが、該流体を線状の運動量を有する噴霧(jet)及び/又は小滴(droplets)で該空間中を該目標物まで放出されるように構成されている装置。」

3.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である英国特許出願公開第2255918明細書(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「The present invention relates to a dispensing device,・・・・・・・・ and to methods for administering fluid droplets to a locus, notably medicaments to the nasal passages or lungs.(本発明は、薬剤を投与する装置に関するものであり、特に流体の薬剤を用いる霧化装置と方法に関するものである。特に、使用者自ら操作する携帯装置であって、圧縮ガス或いは液化された推進薬を使用することなく約10?12マイクロメートル以下の小滴の液薬を投与するものであり、特に、鼻腔或いは肺への薬剤として、適所に小滴を与えるための方法である。)」(明細書第1ページ第3行?第10行、()内は当審による仮訳。以下同様。)

イ.「for example the orifice preferably has an hydraulic diameter under 100 micrometres, for example 1 to 50, and preferably 1 to 20 micrometres for a drug to be delivered to the lungs.(例えば、開口として望ましいのは、水力学上の直径として100マイクロメータ以下であり、例えば、1から50、肺へ薬剤を供給するために好ましくは1から20マイクロメータである。)」(明細書第4ページ第14行?第17行)

ウ.「As shown in Figure 1, a carrier strip or tape 101 of a metal foil or semi-rigid plastic has a series of blisters 102 attached to it to form a series of individual does containers. The blisters contain the fluid to be dispensed.(図1に示されように、金属箔或いは半硬質プラスチックからなる搬送ストリップあるいはテープ101は、一連のブリスタ102を有し、一連の個々の容器として形成されている。これらのブリスタには、投与されるための流体を含んでいる。)」(明細書第6ページ第3行?第6行)

エ.「Preferably, each blister is provided with its own atomising means 103 through which the contents of the blister are ejected when the blister is collapsed as described below.・・・・・・・・For example, the atomizing nozzle comprises a small aperture pre-formed in the metal foil of the tape 101 and temporarily sealed closed by applying a thin plastic film over the tape.
(好ましくは、個々のブリスタは、以下に記述されるように、ブリスタが破壊される時、霧化手段103によりブリスタの内包物が放出される。好ましくは、霧化手段は、各ブリスタ102が設けられるテープ101にノズル開口部として形成される。例えば、霧化ノズルは、テープ101の金属箔に予め小さな開口として形成され、一時的に、テープ上を薄いプラスチックフィルムを用いてシールして閉鎖している。)」(明細書第6ページ第13行?第21行)

オ.「The pressure generator 111 comprises, for example, a movable clamp 112 which is used to hold the tape or the blister 102 is position against a support block or plate 115. A pressurising piston or plunger 113 (shown in the loaded position) acts transversely of the line of travel of the tape 101 to impact upon the blister 102 and collapse it against the support 115.(圧力発生装置111は、例えば、サポートブロック若しくはプレート115に対向して配置され、テープ若しくはブリスタ102を支持する可動クランプ112を含んでいる。加圧ピストン若しくはプランジャー113(図位置参照)は、ブリスタ102へ衝撃を与えそれを破壊するためにサポート115に向かってテープ101の横に作用する。)」(明細書第6ページ第34行?第7ページ第5行)

カ.「When the trigger mechanism is actuated, the plunger 113 is released and descends under the drive of the spring to strike the top face of the blister 102 and thus generate a high pressure, typically as much as 3-400 bars, within the blister. The liquid is forced through the atomising orifice 103 in tape 101 and atomises to give a spray of the fluid.(典型的に、トリガー機構が作動されると、プランジャー113がスプリングから解放されてブリスタ102を叩くために下降し、ブリスタ内に高圧を発生させる。典型的には、3から400バールである。液体はテープ101の霧化開口103を通過させられて噴霧される。)」(明細書第7ページ第17行?第22行)

キ.Fig.1には、各ブリスタ102に1個の霧化手段103を設けている点が図示されている。

上記記載事項及び図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「容器のシールされたブリスタ102から流体の薬剤を放出するための装置において、該容器が、テープ101と、該テープ101に形成される1個の開口である霧化手段103であって、開口の直径が1から20マイクロメータ(μm)であり、テープ101とブリスタ102により、投与する流体の薬剤を内包する容器を形成し、テープ101に形成される霧化手段103はプラスチックフィルムを用いてシールされている装置であって、該装置が、プレート115と、プレート115に対向してテープ101を支持する可動クランプ112を有する圧力発生装置111と、ブリスタ102へ衝撃を与えて破壊するプランジャー113を備え、トリガー機構の作動により、プランジャー113がスプリングから解放されてブリスタ102に圧力を加える機構を備え、霧化手段103から鼻腔或いは肺の適所に小滴を霧状に噴霧する装置。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能から見て、後者の「ブリスタ102」は前者の「内包体」に相当し、以下同様に、「テープ101」は「第1壁部分」に、「霧化手段103」は「開口」に、「プレート115と、プレート115に対向してテープ101を支持する可動クランプ112を有する圧力発生装置111と、ブリスタ102へ衝撃を与えて破壊するプランジャー113」は「投与ステーション」に相当する。
また、引用発明の「容器のシールされたブリスタ102から流体の薬剤を放出するための装置」は本願発明の「容器のシールされた内包体から治療用流体を放出するための装置」と同義であり、引用発明の「該テープ101に形成される1個の開口である霧化手段103であって」は本願発明の「該第1壁部分に配置された少なくとも1個の開口であって」と同義であり、引用発明の「トリガー機構の作動により、プランジャー113がスプリングから解放されてブリスタ102に圧力を加える機構」は本願発明の「該投与ステーションにおける該容器内包体の内容物に圧力を印加するために操作される放出機構」と同義である。
また、引用発明の「開口」は直径が1から20マイクロメータ(μm)であるから、本願発明の「少なくとも10ミクロンの最小直径を有する開口」を含んでいる。
また、引用発明は、「テープ101」と「ブリスタ102」により投与する流体の薬剤を内包する容器を形成し、薬剤を放出する開口である「テープ101」に形成される「霧化手段103」は、プラスチックフィルムを用いてシールされているから、本願発明の「該流体のシールされた単位用量を限定する内包体」を形成していることは明らかといえる。したがって、引用発明の「テープ101とブリスタ102により、投与する流体の薬剤を内包する容器を形成し、テープ101に形成される霧化手段103はプラスチックフィルムを用いてシールされている装置」は、本願発明の「該第1壁部分の反対側に配置された第2壁部分と備えてなり、該1壁部分と該第2壁部分とが該流体のシールされた単位用量を限定する内包体を形成するように構成されている装置」に相当するといえる。
また、引用発明は、「トリガー機構の作動により、プランジャー113がスプリングから解放されてブリスタ102に圧力を加える」ことで、「ブリスタ102」の薬剤が「テープ101」の開口である「霧化手段103」から噴霧され、目標となる鼻腔或いは肺の適所に放出されるから、引用発明も、本願発明の「該開口と該放出機構とが、該流体を線状の運動量を有する噴霧(jet)及び/又は小滴(droplets)で該空間中を該目標物まで放出される」構成を備えていることは明らかといえる。

してみると両者は、
「容器のシールされた内包体から治療用流体を放出するための装置において、該容器が、(a)第1壁部分と、(b)該第1壁部分に配置された少なくとも1個の開口であって、少なくとも10ミクロンの最小直径を有する開口と、(c)該第1壁部分の反対側に配置された第2壁部分と備えてなり、該1壁部分と該第2壁部分とが該流体のシールされた単位用量を限定する内包体を形成するように構成されている装置であって、該装置が、(iii)投与ステーションにおける該容器内包体の内容物に圧力を印加するために操作される放出機構とから構成されていて、該開口と該放出機構とが、該流体を線状の運動量を有する噴霧(jet)及び/又は小滴(droplets)で該空間中を該目標物まで放出されるように構成されている装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願発明では装置がハウジングを有し、ハウジングに内包体の投与ステーションが配置されているのに対し、引用発明では装置がハウジングを有しているのか否かが明らかでない点。

(相違点2)
本願発明では、カウリングが、投与ステーションと目標物との間に空間を確保するようにハウジングに配置されているのに対し、引用発明ではそのような構成がない点。

5.当審の判断
相違点1について
引用発明の装置は、引用文献1の上記記載事項「3.ア.」を参酌すると、使用者自ら操作する携帯装置として用いるものであるから、引用発明の装置がハウジングを備えていることは明らかといえ、引用発明においても、実質的に上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を有しているといえる。

相違点2について
カウリング手段を薬液が放出される開口と目標物との間に空間を確保するように配置することは、周知の技術(例えば、実願平4-19674号(実開平5-65335号)のCD-ROM、実願平4-49733号(実開平5-95538号)のCD-ROM、実願昭54-115198号(実開昭56-33940号)のマイクロフィルム)であるから、これを引用発明に採用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、本願発明による効果も、引用発明および上記周知の技術から、当業者が容易に予測し得た程度のものであって、格別なものとはいえない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明および上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-17 
結審通知日 2007-07-20 
審決日 2007-07-31 
出願番号 特願平8-508562
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 智宏稲村 正義  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 川本 真裕
仲村 靖
発明の名称 眼球治療装置  
代理人 松島 鉄男  
代理人 河村 英文  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  

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