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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1170304
審判番号 不服2006-25197  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-06 
確定日 2008-01-04 
事件の表示 特願2001- 14590「電源断処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月30日出願公開、特開2002-210095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年1月23日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成19年10月2日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明はつぎのものである。
「本体に設けられた電源スイッチがオン状態の場合に外部電源を前記本体で使用する電源態様に変換する電源手段と、
前記外部電源の電圧低下を検出する電圧低下検出手段と、
前記電圧低下検出手段によって前記外部電源の電圧が基準電圧以下となったことが検出されると電源断処理を行う制御手段と、
前記外部電源が断たれても所定時間中は前記本体に電力を供給可能な蓄電手段と、を備え、
前記電源断処理は、必要なデータをバックアップメモリに書き込むデータ退避処理と、
前記本体で動作していたプログラムを強制終了するプログラム強制終了処理と、を含み、
前記制御手段は、前記電源スイッチがオン状態及び前記電源スイッチをオフしたときに、前記電圧低下検出手段によって前記外部電源の電圧が前記基準電圧以下になると前記データ退避処理をまず行い、
前記制御手段は、前記外部電源の電圧が前記基準電圧以下となったことが検出されてから、前記電源スイッチがオン状態で前記所定時間が過ぎる前のある時点に前記外部電源が正常な状態に回復していれば前記電源断処理を中止し、前記電源スイッチをオフすることにより前記所定時間が過ぎる前のある時点に前記電源スイッチがオフ状態となっている場合には前記プログラム強制終了処理を行うことを特徴とする電源断処理装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成19年8月30日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1ないし4に係る発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である、
引用刊行物:特開平10-85421号公報
に記載された発明、及び周知技術として例示される、
周知例1:特開昭60-58186号公報
周知例2:特開2000-334088号公報
周知例3:特開平8-76896号公報
周知例4:特開平8-249090号公報
周知例5:特開2000-339066号公報
に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用発明
引用刊行物:特開平10-85421号公報
本願の出願前に頒布された刊行物である上記刊行物(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
a.「第1実施形態」(段落【0011】)
「遊技制御基板67には・・・電源回路124a、停電検出回路124b、バックアップ電源125が設けられている。バックアップ電源125は、・・・停電などにより電源回路124aの電位が低下した場合には正常な電位のバックアップ電力を遊技制御用マイクロコンピュータ115に供給するものである。停電検出回路124bは、停電等により電源回路124aの電位が低下したことを検出し、その検出出力である停電検出信号をバックアップ電源125および遊技制御用マイクロコンピュータ115のそれぞれに供給する。バックアップ電源125では、停電検出回路124bが停電検出信号を受けた場合に、・・・正常な電位のバックアップ電力を遊技制御用マイクロコンピュータ115に供給する。遊技制御用マイクロコンピュータ115では、停電検出回路124bから停電検出信号を受けた場合に、・・・停電時割込処理を実行する。・・・このようなバックアップ電源125の働きにより、停電などが生じても、遊技制御用マイクロコンピュータ115に所定期間電力が供給されるので、停電によりRAM117の記憶データが消去されてしまう不都合が防止できる。」(段落【0057】)
b.「このパチンコ遊技機1においては、停電または電源切り操作により電力の供給が断たれた場合に実行中の遊技状態を所定期間にわたって記憶するための停電時割込処理が実行される。・・・停電時割込処理は、停電検出回路124bが停電状態を検出した場合にCPU115aの割込処理により実行される。」(段落【0093】)
c.「図7は、停電時割込処理の処理内容を示すフローチャートである。まず、ステップS(以下単にSという)37により、CPU115aが実行中の遊技制御用プログラムの番地を示すデータをRAM117に格納する処理がなされる。次に、S38に進み、タイマが計時中であるか否かの判断がなされる。そのタイマは、停電状態の発生から所定期間が経過したか否かの判断に用いられるタイマである。S38によりタイマが計時中ではないと判断された場合は、後述するS40に進む。一方、S38によりタイマが計時中であると判断された場合は、S39に進み、タイマの計時をスタートさせる処理がなされる。その後、S40に進む。(段落【0094】、図7)
d.「S40では、タイマの値が所定値になったか否かの判断がなされる。その所定値は、たとえば、10分?60分程度の比較的短時間に設定されている。S40によりタイマの値が所定値になったと判断された場合は、後述するS42に進む。一方、タイマの値が所定値になっていないと判断された場合は、S41に進み、RAM117の記憶データを初期化する処理がなされる。そのS41の処理内容は、前述したSA2のRAM初期化処理の処理内容と同様の内容である。その後、S42に進む。
S42では、停電検出回路124bからの停電検出信号に基づいて、停電状態が復旧したか否かの判断がなされる。この場合の停電復旧には、実際の停電状態の復旧の他に、電源投入操作により電力の供給が開始された場合も含まれる。S42により停電状態が復旧していないと判断された場合は、前述のS40に戻り、停電状態が復旧するまで、前述した処理が繰返し実行される。一方、S42により停電状態が復旧したと判断された場合は、S43に進み、S37により格納した実行中の遊技制御用プログラムの番地からCPU115aの処理を復帰させる処理がなされる。」(段落【0095】【0096】、図7)
e.「このように、停電状態等により電力の供給が断たれると、停電時に実行されていた遊技制御用プログラムの番地のデータが記憶されるとともに、タイマにより計時がなされ、短期間の停電のように所定期間が経過するまでに電力の供給が復旧すれば、その復旧により電力の供給が開始された際に、記憶されたプログラムの番地から遊技制御が再開される。一方、遊技場の閉店後のように、所定時間が経過するまでに電力の供給が開始されなければ、その所定時間経過後に、電力の供給が断たれた時に記憶された実行中の遊技制御用プログラムの番地のデータが消去される。すなわち、電力の供給が断たれた後に所定期間が経過するまでに停電状態の復旧のように電力の供給が開始されれば、電力の供給が断たれた時に記憶された遊技状態から遊技制御が開始され、一方、遊技場の閉店後のように、電力の供給が断たれた後に所定期間が経過するまでにその状態が復旧しなければ、電力の供給が断たれた時に記憶された遊技状態の記憶情報が無効化され、電力の供給の再開時に、初期状態から遊技制御が開始されるのである。」(段落【0097】)
f.「なお、図7の停電時割込処理においては、所定期間内に停電状態が復旧しない場合に、RAM117を初期化する処理を行なうことによりRAM117の記憶データを無効化したが、これに限らず、RAM117の記憶データの無効化は、バックアップ用の電源からRAM117へのバックアップ用の電力の供給を所定期間経過後に遮断することにより行なってもよい。そのようにした場合でも、前述の場合と同様に、RAM117の記憶データを所定期間後に無効化することができる。」(段落【0099】)
g.「そのように、バックアップ用の電源からRAM117への電力の供給を所定期間後に遮断する構成は、次のように実現される。・・・停電状態の発生時に、バックアップ用の電源から遊技制御用のマイクロコンピュータのRAMへの電力の供給を所定期間経過後に遮断することが可能な回路・・・には、電源回路501、バックアップ電源502、停電検出回路503、タイマ回路504、ゲート回路505およびRAM506が含まれている。RAM506は、前述したRAM117に対応するものであり、遊技状態データを記憶する。RAM506は、通常時において、電源回路501から電力の供給を受けて動作する。バックアップ電源502(たとえばコンデンサ,バッテリ等)は、電源回路501から電力の供給を受け、その電力が供給されている場合には、自らを充電する(蓄電)とともにその電力をそのままゲート回路505へ供給する。一方、バックアップ電源502は、電源回路501から受ける電源電位が所定値以下に低下した場合に、バックアップ用の電力を、タイマ回路504およびゲート回路505のそれぞれに供給する。また、停電検出回路503は、電源回路501の電源電位を受け、その電位が所定値以下に低下した場合に、タイマ回路504を起動させるためのタイマ回路起動信号をタイマ回路504へ供給する。
タイマ回路504は、停電等の原因により電源回路501からの電力の供給が断たれた場合に、バックアップ電源502から供給される電力に基づいて動作可能状態となり、タイマ回路起動信号を受けたことに応答して、計時動作を開始する。タイマ回路504は、予め定められた時間だけ計時を行なってタイムアップ状態になると、ゲート回路505にタイムアップ信号を供給する。ゲート回路505は、タイマ回路504からタイムアップ信号が供給されていない場合に、バックアップ電源502から供給される電力をRAM506へ供給し、一方、タイムアップ信号が供給された場合に、バックアップ電源502からRAM506への電力の供給を断つ動作を行なう。
このような回路構成を採用すれば、停電時において、バックアップ電源502からRAM506への電力の供給を所定期間後に遮断することにより、停電時から所定期間経過後にRAM506の記憶データを無効化することができる。したがって、このような構成によっても、前述したモーニングセットと呼ばれる不正行為を防ぐことができる。」(段落【0100】-【0103】)
h.「第2実施形態
・・・第2実施形態においては・・・電力の供給が断たれたときの遊技状態を示す遊技状態データを記憶する・・・ために、遊技状態記憶部としてのEEPROM220が遊技制御用基板67に設けられている。EEPROM220は、遊技制御中において、遊技制御中の遊技状態データを逐次記憶する。したがって、EEPROM220には、最新の遊技状態データが記憶される。そして、EEPROM220は、停電等により電源回路124aから遊技制御用マイクロコンピュータ115への電力の供給が断たれた場合に、バックアップ電源125からバックアップ用の電力を受け、電源回路124aから遊技制御用マイクロコンピュータ115への電力の供給が断たれてから所定期間にわたって遊技状態データの記憶を保持する。」(段落【0104】【0106】)
i.「この第2実施形態によるパチンコ遊技機1では、実行中の遊技状態を示す遊技状態データをEEPROM220に書込む処理である遊技状態書込処理が実行される。・・・
図12は、遊技状態書込処理の処理内容を示すフローチャートである。・・・
・・・S31では、停電検出回路124bからの停電検出信号に基づいて停電状態が検出されたか否かの判断がなされる。この停電状態には、実際の停電状態の他に、電源の切操作に基づいて電力の供給が断たれた状態も含まれる。S31により、停電状態が検出されていないと判断された場合は、この遊技状態書込処理が終了する。一方、S31により停電状態が検出されたと判断された場合は、S32に進み、タイマが計時中であるか否かの判断がなされる。このタイマは、停電状態の発生から所定期間が経過したか否かの判断に用いられるタイマである。
S32によりタイマが計時中であると判断された場合は、後述するS34に進む。一方、S32によりタイマが計時中ではないと判断された場合は、S33に進み、タイマの計時をスタートさせる処理がなされる。その後、S34に進む。
S34では、タイマの値が所定値になったか否かの判断がなされる。その所定値は、たとえば、10分?60分程度の短時間に設定されている。S34によりタイマの値が所定値になっていないと判断された場合は、後述するS36に進む。一方、タイマの値が所定値になったと判断された場合は、S35に進み、EEPROM220の記憶データをクリア(初期化)する処理がなされる。その後、S36に進む。
S36では、停電検出信号に基づいて、停電状態が復旧したか否かの判断がなされる。この場合の停電復旧状態には、実際の停電の復旧の他に、電源投入操作に基づいて電力の供給が開始された場合も含まれる。S36により停電状態が復旧していないと判断された場合は、前述のS34に戻り、停電状態が復旧するまで、前述した処理が繰返し実行される。一方、S36により停電状態が復旧したと判断された場合は、この遊技状態書込処理が終了する。」(段落【0112】【0113】【0118】-【0120】、図12)
j.「このような遊技状態復帰処理が実行されることにより、EEPROM220に記憶されている遊技状態データがRAM117に格納される。これにより、RAM117に格納された遊技状態データに基づいて、遊技制御用マイクロコンピュータ115による遊技制御が再開される。・・・」(段落【0125】)
k.「このため、停電状態の発生後に所定期間内にその停電状態が復旧した場合には、まだEEPROM220に停電時の遊技状態データが記憶されているので、その遊技状態データに基づく遊技制御の再開により、停電発生時の遊技状態から遊技制御を再開することができる。・・・
また、遊技場の閉店時等に行なわれるパチンコ遊技機1の電源切り操作により遊技制御用マイクロコンピュータ115への電力の供給が断たれた場合には、遊技場の閉店時から遊技場の開店時までの間の時間のように所定期間よりも長い期間電力の供給が断たれるので、遊技状態書込処理においてEEPROM220に記憶された遊技状態データがクリアされる。すなわち、遊技制御用マイクロコンピュータ115への電力の供給が断たれた状態が所定期間を超えるとEEPROM220に記憶されていた遊技状態データが無効化されるのである。このため、遊技場の閉店時等において遊技場側が遊技者にとって有利な遊技状態にセットした状態で電力の供給を断っておき、翌日の遊技場の開店時等における電源投入時にその有利な状態から遊技者が遊技を開始できるというモーニングセットと呼ばれるような遊技場における不正行為を未然に防ぐことができる。」(段落【0126】【0127】)

上記記載並びに、図7及び図12に示されるフローチャートによれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 (第1実施形態)
遊技制御基板67には電源回路124a、停電検出回路124b、バックアップ電源125が設けられ、停電検出回路124bは停電等により電源回路124aの電位が低下したことを検出して、その検出出力である停電検出信号をバックアップ電源125および遊技制御用マイクロコンピュータ115のそれぞれに供給し、バックアップ電源125は停電などにより電源回路124aの電位が低下した場合に、正常な電位のバックアップ電力を遊技制御用マイクロコンピュータ115に所定期間供給して、停電によりRAM117の記憶データが消去されてしまう不都合を防止し、遊技制御用マイクロコンピュータ115では、停電検出回路124bから停電検出信号を受けた場合に、停電時割込処理を実行するものであり、停電時割込処理は、停電または電源切り操作により電力の供給が断たれた場合に、実行中の遊技状態を所定期間にわたって記憶するための処理であり、停電時割込処理の処理内容は、まず、停電状態等により電力の供給が断たれると、CPU115aが実行中の遊技制御用プログラムの番地を示すデータをRAM117に格納する処理がなされるとともに、停電状態の発生から所定期間が経過したか否かの判断に用いるためのタイマにより計時をスタートさせ、停電検出回路124bからの停電検出信号に基づいて、所定期間が経過するまでに停電状態が復旧したか否かの判断がなされ、この場合の停電復旧には、実際の停電状態の復旧の他に、電源投入操作により電力の供給が開始された場合も含まれるものであり、所定期間が経過するまでに停電状態が復旧し、電力の供給が開始された際には、記憶されたプログラムの番地からCPU115aの処理を復帰させる処理がなされて、電力の供給が断たれた時に記憶された遊技状態から遊技制御が再開され、一方、所定期間内に停電状態が復旧していないと判断された場合は、RAM117を初期化する処理がなされ、または、バックアップ用の電源(たとえばコンデンサ,バッテリ等)からRAM117へのバックアップ用の電力の供給を遮断する処理がなされ、
(第2実施形態)
電力の供給が断たれたときの遊技状態を示す遊技状態データを記憶するために、遊技状態記憶部としてのEEPROM220が遊技制御用基板67に設けられており、実行中の遊技状態を示す遊技状態データをEEPROM220に書込む遊技状態書込処理が実行され、EEPROM220は、遊技制御中の遊技状態データを逐次記憶することで最新の遊技状態データを記憶し、停電等により電源回路124aから遊技制御用マイクロコンピュータ115への電力の供給が断たれた場合に、バックアップ電源125からバックアップ用の電力を受け、所定期間にわたって遊技状態データの記憶を保持するものであり、遊技状態書込処理の内容は、停電検出回路124bからの停電検出信号に基づいて停電状態か否かの判断がなされ、この停電状態には、実際の停電状態の他に、電源の切り操作に基づいて電力の供給が断たれた状態も含まれ、停電状態が検出されると、停電状態の発生から所定期間が経過したか否かの判断に用いるためのタイマにより計時をスタートさせ、その後、停電検出信号に基づいて、停電状態が復旧したか否かの判断がなされ、この場合の停電復旧状態には、実際の停電の復旧の他に、電源投入操作に基づいて電力の供給が開始された場合も含まれ、停電状態の発生後、所定期間内にその停電状態が復旧した場合には、EEPROM220に記憶されている停電時の遊技状態データに基づいて停電発生時の遊技状態から遊技制御を再開する遊技状態復帰処理を実行し、一方、所定期間内に停電状態が復旧していないと判断された場合は、EEPROM220の記憶データをクリア(初期化)する処理がなされる、遊技機。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「遊技制御用マイクロコンピュータ115」は本願発明における「制御手段」に対応しているとともに、引用発明における「バックアップ電源125」は本願発明における「蓄電手段」に対応しており、さらに引用発明について次のことがいえる。
(i) 引用発明における「遊技機」は、その技術的意義に照らすと、本願発明における「本体」に対応するものといえる。また、引用発明は、「電源投入操作」(摘示d.i.)や「電源の切り操作」(摘示b.i.)を可能としたものであるから、電源スイッチを備えていることが明らかである。さらに、同引用発明における「電源回路124a」は、その機能に照らすと、外部電源に接続されて「遊技機」(「本体」)へ「電力の供給」を行うものであり、「電源手段」の概念に含まれるものでいうことができる。
すなわち、引用発明は、「遊技機(本体)に設けられた電源スイッチと、外部電源に接続する電源手段(とを備え)」ている、といえる。
一方、本願発明は、「本体に設けられた電源スイッチがオン状態の場合に外部電源を前記本体で使用する電源態様に変換する電源手段」を備えており、「外部電源を前記本体で使用する電源態様に変換する電源手段」を、「外部電源に接続する電源手段」と包括的に表現することができる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「本体に設けられた電源スイッチと、外部電源に接続する電源手段(とを備え)」ている点で共通しているといえる。

(ii) 上記(i)に記載したように、引用発明における「電源回路124a」は外部電源に接続されていることが明らかである。
そして引用発明は、「停電等により電源回路124aの電位が低下したことを検出」する「停電検出回路124b」(摘示a.)を備えており、該「停電検出回路124b」は、「電源回路124a」の「電位が低下したこと」で、「遊技機」(「本体」)へ供給する電圧の低下を検出する検出手段であるということができる。
一方、本願発明は、「前記外部電源の電圧低下を検出する電圧低下検出手段」を備えており、該「電圧低下検出手段」は、「外部電源の電圧低下を検出する」ことで「本体」へ供給する電圧の低下を検出する検出手段である、と包括して表現することができる。
そうすると、本願発明が備える「電圧低下検出手段」と、引用発明が備える「停電検出回路124b」とは、「本体(遊技機)へ供給する電圧の低下を検出する検出手段」である点で共通しているということができ、本願発明と引用発明とは、「本体(遊技機)へ供給する電圧の低下を検出する検出手段(とを備え)」ている点で共通しているといえる。

(iii) 上記(ii)に記載したように、引用発明における「停電検出回路124b」は、「電源回路124a」の「電位が低下したこと」で、「遊技機」(「本体」)へ供給する電圧の「低下」を「検出」する検出手段であり、「検出」は、「遊技機」(「本体」)へ供給する電圧が基準値以下、すなわち、基準電圧以下に「低下」したことを「検出」することによるものであるといえる。
そして引用発明は、「検出手段」である「停電検出回路124b」が「出力」する「停電検出信号」を「遊技制御用マイクロコンピュータ115」が「受け」ると、「停電時割込処理を実行」し、「実行中の遊技制御用プログラムの番地を示すデータをRAM117に格納する処理」を行い、「所定期間」経過後に、「RAM117を初期化する処理」または「RAM117」へのバックアップ用の「電力の供給」を「遮断」(第1実施形態。摘示b.ないしg.)するか、「遊技状態を示す遊技状態データ」を「遊技状態記憶部としてのEEPROM220」に「記憶」させ、「所定期間」経過後に、「EEPROM220の記憶データをクリア(初期化)する」(第2実施形態。摘示h.ないしj.)ものであり、「遊技制御用マイクロコンピュータ115」(本願補正発明における「制御手段」に対応する。)が行う上記処理を「終了処理」と表現することができる。
以上をまとめると、引用発明は、「検出手段によって遊技機(本体)へ供給する電圧が基準電圧以下となったことが検出されると終了処理を行う遊技制御用マイクロコンピュータ(制御手段)」を備えていると表現することができる。
一方、本願発明は、「前記電圧低下検出手段によって前記外部電源の電圧が基準電圧以下となったことが検出されると電源断処理を行う制御手段」を備えており、上記(ii)に記載したように、「電圧低下検出手段」は、「外部電源の電圧低下を検出する」ことで「本体」へ供給する電圧が基準電圧以下となったことを検出する検出手段である、と包括して表現することができ、さらに、上記「制御手段」が行う上記「電源断処理」を「終了処理」と包括して表現することができ、本願発明を、「前記検出手段によって本体へ供給する電圧が基準電圧以下となったことが検出されると終了処理を行う制御手段」を備えていると包括して表現することができる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記検出手段によって本体へ供給する電圧が基準電圧以下となったことが検出されると終了処理を行う制御手段(とを備え)」ている点で共通しているといえる。

(iv) 引用発明は、「バックアップ電源125」(本願発明における「蓄電手段」に対応する。)を備えており、「停電などにより電源回路124aの電位が低下した場合に、正常な電位のバックアップ電力を遊技制御用マイクロコンピュータ115に所定期間供給」(摘示a.)するものであり、外部電源が断たれても「所定期間」中は遊技機(「本体」)に電力を供給可能とされている。そして、引用発明における、遊技機(「本体」)に電力を供給可能な上記「所定期間」は、本願発明における、「本体に電力を供給可能」な「所定時間」に比して、その技術的意義に照らしても、実質的に異なるところはない。
そうすると、引用発明は、本願発明を特定する「前記外部電源が断たれても所定時間中は前記本体に電力を供給可能な蓄電手段と、を備え」の事項に対応する構成を備えている。

(v) 上記(iii)に記載したように、本願発明と引用発明とは、「本体へ供給する電圧が基準電圧以下となったことが検出されると終了処理を行う」点で共通している。
引用発明における上記「終了処理」は、「停電または電源切り操作により電力の供給が断たれた場合」に、「停電時割込処理」を行って「実行中の遊技制御用プログラムの番地を示すデータをRAM117に格納する処理」(第1実施形態。摘示c.)、「バックアップ電源125からバックアップ用の電力を受け」て、「EEPROM220」が「記憶」している「遊技制御中の遊技状態データ」の「記憶を保持」(第2実施形態。摘示h.)する「処理」であり、これらの「処理」は、本願発明における「必要なデータをバックアップメモリに書き込むデータ退避処理」に対応するものであり、引用発明における「終了処理」は、「必要なデータをバックアップメモリに書き込むデータ退避処理」を含むものであるといえる。
一方、本願発明は「前記電源断処理は、必要なデータをバックアップメモリに書き込むデータ退避処理と、前記本体で動作していたプログラムを強制終了するプログラム強制終了処理と、を含」むものであり、上記(iii)に記載したように、「データ退避処理」が含まれる「電源断処理」を「終了処理」と包括的に表現することができることから、本願発明における上記発明特定事項を、「前記終了処理は、必要なデータをバックアップメモリに書き込むデータ退避処理を含」むものであると包括的に表現することができる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記終了処理は、必要なデータをバックアップメモリに書き込むデータ退避処理を含む」点で共通しているといえる。

(vi) 上記(iii)に記載したように、本願発明と引用発明とは、「本体(遊技機)へ供給する電圧が基準電圧以下となったことが検出されると終了処理を行う制御手段(とを備え)」ている点で共通しており、さらに上記(v)に記載したように、「終了処理は、必要なデータをバックアップメモリに書き込むデータ退避処理を含む」ものである。
そこで引用発明における「データ退避処理」を検討するに、「停電または電源切り操作により電力の供給が断たれた場合に」、「遊技制御用マイクロコンピュータ115」(「制御手段」)が、「まず」、「実行中の遊技制御用プログラムの番地を示すデータをRAM117に格納する」(第1実施形態。摘示b.c.)ことによる「データ退避処理」であり、あるいは、「停電等により電源回路124aから遊技制御用マイクロコンピュータ115への電力の供給が断たれた場合」に、「EEPROM220」は「バックアップ電源125からバックアップ用の電力を受け、所定期間にわたって遊技状態データの記憶を保持する」もので、「この停電状態には、実際の停電状態の他に、電源の切り操作に基づいて電力の供給が断たれた状態も含まれ」(第2実施形態。摘示h.i.)る「データ退避処理」であり、上記第2実施形態における「EEPROM220」への「バックアップ用の電力」の供給は、「停電」または「電源の切り操作」に基づいて、「遊技制御用マイクロコンピュータ115」(「制御手段」)が「まず」行う処理といえる。
すなわち引用発明は、「停電または電源切り操作により電力の供給が断たれた場合に、データ退避処理をまず行」うものであり、上記「停電」とは、電源スイッチがオン状態のときに発生し、「電源切り操作」とは、電源スイッチをオフする操作であることが明らかである。
以上をまとめると、引用発明は、「遊技制御用マイクロコンピュータ115(制御手段)は、電源スイッチがオン状態及び前記電源スイッチをオフしたときに、検出手段によって遊技機(本体)へ供給する電圧が基準電圧以下になるとデータ退避処理をまず行」うものであるといえる。
一方、本願発明は、「前記制御手段は、前記電源スイッチがオン状態及び前記電源スイッチをオフしたときに、前記電圧低下検出手段によって前記外部電源の電圧が前記基準電圧以下になると前記データ退避処理をまず行」うものであり、上記(iii)に記載したように、「電圧低下検出手段」を、「本体」へ供給する電圧が「基準電圧以下」となったことを検出する「検出手段」である、と包括して表現することができ、本願発明を、「前記制御手段は、前記電源スイッチがオン状態及び前記電源スイッチをオフしたときに、前記検出手段によって本体へ供給する電圧が前記基準電圧以下になると前記データ退避処理をまず行」うものであると包括して表現することができる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記制御手段は、前記電源スイッチがオン状態及び前記電源スイッチをオフしたときに、前記検出手段によって本体へ供給する電圧が前記基準電圧以下になると前記データ退避処理をまず行」う点で共通しているといえる。

(vii) 上記(ii)に記載したように、引用発明は、「電源回路124a」の「電位が低下したこと」で、「遊技機」(「本体」)へ供給する電圧が基準値以下に「低下」したことを「検出」する「検出手段」を備えているといえる。
そして引用発明は、電源スイッチがオン状態で「停電」が発生して「遊技機」(「本体」)へ供給する電圧が基準電圧以下となったことが「検出」されてから、「所定期間が経過するまでに停電状態が復旧し、電力の供給が開始された際」には「遊技制御が再開」(第1・第2実施形態。摘示c.d.i.)されるものである。
上記「所定期間」とは、上記(iv)に記載した、「バックアップ電源125」(本願発明における「蓄電手段」に対応する。)が「遊技機」(本願発明における「本体」に対応する。)に電力を供給可能な「所定期間」(本願発明における「所定時間」に対応する。)とも符合するものであることを考慮すると、引用発明における「復旧」は、「バックアップ」が可能な「所定期間」(「所定時間」)が過ぎる前のある時点における「復旧」であるということができ、同引用発明における、上記した「所定期間が経過するまでに停電状態が復旧し」の構成は、本願発明を特定する、「所定時間が過ぎる前のある時点に前記外部電源が正常な状態に回復し」の事項と実質的に異なるところはない。そして、同引用発明は、「停電状態」の「復旧」によって、上記(iii)に記載した、「遊技制御用マイクロコンピュータ115」(本願補正発明における「制御手段」に対応する。)が行う「終了処理」を中止するものである。
以上をまとめると、引用発明は、「遊技制御用マイクロコンピュータ115」(制御手段)は、本体へ供給する電圧が基準電圧以下となったことが検出されてから、電源スイッチがオン状態で所定期間(所定時間)が過ぎる前のある時点に遊技機(本体)へ供給する電圧が正常な状態に回復していれば終了処理を中止」するものであるといえる。
一方、本願発明は、「前記制御手段は、前記本体へ供給する電圧が前記基準電圧以下となったことが検出されてから、前記電源スイッチがオン状態で前記所定時間が過ぎる前のある時点に前記外部電源が正常な状態に回復していれば前記電源断処理を中止」するものであり、上記(ii)に記載したように、「電圧低下検出手段」は、「外部電源の電圧低下を検出する」ことで「本体」へ供給する電圧が基準電圧以下となったことを検出する検出手段である、と包括して表現することができ、さらに、上記(iii)に記載したように、「制御手段」が行う上記「電源断処理」を「終了処理」と包括的に表現することができ、本願発明を、「前記制御手段は、前記本体へ供給する電圧が前記基準電圧以下となったことが検出されてから、前記電源スイッチがオン状態で前記所定時間が過ぎる前のある時点に前記本体へ供給する電圧が正常な状態に回復していれば前記終了処理を中止」する、と包括して表現することができる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記制御手段は、前記本体へ供給する電圧が前記基準電圧以下となったことが検出されてから、前記電源スイッチがオン状態で前記所定時間が過ぎる前のある時点に前記本体へ供給する電圧が正常な状態に回復していれば前記終了処理を中止」する点で共通しているといえる。

(viii) 引用発明は、「電源切り操作により電力の供給が断たれ」、「所定期間内」に「電力の供給」が「復旧していないと判断された場合は、RAM117を初期化する処理がなされ、または、バックアップ用の電源(たとえばコンデンサ,バッテリ等)からRAM117へのバックアップ用の電力の供給を遮断する処理がなされ」(第1実施形態。摘示d.ないしg.)るものであり、あるいは、「電源の切り操作に基づいて電力の供給が断たれた状態」の「発生」から「所定期間内」に「電力の供給」が「復旧していないと判断された場合は、EEPROM220の記憶データをクリア(初期化)する処理がなされる」(第2実施形態。摘示i.ないしk.)ものである。
すなわち、引用発明は、「電源切り操作により電力の供給が断たれ」ることにより、「所定期間内」に「電力の供給」が「復旧していない」場合には、「RAM117を初期化する処理」または「RAM117へのバックアップ用の電力の供給を遮断する処理」(第1実施形態)もしくは「EEPROM220の記憶データをクリア(初期化)する処理」(第2実施形態)によって、上記(iii)に記載した、「終了処理」を完了させるものということができ、当該処理を完了させるのは、「遊技制御用マイクロコンピュータ115」(本願発明における「制御手段」に対応する。)において行われるものである。
そして、引用発明における、上記した「電源切り操作により電力の供給が断たれ」ることとは、本願発明における「電源スイッチをオフすること」に対応するものであり、同様に、引用発明における「電力の供給」が「復旧していないと判断された場合」とは、本願発明における「前記電源スイッチがオフ状態となっている場合」に対応するものである。
そして、上記(vii)に記載したように、引用発明における上記「所定期間」とは、同じく上記(iv)に記載した、「バックアップ電源125」(本願発明における「蓄電手段」に対応する。)が「遊技機」(本願発明における「本体」に対応する。)に電力を供給可能な「所定期間」(本願発明における「所定時間」に対応する。)とも符合するものであることを考慮すると、引用発明における「電力の供給」が「復旧していないと判断された場合」とは、「バックアップ」が可能な「所定期間」(本願発明における「所定時間」に対応する。)が過ぎる前のある時点に「電力の供給」が「復旧していないと判断された場合」(上記したように、本願発明における「前記電源スイッチがオフ状態となっている場合」に対応する。)であるということができる。
以上をまとめると、引用発明は、「(遊技制御用マイクロコンピュータ115(制御手段)は、)電源切り操作により電力の供給が断たれることにより(電源スイッチをオフすることにより)所定期間(所定時間)が過ぎる前のある時点に電力の供給が復旧していない場合(前記電源スイッチがオフ状態となっている場合)には終了処理を完了させる」ものであるといえる。
一方、本願発明は、「(制御手段は、)前記電源スイッチをオフしたときに前記所定時間が過ぎる前のある時点に前記電源スイッチがオフ状態となっている場合には前記プログラム強制終了処理を行う」ものであり、上記(iii)に記載したように、「プログラム強制終了処理」が含まれる「電源断処理」を、「終了処理」と包括的に表現することができることから、「プログラム強制終了処理を行う」ことは、「終了処理を完了させる」ことであると包括的に表現することができる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「(制御手段は、)前記電源スイッチをオフすることにより前記所定時間が過ぎる前のある時点に前記電源スイッチがオフ状態となっている場合には前記終了処理を完了させる」点で共通しているといえる。

(ix) 上記(i)ないし(viii)の事項を勘案すると、本願補正発明と引用発明とは実質上、共に「終了処理装置」に関する発明である点で共通しているということができる。

以上より、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、また相違すると認められる。
一致点;
本体に設けられた電源スイッチと、外部電源に接続する電源手段と、本体へ供給する電圧の低下を検出する検出手段と、前記検出手段によって本体へ供給する電圧が基準電圧以下となったことが検出されると終了処理を行う制御手段と、前記外部電源が断たれても所定時間中は前記本体に電力を供給可能な蓄電手段と、を備え、前記終了処理は、必要なデータをバックアップメモリに書き込むデータ退避処理を含み、前記制御手段は、前記電源スイッチがオン状態及び前記電源スイッチをオフしたときに、前記検出手段によって前記本体へ供給する電圧が前記基準電圧以下になると前記データ退避処理をまず行い、前記制御手段は、前記本体へ供給する電圧が前記基準電圧以下となったことが検出されてから、前記電源スイッチがオン状態で前記所定時間が過ぎる前のある時点に前記本体へ供給する電圧が正常な状態に回復していれば前記終了処理を中止し、前記電源スイッチをオフすることにより前記所定時間が過ぎる前のある時点に前記電源スイッチがオフ状態となっている場合には前記終了処理を完了させる終了処理装置、である点。

相違点;
(A)(A-1) 外部電源に接続するのが、本願発明では、電源スイッチがオン状 態の場合に外部電源を前記本体で使用する電源態様に変換する電 源手段であるのに対して、引用発明では電源回路であり、電源ス イッチがオン状態の場合に外部電源を本体で使用する電源態様に 変換するものであるか明らかでない点。
(A-2) 本体へ供給する電圧の低下を検出する検出手段が、本願発明では 、外部電源の電圧低下を検出する電圧低下検出手段であり、外 部電源の電圧が基準電圧以下となったことを検出するものであ るのに対して、引用発明では、電源回路の電圧低下を検出する 停電検出回路であり、電源回路の電圧が基準電圧以下となった ことを検出するものである点。

(B)(B-1) 終了処理が、本願発明では、データ退避処理と、本体で動作して いたプログラムを強制終了するプログラム強制終了処理とを含む 電源断処理であるのに対して、引用発明では、データ退避処理を 含み、遊技機(本体)で動作していたプログラムを強制終了する プログラム強制終了処理を含むものか明らかでなく、引用発明が 行う終了処理をただちに電源断処理であるとすることはできず、
(B-2) 終了処理装置が、本願発明では、電源断処理装置であるのに対し て、引用発明における終了処理装置を、ただちに電源断処理装置 であるとすることはできない点。

(C)(C-1) 本体へ供給する電圧が正常な状態に回復していたときに終了処理 を中止するのが、本願発明では、電源断処理を中止することによ るものであことによるものであるのに対して、引用発明では、電 力の供給が絶たれた時に記憶されていた遊技状態から遊技制御を 再開することによるものであり、
(C-2) 電源スイッチがオフ状態となっている場合に終了処理を完了させ るのが、本願発明では、プログラム強制終了処理を行うものであ るのに対して、引用発明では記憶データのクリア(初期化)を行 うものである点。

5.判断
上記の相違点について検討する。
相違点(A)について
(A-1) 電源スイッチがオン状態で外部電源に接続されているときに、外部電源を本体で使用する電源態様に変換する電源手段は、下記に周知例1ないし3として例示するように周知慣用手段であり、引用発明に当該周知慣用手段を付加して相違点(A-1)に係る構成を得ることは単なる設計事項にすぎない。
(A-2) 外部電源の電圧が基準電圧以下となったことを検出することで本体へ供給する電圧の低下を検出することは、下記に周知例6ないし8として例示するように周知慣用手段であり、当該周知慣用手段を参酌して、引用発明における「停電検出回路124b」が電圧低下を検出する対象を、「電源回路124a」の電圧低下の検出に代えて、外部電源の電圧低下を検出するよう構成することは、当業者が適宜になし得る設計の変更にすぎない。
ここで、上記(vii)及び(viii)に記載したように、引用発明における「停電検出回路124b」は、「電源回路124a」の「電位が低下したこと」を検出することで、電源スイッチがオン状態で「停電」が発生して「遊技機」(「本体」)へ供給する電圧が基準電圧以下となったことを「検出」するとともに、「電源切り操作」により「遊技機」(「本体」)への「電力の供給が断たれた」ことを「検出」するものであるから、引用発明において、「停電検出回路124b」により外部電源の電圧低下を検出する、上記した設計の変更を行うと、外部電源の「電位が低下したこと」を検出することで、電源スイッチがオン状態で「停電」が発生して「遊技機」(「本体」)へ供給する電圧が基準電圧以下となったことを「検出」するとともに、「電源切り操作」により「遊技機」(「本体」)への「電力の供給が断たれた」ことを「検出」することとなり、相違点(A-2)に係る構成が得られることとなる。

相違点(B)について
電源が断たれたとき、所定時間の経過後にプログラムを強制終了させることは、下記に周知例3ないし5として例示するように、周知慣用手段であり、引用発明に当該周知慣用手段を含ませることは当業者が適宜になし得る設計の変更にすぎない。
(B-1) 引用発明が上記した設計の変更を行うと、引用発明における「終了処理」は、引用発明が本来備えるデータ退避処理に加えて、遊技機(本体)で動作していたプログラムを強制終了するプログラム強制終了処理を含むこととなり、引用発明が行う終了処理は、実質上、本願発明が行う電源断処理と同様の処理となるから、相違点(B-1)に格別顕著な技術的困難性はない。
(B-2) また、引用発明が上記した設計の変更を行うと、引用発明は、実質上、本願発明が行う電源断処理と同様の終了処理を行うこととなり、引用発明が開示する終了処理装置は、本願発明が開示する電源断処理装置と実質的に同様なものとなるから、相違点(B-2)に格別顕著な技術的困難性はない。

相違点(C)について 「相違点(B)について」に記載したように、引用発明における「終了処理」にプログラム強制終了処理を含ませて本願発明が行う電源断処理と同様の処理を行うことに格別顕著な技術的困難性はない。
(C-1) 引用発明が上記した設計の変更を行うと、本体へ供給する電圧が正常な状態に回復したとき、同引用発明が中止する「終了処理」は、必然的に、電源断処理を中止することとなるから、相違点(C-1)は単なる設計事項にすぎない。
(C-2) また、引用発明が上記した設計の変更を行ったときに、電源スイッチがオフ状態となっている場合に、同引用発明は、本体へ供給する電圧が基準電圧以下となったことが検出されたときにすでに終了させていたデータ退避処理に加えて、引用発明における「終了処理」が含むこととなったプログラム強制終了処理を行うことにより、「終了処理」を完了させることとなるから、相違点(C-2)は単なる設計事項にすぎない。

そして、相違点(A)ないし(C)に係る発明特定事項を備えた本願発明の効果も、引用発明及び周知慣用技術(周知例1ないし8)が本来奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知慣用技術(周知例1ないし5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【周知例】
周知例1:特開昭60-58186号公報
停電を検知する停電検知手段と、停電検知手段の停電検知に基づいて、停電時にデータを保持可能なメモリを備えた遊戯機において、商用交流入力が「トランス31」によって二つの低電圧に変換可能とされている、遊戯機の停電処理装置。(特許請求の範囲、第3頁右上欄第18行-右下欄第2行)

周知例2:特開2000-334088号公報
外部電源と接続されて所定の駆動電圧を供給する電源手段、バックアップ電源手段、不揮発性の記憶手段、停電監視手段、停電時退避手段及び停電時復帰手段とを備えており、上記電源手段は、本体の各種基板に、交流24ボルト、直流非安定24ボルト、直流安定24ボルト、直流安定12ボルト、直流安定5ボルトの合計5種類の電圧を供給する、遊技機。(特許請求の範囲、段落【0023】)

周知例3:特開平8-76896号公報
商用電源からの電源電圧を取り込み、予め設定されている電圧値を持つ電源電圧を生成して装置各部に電源電圧を供給し、瞬電や停電が発生したとき、これを検知して電圧降下検出信号を生成するとともに、予め設定されている時間、装置各部に電源電圧を供給し続けるUPS回路8と、CPU回路6の業務処理を規定する業務ソフトウェア9と、前記UPS回路8から電圧降下検出信号が出力されたとき、タイマを作動させ、30秒が経過したとき、CRT表示装置5にメッセージを表示して、停電の発生を知らせるとともに、動作中の業務ソフトウェア9をすべて強制終了させるOS(オペレーティング・システム)10とを備えている、医療機関用情報処理システム。(特許請求の範囲、段落【0011】)

周知例4:特開平8-249090号公報
電源スイッチがONのままでACのケーブル8が抜かれてしまった時や停電の場合、電源部55からAC入力が切れた旨の信号Gがシステムダウン防止手段53に通知され、この信号Gを検知したシステムダウン防止手段53は、RAM5b上にあるデータをハードディスク装置3やフロッピーディスク装置2に待避させ、タイマー54へシステムを落とす時間Iを設定し、タイマー54はその設定時間が経過すると制御信号発生手段52へバッテリ駆動を中止する信号Jを出し、その信号を受信した制御信号発生手段52は、バッテリを駆動している信号Hを落とし、システムをHALT状態にする、情報処理装置。(段落【0013】【0017】)

周知例5:特開2000-339066号公報
オペレータが電源スイッチSを誤って押下すると、ブザー18をA秒間鳴らして、タイマTによる時間の計測を開始し、電源スイッチSが押下されなくなるまで、または、計測時間がB秒間を経過すると、動作中のアプリケーションプログラムを強制終了させて電源11を切断する、電子機器。(段落【0019】-【0026】)

周知例6:特開平10-234990号公報
電源回路29に供給される外部電源の電圧が一定以下に低下したときに、これを停電とみなして、電源回路29に接続した停電検出回路30から割込信号を出力するパチンコ遊技場の管理システム。(段落【0036】、図2)

周知例7:特開昭60-100057号公報
停電の検知の対象となる交流電圧を供給されて停電検知回路自身の電源を作る電源回路と、前記交流電圧を整流して整流電圧を出力する整流回路と、基準電圧と前記整流電圧とを比較して停電判定信号を出力する比較回路とを備え、整流した交流電圧を平滑せずに直接検知することによって電圧の低下した時点を早期に検出する停電検出回路。(特許請求の範囲、第2頁左上欄第6行-右上欄第16行、第3図)

周知例8:特開平6-4750号公報
外部電源のラインL_(1)に電圧低下を検出する停電検知回路7を接続し、停電検知回路7が電圧低下を検出すると、トランジスタ3をオフにしてバックアップラインL_(2)が電池9により給電を受ける、自動販売機の電池バックアップ回路。(段落【0007】【0008】、図1)

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願の他の請求項について論ずるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-05 
結審通知日 2007-11-07 
審決日 2007-11-21 
出願番号 特願2001-14590(P2001-14590)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 太田 恒明
渡部 葉子
発明の名称 電源断処理装置  
代理人 小栗 昌平  
代理人 本多 弘徳  
代理人 市川 利光  
代理人 高松 猛  

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