• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1170461
審判番号 不服2003-23923  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-11 
確定日 2008-01-09 
事件の表示 特願2001- 79026「簡易受発注処理方法および処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月27日出願公開、特開2002-279244〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年3月19日の出願であって、平成15年4月10日付けの拒絶理由通知に対して同年6月23日付けで手続補正がなされ、同年7月24日付けの拒絶理由通知に対して同年10月6日付けで手続補正がなされたが該手続補正は同年11月5日付けの補正の却下の決定により却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成16年1月13日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年1月13日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年1月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正の内容
平成16年1月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。
「【請求項1】 端末とネットワーク上で接続され、在庫商品データおよび見積データをファイル記憶装置で管理して、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは見積データをファイル記憶装置から取り出して端末へ送信し、対話形式により発注処理を行わせるプログラム処理機能により実現される受発注処理手段を備えた簡易受発注処理装置であって、
上記受発注処理手段は、会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルとを用いて、顧客がログイン時に端末から入力したユーザーIDを会員情報ファイルと照合して会員の認証を行い、同時に、認証した会員顧客の商流にかかわる顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す会員認証処理機能と、
端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データを上記見積データ及び商流情報ファイルで検索し、取り出して回答する処理を行う見積データ照会応答処理機能と、
さらに、作成された見積データが発注データとして確定した際、その納品項目および納品予定を、顧客別、施工方法別、施工現場別に管理して、それぞれの別により参照可能にする発注データ管理機能とを備えていることを特徴とする簡易受発注処理装置。」

また、本件補正により補正された発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0013】
本発明による簡易受発注処理装置は、以下の構成をとることができる。
〔1〕 発注側の端末とネットワークを介して結合される簡易受発注処理装置であって、
端末とネットワーク上で接続され、在庫商品データおよび見積データをファイル記憶装置で管理して、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは見積データをファイル記憶装置から取り出して端末へ送信し、対話形式により発注処理を行わせるプログラム処理機能により実現される受発注処理手段を備えた簡易受発注処理装置であって、
上記受発注処理手段は、会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルとを用いて、顧客がログイン時に端末から入力したユーザーIDを会員情報ファイルと照合して会員の認証を行い、同時に、認証した会員顧客の商流にかかわる顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す会員認証処理機能と、
端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データを上記見積データ及び商流情報ファイルで検索し、取り出して回答する処理を行う見積データ照会応答処理機能と、
さらに、作成された見積データが発注データとして確定した際、その納品項目および納品予定を、顧客別、施工方法別、施工現場別に管理して、それぞれの別により参照可能にする発注データ管理機能とを備えていることを特徴とする簡易受発注処理装置の構成。」(第13段落)

2-2.当初明細書に記載された事項
本件出願の願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。また、願書に最初に添付された明細書及び図面を「当初明細書等」という。)中には、以下の記載が存在している。
「【請求項1】 ホストと携帯端末がネットワーク上で接続され、ホストは、在庫商品データおよび見積データを受発注情報データベースで管理し、携帯端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する商流の見積データを携帯端末へ送って画面表示し、携帯端末では照会した在庫商品データの画面から発注を行うことを特徴とする簡易受発注処理方法。」(請求項1)
「【請求項10】 ホストと携帯端末がネットワーク上接続されて商品の受発注処理を行なう簡易受発注処理システムであって、ホストは、在庫商品データおよび見積データを管理する受発注情報データベースと、携帯端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する商流の見積データを受発注情報データベースから取り出し、在庫商品データあるいは見積データの照会画面を作成して携帯端末へ送り画面表示する照会処理手段と、携帯端末の在庫商品データの照会画面から出された発注要求に応じて携帯端末へ発注画面を送り、発注画面に見積データの入力設定を行なわせる見積データ作成処理手段とを備えていることを特徴とする簡易受発注処理システム。」(請求項10)
「【請求項11】 請求項10において、ホストは、会員自身のデータを登録した会員情報ファイルと、会員の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルと、ログイン時に顧客が入力したユーザーIDを識別し会員情報ファイルと照合して会員の認証を行なうとともに、認証した会員の商流の顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す会員認証処理手段とを備えていることを特徴とする簡易受発注処理システム。」(請求項11)
「【0011】
顧客が発注内容の確認や追加発注をする場合には、先に顧客自身や顧客の商流上のメンバー(小売店や問屋などの取引先)が発注済みの商品の見積データを参照する必要がある。この場合は、メニューで見積データ照会要求を選択する。受発注処理システム7は、顧客のIDや関連する商流のメンバーの情報をファイル管理しており、そのファイルから顧客と商流メンバーの情報を得て、見積データファイル13から必要な見積データを取り出し、携帯電話4の画面に回答する。顧客は、携帯電話4に表示された見積データを確認し、それに基づいて追加材発注10のメニューから発注することができる。」(第11段落)
「【0013】
本発明による簡易受発注処理方法およびシステムは、以下の構成をとることができる。
(1) ホストと携帯端末がネットワーク上で接続され、ホストは、在庫商品データおよび見積データを受発注情報データベースで管理して、携帯端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する商流の見積データを携帯端末へ送って画面表示し、携帯端末では照会した在庫商品データの画面から発注を行なうことを特徴とする簡易受発注処理方法の構成。
(中略)
(10) ホストと携帯端末がネットワーク上接続されて商品の受発注処理を行なう簡易受発注処理システムであって、ホストは、在庫商品データおよび見積データを管理する受発注情報データベースと、携帯端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する商流の見積データを受発注情報データベースから取り出し、在庫商品データあるいは見積データの照会画面を作成して携帯端末へ送り画面表示する照会処理手段と、携帯端末の在庫商品データの照会画面から出された発注要求に応じて携帯端末へ発注画面を送り、発注画面に見積データの入力設定を行なわせる見積データ作成処理手段とを備えていることを特徴とする簡易受発注処理システムの構成。
(11) 前項10において、ホストは、会員自身のデータを登録した会員情報ファイルと、会員の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルと、ログイン時に顧客が入力したユーザーIDを識別し会員情報ファイルと照合して会員の認証を行なうとともに、認証した会員の商流の顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す会員認証処理手段とを備えていることを特徴とする簡易受発注処理システムの構成。
(以下略)」(第13段落)
「【0015】
図2は、システム構成図であり、41はホスト、38はネットワーク、37-1は顧客の据置型端末,37-nは顧客の携帯端末、31はCPU、32はSDRAMなどの主記憶装置、33はHDDなどのファイル記憶装置、34は表示制御インタフェース、35はディスプレイ装置、36はモデムやLANなどの通信制御インタフェース、39はプリンタ、18は20?24のプログラムを含む受発注処理プログラム、19は26?29のデータファイルを含む受発注情報データベース、20は対話制御プログラム、21は在庫照会プログラム、22は見積データ照会プログラム、23は追加材発注プログラム、24は納品状況照会プログラム、25はインターネット通信処理プログラム、26は在庫商品データファイル、27は見積データファイル、28は発注データファイル、29は出荷実績データファイルである。」(第15段落)
「【0019】
見積データ照会プログラム22は、端末7-1,7-nからの見積データ照会要求に応じて、顧客自身あるいは顧客に関係する商流の得意先が先に発注したときの見積データを見積データファイル27から検索し、回答する。これにより、顧客が発注済みの商品を確認したり、あらたな発注のための見積データを作成するのをオンラインで援助する。」(第19段落)
「【0022】
図3において、追加材発注プログラム23は、顧客の携帯端末からの接続要求があったとき、ログイン画面を表示して、ユーザーIDを入力させ、会員認証処理を行なう。会員認証処理は、顧客が会員かどうかを識別して、会員の場合にのみ許可される見積データ(伝票)の照会や発注を受け付けるかどうかを決定する。そのため、会員のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルを参照し、ログイン時に顧客が入力したユーザーIDと会員情報ファイルと照合して会員の認証を行なうと同時に、認証した会員の商流の顧客の情報を取り出す。」(第22段落)

2-3.特許法第17条の2第3項についての判断
本件補正後の特許請求の範囲及び第13段落に記載された「端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データを上記見積データ及び商流情報ファイルで検索し、取り出して回答する処理を行う見積データ照会応答処理機能」のうち、見積データを「商流情報ファイル」で検索し、取り出して回答することは、当初明細書等に記載された事項の範囲内にあるものであるということはできない。
以下、具体的に説明する。

見積データ照会要求に応答して、見積データを検索して取り出して回答することについて、当初明細書の請求項1では「受発注情報データベース」で管理される見積データを送る旨記載されており、当初明細書の請求項10では、加えて、見積データを「受発注情報データベースから取り出し」て送る旨記載されており、当初明細書第13段落にも同様の記載が存在している。
また、当初明細書第15段落及び第2図には「受発注データベース19」が「見積データファイル27」を含むことが記載されており、当初明細書第11段落では「見積データファイル13から必要な見積データを取り出し」て回答する旨記載されており、当初明細書第19段落では「端末7-1,7-nからの見積データ照会要求に応じて、顧客自身あるいは顧客に関係する商流の得意先が先に発注したときの見積データを見積データファイル27から検索し、回答する。」と記載されている。
以上のことから、当初明細書等には、見積データ照会要求に応じて、受発注情報データベースに含まれる「見積データファイル」で見積データを検索し、取り出して回答する処理が開示されているということができる。

一方、商流情報ファイルについて、当初明細書の請求項11では「認証した会員の商流の顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す」会員認証処理手段が記載されており、当初明細書第13段落にも同様の記載が存在しており、当初明細書第22段落には「顧客の携帯端末からの接続要求があったとき、ログイン画面を表示して、ユーザーIDを入力させ、会員認証処理を行なう。会員認証処理は、顧客が会員かどうかを識別して、会員の場合にのみ許可される見積データ(伝票)の照会や発注を受け付けるかどうかを決定する。そのため、会員のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルを参照し、ログイン時に顧客が入力したユーザーIDと会員情報ファイルと照合して会員の認証を行なうと同時に、認証した会員の商流の顧客の情報を取り出す。」と記載されている。
ここで、当初明細書第11段落の「受発注処理システム7は、顧客のIDや関連する商流のメンバーの情報をファイル管理しており、そのファイルから顧客と商流メンバーの情報を得て、見積データファイル13から必要な見積データを取り出し、」という記載も更に考慮すれば、認証した会員の「商流の顧客の情報」とは、認証した会員に「関連する商流のメンバーの情報」であるということができる。
以上のことから、当初明細書等には、接続要求があったときに行われる、「顧客が会員かどうかを識別して、会員の場合にのみ許可される見積データ(伝票)の照会等を受け付けるかどうかを決定する」ための「会員認証処理」において、会員の認証を行うと同時に、認証した会員の『「商流の顧客の情報」すなわち「関連する商流のメンバーの情報」』を商流情報ファイルから取り出す処理が開示されているということができる。

以上の検討を踏まえ、前述した各開示事項から、見積データを「商流情報ファイル」で検索し、取り出して回答することが実質的に開示されているといえるかどうかを更に検討する。
まず、「見積データファイル」が「商流情報ファイル」であるといえるかどうかについて検討すると、当初明細書等の記載によれば、前記「見積データファイル」は、「ファイル記憶装置」の「受発注情報データベース」中に存在することは把握できるものの、前記「商流情報ファイル」がどこに存在しているのかは全く把握できず、それが、「受発注情報データベース」中にあって、かつ、「見積データファイル」と同一ファイルであるということを十分に示す根拠は存在していない。
次に、「商流情報ファイル」から取り出される情報が「見積データ」であるといえるかどうかについて検討すれば、当初明細書等には、商流情報ファイルから取り出される情報が、該顧客の商流に関するどのような内容のデータなのかは具体的に示されておらず、また、商流情報ファイルから取り出された該情報が、顧客の端末に「回答される」ものなのか否かも示されていない。
一方、当初明細書第22段落の記載によれば、そもそも、「接続要求」に応じて会員の認証が行われ、ユーザーIDを入力した顧客が「会員」であると判断された結果として、「見積データ(伝票)の照会」などの要求が許可されることになるといえるのだから、「見積データ照会要求」は前記「接続要求」の後に行われるものであるといえる。
そして、前記認証が行われる際に、該認証した会員の商流の顧客の情報を取り出す処理は、前記接続要求に応じて会員の認証を行うのと「同時」に行われる処理なのだから、この処理が、前記見積データ照会要求に応じて見積データを取り出す処理に先立って行われている別の処理であることは明らかである。
そうすると、前記商流情報ファイルから取り出される情報は、商流に関するどのような内容なのかは把握できないものの、少なくとも、前記見積データとは異なる情報であることは明らかであるということができる。

以上のことから、当初明細書等において、見積データ照会要求に応じて見積データファイルで見積データを検索し取り出して回答する処理と、接続要求に応じて商流情報ファイルから情報を取り出す処理のそれぞれが開示されているとしても、本件補正後の見積データ照会応答処理機能における、見積データを「商流情報ファイル」で検索し、取り出して回答する処理が実質的に開示されているということはできない。

したがって、前記見積データ照会応答処理機能に係る補正を含む本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内にあるものであるということはできないから、特許法第17条の2第3項に規定された要件に違反するものである。

2-4.本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正の前の特許請求の範囲は、平成15年6月23日付け手続補正書によって補正された、次のとおりのものである。
「【請求項1】 ホストと端末がネットワーク上で接続され、ホストは、在庫商品データおよび見積データをメモリで管理し、プログラム処理により、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する顧客の見積データをメモリから取り出して端末へ送信し、端末では受信した在庫商品データあるいは関連する顧客の見積データを参照して、対話形式により発注処理を行う簡易受発注処理方法であって、
ホストは、さらに、会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルとをメモリで管理し、プログラム処理により、顧客がログイン時に端末から入力したユーザーIDを会員情報ファイルと照合して会員の認証を行うとともに、認証した会員顧客の商流にかかわる顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す会員認証処理を行うことを特徴とする簡易受発注処理方法。
【請求項2】 請求項1において、ホストは、さらにプログラム処理により、端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データをメモリの見積データ及び商流情報ファイルで検索し、端末へ回答する処理を行うことを特徴とする簡易受発注処理方法。
【請求項3】 請求項1において、さらにホストは、プログラム処理により、端末からの納期問い合わせ要求に応じて、通常便による納期算出処理または緊急便での到着日時算出処理を行い、算出結果の納期を端末へ回答する処理を行うことを特徴とする簡易受発注処理方法。
【請求項4】 請求項3において、端末からの納期問い合わせ要求が希望納期を指定しているとき、プログラム処理により、まず通常便による納期算出処理により納期を算出して回答し、希望通りの納期が得られなかったときには緊急便での到着日時算出処理に切り替えて、緊急便による納期算出を行なって回答し、希望通りの到着日時が得られる複数の候補があるときは、複数の候補を回答して選択可能にすることを特徴とする簡易受発注処理方法。
【請求項5】 端末とネットワーク上で接続され、在庫商品データおよび見積データをメモリで管理して、プログラム処理により、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する顧客の見積データをメモリから取り出して端末へ送信し、対話形式により発注処理を行わせるプログラム処理手段を備えた簡易受発注処理装置であって、
メモリに記憶された会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルと、
顧客がログイン時に端末から入力したユーザーIDを会員情報ファイルと照合して会員の認証を行い、同時に、認証した会員顧客の商流にかかわる顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す処理を行うプログラム機能による会員認証処理手段と
を備えていることを特徴とする簡易受発注処理装置。
【請求項6】 請求項5において、端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データをメモリの見積データ及び商流情報ファイルで検索し、取り出して回答する処理を行うプログラム機能による見積データ照会応答処理手段を備えていることを特徴とする簡易受発注処理装置。
【請求項7】 請求項5または請求項6において、作成された見積データが発注データとして確定した際、その納品項目および納品予定を、顧客別、施工方法別、施工現場別に管理して、それぞれの別により参照可能にするプログラム機能による発注データ管理手段を備えていることを特徴とする簡易受発注処理装置。
【請求項8】 請求項5または請求項6において、端末からの納期問い合わせ要求に応じて、通常便による納期算出処理または緊急便での到着日時算出処理を行い、算出結果の納期を端末へ回答するプログラム機能による納期算出処理手段を備えていることを特徴とする簡易受発注処理装置。
【請求項9】 請求項8において、納期算出処理手段は、端末からの納期問い合わせ要求が希望納期を指定しているとき、まず通常便納期算出処理により通常便を利用しての納期を算出して回答し、希望通りの納期が得られなかったときには緊急便到着日時算出処理に切り替えて、緊急便による納期算出を行なって回答し、希望通りの到着日時が得られる複数の候補があるときは、複数の候補を回答して、選択可能にするものであることを特徴とする簡易受発注処理装置。」

2-5.特許法第17条の2第4項についての判断
審判請求人は、審判請求の理由において、本件補正後の各請求項が本件補正前のどの請求項に対応しているのかを説明していないが、補正後の請求項1の「簡易受発注処理装置」は補正前の請求項5-9のうちのいずれかの「簡易受発注処理装置」に対応することは明らかである。
そして、それぞれの請求項の内容について検討すると、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項7に対応しているといえるから、本件補正では、補正前の請求項1-6,8,9を削除するとともに、補正前の請求項5を引用する請求項6を更に引用する請求項7を独立請求項形式の記載に改めた上で補正して補正後の請求項1としたということができる。
したがって、本件補正前の請求項1-6,8,9を削除する補正事項は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
そこで次に、本件補正後の請求項1に係る補正について、特許法第17条の2第4項第2号ないし第4号にそれぞれ掲げる事項を目的とするものに該当するかどうかを検討する。
すると、本件補正後の請求項1に係る補正は、以下の補正事項(i)ないし(iv)からなるものである。
(i)補正前の「端末とネットワーク上で接続され、在庫商品データおよび見積データをメモリで管理して、プログラム処理により、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する顧客の見積データをメモリから取り出して端末へ送信し、対話形式により発注処理を行わせるプログラム処理手段を備えた簡易受発注処理装置であって、」を、「端末とネットワーク上で接続され、在庫商品データおよび見積データをファイル記憶装置で管理して、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは見積データをファイル記憶装置から取り出して端末へ送信し、対話形式により発注処理を行わせるプログラム処理機能により実現される受発注処理手段を備えた簡易受発注処理装置であって、上記受発注処理手段は、」とする補正、
(ii)補正前の「メモリに記憶された会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルと、
顧客がログイン時に端末から入力したユーザーIDを会員情報ファイルと照合して会員の認証を行い、同時に、認証した会員顧客の商流にかかわる顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す処理を行うプログラム機能による会員認証処理手段と」を、「会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルとを用いて、顧客がログイン時に端末から入力したユーザーIDを会員情報ファイルと照合して会員の認証を行い、同時に、認証した会員顧客の商流にかかわる顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す会員認証処理機能と、」とする補正、
(iii)補正前の「端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データをメモリの見積データ及び商流情報ファイルで検索し、取り出して回答する処理を行うプログラム機能による見積データ照会応答処理手段」を、「端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データを上記見積データ及び商流情報ファイルで検索し、取り出して回答する処理を行う見積データ照会応答処理機能」とする補正、及び、
(iv)補正前の「作成された見積データが発注データとして確定した際、その納品項目および納品予定を、顧客別、施工方法別、施工現場別に管理して、それぞれの別により参照可能にするプログラム機能による発注データ管理手段」を、「作成された見積データが発注データとして確定した際、その納品項目および納品予定を、顧客別、施工方法別、施工現場別に管理して、それぞれの別により参照可能にする発注データ管理機能」とする補正。

まず、前記補正事項(i)について検討すれば、その補正前後において、「端末とネットワーク上で接続され」る「簡易受発注処理装置」が、「在庫商品データおよび見積データ」を「管理して」おり、前記簡易受発注処理装置が「備えた」「プログラム処理」を行う「処理手段」により「端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは」「見積データを」「取り出して端末へ送信し、対話形式により発注処理を行わせる」ものである点で共通しているから、前記補正事項(i)は、
(i-1)補正前の「(データを)メモリで管理」を「(データを)ファイル記憶装置で管理」とする補正、
(i-2)補正前の「関連する顧客の見積データ」を「見積データ」とする補正、
(i-3)補正前の「(データを)メモリから取り出して」を「(データを)ファイル装置から取り出して」とする補正、及び、
(i-4)補正前の「プログラム処理により」、「処理を行わせるプログラム処理手段」を「プログラム処理機能により実現される受発注処理手段」とする補正、
からなるということができる。

また、前記補正事項(ii)について検討すれば、その補正前後において、「会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイル」、「会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイル」、「顧客がログイン時に端末から入力したユーザーIDを会員情報ファイルと照合して会員の認証を行い、同時に、認証した会員顧客の商流にかかわる顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す」及び「会員認証処理」という部分で共通しているから、前記補正事項(ii)は、
(ii-1)補正前の「処理を行うプログラム機能による会員認証処理手段」を「会員認証処理機能」とする補正、及び、
(ii-2)補正前の「メモリに記憶された」会員情報ファイルと、商流情報ファイルと、会員認証処理手段の三者を「簡易受発注処理装置」が「備えた」ものを、会員情報ファイルと商流情報ファイルと「を用いて」処理を行う前記会員認証処理機能を前記「受発注処理手段」が「備えた」ものとする補正、
からなるということができる。

また、前記補正事項(iii)について検討すれば、その補正前後において、「端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データを」、「見積データ及び商流情報ファイルで検索し、取り出して回答する処理を行う」及び「見積データ照会応答処理」という部分で共通しているから、前記補正事項(iii)は、
(iii-1)補正前の「メモリの見積データ」を「上記見積データ」とする補正、
(iii-2)補正前の「プログラム機能による見積データ照会応答処理手段」を「見積データ照会応答処理機能」とする補正、及び、
(iii-3)補正前の、前記見積データ照会応答処理手段を「簡易受発注処理装置」が「備えた」ものを、前記見積データ照会応答処理機能を前記「受発注処理手段」が「備えた」ものとする補正、
からなるということができる。

また、前記補正事項(iv)について検討すれば、その補正前後において、「作成された見積データが発注データとして確定した際、その納品項目および納品予定を、顧客別、施工方法別、施工現場別に管理して、それぞれの別により参照可能にする」及び「発注データ管理」という部分で共通しているから、前記補正事項(iv)は、
(iv-1)補正前の「プログラム機能による発注データ管理手段」を「発注データ管理機能」とする補正、及び、
(iii-2)補正前の、前記発注データ管理手段を「簡易受発注処理装置」が「備えた」ものを、前記発注データ管理機能を前記「受発注処理手段」が「備えた」ものとする補正、
からなるということができる。

ここで、通常、補正後発明の発明特定事項が補正前発明の発明特定事項を限定しているかどうかの判断とは、具体的にいえば、補正前発明と補正後発明のそれぞれの発明特定事項が、審理の対象として、どのような技術的範囲を表しているのかを把握した上で、両者を対比して、補正前の請求項における発明特定事項の一つ以上を、概念的により下位の発明特定事項としているかどうかを判断することにより行われるものである。
そして、補正後発明の発明特定事項と補正前発明の発明特定事項に係る判断における、両発明特定事項の意味内容、すなわち、請求項に記載された用語の意味内容の解釈について具体的にいえば、請求項の記載が明確である場合は、請求項の用語の意味は、その用語が有する通常の意味と解釈されるものであるが、請求項の記載が明確であっても、発明特定事項の意味内容が明細書及び図面において定義又は説明されている場合は、その用語を解釈するにあたってその定義又は説明が考慮されるものである。
一方、請求項の記載が明確でなく理解が困難であるが、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮して請求項中の用語を解釈すれば請求項の記載が明確にされる場合はその用語を解釈するにあたってこれらが考慮されるものである。

以上のことを踏まえた上で、まず、補正事項(i-1)について、すなわち、補正後発明の「ファイル記憶装置」という発明特定事項が、補正前発明の「メモリ」という発明特定事項を限定しているといえるかどうかについて以下に詳細に検討する。
そこで、補正後発明の「ファイル記憶装置」という発明特定事項の意味内容について検討すると、本件補正後の明細書第15段落には「図2は、システム構成図であり、(中略)、33はHDDなどのファイル記憶装置、(中略)である。」と記載されており、ここで、「ファイル記憶装置」は「HDDなどのファイル記憶装置32」として説明されている。
一方、オンライン辞典を提供している「IT用語辞典e-Words」<URL:http://e-words.jp>というウェブサイトを当審において平成19年10月12日にアクセスしたところ、「ファイル」という用語について、2000年7月23日付けで更新されたとする内容として、「ハードディスクやフロッピーディスク、CD-ROMなどの記憶装置に記録されたデータのまとまり。(以下略)」<URL:http://e-words.jp/w/E38395E382A1E382A4E383AB.html>と掲載されており、また、「記憶装置」という用語について、2000年7月16日付けで更新されたとする内容として、「コンピュータ内でデータやプログラムを記憶する装置。ハードディスクやフロッピーディスクなどの外部記憶装置(補助記憶装置)と、半導体メモリを利用した主記憶装置(メインメモリ)に大別される。(以下略)」<URL:http://e-words.jp/w/E8A898E686B6E8A385E7BDAE.html>と掲載されている。
そして、該各更新日から本件出願の出願日である2001年3月19日までの間において、「ファイル」及び「記憶装置」という各用語の意味が変更されたことを示す重大な事実があるとは認められない。
そうすると、補正後発明の「ファイル記憶装置」という発明特定事項は、「HDDなどの外部記憶装置(補助記憶装置)」を意味していると解されるものである。

次に、補正前発明の「メモリ」という発明特定事項の意味内容について検討すると、本件補正前の明細書第15段落には「図2は、システム構成図であり、(中略)、32はSDRAMなどのメモリからなる主記憶装置、(中略)である。」と記載されており、ここで、「メモリ」は「SDRAMなどの主記憶装置32」として説明されている。
一方、前記「IT用語辞典e-Words」には、「メモリ」という用語について、2000年7月2日付けで更新されたとする内容として、『コンピュータ内でデータやプログラムを記憶する装置。広義にはハードディスクやフロッピーディスクなどの外部記憶装置(補助記憶装置)も含むが、単に「メモリ」と言った場合は、CPU(中央処理装置)が直接読み書きできるRAMやROMなどの半導体記憶装置のことを意味する場合がほとんどである。特に、RAMを利用したCPUの作業領域は主記憶装置(メインメモリ)と呼ばれ、コンピュータの性能を大きく左右する重要な装置である。』<URL:http://e-words.jp/w/E383A1E383A2E383AA.html>と掲載されている。
そして、該更新日から本件出願の出願日である2001年3月19日までの間において、「メモリ」という用語の意味が変更されたことを示す重大な事実があるとは認められない。
そうすると、補正前発明の「メモリ」という発明特定事項は、「SDRAMなどの主記憶装置」を意味していると解されるものである。

以上のとおり、補正後発明の「ファイル記憶装置」という発明特定事項は、「HDDなどの外部記憶装置(補助記憶装置)」を意味していると解される一方、補正前発明の「メモリ」という発明特定事項は、「SDRAMなどの主記憶装置」を意味していると解されるので、両発明特定事項を対比すると、補正後の「HDDなどの外部記憶装置(補助記憶装置)」が補正前の「SDRAMなどの主記憶装置」の下位概念であるといえないことは明らかであって、また、両者が概念的に同等であるともいえないことも明らかである。
したがって、補正後発明の「ファイル記憶装置」という発明特定事項の概念は、補正前発明の「メモリ」という発明特定事項の概念を変更したものであるといえる。
そうすると、前記補正事項(i-1)を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当するとはいえない。
また、前記補正事項(i-1)に係る補正が、審理の対象を変更していることは明らかであるから、特許法第17条の2第4項第3号に掲げる誤記の訂正に該当しないことも明らかである。
また、本願において、特許請求の範囲の記載が不明りょうであるとする拒絶の理由は通知されていないのだから、前記補正事項(i-1)に係る補正が、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当しないことも明らかである。

したがって、前記補正事項(i-1)を含む本件補正は、その余の補正事項を検討するまでもなく、特許法第17条の2第4項に規定された要件に違反するものである。

2-6.補正却下の決定についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定された要件及び同条第4項に規定された要件に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
平成16年1月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1-9に記載された発明は、平成15年6月23日付けの手続補正(以下、この手続補正を「本件補正」という。)により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される、前記「2-4.」にて述べたとおりのものである。

また、本件補正により明細書の発明の詳細な説明の記載は、以下のように補正された。
「【0013】
本発明による簡易受発注処理方法およびシステムは、以下の構成をとることができる。
〔1〕 ホストと端末がネットワーク上で接続され、ホストは、在庫商品データおよび見積データをメモリで管理し、プログラム処理により、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する顧客の見積データをメモリから取り出して端末へ送信し、端末では受信した在庫商品データあるいは関連する顧客の見積データを参照して、対話形式により発注処理を行う簡易受発注処理方法であって、
ホストは、さらに、会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルとをメモリで管理し、プログラム処理により、顧客がログイン時に端末から入力したユーザーIDを会員情報ファイルと照合して会員の認証を行うとともに、認証した会員顧客の商流にかかわる顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す会員認証処理を行うことを特徴とする簡易受発注処理方法の構成。
〔2〕 前項〔1〕において、ホストは、さらにプログラム処理により、端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データをメモリの見積データ及び商流情報ファイルで検索し、端末へ回答する処理を行うことを特徴とする簡易受発注処理方法の構成。
(中略)
〔5〕 端末とネットワーク上で接続され、在庫商品データおよび見積データをメモリで管理して、プログラム処理により、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する顧客の見積データをメモリから取り出して端末へ送信し、対話形式により発注処理を行わせるプログラム処理手段を備えた簡易受発注処理装置であって、
メモリに記憶された会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルと、
顧客がログイン時に端末から入力したユーザーIDを会員情報ファイルと照合して会員の認証を行い、同時に、認証した会員顧客の商流にかかわる顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す処理を行うプログラム機能による会員認証処理手段と
を備えていることを特徴とする簡易受発注処理装置の構成。
〔6〕 前項〔5〕において、端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データをメモリの見積データ及び商流情報ファイルで検索し、取り出して回答する処理を行うプログラム機能による見積データ照会応答処理手段を備えていることを特徴とする簡易受発注処理装置の構成。
(以下略)」(第13段落)
「【0015】
図2は、システム構成図であり、41はホスト、38はネットワーク、37-1は顧客の据置型端末,37-nは顧客の携帯端末、31はCPU、32はSDRAMなどのメモリからなる主記憶装置、33はHDDなどのファイル記憶装置、34は表示制御インタフェース、35はディスプレイ装置、36はモデムやLANなどの通信制御インタフェース、39はプリンタ、18は20?24のプログラムを含む受発注処理プログラム、19は26?29のデータファイルを含む受発注情報データベース、20は対話制御プログラム、21は在庫照会プログラム、22は見積データ照会プログラム、23は追加材発注プログラム、24は納品状況照会プログラム、25はインターネット通信処理プログラム、26は在庫商品データファイル、27は見積データファイル、28は発注データファイル、29は出荷実績データファイルである。」(第15段落)
「【0022】
図3において、追加材発注プログラム23は、顧客の携帯端末からの接続要求があったとき、ログイン画面を表示して、ユーザーIDを入力させ、会員認証処理を行なう。会員認証処理は、顧客が会員かどうかを識別して、会員の場合にのみ許可される見積データ(伝票)の照会や発注を受け付けるかどうかを決定する。そのため、会員のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルを参照し、ログイン時に顧客が入力したユーザーIDと会員情報ファイルと照合して会員の認証を行なうと同時に、認証した会員の商流の顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す。」(第22段落)

4.原査定の拒絶の理由
原審の平成15年7月24日付けの拒絶理由通知の記載からみて、原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
『平成15年6月23日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

上記手続補正により補正された請求項1に記載の「ホストは、在庫商品データおよび見積データをメモリで管理し、プログラム処理により、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する顧客の見積データをメモリから取り出して端末へ送信し、」なる事項、及び、「ホストは、さらに、会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイルとをメモリで管理し、」なる事項、同請求項2に記載の「ホストは、さらにプログラム処理により、端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データをメモリの見積データ及び商流情報ファイルで検索し、端末へ回答する処理を行う」なる事項、ならびに、同請求項5に記載の「在庫商品データおよび見積データをメモリで管理して、プログラム処理により、端末からの照会要求に応じて在庫商品データあるいは関連する顧客の見積データをメモリから取り出して端末へ送信し、」なる事項、及び、「メモリに記憶された会員顧客のユーザーIDデータを登録した会員情報ファイルと、会員顧客の商流にかかわる顧客のデータを登録した商流情報ファイル」なる事項、同請求項6に記載の「端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客自身が先に発注した見積データ、あるいはその顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データをメモリの見積データ及び商流情報ファイルで検索し、取り出して回答する処理を行うプログラム機能による見積データ照会応答処理手段」なる事項は、本願の出願当初明細書又は図面の記載そのものではなく、かつ、本願の出願当初明細書又は図面の記載から直接的かつ一義的に導き出せる事項であるとは認められない(補正前の「受発注情報データベース」は、出願当初明細書の記載によれば「ファイル記憶装置」に設けられており、各種データは「メモリ(主記憶装置)」にて管理されるものではない。また、単なる「関連する顧客」の見積データを送信することや、「端末からの顧客の見積データ照会要求に応答して、その顧客の商流にかかわる顧客が先に発注した見積データをメモリの見積データ及び商流情報ファイルで検索し、端末へ回答する処理を行う」ことは、出願当初明細書に記載されていない。)。
また、請求項1または5を引用する他の請求項に係る発明、及び、発明の詳細な説明における対応する補正事項についても、上記した請求項1、2、5、6に係る発明と同様に、本願の出願当初明細書又は図面の記載そのものではなく、かつ、本願の出願当初明細書又は図面の記載から直接的かつ一義的に導き出せる事項であるとは認められない。』

5.当初明細書に記載された事項
本件出願の当初明細書中には、前記「2-2.」で述べたとおりの事項が記載されている。

6.当審の判断
本願の当初明細書の特許請求の範囲の請求項1,10や第13段落には、「在庫商品データおよび見積データを受発注情報データベースで管理し」及び「在庫商品データおよび見積データを管理する受発注情報データベース」と記載されている一方、本件補正後の請求項1,5や第13段落では「在庫商品データおよび見積データをメモリで管理し」と記載されている。
よって、本件補正は、「在庫商品データおよび見積データ」を「管理」するものとして、当初明細書等に記載された「受発注情報データベース」を「メモリ」と記載するようにした補正を含むものであるといえる。
けれども、当初明細書等には「メモリ」という明示的な記載は存在していないから、本件補正後の「メモリ」が、当初明細書等に明示的に記載された事項であるということはできない。
そこで、本件補正後の「メモリ」が、当初明細書等の記載から自明な事項といえるかどうかを判断するため、当初明細書等に記載がなくても、これに接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、その意味であることが明らかであって、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項であるといえるかどうか、つまり、現実には記載がなくとも、現実に記載されたものに接した当業者であれば、だれもが、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解するような事項であるといえるかどうか、を以下に検討する。

すると、前記「IT用語辞典e-Words」には、「データベース」という用語について、2000年2月11日付けで更新されたとする内容として、「複数のアプリケーションソフトまたはユーザによって共有されるデータの集合のこと。また、その管理システムを含める場合もある。(以下略)」<URL:http://e-words.jp/w/E38387E383BCE382BFE38399E383BCE382B9.html>と掲載されている。
そして、該更新日から本件出願の出願日である2001年3月19日までの間において、「データベース」という用語の意味が変更されたことを示す重大な事実があるとは認められない。
以上のことから、当初明細書等に記載された「受発注情報データベース」という用語の意味は、「受発注に係る情報を示す共有データ集合」であると解釈できるものであるが、該「データベース」という用語そのものは、データ自体の意味を特定しているにすぎず、該データが記憶される記憶デバイスまでも特定しているわけではない。
一方、本件補正後の「メモリ」という用語は、前記「2-5.」において既に検討したように、「SDRAMなどの主記憶装置」を意味していると解されるものである。
そうすると、本件補正は、当初明細書等に記載の「受発注情報データベース」を「メモリ」に補正することによって、当初明細書等では特定されていなかった、「在庫商品データおよび見積データ」を「管理」するための記憶デバイスを、「SDRAMなどの主記憶装置」という概念に個別化しようとするものであるということができる。

確かに、前記受発注情報データベースについて、当初明細書第15段落及び第2図には、「ホスト41」内の「HDDなどのファイル記憶装置33」に「受発注情報データベース19」が格納されていることが記載されているところ、当初明細書等の記載によれば、「在庫商品データおよび見積データ」を「管理」する「受発注情報データベース」は、「HDDなどのファイル記憶装置」という記憶デバイスに格納されたものであることを把握することができる。
しかしながら、出願時の技術常識に照らせば、前記「HDDなどのファイル記憶装置」という記憶デバイスが前記「SDRAMなどの主記憶装置」ではないことは明らかであるから、『現実に記載された「HDDなどのファイル記憶装置」という記載に接した当業者であれば、だれもが、「SDRAMなどの主記憶装置」がそこに記載されているのと同然であると理解する』とは到底いえるものではない。
また、当初明細書等の全体をみても、「受発注情報データベース」が「SDRAMなどの主記憶装置」に格納されていることは記載も示唆もされておらず、例えば、前記ホスト41内においてファイル記憶装置33とは別に存在する「SDRAMなどの主記憶装置32」という記憶デバイスにおいて「在庫商品データおよび見積データ」を「管理」するなどということは記載も示唆もされていないから、「在庫商品データおよび見積データ」を「管理」する記憶デバイスを、本件補正により「SDRAMなどの主記憶装置」という、記憶デバイスとして下位の概念に補正することにより、当初明細書等に記載した事項以外のものが個別化されているということができる。

したがって、本件補正後の「メモリ」が、当初明細書等に明示的に記載された事項ではなく、また、当初明細書等の記載から自明な事項であるということもできないのだから、「メモリ」という記載に係る本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でする補正とはいえない。

一方、当初明細書第22段落の「認証した会員の商流の顧客の情報を取り出す。」を、本件補正により「認証した会員の商流の顧客の情報を商流情報ファイルから取り出す。」と補正したことについては、当初明細書の請求項11及び第13段落の(11)の記載からみて、当初明細書等に記載した事項の範囲内でする補正であるということができる。
しかしながら、前記「2-3.」において検討したとおり、該「商流情報ファイル」が「見積データファイル」と同一ファイルであるということはできず、また、該「商流情報ファイル」から取り出される情報が「見積データ」であるということもできないから、本件補正により請求項2に記載された、見積データを「商流情報ファイル」で検索し、端末へ回答する処理、及び、本件補正により請求項6に記載された、見積データを「商流情報ファイル」で検索し、取り出して回答する処理、並びに、前記各処理についての本件補正後の第13段落の〔2〕及び〔6〕の記載は、前記「2-3.」の判断における理由と同様の理由により、当初明細書等に記載した事項の範囲内でする補正であるということができない。

7.むすび
以上のとおり、平成15年6月23日付けでした手続補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないため、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-31 
結審通知日 2007-11-06 
審決日 2007-11-19 
出願番号 特願2001-79026(P2001-79026)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (G06Q)
P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 561- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 功一  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 森次 顕
坂庭 剛史
発明の名称 簡易受発注処理方法および処理装置  
代理人 渡部 章彦  
代理人 長谷川 文廣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ