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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1170482
審判番号 不服2005-22392  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-21 
確定日 2008-01-09 
事件の表示 平成 7年特許願第167355号「偏向ヨークの補助コイル取付具」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月20日出願公開、特開平 8- 50868〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成7年7月3日(パリ条約による優先権主張1994年7月1日、フランス(FR))の出願であって、平成17年8月9日付けで拒絶査定(発送日:平成17年8月23日)がなされ、これに対し、同年11月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月21日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成17年12月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正の内容は、特許請求の範囲の記載を、補正前の
「【請求項1】主偏向コイルと、開口を有する支持体に取り付けられ、前記主偏向コイルの主偏向磁界を変化させるために陰極線管のネックの周りに配置された補助偏向コイルと、前記主及び補助偏向コイルをその上に取り付けるための分離器とを有し、前記分離器は円筒形状部を含み、前記補助偏向コイルを前記分離器の壁に対して配置するために前記開口と協働するスタッドが前記円筒形状部に設けられたことを特徴とする陰極線管用偏向ヨーク。」
から、補正後の
「【請求項1】主偏向コイルと、開口を有する柔軟な支持体に取り付けられ、前記主偏向コイルの主偏向磁界を変化させるために陰極線管のネックの周りに配置された補助偏向コイルと、前記主及び補助偏向コイルをその上に取り付けるための分離器とを有し、前記分離器は円筒形状部を含み、前記補助偏向コイルを有する前記柔軟な支持体は前記分離器の該円筒形状部に直接装着され、前記補助偏向コイルを前記分離器の壁に対して精確に位置決めするために前記開口と協働するスタッドが前記円筒形状部に設けられたことを特徴とする陰極線管用偏向ヨーク。」(アンダーラインは補正箇所を示すために付したものである。)
に補正する補正事項を含んでいる。
上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「支持体」に関して、「柔軟な」との限定事項及び「補助偏向コイルを有する前記柔軟な支持体は前記分離器の該円筒形状部に直接装着され」との限定事項を付加し、さらに、「配置する」を、より具体的に限定して「精確に位置決めする」としたものであるから、当該補正事項は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする事項に該当する。
そこで、上記補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「補正後発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)補正後発明
「【請求項1】主偏向コイルと、開口を有する柔軟な支持体に取り付けられ、前記主偏向コイルの主偏向磁界を変化させるために陰極線管のネックの周りに配置された補助偏向コイルと、前記主及び補助偏向コイルをその上に取り付けるための分離器とを有し、前記分離器は円筒形状部を含み、前記補助偏向コイルを有する前記柔軟な支持体は前記分離器の該円筒形状部に直接装着され、前記補助偏向コイルを前記分離器の壁に対して精確に位置決めするために前記開口と協働するスタッドが前記円筒形状部に設けられたことを特徴とする陰極線管用偏向ヨーク。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である実開平2-19654号(実開平3-101845号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。
ア 「2.実用新案登録請求の範囲 (1)クラ型の水平偏向コイルと、トロイダル型の垂直偏向コイルと、前記両コイルを保持するコイルセパレータとを備える偏向ヨークにおいて、前記コイルセパレータの後方拡大部より前方で且つ前記コイルセパレータの内面に水平走査速度変調に用いる空芯サドル型の補助偏向コイルを装着してなる偏向ヨーク。」(明細書1頁4?11行)
イ 「本考案は電子ビームの速度変調を行う補助偏向コイルを備える偏向ヨークに関する。」(明細書2頁5?6行)
ウ 「テレビジョン受像機において、速度変調による輪郭補正を行い画質を改善する場合、特公昭60-744号公報(H01J29/76)に示される様な可撓性フィルムにプリントされたコイル・・・を補助偏向コイルとして用いていた。この補助偏向コイル(1)は従来、第13図に示す如くコイルセパレータ(2)のネック部ホルダ(2a)に装着されていた。尚、同図において、(3)はクラ型の水平偏向コイル、(4)はコア(5)に巻回されたトロイダル型の垂直偏向コイルである。」(明細書2頁8?19行)
エ 「以下、図面に従い本考案の一実施例を説明する。第1図は本実施例における偏向ヨークの側断面図であり、一対のコイルセパレータ半体(20)(20)よりなるコイルセパレータの後方拡大部(20b)より前方の内面に円筒状のコイルボビン(6)が装着され、更にこのコイルボビン(6)の内面には速度変調用の補助偏向コイル(1)が装着されている。前記補助偏向コイル(1)は第2図に示す如く可撓性フィルムにプリントされたクラ型のプリントコイルであり、その一端よりリード(1a)が延出している。そして、この補助偏向コイル(1)は第3図に示すコイルボビン(6)の内面に接着剤あるいは薄膜テープ(7)により第4図の如く装着される。前記コイルボビン(6)にはその側面に一対の突起(6a)(6a)が形成される」(明細書3頁18行?4頁12行)
オ 「そして、前記コイルボビン(6)は予め水平偏向コイル(3)が装着された一方の前記コイルセパレータ半体(20)に前記突起(6a)(6a)が前記切欠き(20c)(20c)に嵌合するようにして装着される。次にもう一方のコイルセパレータ半体(20)を合体することにより前記コイルボビン(6)はコイルセパレータに固定される。」(明細書4頁18行?5頁4行)
カ 「尚、上述の補助偏向コイルは可撓性フィルムがベースであったが、コイルに硬質基材を用い、このコイルに透孔を設けるとともに、コイルセパレータに突起を設け両者を嵌合することにより、補助偏向コイルを固定することも可能である。」(明細書5頁7?11行)
キ 「4.図面の簡単な説明 第1図は本考案の第1の実施例における偏向ヨークの側断面図、第2図は補助偏向コイルの斜視図、第3図はコイルボビンの斜視図、第4図は補助コイル装着後のコイルボビンの斜視図、・・・。(1)(21)(24)…補助偏向コイル、(3)…水平偏向コイル、(4)…垂直偏向コイル、(6)(22)…コイルボビン、(6a)…突起、(20)(20)…コイルセパレータ半体、(20b)…後方拡大部、(20c)…切欠き。」(明細書8頁10行?9頁9行)
ク 図面の第3図(斜視図)には、コイルボビン6は円筒形状に描かれており、第2図(斜視図)には、補助偏向コイル(1)は円筒形状に曲げた状態で描かれており、また、第1図(側断面図)には、コイルボビン6及びコイルボビンが装着される部分のコイルセパレータ半体20の断面は、円筒形状の断面として描かれている。

そうすると、上記カから、補助偏向コイル(1)のベースとして可撓性フィルムに代えて硬質基材を用いた場合が読み取れ、この場合、硬質基材のベースに透孔を設け、コイルセパレータに突起を設け、これらの透孔と突起の両者を嵌合することによりコイルセパレータに補助偏向コイル(1)を直接固定装着するものが読み取れる。
したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
【引用発明】
「水平偏向コイル(3)と、透孔を有する硬質基材のベースに取り付けられ、前記水平偏向コイル(3)の水平偏向磁界を変化させるためにテレビジョン受像管のネックの周りに配置された補助偏向コイル(1)と、前記水平偏向コイル(3)及び補助偏向コイル(1)をその上に取り付けるためのコイルセパレータとを有し、前記コイルセパレータは円筒形状部を含み、前記補助偏向コイル(1)を有する硬質基材のベースは前記コイルセパレータの該円筒形状部に直接固定装着され、前記補助偏向コイル(1)を前記コイルセパレータの壁に固定するために前記透孔と協働する突起が前記円筒形状部に設けられたテレビジョン受像管用偏向ヨーク。」

(3)対比
補正後発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「水平偏向コイル(3)」、「透孔」、「ベース」、「テレビジョン受像管」、「補助偏向コイル(1)」、「コイルセパレータ」、「円筒形状部」、「突起」、「テレビジョン受像管用偏向ヨーク」は、それぞれ、補正後発明の「主偏向コイル」、「開口」、「支持体」、「陰極線管」、「補助偏向コイル」、「分離器」、「円筒形状部」、「スタッド」、「陰極線管用偏向ヨーク」に相当する。
引用発明においては、「壁に固定するために前記透孔と協働する突起が」設けられており、突起と透孔とが協働することにより精確に位置決めされることとなるから、引用発明の「壁に固定するために前記透孔と協働する突起が」設けられることは、補正後発明の「壁に対して精確に位置決めするために前記開口と協働するスタッドが」設けられることと異ならない。
したがって、両者は、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
「主偏向コイルと、開口を有する支持体に取り付けられ、前記主偏向コイルの主偏向磁界を変化させるために陰極線管のネックの周りに配置された補助偏向コイルと、前記主及び補助偏向コイルをその上に取り付けるための分離器とを有し、前記分離器は円筒形状部を含み、前記補助偏向コイルを有する前記支持体は前記分離器の該円筒形状部に直接装着され、前記補助偏向コイルを前記分離器の壁に対して精確に位置決めするために前記開口と協働するスタッドが前記円筒形状部に設けられた陰極線管用偏向ヨーク。」
【相違点】
支持体に関して、補正後発明では、「柔軟な」支持体であるのに対して、引用発明では、「硬質基材の」ベースである点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
例えば、特公昭60-744号公報(「第8図および第9図に別の実施例を示す。この実施例では、補助偏向コイル15として可撓性フイルムにプリント印刷されたコイルを用いている。このフイルムプリントを、二重構造にしてその間にスリツトを設けたネツク部ホルダ13のスリツト部に挿入し、・・・ネツク部に固定している。」(4欄9?16行)参照)、特開平5-300680号公報(コイル固定型直流モータ及びその製造方法に関し、「【0010】(実施例2)図3は、本発明の直流モータの製造方法の実施例2の工程図である。・・・【0011】図3から図9において、・・・3個のコイル1を、フレキシブル基板6に固定し、コイル1の端末1cをパターンに接続する(工程103)。【0012】フレキシブル基板6の3個のコイル1を固定した部分を、それぞれのコイル1が円周に沿って配置されるように丸める(工程104)。フレキシブル基板の丸めた部分を、ケース2の内側に固定する(工程105)。」参照)に記載されているごとく、コイルを取り付けた支持体を円筒形状部に装着する際に、支持体として柔軟な支持体を用いて、これを円筒形状部に直接装着することは周知である。したがって、引用発明の硬質基材のベースに代えて上記周知の柔軟な支持体を採用して補正後発明のごとく構成することは当業者が容易になし得たものである。
そして、補正後発明の奏する作用効果についても、引用例に記された事項及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものにすぎない。

なお、請求人は、請求の理由において、「引用文献1(当審注:「引用例」に同じ)では、審査官殿も指摘しているように、柔軟な支持体上にコイルを取り付けることが開示されています。そうであれば、引用文献1においてなぜコイルをボビンに取り付ける構成としているかを考える必要があります。これは、引用文献1の発明では、可撓性のフィルムに開口を設け、それに対応して分離器に突起を設けるという発想がなかったためであります。可撓性のフィルムによるコイルまで考えているのに、本願発明のように柔軟な支持体に開口を設けてボビンを用いないで位置決めする構成を提案も示唆もしていないのは、本願発明を容易に想到することができなかったということを裏付けるものであると思料いたします。」と主張している。
しかしながら、柔軟な支持体は、いわゆるフレキシブル基板として広く用いられており、その装着の際にスタッドと協働して位置決めできるように、フレキシブル基板の方に開口を設けることも、例えば、特開昭60-39743号公報(「コイルボビン(4)に位置決め用ピン(4D)が突設され、両フレキシブルプリント複合板HPo、VPoに位置決め用孔(3A)(3B)が穿設されていることから、正確に位置決めがなされ」(3頁左下欄2?6行)参照)、実願平2-49446号(実願平4-8518号)のマイクロフィルム(「フレキシブル基板を円筒状の中芯の外面に巻き付けて構成されたヘリカルアンテナにおいて、中芯の外面に設けた突起にフレキシブル基板に形成した位置決め穴を挿入し、当該突起の先端部をかしめてフレキシブル基板を中芯に位置決め固定する」(明細書1頁5?11行)参照)に記載されているごとく慣用手段にすぎない。したがって、上記説示のとおり、透孔を有する引用発明の硬質基材のベースに代えて、上記周知の柔軟な支持体を適用することに阻害要因はないというべきであり、請求人の上記主張は採用することができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、補正後発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4 本願発明について
平成17年12月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年5月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】主偏向コイルと、開口を有する支持体に取り付けられ、前記主偏向コイルの主偏向磁界を変化させるために陰極線管のネックの周りに配置された補助偏向コイルと、前記主及び補助偏向コイルをその上に取り付けるための分離器とを有し、前記分離器は円筒形状部を含み、前記補助偏向コイルを前記分離器の壁に対して配置するために前記開口と協働するスタッドが前記円筒形状部に設けられたことを特徴とする陰極線管用偏向ヨーク。」

第5 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2」の「2(2)引用例」に記載したとおりである。

第6 対比・判断
本願発明は、上記「第2」の「2 独立特許要件について」で検討した補正後発明の発明特定事項において、「柔軟な」及び「補助偏向コイルを有する前記柔軟な支持体は前記分離器の該円筒形状部に直接装着され」との限定事項を省き、さらに、「精確に位置決め」を「配置」に上位概念化したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項に限定事項を付加し、一部特定事項について下位概念に限定した補正後発明が、上記「第2」の「2 独立特許要件について」で検討したとおり引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-08 
結審通知日 2007-08-14 
審決日 2007-08-28 
出願番号 特願平7-167355
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 亮村井 友和  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 居島 一仁
中村 直行
発明の名称 偏向ヨークの補助コイル取付具  
代理人 伊東 忠彦  

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