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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q |
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管理番号 | 1170490 |
審判番号 | 不服2002-13968 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-25 |
確定日 | 2008-01-10 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 98096号「帳票分類処理方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月18日出願公開、特開平 8-272884〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年3月30日の出願であって、平成14年6月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月26日付で手続補正がなされ、更に、前記手続補正が平成17年8月23日付で却下され、同年9月8日付で拒絶理由が通知され、これに対し、同年11月14日付で手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年11月14日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「複雑な構成の文字及び簡単な構成の文字が混在して記載されている帳票を分類処理する方法であって、 解像度の相違する複数のイメージ読取手段を、前記帳票の搬送方向に沿って解像度の大きな順に配置し、 解像度の大きな前記イメージ読取手段により前記帳票上の複雑な構成の文字からイメージデータを読み取ると共に、解像度の小さな前記イメージ読取手段により前記帳票上の簡単な構成の文字からイメージデータを読み取り、 読み取った各イメージデータを複数の文字認識部により並列的に文字認識し、各文字認識部からの認識結果を合成して前記帳票を分類するための処理用データを得ること、 を特徴とする帳票分類処理方法。」 3.引用例 (1)引用例1 当審の拒絶の理由に引用された特開平6-231301号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (a)「【0009】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例を示す概略ブロック図である。同図において、読取対象となる帳票1の記入文字は、光学系2,3によって光電変換手段である例えばCCDイメージャ4,5の各撮像面上に結像される。CCDイメージャ4としては、画素数が例えば2000画素の高解像度のものが用いられ、CCDイメージャ5としては、画素数が例えば1000画素の低解像度のものが用いられる。」(第3頁左欄第7行-同頁同欄第16行) (b)「【0015】 次に、図3に示す概略構造図を用いて、本発明によるOCRの一連の動作について説明する。帳票1をホッパ21にセットすると、CPU15(図1参照)の指令により、ホッパ21が上昇し帳票1が引込みローラ22に接触する。引き込みローラ22は、図示せぬモータによって図の矢印方向に回転駆動されることにより、帳票1を分離ローラ23a,23bまで搬送する。分離ローラ23a,23bは、図示せぬローラと共に図示せぬモータによって回転駆動されることにより、帳票1をその重走を防止しつつ搬送する。 【0016】 搬送された帳票1が光源24の下に到来したとき、光源24より照射された光が帳票1で反射し、光線25及び光線26となって鏡27a,27b,27c及び鏡28a,28b,28cで反射され、レンズ29及びレンズ30を通してCCDイメージャ4及びCCDイメージャ5の各撮像面上に投影される。なお、鏡27a,27b,27cとレンズ29、及び28a,28b,28cとレンズ30により、図1における光学系2及び光学系3が構成されている。CCDイメージャ4,5に投影された各画像は電気信号に変換され、図1に示すように、信号増幅部6,7で増幅され、アナログ・ディジタル変換部8,9でディジタル化されて信号切替え回路10に供給される。 【0017】この信号切替え回路10は、CCDイメージャ4,5のいずれか一方によるイメージデータを選択し、イメージバッファ11に供給して帳票1の全イメージデータを格納する。この信号切替え回路10における選択は、あらかじめ上位装置からの指示により行う。具体的には、帳票1の記入文字が印字文字の如き小さな文字の場合には高解像度のCCDイメージャ4側のアナログ・ディジタル変換部8からのイメージデータを選択し、手書き文字や数字の印字文字などの如き比較的単純で大きな文字のみを含む帳票の場合には、低解像度のCCDイメージャ5側のアナログ・ディジタル変換部9からのイメージデータを選択する。 【0018】次いで、文字認識部12によってイメージバッファ11上の帳票イメージデータから、文字を切り出して認識し、その結果をファイル制御部16を介してファイル装置17へ、又は外部インタフェース18を介して外部装置へ出力する。次に、読み取った帳票を、図3において、ブレード31により切り替えることによってアクセプトスタッカ32あるいはリジェクトスタッカ33へ排出し、一連の動作を終了する。なお、図4は、図3の構造のOCRにおいて、1組のCCDイメージャ4,5と、鏡及びレンズからなる光学系2,3を密着型のイメージセンサとして構成した場合の概略構造図である。その動作については、図3の場合と同様である。」(第3頁右欄第30行-第4頁左欄第26行) これらの記載によれば、引用例1には、 『印字文字の如き小さな文字、手書き文字や数字の印字文字などの如き比較的単純で大きな文字の一方が記載されている「帳票(1)」を処理する方法において、解像度の相違する「CCDイメージャ(4)」と「CCDイメージャ(5)」とを同じ位置に配置し、それらを切り換えて、「CCDイメージャ(4)」により印字文字の如き小さな文字からイメージデータを読み取ると共に、「CCDイメージャ(5)」により、手書き文字や数字の印字文字などの如き比較的単純で大きな文字からイメージデータを読み取り、読み取った各イメージデータを一つの「文字認識部(12)」により切り替えて直列的に文字認識し、「文字認識部(12)」からの認識結果を「ファイル装置(17)」に出力する帳票の処理方法。』 との発明(以下「引用例発明」という。)が記載されている。 (2)引用例2 同じく、当審の拒絶の理由に引用された特開昭61-131081号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (c)「上記のような構成の帳票分類装置において、同実施例の動作を説明する。先ず、オペレータがコンソール15上の所定のスイッチを操作すると、認識装置Rの制御部11は分類処理を開始する。制御部11の制御により、搬送機構12は最初の帳票をフィーダから搬送路TR1に送り出す。帳票は図示しない光学的センサ(または磁気的センサ)により分類用文字が読取られて、その読取電気信号が文字認識部10へ出力される。文字認識部10では、認識処理により帳票の分類用文字に対する認識結果が得られて、制御部11へ出力される。」(第2頁左下欄第3行-同頁同欄第13行) (d)「制御部11は、文字認識部10から出力される認識結果に応じて、ソータユニットS1の第1ポケット23-1を最初の帳票に割り付ける処理を行う。」(第2頁左下欄第19行-同頁右下欄第1行) してみれば、引用例2には、 『「文字認識部(10)」による認識処理により分類用文字に対する認識結果を得、その認識結果に応じて該当するポケットを帳票に割り付ける処理を行う。』 との事項が記載されている。 4.対比 引用例発明の「CCDイメージャ(4)」、「CCDイメージャ(5)」、「文字認識部(12)」は、それぞれ、本願発明の「解像度の大きなイメージ読取手段」、「解像度の小さなイメージ読取手段」、「文字認識部」に相当するので、両者は、 「文字が記載されている帳票を処理する方法であって、 解像度の相違する複数のイメージ読取手段を、前記帳票の搬送方向に配置し、 解像度の大きな前記イメージ読取手段により前記帳票上の複雑な構成の文字からイメージデータを読み取ると共に、解像度の小さな前記イメージ読取手段により前記帳票上の簡単な構成の文字からイメージデータを読み取り、 読み取った各イメージデータを文字認識部により文字認識し、文字認識部からの認識結果から前記帳票を処理するための処理用データを得ること、 を特徴とする帳票分類処理方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明では、複雑な構成の文字及び簡単な構成の文字が混在して帳票に記載され、解像度の大きなイメージ読取手段により複雑な構成の文字からイメージデータを読み取ると共に、解像度の小さなイメージ読取手段により簡単な構成の文字からイメージデータを読み取るのに対し、引用例発明では、印字文字の如き小さな文字または手書き文字や数字の印字文字などの如き比較的単純で大きな文字のどちらか一方が帳票に記載され、解像度の大きなイメージ読取手段により印字文字の如き小さな文字からイメージデータを読み取ると共に、解像度の小さなイメージ読取手段により手書き文字や数字の印字文字などの如き比較的単純で大きな文字からイメージデータを読み取る点。 (相違点2) 複数のイメージ読取手段を、本願発明では、帳票の搬送方向に沿って解像度の大きな順に配置しているのに対し、引用例発明において、同じ位置に配置している点。 (相違点3) 読み取った各イメージデータを、本願発明では、複数の文字認識部により並列的に文字認識しているのに対し、引用例発明では、一つの文字認識部を切り替えて直列的に文字認識している点。 (相違点4) 本願発明では、文字認識部からの認識結果を合成して帳票を分類するための処理データを得て分類処理しているのに対して、引用例発明では、そのようなことは行なっていない点。 5.当審の判断 (相違点1について) 複雑な文字に対しては解像度の大きいイメージ読取手段で読み取る必要があることは当然の要請であるので、帳票に複雑な構成の文字と簡単な構成の文字が記載されている場合に、解像度の大きなイメージ読取手段で複雑な構成の文字を読み取り、解像度の小さなイメージ読取手段で簡単な構成の文字を読み取ることは、当業者が当然に推考できる事項である。 また、解像度の大きいイメージ読取手段で読み取るものと解像度の小さいイメージ読取手段で読み取るものが混在して記載されている帳票に対して、それぞれを解像度の大きいイメージ読取手段と解像度の小さいイメージ読取手段とにより読み取ることは周知技術である(例えば、特開昭63-155386号公報、特開昭62-49584号公報参照)。 これらの事項を考慮すると、引用例発明において、複雑な構成の文字及び簡単な構成の文字が混在して記載されている帳票に対して、解像度の大きなイメージ読取手段により、解像度の大きいイメージ読取手段で読み取るべき複雑な構成の文字からイメージデータを読み取ると共に、解像度の小さなイメージ読取手段により、解像度の小さいイメージ読取手段で読み取れる簡単な構成の文字からイメージデータを読み取ることは当業者が容易に考えられる事項である。 したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。 (相違点2について) 複雑な構成の文字及び簡単な構成の文字の帳票上の配置及びそれらの文字が存在する範囲の広さ等が規定されていないため、解像度の相違する複数のイメージ読取手段を帳票の搬送方向に沿って解像度の大きな順に配置することに格別の効果があるとは認められないので、解像度の相違する複数のイメージ読取手段をどのように配置するかは当業者が適宜選択できる設計的事項である。 よって、引用例発明において、解像度の相違する複数のイメージ読取手段を帳票の搬送方向に沿って同じ位置に配置する代わりに解像度の大きな順に配置することは当業者が容易に考えられる事項である。 したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用例発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。 (相違点3について) 情報処理分野において複数の処理手段を並列に設けて並列処理することは一般的に行われている周知技術であるので、引用例発明において、一個の文字認識部を兼用せず、文字認識部を複数設けて複数のイメージ読み取り手段で読み取ったイメージデータを並列に文字認識することは当業者が容易に考えられる事項である。 したがって、相違点3に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。 (相違点4について) 帳票の文字認識の結果を合成して一つの帳票の情報を得ることは一般的に行われている周知技術であり、また、引用例2には、「文字認識部(10)」による認識処理により分類用文字に対する認識結果を得、その認識結果に応じて該当するポケットを帳票に割り付ける処理を行うことが記載されており、引用例2に記載された事項の「文字認識部(10)」、「該当するポケットを帳票に割り付ける処理」は、本願発明の「文字認識部」、「帳票を分類する処理」に対応するので、引用例発明において、文字認識部からの認識結果を合成して帳票を分類するための処理用データを得ることは当業者が容易に考えられる事項である。 したがって、相違点4に係る本願発明の構成は、引用例発明、引用例2に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用例1、引用例2、及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された事項、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-07 |
結審通知日 | 2007-11-13 |
審決日 | 2007-11-27 |
出願番号 | 特願平7-98096 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長 由紀子、和田 財太 |
特許庁審判長 |
赤穂 隆雄 |
特許庁審判官 |
坂庭 剛史 久保田 健 |
発明の名称 | 帳票分類処理方法およびシステム |
代理人 | 佐藤 幸男 |