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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1170500 |
審判番号 | 不服2004-17274 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-19 |
確定日 | 2008-01-10 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第306576号「光学素子用ホルダー」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月 5日出願公開、特開平 9-204685〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成8年11月18日(優先権主張 平成7年11月21日)の出願であって、平成16年7月14日付の拒絶査定に対し、平成16年8月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成16年9月21日付けで手続補正がなされ、その後前置審査において通知した拒絶理由に応答して平成17年1月5日付けで手続補正がなされ、さらに当審から平成19年5月2日付けで通知した最後の拒絶理由に応答して平成19年7月6日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成19年7月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年7月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の概略 本件補正は、明細書全文についてするもので、特許請求の範囲については、補正前(平成17年1月5日付け手続補正書参照)に、 「【請求項1】 一方の面に設けられ、光軸に対して直交する方向の平面内で僅かに回転角を有するように、板状の回折格子を固定するための第一の位置決め部と、 他方の面に設けられ、平行平板の入射面を光軸に対して、ディスク状記録媒体の透明樹脂の複屈折性によって光ビームに与えられる非点収差を打ち消すように傾斜させて固定するための第二の位置決め部とを有していることを特徴とする光学素子用ホルダー。 【請求項2】 一方の面に設けられ、光軸に対して直交する方向の平面内で僅かに回転角を有するように、板状の回折格子を固定するための第一の位置決め部と、 他方の面に設けられ、平行平板の入射面を光軸に対して、ディスク状記録媒体の透明樹脂のプリグルーブによって光ビームに与えられる非点収差を打ち消すように傾斜させて固定するための第二の位置決め部とを有していることを特徴とする光学素子用ホルダー。 【請求項3】 一方の面に設けられ、光軸に対して直交する方向の平面内で僅かに回転角を有するように、板状の回折格子を固定するための第一の位置決め部と、 他方の面に設けられ、平行平板の入射面を光軸に対して、ディスク状記録媒体の透明樹脂の複屈折性及びプリグルーブによって光ビームに与えられる非点収差を打ち消すように傾斜させて固定するための第二の位置決め部とを有していることを特徴とする光学素子用ホルダー。」 とあったところを、 「【請求項1】 一方の面に設けられ、板状の回折格子を固定するための第一の位置決め部と、 他方の面に設けられ、平行平板を固定するための第二の位置決め部とが一体に形成され、 上記第一の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの一方の面側に設けられ、上記板状の回折格子を、光軸に対して直交する方向の平面内で僅かに回転角を有するように位置決めして固定するように形成され、 上記第二の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの他方の面側に設けられ、上記平行平板の入射面を光軸に対して、ディスク状記録媒体の透明樹脂の複屈折性によって光ビームに与えられる非点収差を打ち消す傾斜角で位置決めして固定するように形成されていることを特徴とする光学素子用ホルダー。 【請求項2】 一方の面に設けられ、板状の回折格子を固定するための第一の位置決め部と、 他方の面に設けられ、平行平板を固定するための第二の位置決め部とが一体に形成され、 上記第一の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの一方の面側に設けられ、上記板状の回折格子を、光軸に対して直交する方向の平面内で僅かに回転角を有するように位置決めして固定するように形成され、 上記第二の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの他方の面側に設けられ、上記平行平板の入射面を光軸に対して、ディスク状記録媒体の透明樹脂のプリグルーブによって光ビームに与えられる非点収差を打ち消す傾斜角で位置決めして固定するように形成されていることを特徴とする光学素子用ホルダー。 【請求項3】 一方の面に設けられ、板状の回折格子を固定するための第一の位置決め部と、 他方の面に設けられ、平行平板を固定するための第二の位置決め部とが一体に形成され、 上記第一の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの一方の面側に設けられ、上記板状の回折格子を、光軸に対して直交する方向の平面内で僅かに回転角を有するように位置決めして固定するように形成され、 上記第二の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの他方の面側に設けられ、上記平行平板の入射面を光軸に対して、ディスク状記録媒体の透明樹脂の複屈折性及びプリグルーブによって光ビームに与えられる非点収差を打ち消す傾斜角で位置決めして固定するように形成されていることを特徴とする光学素子用ホルダー。」 と補正しようとするものである(なお、下線は当審で付与したものである)。 上記補正前後の構成を対比すると、上記補正は、概略、補正前の各請求項に記載した発明の特定事項である「第一の位置決め部」と「第二の位置決め部」に関し、「一体に形成され」たこと、「第一の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの一方の面側に設けられ」、「位置決めして固定するように形成され」たこと、「第二の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの他方の面側に設けられ」、「位置決めして固定するように形成されている」ことを、それぞれ限定することで特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法17条の2第4項2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否か、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。 2.引用例 (1)当審での最後の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平4-117635号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。引用例の記載については、以下同様である。)。 (ア)「(1). 反射媒体に記録された情報を読み出すための光学ヘッドであって、 a) 反射媒体に向って順方向ビーム経路に沿って移動し、反射媒体から反射し、戻り方向ビーム経路に沿って移動し続けるようにレーザ・ビームを発する半導体レーザと、 b) 戻り方向ビーム経路に沿って配置してあり、反射媒体から反射してきたレーザ・ビームを検出する光検出器と、 c) 順方向および戻り方向のビーム経路に沿って配置してあるホログラフィック・レンズ組立体であり、 (i)ビーム経路に対して斜めに配置され、第1、第2の表面を有する透明プレート、および、 (ii)ホログラム・レンズ構造体 を有するホログラフィック・レンズ組立体と を包含し、 透明プレートが順方向ビーム経路においてレーザ・ビームのビーム収差を補正し、ホログラム・レンズがレーザ・ビームを戻り方向ビーム経路上の光検出器上に分解させ、透明プレートおよびホログラフィック・レンズの両方が戻り方向ビーム経路上の回析したレーザ・ビームにビーム収差を加えることを特徴とする光学ヘッド。」(1頁左下欄、特許請求の範囲) (イ)「光学ヘッドというのは、情報を含む媒体に光線を合焦させ、媒体から反射してきた光を検出して媒体の情報内容を知るものである。光学ヘッドの焦点およびトラッキング機能を維持する機構が必要である。」(3頁右上欄10行?14行) (ウ)「透明プレートは、第1面に記録された回折格子構造と第2面に記録されたホログラノ、・レンズと一緒に、レーザと対物レンズの間に置かれる。レーザ・ビームは第1面で回折格子によって3本の主ビームに分解される。これら3本のビームは、次ぎに、第2面で透明プレートとボログラム・レンズを通り、それによって、非点収差のようなビーム収差を補正され、さらに、これら3つのビームをいくつかのグループの3ビームに分解する。しかしなから、主グループのビームのみがレーザから対物レンズまで順方向ビーム経路において使用される。戻り経路において、第2面でホログラム・レンズによって回折させられた3ビーム・グループの1つは第1面の回折格子をバイパスし、8セグメント検出器上に合焦させられる。さらに、ホログラム・レンズおよび透明プレートはこれらのビームに収差を加え、それによって、焦点エラー、トラッキング・エラーを検出する手段となる。 こうして、本発明は従来よりも部品点数の少ない単ビーム式あるいは3ビ一ム式トラッキング光字ヘッドを提供する。また、本発明は従来の光学ヘッドよりも変動によるエラーの生じにくい光学ヘッドを提供する。透明プレート、回折格子およびホログラム・レンズを備えたホログラフィック・レンズ組立体は収差補正レンズ、回折格子、ビームスプリッタ、収差補正付き集光レンズおよび円筒レンズの機能を果たす。」(5頁右下欄15行?6頁右上欄2行) (エ)「本発明による光学ヘッド100の第1実施例が第8図に示してある。この光学ヘッドは、レーザ・ペン102と、合焦・トラッキング・アクチュエータ104とからなる。レーザ・ビーム106はスポット110のところで情報媒体108上に合焦させられる。半導体レーザ・光検出器組立体112の半導体レーザ111がレーザ・ビーム106をホログラフィック・レンズ組立体113に放射する。このホログラフィック・レンズ組立体は斜めの透明プレート114を有し、この透明プレートは第1面114Aにホログラム・レンズ、好ましくは、回折格子を、第2面114Bにホログラム・レンズを備える。ホログラフィック・レンズ組立体から発したビームはコリメーティング・レンズ116によって平行化されてから対物レンズ118によってスポット110のところで媒体108上に合焦させられる。次いで、ビームは媒体から反射して対物レンズ118、コリメーティング・レンズ116およびホログラフィック・レンズ113を通って戻る。第2面114Bのホログラム・レンズは回折ビームを光検出器119上に結像させる。」(6頁右上欄7行?左下欄8行) (オ)「第15A-D図は別のホログラフィック・レンズ組立体を示しており、ここでは、格子構造120とホログラフィック・レンズ構造122は分離した透明プレート190.192上に記録される。これら透明プレートのうち少なくとも一方は順方向ビーム経路106に関して斜めとなっている。透明プレートはエアギャップ194によって分離されていると好ましい。 第15A、15B、15Cおよび15D図では、回折格子は順方向ビームすなわち光軸に関して斜めとなっている。その結果、格子からの回折ビームは少量の非点収差およびコマ分だけ歪曲させられる。第15A、15C図では、ホログラフィック組立体がレーザ・ビームを光軸から偏倚させ、それによって、光学ヘッドを整合させる必要がある。組み立て時、半導体レーザ・光検出器組立体の位置を調節することによって光学ヘッドを整合させることができる。第15D図に示すホログラム・レンズおよび回折格子は順方向ビームに関して互いに反対の方向に傾いている。その結果、レーザ・ビームはやや歪曲しているが、光軸からオフセットはしていない。第15B図において、回折格子は光軸に対して直角であり、回折ビームの歪曲を生じさせないが、傾斜したホログラム・レンズはオフセットすることになる。」(8頁右上欄16行?左下欄末行) (カ)第15B図には、光軸に対して斜めの透明プレート192と、第1面114Aに格子構造を備え、光軸に対して直角の透明プレート190が図示されている。 上記(ア)乃至(オ)に記載した事項及び図面、特に(カ)で指摘した第15B図を参照すると、エアギャップによって分離された二つの透明プレートで構成されたホログラフィック・レンズ組立体について、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。 「二つの透明プレートがエアギャップによって分離されているホログラフィック・レンズ組立体において、 一方の上記透明プレートは、光軸に対し直角であり、回折格子構造を備え、 他方の上記透明プレートは、レーザ光の非点収差を補正するように、光軸に対して斜めである、 ホログラフィック・レンズ組立体。」 (2)当審での最後の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平5-11157号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次のように記載されている。 (キ)「【0007】 【実施例1】本発明のプラスチックレンズ鏡筒の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のプラスチックレンズ鏡筒の正面よりの断面図である。図に示す円筒形状の筒体は、多数個のレンズを装着するレンズ鏡筒1である。このレンズ鏡筒1の内周壁面には、所望の間隔を設けてレンズ装着用段部2,3,4がそれぞれ成形されている。このそれぞれの段部2,3,4には、所望の形状のレンズ5,6,7がその外径周面に接着剤8,9,10を塗布して接合装着されている。」 (3)当審での最後の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である実願昭61-117855号(実開昭63-24518号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次のように記載されている。 (ク)「1対のレンズを保持するレンズホルダーは筒状の鏡筒と、前記鏡筒内に収容される筒状のホルダー本体とリング状のレンズ押えに3分割されてなり、前記鏡筒の一方端部の内周面にはホルダー本体係止用段部が形成され、また他方端部にはレンズ押え嵌着用絞め部が形成されており、前記ホルダー本体内部にはあらかじめ前記鏡筒の段部側に第1レンズが、また、絞め部側に第2レンズが、それぞれ面一に押入固定されている状態で収容されており、さらにホルダー本体は前記鏡筒内部に、前記段部に係止した状態で収容され、絞め部によりレンズ押えの外周面を固定されてなることを特徴とするレンズ取付構造。」(実用新案登録請求の範囲) 3.対比、判断 そこで、本願補正発明と引用例1発明を対比する。 引用例1発明の「一方の透明プレート」は、「光軸に対し直角であり、回折格子構造を備え」たものであるから、光軸に対して直交する方向の平面内にあり、また、引用例1のFIG.6を参照すると、3本のビームがトラックに対して所定の角度を有するように媒体上に結像されることが示されているから、前記3本のビームを形成するための回折格子が、所定の、僅かな回転角を有するように位置決め固定されていることは明らかである。 したがって、前記「一方の透明プレート」は、本願補正発明の「板状の回折格子」に相当するとともに、「光軸に対して直交する方向の平面内で僅かに回転角を有するように位置決めして固定」された構成を備えるものである。 引用例1発明の「他方の上記透明プレート」は、「レーザ光の非点収差を補正するように、光軸に対して斜めである」ものであって、位置決め固定されることは当然のことである。また、上記他方の透明プレートに形成されるホログラフィックレンズ構造は、非線収差の補正とは関連のない構造であり、当該ホログラフィックレンズ構造を除けば透明プレートが基本的に平行平板であることが明らかであるから、上記「他方の上記透明プレート」は、本願補正発明の「平行平板の入射面を光軸に対して」、「光ビームに与えられる非点収差を打ち消す傾斜角で位置決めして固定するように形成されている」との構成を備えるものである。 引用例1発明の「二つの透明プレートが、エアギャップによって分離されたホログラフィック・レンズ組立体」は、二つの透明プレートを分離した位置に固定するように、それぞれに対応する第一及び第二の「位置決め部」を有する構造を備えることは当然であり、このような構造を「光学素子用ホルダー」と称することは単に用語の問題にすぎない。 したがって、前記「ホログラフィック・レンズ組立体」は、本願補正発明の「光学素子用ホルダー」と比較して、少なくとも「第一の位置決め部」と「第二の位置決め部」とが形成されたものである点において一致している。 してみると、両発明は、次の一致点と相違点を有する。 <一致点> 「板状の回折格子を固定するための第一の位置決め部と、 平行平板を固定するための第二の位置決め部とが形成され、 上記第一の位置決め部は、上記板状の回折格子を、光軸に対して直交する方向の平面内で僅かに回転角を有するように位置決めして固定するように形成され、 上記第二の位置決め部は、上記平行平板の入射面を光軸に対して、光ビームに与えられる非点収差を打ち消す傾斜角で位置決めして固定するように形成されている光学素子用ホルダー。」 <相違点> (A)本願補正発明の光学素子用ホルダーでは、第一の位置決め部は「一方の面に設けられ」及び「当該光学素子用ホルダーの一方の面側に設けられ」と、第二の位置決め部は「他方の面に設けられ」及び「当該光学素子用ホルダーの他方の面側に設けられ」と、それぞれ特定されるとともに、第一の位置決め部と第二の位置決め部とが「一体に形成され」ている光学素子用ホルダーであることを限定しているのに対して、引用例1発明にはそのような特定がない点。 (B)非点収差を、本願補正発明では、「ディスク状記録媒体の透明樹脂の複屈折性によって」光ビームに与えられる非点収差と特定しているのに対し、引用例1発明にはそのような特定がない点。 そこで、これらの相違点について検討する。 (A)の点について 複数の光学素子を、単一の構造体に固定することは、光学要素の種類を問わず、普通に行われることである。例えば、引用例2において、レンズを固定している筒を検討すると、レンズ5又は6が位置決めして固定する面が上を向いており、第一の位置決め部の位置決め部が一方の面に設けられていることに相当し、レンズ7を位置決めして固定する面が下を向いて、第二の位置決め部が他方の面に設けられていることに相当する構造が開示されている(図1参照)。また、引用例3では、第一対物レンズ22を位置決めして固定することが明らかな第1対物レンズ用段部22aが、右側を向いており、第一の位置決め部の位置決め部が一方の面に設けられていることに相当し、第2対物レンズ10を位置決めして固定することが明らかな第2対物レンズ用段部22bが左側を向いて設けられているホルダー本体22が示されて、第二の位置決め部が他方の面に設けられていることに相当する構造が開示されている。 このように光学要素を位置決めして固定する構造として周知の構造を、引用例1発明におけるホログラフィック・レンズ組立体に適用して、2つの透明プレート114A、114Bをそれぞれ一方の面と他方の面に設けて、一体に形成する光学素子用ホルダーとすることに格別の困難性はなく、適宜なし得る事項というべきである。 (B)の点について 相違点Bとしてあげた事項は、非点収差が生じる原因を特定したもので、本来、「光学素子ホルダー」とは直接関係のない技術事項である。すなわち、非点収差の生じる原因によって非点収差を補正する手段が区別されるとは解されず、レーザから出射するレーザ光の持つ非点収差を補正する場合であっても、ディスク状記録媒体の透明樹脂の複屈折性によって光ビームに与えられる非点収差を打ち消す場合であっても、光軸に対して斜めに設けられた透明板による非点収差の補正の作用自体は、何ら異なるところがないからである。 仮に、非点収差の量が特定されるとの請求人の主張に配慮して、この点を実質的な相違点と認めるとしても、ディスク状記録媒体の透明樹脂が複屈折性を有することは、周知の事項にすぎず、当該ディスク状記録媒体の透明樹脂が有する複屈折性により、入射する光束に非点収差が生じることも、例えば特開平7-282469号公報、特開平7-229828号公報等にて周知の事項にすぎないものであるから、打ち消すべき非点収差を「ディスク状記録媒体の透明樹脂の複屈折性によって光ビームに与えられる非点収差」と特定することも、光学系を設計するに当たって当業者が適宜なし得る程度のことにすぎず、容易に想到しうるものである。 以上のとおりであり、(A)(B)の点を総合的に勘案しても、格別の創意工夫が必要であったとは認められないし、格別予想外の作用効果を奏しているとも認められないから、本願補正発明は、引用例1乃至3の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 平成19年7月6日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成17年1月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、前記「第2 1.補正の概略」の補正前の【請求項1】に記載したとおりである。 1.引用例 当審の最後の拒絶の理由に引用された引用例、およびその記載事項は、前記「第2 2.引用例」に記載したとおりである。 2.対比、判断 本願発明は、前記「第2 1.補正の概略」で検討した本願補正発明から「第一の位置決め部」と「第二の位置決め部」に関し、「一体に形成され」たこと、「第一の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの一方の面側に設けられ」、「位置決めして固定するように形成され」たこと、及び「第二の位置決め部は、当該光学素子用ホルダーの他方の面側に設けられ」、「位置決めして固定するように形成されている」ことの各限定を削除したものに相当する。 すると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3.対比、判断」に記載したとおり、引用例1ないし3の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1ないし3の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-09 |
結審通知日 | 2007-11-13 |
審決日 | 2007-11-27 |
出願番号 | 特願平8-306576 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(G11B)
P 1 8・ 121- WZ (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田良島 潔 |
特許庁審判長 |
山田 洋一 |
特許庁審判官 |
小松 正 江畠 博 |
発明の名称 | 光学素子用ホルダー |
代理人 | 伊賀 誠司 |
代理人 | 田村 榮一 |
代理人 | 小池 晃 |