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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G |
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管理番号 | 1170545 |
審判番号 | 不服2005-24465 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-19 |
確定日 | 2008-01-10 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 69018号「水稲用育苗培土」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月 9日出願公開、特開平 9-233952〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯・本願発明 本願は、平成8年2月28日の出願であって、平成17年11月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成8年8月8日付け手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「土壌に施用後、一定期間農薬活性成分を放出せず、一旦放出を開始すると速やかに放出する放出パターンを有する時限放出型被覆農薬粒剤と苗を支持し保水性能を有する物質よりなる水稲用育苗培土。」 【2】引用例 〔1〕これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平7-255268号公報(以下、「引用例1」という。)には、「水稲育苗培土」に関して、以下の記載がある。 (イ)「【請求項1】粒状肥料の表面にアルカリ物質を含む第1被覆層を有し、該第1被覆層の表面に水溶液不溶性重合体とアルカリ水可溶性重合体の混合物を含む第2被覆層を有する重層被覆粒状肥料10?35重量%と育苗に必要な水分を保持でき、かつ苗を支持できる固体の保水材90?65重量%とを含むことを特徴とする水稲育苗培土。」(特許請求の範囲) (ロ)「水溶液不溶性重合体としては、酸性,中性及びアルカリ性を示す水溶液に不溶である重合体であり;オレフィンの単独重合体,オレフィンの共重合体,オレフィンとオレフィン性二重結合を有するその他のモノマーとの共重合体などのオレフィン系重合体;ポリアミド,ポリイミド,ポリエステル,ポリエーテルなどの熱可塑性の縮合系重合体などの有機溶剤に可溶な熱可塑性樹脂;それらの混合物などを挙げることができる。」(段落【0012】) (ハ)「・・・重層被覆粒状肥料は、稲の育苗において、任意の必要な時期に肥料成分の放出を開始させることができるものであり;肥料成分の放出の開始時期が異なる重層被覆粒状肥料を組み合わせたもの(異種の重層被覆粒状肥料の混合物)を用いることもできる。そして、その異なる組み合わせとしては、水稲の収量に影響する穂数を確保できるように、「施肥後20?60日間溶出して肥効を発揮するという特徴を有するもの」と「施肥後50?100日間溶出して肥効を発揮するという特徴を有するもの」とを混合して使用するのが好ましい。それは、茎の発育増加時期(発芽後20?50日)及び穂の発育時期から玄米の肥大時期(発芽後50?100日)に養分(特に窒素成分)の吸収量が多いからである。」(段落【0023】) 上記の特に(ハ)の記載を参照すると、重層被覆粒状肥料は、施肥後、一定期間肥料成分を放出せず、必要な時期に肥料成分の放出を開始する時限放出型のものといえるから、これら(イ)?(ハ)の記載を参照すると、引用例1には、以下の発明が記載されている。 「施肥後、一定期間肥料成分を放出せず、必要な時期に肥料成分の放出を開始する時限放出型重層被覆粒状肥料と育苗に必要な水分を保持できかつ苗を支持できる固体の保水材よりなる水稲育苗培土。」(以下、「引用例1記載の発明」という。) 〔2〕同じく、特開平6-9303号公報(以下、「引用例2」という。)には、「重層被覆粒状農薬」に関して、以下の記載がある。 (イ)「【請求項1】農薬成分を含む粒状担体の表面に、高吸水膨潤性物質からなる第一被覆層が形成され、該第一被覆層の表面に、オレフィン系重合体からなる第二被覆層が形成されてなることを特徴とする重層被覆粒状農薬。」(特許請求の範囲) (ロ)「【産業上の利用分野】本発明は、含水培地又は水中での農薬成分の溶出開始時期を調節できる重層被覆粒状農薬に関する。」(段落【0001】) (ハ)「ところで、農薬散布の対象となる病害虫や雑草は農作物の生育期間を通じて、あらゆる場面で被害を及ぼすが、・・・その予防のためには、個々の病害虫、雑草などの各段階において最も適当な時期に農薬を散布する必要がある。従って、従来では所定の時期毎に別個に種々の農薬を施用する必要があり、いずれの散布方法をとったとしても、その労力は過重となる。 たとえば、稲の重要病害であるイネいもち病は稲の全生育期間中を通じて発生があり、特に田植1カ月後に大発生する葉イモチ病、そして収穫1カ前に発生して甚大な被害を及ぼし、稲の収量に多大な影響を及ぼす穂いもち病が防除上、特に問題となる。葉いもち病は本田の発病初期に農薬を散布し、なお蔓延の恐れがあるときは、以後7?10日おきに散布を続ける必要がある。穂いもち病に対しては穂ばらみ期から出穂期にかけて散布するのが効果的であるので、その時期に繰り返し農薬散布が行なわれる。このため、農薬散布作業を多数回行なう必要があり、労働が過重となるため難儀を極めている。」(段落【0003】?【0004】) (ニ)「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、所定の農薬成分が必要な時期までは放出(溶出)せず、また一旦放出を開始すると、速やかに当該農薬成分を放出するような被覆粒状農薬を提供することにある。」(段落【0005】) (ホ)「本発明の重層被覆粒状農薬において農薬成分は、粒状担体に担持された状態で存在する。担体は球形の粒状物であることが好ましく、・・・施用労力を更に省力化することを考慮すると、担体は粒状肥料であることが好ましい。すなわち、農薬成分の放出時期と肥料成分の溶出時期がほぼ一致する組合せを選んで、その組合せに従って肥料成分と農薬成分との粒状混合物を製造し、これを本発明に従って被覆するようにすれば、所定の時期に肥料成分と農薬成分とが同時に放出されるようになる。」(段落【0011】) 【3】対比 本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「育苗に必要な水分を保持できかつ苗を支持できる固体の保水材」,「水稲育苗培土」が本願発明の「苗を支持し保水性能を有する物質」,「水稲用育苗培土」にそれぞれ相当し、 また、引用例1記載の発明の「施肥後、一定期間肥料成分を放出せず、必要な時期に肥料成分の放出を開始する時限放出型重層被覆粒状肥料」と本願発明の「土壌に施用後、一定期間農薬活性成分を放出せず、一旦放出を開始すると速やかに放出する放出パターンを有する時限放出型被覆農薬粒剤」とが「土壌に施用後、一定期間成分を放出せず、必要な時期に放出を開始する時限放出型被覆粒剤」で技術的に共通するから、両者は、 「土壌に施用後、一定期間成分を放出せず、必要な時期に放出を開始する時限放出型被覆粒剤と苗を支持し保水性能を有する物質よりなる水稲用育苗培土。」の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点> 本願発明では、時限放出型被覆粒剤が被覆農薬粒剤であって、一定期間農薬活性成分を放出せず一旦放出を開始すると速やかに放出する放出パターンを有するものであるのに対し、引用例1記載の発明では、時限放出型被覆粒剤が重層被覆粒状肥料であって、一定期間肥料成分を放出せず必要な時期に放出を開始するものである点。 【4】判断 上記相違点について検討するために引用例2をみると、引用例2には、土壌に施用後、所定の農薬成分が必要な時期までは放出(溶出)せず、また一旦放出を開始すると速やかに当該農薬成分を放出するようにした重層被覆粒状農薬(本願発明の「時限放出型被覆農薬粒剤」に相当する。)であって、農薬成分が粒状担体に担持された状態で存在し、該粒状担体を粒状肥料とし、農薬成分の放出時期と肥料成分の溶出時期がほぼ一致する組合せを選んでその組合せに従って肥料成分と農薬成分との粒状混合物を製造し、これを被覆することにより、所定の時期に肥料成分と農薬成分とが同時に放出されるようになって施用労力が省力化することができる、水稲の生育に用いられる重層被覆粒状農薬が記載されている。 してみると、引用例1記載の発明の重層被覆粒状肥料に代え、引用例2に記載の重層被覆粒状農薬を用いて、本願発明の上記相違点に係る構成を想到することは、当業者が格別の技術的困難性を要することなく容易になしえたものと認められる。 そして、本願発明によって奏する効果も、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術から普通に予測できる範囲内のものであって格別なものがあると云うことができない。 【5】むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-06 |
結審通知日 | 2007-11-13 |
審決日 | 2007-11-27 |
出願番号 | 特願平8-69018 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順 |
特許庁審判長 |
伊波 猛 |
特許庁審判官 |
石井 哲 峰 祐治 |
発明の名称 | 水稲用育苗培土 |