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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200611178 審決 特許
不服200611239 審決 特許
不服20065710 審決 特許
不服200516226 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1170562
審判番号 不服2007-2427  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-18 
確定日 2008-01-10 
事件の表示 特願2003-277063「遊戯装置および回転体構造」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 712〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年3月18日に出願した特願平5-58721号の一部を平成15年7月18日に新たな出願としたものであり、平成18年9月8日付の拒絶理由通知に対して同年11月13日付で手続補正がなされ、これに対し、同年12月13日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年2月14日付で手続補正がなされたものである。そして、該手続補正は明細書の段落【0029】の誤記を訂正するものであるから、本願の請求項1に係る発明は、平成18年11月13日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という)は以下のとおりである。
「【請求項1】 第1画像が分割された複数の第1分割画像と、第2画像が分割された複数の第2分割画像とが交互に配置されることで前記第1画像と前記第2画像とが合成された合成画像によって形成される合成画像シンボルを一部に含む複数のシンボルが外周面に配置された回転体と、遊戯者に前記複数のシンボルを表示するための表示窓と、前記表示窓と前記回転体との間に配置されたレンチキュラーレンズと、を備えて構成されることを特徴とする遊戯装置。」


第2.引用例・文献に記載の発明・技術
第1引用例 : 特開平4-322675号公報
第2引用例 : 特開平1-214384号公報
第3引用例 : 実願昭61-90568号(実開昭62-202890 号)のマイクロフィルム
第4文献 : 特開平4-107087号公報
第5文献 : 社団法人日本印刷学会,“印刷工学便覧”,技報堂出版 株式会社,1983年,p.1117-1119
第6文献 : 特開平4-90777号公報
第7文献 : 実願昭60-175597号(実開昭62-84485 号)のマイクロフィルム

(1)第1引用例に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、平成4年11月12日に頒布された刊行物である第1引用例(特開平4-322675号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【0007】遊技機1の表面となる盤面2と種々の部品のいずれか、あるいは複数のものに対して、図柄が形成されたレンチキュラーシートが設けられ、・・・。レンチキュラーシートは、微細なかまぼこ型のレンズが多数形成されており、視差がある複数の画像がレンズ裏面に形成されると立体写真となる。」(第2頁第2欄2?8行)
(イ)「【0008】・・・遊技機1がスロットマシンなどの場合には、盤面2のほか、回転するナンバー部分にレンチキュラーシートを設けると効果的である。」(第2頁第2欄14?21行)

上記(ア)、(イ)の記載及び図面によれば、第1引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「視差がある複数の画像を、微細なかまぼこ型のレンズが多数形成されたレンズ裏面に形成して、立体写真となるレンチキュラーシートを、スロットマシンの回転するナンバー部分に設けた遊技機1。」

(2)第2引用例に記載の技術
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、平成1年8月28日に頒布された刊行物である第2引用例(特開平1-214384号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「図において、前記遊技盤6の表面に取り付ける取付基板41には、そのほぼ中央に窓開口42が開設されている。この窓開口42には、回転ドラム60の回転ドラム100a?100cが臨むようになっている。」(第4頁右上欄17行?同頁左下欄2行)
(イ)「枠体61の前方には、半円形状の前面レンズカバー78が取り付けられる。この前面レンズカバー78は、透明の合成樹脂によって形成され、その前面中央部分に拡大レンズ部79a?79cが形成され、該拡大レンズ部79a?79cの上下にぼかしレンズ部80a?80c、81a?81cが形成されている。拡大レンズ部79a?79cは、回転ドラム100a?100cに描かれた図柄を拡大して透視できるようにしており、ぼかしレンズ部80a?80c、81a?81cは、その前後の図柄をぼかして回転ドラム装置60の装飾効果を高めている。」(第5頁左下欄1?12行)
(ウ)第1図、第7図、第12図には、取付基板の窓開口及びレンズカバーを、回転ドラムの前方に離間して設けた点が記載されている。

(3)第3引用例に記載の技術
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、昭和62年12月24日に頒布された刊行物である第3引用例(実願昭61-90568号(実開昭62-202890号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「第1図に於て、1はスロットマシンにおける絵柄の表示窓、2は・・・小径の回胴で、・・・3は上記窓1に装着した平板状のフレネルレンズで、・・・よい。」(第3頁20行?第4頁12行)
(イ)第1図には、表示窓1及びフレネルレンズ3を、回胴2の前方に離間して設けた点が記載されている。

(4)第4文献に記載の技術
平成4年4月8日に頒布された刊行物である第4文献(特開平4-107087号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「テレビ画面2の前方にはレンチキュラーレンズ4が設けられ、このレンチキュラーレンズ4は各円筒凸部4aの円筒軸が垂直方向に位置するよう配置されている。そして、このレンチキュラーレンズ4を通して観賞者の右目に対応する前記テレビ画面2の画素を右面用画素領域とし、観賞者の左目に対応する前記テレビ画面2の画素を左目用画素領域として区分けしていると共に一対の左右目用画素領域の間には黒画素領域が設けられている。」(第2頁右上欄6?15行)
(イ)「テレビ画面2の右目用画素領域には右目用映像が、テレビ画面2の左目用画素領域には左目用映像がそれぞれ映出されて、観賞者の右目にはレンチキュラーレンズ4を介して右目用映像のみが、左目にはレンチキュラーレンズ4を介して左目用映像のみが取り込まれるため観賞者はカラーの立体映像を観ることができる。」(第2頁左下欄19行?同頁右下欄5行)

(5)第5文献に記載の技術
第5文献(社団法人日本印刷学会,“印刷工学便覧”,技報堂出版株式会社,1983年,p.1117-1119)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「図-19.3が立体像を得る原理図である。すなわちレンチキュラーレンズの後面に右眼,左眼に対応する像が入れられていて,このレンズによってそれぞれの像が独立してそれぞれの眼に入るために立体視ができるのである。この像は最低二つは必要であるが,次々に連続的に数枚入れてもよい。」(第1117頁14?17行)
(イ)「図-19.5はこの合成装置の概略図である。この合成装置は各方向から撮影した原画を入れ,これをレンチキュラーレンズと感光材料と重ね合せたところに投影,露光するようになっている。これによって感光材料に各方向からの像がレンチキュラーレンズによって線状に分離して記録される。」(第1119頁2?7行)

(6)第6文献に記載の技術
平成4年3月24日に頒布された刊行物である第6文献(特開平4-90777号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「本実施例のパチンコ機は、図柄筒20の図柄23を半透明状に形成し、同図柄筒20内に図柄23を裏面より照明するLED16?19を配置した。従って、遊技中において図柄筒20の図柄23は裏面よりLED16?19に照明されて発光し、各図柄23の視認性や見栄えを向上させることができる。又、絵札23aに対応する箇所には半透明の印刷層28を形成せず絵札23aの透過率を高めた。よって、大当たりに関する絵札23aが周囲の通常の図柄23に比較して明るく発光し、絵札23aの移動を確実に把握することができる。」(第4頁左下欄4?15行)

(7)第7文献に記載の技術
昭和62年5月29日に頒布された刊行物である第7文献(実願昭60-175597号(実開昭62-84485号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「第5図は、ドラム1a(他のドラム1b,1cも同様)の周面に配列される絵柄の一例を示したものであり、このうちボーナスゲームに関わる「7」の絵柄13には、この考案の特徴をなす前記タイミング付与手段が形成されている。第5図(1)は、前記絵柄13の位置に対応してドラム1aの周面両縁に縦線状のマーク15,15を1周につき1ヶ所付することによって、また第5図(2)は、前記絵柄13以外の位置に対応してドラム1aの周面中央部に縦線状のマーク16を一連に付することによって、それぞれタイミング付与手段を形成したものである。」(第7頁6?17行)


第3.本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「視差がある複数の画像」は、本願発明の「(前記)第1画像と(前記)第2画像」に相当し、以下同様に、
「微細なかまぼこ型のレンズが多数形成されたレンズ」は、「レンチキュラーレンズ」に、
「形成して」は、「配置して」に、
「遊技機1」は、「遊戯装置」に、それぞれ相当する。

(2)引用発明の「立体写真」は、視差がある複数の画像(第1画像と第2画像)を、微細なかまぼこ型のレンズが多数形成されたレンズ(レンチキュラーレンズ)を用いて、右眼と左眼に独立して結像させて得られるものに外ならないから、本願発明の「第1画像と第2画像とが合成された合成画像」に実質的に相当する。
そして、引用発明において、前記レンチキュラーシートを、スロットマシンの回転するナンバー部分に設けたことは、本願発明において、「合成画像によって形成される合成画像シンボル」を、「回転体」の「外周面に配置」したことに対応する。

(3)引用発明の微細なかまぼこ型のレンズが多数形成されたレンズ(レンチキュラーレンズ)は、その裏面に、視差がある複数の画像(第1画像と第2画像)を形成(配置)したものであるのだから、当該微細なかまぼこ型のレンズが多数形成されたレンズは、視差がある複数の画像の表面に配置されたものであると言い換えることができる。ここで、引用発明のレンチキュラーシートが回転体の外周面に配置されたものであることは、前記(2)に説示したとおりであるから、引用発明の微細なかまぼこ型のレンズが多数形成されたレンズは、回転体の外周面に配置された視差がある複数の画像の表面に配置されたものであるといえる。
一方、本願発明のレンチキュラーレンズは、「(前記)表示窓と(前記)回転体との間に配置され」たものである。
そうすると、引用発明のレンチキュラーレンズと、本願発明のそれとは、回転体の表面側に配置されたものである点で共通する。

(4)したがって、本願発明と引用発明とは、
「第1画像と第2画像とが合成された合成画像によって形成される合成画像シンボルが外周面に配置された回転体と、回転体の表面側に配置されたレンチキュラーレンズと、を備えた遊戯装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点A.本願発明は、第1画像と第2画像との合成が、「第1画像が分割された複数の第1分割画像と、第2画像が分割された複数の第2分割画像とが交互に配置されること」によるのに対し、引用発明では、第1画像と第2画像(視差がある複数の画像)をどのように配置するものであるのかが不明である点。
相違点B.本願発明が、合成画像シンボルを、複数のシンボルのうちの「一部」に含まれるものとしているのに対し、引用発明では、その点が明らかでない点。
相違点C.本願発明は、「遊戯者に(前記)複数のシンボルを表示するための表示窓」を備えたものであるが、引用発明においては、そのような表示窓を備えているか否かが明らかでない点。
相違点D.レンチキュラーレンズの配置位置が、本願発明では、「(前記)表示窓と(前記)回転体との間」であるのに対し、引用発明では、回転体の表面側ではあるものの、表示窓と回転体との間ではない点。


第4.判断
(1)相違点Aの検討
レンチキュラーレンズの裏面に配置する複数の画像を、線状に分離した複数の分割画像を交互に配置したものとすることは、例えば上記第5文献に開示されるように、印刷工学分野において従来周知の技術事項(以下、「周知技術A」という。)であり、引用発明においてレンチキュラーレンズの裏面に配置した第1画像と第2画像に前記周知技術Aを採用して、相違点Aに係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

(2)相違点Bの検討
遊戯装置の回転体に設ける複数のシンボルのうちの一部のシンボルを目立たせるために、前記一部のシンボルに他のシンボルと異なる処理を施しておくことは、例えば、上記の、第6文献、第7文献に開示されるように従来周知の技術事項(以下、「周知技術B」という。)であり、引用発明の回転するナンバー部分に、前記周知技術Bを適用して、相違点Bに係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

(3)相違点Cの検討
遊戯装置が備える回転体の遊戯者側に、前記回転体のシンボルを表示するための表示窓を備えることは、例えば第2引用例、第3引用例に開示される如く、周知の技術事項(以下、「周知技術C」という。)であり、引用発明の遊技機に前記周知技術Cを採用して、相違点Cに係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

(4)相違点Dの検討
立体像を得るために、右目用及び左目用に細かく区分けされた画像の各領域の前方に、レンチキュラーレンズを離して設けることは、例えば、上記第4文献に開示されるように従来周知の技術事項(以下、「周知技術D」という。)である。
引用発明の遊技機に表示窓を採用したもの(前記、[相違点C]についての検討を参照されたい。)に、前記の周知技術Dを適用して、合成画像シンボルからレンチキュラーレンズのみを離して前方に設けることは当業者であれば容易に想到し得る事項であり、適用する際に、レンチキュラーレンズをどの程度離して配置するか(表示窓とほぼ同じ面に配置するか、あるいは本願発明の如く、表示窓と回転体との間に配置するか)は、当業者が適宜選択する設計的事項の範囲を超えるものではない。

(5)本願発明の作用効果の検討
本願発明の作用効果は、引用発明及び上記周知技術A,B,C,Dに基づいて当業者が当然予測できるものである。

(6)むすび
したがって、本願発明は、第1引用例に記載の発明(引用発明)及び上記周知技術A,B,C,Dに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、第1引用例に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができな
いものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-08 
結審通知日 2007-11-13 
審決日 2007-11-29 
出願番号 特願2003-277063(P2003-277063)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之薄井 義明  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 小林 俊久
川島 陵司
発明の名称 遊戯装置および回転体構造  
代理人 寺崎 史朗  
代理人 白井 和之  
代理人 長谷川 芳樹  

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