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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1170595
審判番号 不服2002-23665  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-09 
確定日 2008-01-07 
事件の表示 平成 5年特許願第351761号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月 1日出願公開、特開平 7-194804〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年12月29日の出願であって、平成14年10月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年12月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成15年1月8日付けで手続補正がなされ、当審から平成19年7月23日付けで拒絶理由が通知され、平成19年9月25日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年9月25日付けの手続補正によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「ガイドレールで囲まれた遊技部内には、複数の一般入賞口と、始動口と
、打球の受け入れ状態を変動可能な変動入賞装置と、この変動入装置内に配置された継続入賞口と、複数の図柄の組合せによる特別遊技を行わせる画像表示装置と、前記始動口への打球の入賞を条件に、特別遊技を開始させ、画像表示装置に複数の図柄を変動表示させ、その後、複数の変動図柄を順次、停止表示させ、停止表示された複数の停止図柄が予め設定された当り図柄の組合せに一致した場合には、前記変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変動し、大当り遊技を開始させるとともに、この大当り遊技を前記継続入賞口への打球の入賞を条件に所定回数継続させる電気的制御装置とを備え、リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程の如何によって大当り遊技となる確率が異なるようにした弾球遊技機において、
上記電気的制御装置には、前記画像表示装置におけるリーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程を記憶するリーチ状態記憶手段と、
前記リーチ状態記憶手段に記憶された、画像表示装置におけるリーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程の特徴を分析するリーチ状態分析手段とを備え、
前記画像表示装置には、大当たり遊技の開始後に、前記リーチ状態記憶手段に記憶された、当該大当たりに係る、リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態を再現させて表示するリーチ状態再現画面と、
前記リーチ状態分析手段による、リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の特徴についての分析結果を、リーチ状態再現画面の解説として表示するリーチ状態分析結果表示画面とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」

3.当審拒絶理由通知
当審は、平成19年7月23日付けの拒絶理由で、本願の請求項1及び2に係る発明は、下記の第1引用例乃至第8引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨通知した。
第1引用例:特開平5-345068号公報
第2引用例:「マイコン BASIC Magazin」第9巻第4号、
1990年4月1日発行、表紙、第237頁、
“M・V・P”の項、
第3引用例:「’93 遊戯機械総合年鑑」株式会社アミューズメント産
業出版、平成5年8月26日発行、奥付き、第192頁、
“ハットトリックヒーロー ’93”の項、
第4引用例:「’93 遊戯機械総合年鑑」株式会社アミューズメント産
業出版、平成5年8月26日発行、奥付き、第195頁、
“プレミアーサッカー”の項
第5引用例:特開平2-124192号公報
第6引用例:特開平2-174879号公報
第7引用例:特開平4-343874号公報
第8引用例:特開平5-146552号公報

4.第1引用例に記載の事項及び引用発明
(1)第1引用例〔特開平5-345068号公報〕に記載の事項
【0002】【従来の技術】 パチンコ遊技機等、遊技盤に複数の数字、記号等の図柄を変動表示する表示装置を設け、これらの図柄が所定の組み合わせで停止すると、変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変換する等、入賞率の大きい特別の遊技を行わせる遊技機がある。
【0016】 図2のように遊技盤3の表面には、ガイドレ-ル16で囲われた遊技部17のほぼ中央に各種情報を表示可能な映像表示装置20が、その下方に変動入賞装置21が配設される。
【0017】 変動入賞装置21の直上方には始動口22が配設され、始動口22には入賞球を検出する始動スイッチ23が設置される。
【0018】 24は映像表示装置20の上方に設けられる天入賞口(一般入賞口)、25a?25dは遊技部17の左右に設けられる袖入賞口(一般入賞口)、26はアウト口を示す。
【0024】 映像出力制御装置45には、遊技映像表示データ、ディスプレイ表示データ、遊技情報表示データ、球貸し用表示データ、営業情報用表示データ、その他各種表示データが格納されている。
【0025】 変動入賞装置21は、図2のように遊技盤3に取付けられる基板50の中央に長方形の大入賞口51が形成され、大入賞口51に球を受け入れない閉状態(遊技者に不利な状態)と、球を受け入れやすい開状態(遊技者に有利な状態)とに変換可能な開閉扉52が配設される。
【0027】 大入賞口51の内部には、図示しないが中央に継続入賞口が、その左右に一般入賞口が設けられ、継続入賞口に入賞球を検出する継続スイッチ54が、一般入賞口に入賞球を検出するカウントスイッチ55が設置される。
【0037】 図9は遊技制御装置75、映像出力制御装置45の制御系のブロック構成を、図10は遊技店に設けられる管理装置90を示す。
【0038】 遊技制御装置75は、役物用CPU76、ROM77、RAM78、バッファゲート79、出力ポート80等からなり、ROM77に定めたプログラムデータおよび始動口22の始動スイッチ23、普図始動口60a,60bの普図始動スイッチ61、変動入賞装置21の大入賞口51内の継続スイッチ54、カウントスイッチ55の検出信号に基づいて、映像出力制御装置45に表示制御信号を出力すると共に、記憶表示器39、変動入賞装置21の開閉扉52の駆動ソレノイド53、普通図柄表示器63、記憶表示器64、始動口22の開閉翼57a,57bの駆動ソレノイド58、各ランプ、LEDを制御する。
【0040】 映像出力制御装置45は、ROM、RAMを内蔵した表示器用CPU82、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)83、V-RAM84,85、フォントROM86,87、RAM88等からなり、遊技制御装置75からの表示制御信号および設定器91、不正検出器92、球貸機10、排出制御装置72、外部操作スイッチ93、管理装置90からの表示要求信号に基づいて、映像表示器44の映像を制御する。
【0041】 V-RAM84は遊技用、V-RAM85は割込み用で、フォントROM86に遊技映像表示データ(複数の図柄キャラクタ)、ディスプレイ表示データ、遊技情報表示データ等の遊技用表示データを、フォントROM87に遊技情報表示データ、球貸し用表示データ、営業情報用表示データ、その他各種表示データ等の割込み用表示データを格納している。
【0042】 設定器91は、図8のようにパチンコ遊技機1の裏面部等に配設され、その設定ボタンによってセットされた数値に基づく遊技の図柄キャラクタ、特別の図柄(次の大当たりの発生確率が高くなる)、図柄変動時の更新速度、ラッキーナンバ(連続開放ナンバ)等の表示要求信号(設定信号)を送る。
【0050】 RAM88には、天気予報、交通情報等の情報の表示データ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数も記憶する。
【0059】 特図ゲーム処理は、図14のように処理Noにしたがって各処理に入る(3.01?3.14)。
【0060】 特図始動記憶がないときは、図15の通常動作にて、呼び込み転送データをセットし、特図始動記憶があれば、特図の図柄変動に入る(3.101?3.105)。
【0062】 停止図柄決定は、図17のように始動記憶時に読込んだ乱数を、大当たり確率の変動中かどうかによって選定される大当たり値(特別の図柄の大当たり発生によって増加する)と比較し、乱数が大当たり値と一致すれば、大当たりとして当たり停止図柄を読込み、乱数が大当たり値と異なれば、外れ停止図柄を読込む(3.201?3.206)。
【0067】 右図柄停止(リーチ)では、図21のようにリーチ目が特別の図柄であれば、特別リーチ転送データをセットし、リーチ音、ランプ動作を出力し(3.401?3.407)、処理タイマがタイムアップすると、全停止図柄が一致のときはファンファーレ動作に入り、一致してないときは外れ動作に入る(3.408?3.412)。
【0070】 大当たり動作(特別遊技)に入ると、図24のように変動入賞装置21の開閉扉52を開き、継続スイッチ54がオンする前は、継続入賞前転送データをセットし、継続スイッチ54がオンすると、継続入賞後転送データをセットし、継続入賞音を出力し、同時に継続回数転送データならびに継続スイッチ54、カウントスイッチ55のオン毎にカウント数転送データをセットし、大当たり動作音を出力する(3.551?3.558)。
【0071】 変動入賞装置21の開閉扉52を開いてから、カウント数が所定数(10個)もしくは処理タイマがタイムアップすると、開閉扉52を閉じ、1回の特別遊技を終了する。
【0072】 この際、継続スイッチ54のオンによって継続が可であれば、図25のインターバル動作の終了後、再び大当たり動作に入り、同じく特別遊技を繰り返し、継続が不可もしくは規定回数の特別遊技が終了すると、図26の大当たり終了動作に入る(3.560?3.564)。
【0098】 大当たりの発生にて特別遊技に入ると、継続スイッチ54がオンする前は、図48の大当たり前半処理に入り、フォントROM86,87からカウント数表示、継続回数表示、大当たり出目(大当たり図柄)表示を指令し、このとき特別図柄であれば特別画像合成を指令する(19.01?19.05)。
【0099】 継続スイッチ54がオンすると、図49の大当たり後半処理に入り、フォントROM86,87から同じくカウント数表示、継続回数表示、大当たり出目(大当たり図柄)表示、特別画像合成を指令すると共に、次回の特別遊技の継続を可とする継続権利発生図柄表示を指令する(20.01?20.06)。
【0100】 特別遊技のインターバル中は、図50のインターバル処理に入る(21.01,21.02)。
【0101】 大当たり終了処理は、図51にて規定回数の特別遊技の終了であれば、フォントROM86,87から最終回終了画像を選択し、途中の終了であれば、フォントROM86,87から途中終了画像を選択し、画像更新タイミング毎に画像更新を指令する(22.01?22.04)。
【0110】 通常割込み要求は、遊技の説明、遊技店情報(遊技店の定休日、閉店時間、開店時間、次の遊技機開放時間)、食事中、コマーシャル等の表示要求、天気予報、交通情報、ニュース、ギャンブル情報等の表示要求、ラッキーナンバ表示要求、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数等の表示要求がある。
【0111】 通常割込み処理は、通常遊技時、通常動作時、非遊技時(遊技機が使われていない)に、割込み要求にしたがいフォントROM86,87、RAM88から選択した該当表示データ、管理装置90から送られた表示データを通常割込み画像データにセットする。この表示態様は子画面あるいはスーパーインポーズに設定する。非遊技時には表示態様は全画面でも良い。
【0117】 大当たり確率変動中の表示は、大当たり動作中にないときに、大当たり動作時の遊技指示は、大当たり動作初期に、子画面等にて表示する。
【0120】 通常割込みの遊技の説明、遊技店情報、天気予報、交通情報、ニュース、ギャンブル情報、コマーシャル等は、通常遊技時、非遊技時に所定順に所定時期に、ラッキーナンバ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数等は、通常動作時、非遊技時に連続して定期的に、食事中の表示は、非遊技時にスーパーインポーズ等にて表示する。
【0121】 外部操作スイッチ93を押すと、大当たり動作中にないときに、通常割込み表示に入り、またスイッチ93を押す毎に、通常割込みの遊技の説明、遊技店情報、天気予報、交通情報、ニュース、ギャンブル情報、コマーシャル、ラッキーナンバ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数を切替表示する。
【0123】 図58?図65に各表示例を示す。図58は遊技の図柄キャラクタと共に映像表示器44の画面下部に火災情報を、図59は同じく画面下部に大当たり動作時の遊技指示を、図60は同じく画面下部に遊技店情報をスーパーインポーズした例で、優先順位1の場合は、火災、地震情報、不正表示は、図柄キャラクタ表示を中止し、画面全部を用いて表示する。
【0124】 図61は子画面に打止め指示を、図62は同じく大当たり確率変動中を、図63は同じく大当たり発生回数を、図64は同じくラッキーナンバを、図65は同じく食事中を表示した例である。
【0133】 即ち、遊技表示のほかに、映像表示装置20に、遊技の説明、打止め、獲得球の交換指示、球貸し動作状態、球排出動作状態、遊技店情報(遊技店の定休日、閉店時間、開店時間、次の遊技機開放時間)、食事中、コマーシャル、天気予報、交通情報、ニュース、ギャンブル情報、ラッキーナンバ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数、ラッキーナンバ大当たり発生回数、不正情報、火災、地震情報等が表示される。
【0134】 このため、遊技者は、始動口22の入賞、図柄変動、図柄停止ばかりでなく、種々の情報を得ながら、遊技を楽しく行うことができる。
【0135】 大当たり発生回数、特別大当たり発生回数等の表示から、遊技者は最適な遊技機を選択し得る。

(2)引用発明
前記摘示の記載及び図面によれば、第1引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ガイドレール16で囲まれた遊技部17内には、複数の一般入賞口25a?25dと、始動口22と、打球の受け入れ状態を変動可能な変動入賞装置21と、この変動入賞装置21内に配置された継続入賞口と、複数の図柄の組合せによる特図の図柄変動を行わせる映像表示装置20と、前記始動口22への打球の入賞を条件に、特図の図柄変動を開始させ、映像表示装置20に複数の図柄を変動表示させ、その後、複数の変動図柄を順次、停止表示させ、全停止図柄が一致のときには、前記変動入賞装置21を遊技者に有利な状態に変動し、大当たり動作を開始させるとともに、この大当たり動作を前記継続入賞口への打球の入賞を条件に規定回数継続させる遊技制御装置75及び映像出力制御装置45とを備えた遊技機において、
上記映像出力制御装置45には、前記映像表示装置20における発生した大当り図柄、大当たり動作時の遊技指示、大当たり動作が規定回数の終了であるか否かに応じた最終回終了画像又は途中終了画像、大当たり発生回数等の各種情報を記憶するフォントROM86,87、RAM88を備え、
前記映像表示装置20には、大当たり動作の開始後に、前記フォントROM86,87、RAM88に記憶された、大当り図柄、大当たり動作時の遊技指示、大当たり動作が規定回数の終了であるか否かに応じた最終回終了画像又は途中終了画像等の各種情報を表示する画面と、通常動作時に大当たり発生回数等の各種情報を表示する画面とを備えた遊技機。」

5.対比判断
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ガイドレール16」、「遊技部17」、「一般入賞口25a?25d」、「始動口22」、「変動入賞装置21」、「特図の図柄変動」、「映像表示装置20」、「全停止図柄が一致のとき」、「大当たり動作」、「規定回数」、「遊技制御装置75及び映像出力制御装置45」、「遊技機」は、それぞれ、本願発明1における「ガイドレール」、「遊技部」、「一般入賞口」、「始動口」、「変動入賞装置」、「特別遊技」、「画像表示装置」、「停止表示された複数の停止図柄が予め設定された当り図柄の組合せに一致した場合」、「大当り遊技」、「所定回数」、「電気的制御装置」、「弾球遊技機」に相当する。
また、引用発明が大当りが発生するときの大当り図柄の種類情報をRAM88に記憶しておき、大当たり動作の開始後に発生した大当り図柄をフォントROM86,87を用いて表示するものであることは、技術的に明らかであるから、引用発明における「発生した大当り図柄を記憶するフォントROM86,87、RAM88」及び「大当たり動作の開始後に、大当り図柄を表示する画面」は、本願発明1における「リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程を記憶するリーチ状態記憶手段」及び「大当たり遊技の開始後に、リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態を再現させて表示するリーチ状態再現画面」と対比して、それぞれ、「大当り図柄に関連する情報を記憶する記憶手段」及び「大当たり遊技の開始後に、大当り図柄に関連する情報を再現させて表示する再現画面」として共通する。
そうすると、本願発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点「ガイドレールで囲まれた遊技部内には、複数の一般入賞口と、始動口と、打球の受け入れ状態を変動可能な変動入賞装置と、この変動入賞装置内に配置された継続入賞口と、複数の図柄の組合せによる特別遊技を行わせる画像表示装置と、前記始動口への打球の入賞を条件に、特別遊技を開始させ、画像表示装置に複数の図柄を変動表示させ、その後、複数の変動図柄を順次、停止表示させ、停止表示された複数の停止図柄が予め設定された当り図柄の組合せに一致した場合には、前記変動入賞装置を遊技者に有利な状態に変動し、大当り遊技を開始させるとともに、この大当り遊技を前記継続入賞口への打球の入賞を条件に所定回数継続させる電気的制御装置とを備えた弾球遊技機において、
上記電気的制御装置には、前記画像表示装置における大当り図柄に関連する情報を記憶する記憶手段を備え、
前記画像表示装置には、大当たり遊技の開始後に、前記記憶手段に記憶された、当該大当たりに係る、大当り図柄に関連する情報を再現させて表示する再現画面を備えた弾球遊技機。」
相違点A.本願発明は、リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程の如何によって大当り遊技となる確率が異なる構成であるのに対し、引用発明は、該構成を備えていない点。
相違点B.大当り図柄に関連する情報を記憶して表示する制御において、本願発明は、電気的制御装置には、リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程を記憶するリーチ状態記憶手段を備え、画像表示装置には、大当たり遊技の開始後に、前記リーチ状態を再現させて表示するリーチ状態再現画面を備えるのに対し、引用発明は、電気的制御装置には、発生した大当り図柄を記憶する記憶手段を備え、画像表示装置には、大当たり遊技の開始後に、前記大当り図柄を再現させて表示する再現画面を備えるにとどまる点。
相違点C.本願発明は、電気的制御装置には、リーチ状態記憶手段に記憶された、画像表示装置におけるリーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程の特徴を分析するリーチ状態分析手段を備え、画像表示装置には、前記リーチ状態分析手段による、リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の特徴についての分析結果を表示するリーチ状態分析結果表示画面を備える構成であるのに対し、引用発明は、該構成を備えていない点。

(2)検討判断
i.相違点Aについて
弾球遊技機の技術分野において、リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程の如何によって大当り遊技となる確率が異なるようにした技術は、周知(例えば、特開平5-31233号公報、特開平5-317509号公報参照。以下、「周知技術A」という。)であるから、引用発明に該周知技術Aを採用して、前記相違点Aに係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

ii.相違点Bについて
ところで、画像表示装置を備えた遊技機の技術分野において、遊技中に発生した特に関心が持たれる遊技について、その遊技場面の起点から結果までの進行過程を記憶しておき、該進行過程を適宜に画像表示装置に再現させて表示するようにした技術は、周知(例えば、第2引用例「マイコン BASIC Magazin」第9巻第4号第237頁、第3引用例「’93 遊戯機械総合年鑑」第192頁、第4引用例「’93 遊戯機械総合年鑑」第195頁参照。以下、「周知技術B」という。)である。
また、引用発明は、大当り遊技が発生する契機となった大当り図柄の種類について遊技者が特に関心を持つことを背景に、大当たり遊技の開始後に、前記大当り図柄を再現させて表示するものであることが明らかであるところ、弾球遊技の進行過程においても、リーチ状態から大当たり図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程について、種々の趣向を凝らしたリーチアクションと称するものが一般的に採用され、遊技者の関心を引きつけているものであり、引用発明を認定した第1引用例の段落【0067】には、次の大当たりの発生確率が高くなる特別の図柄によるリーチ状態になると、該リーチ状態から大当たり図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程においてリーチ音及びランプ動作を通常のリーチ態様とは異なる特別リーチ態様のものとすることが記載されている。
そうすると、遊技機の一種である弾球遊技機の技術分野に属する引用発明について、前記周知技術Bに示される、特に関心が持たれる遊技場面の進行過程を記憶して再現する技術を適用し、引用発明に示される、遊技者が特に関心を持つ大当たり図柄を記憶する手段に、大当り遊技が発生する契機となった大当たり図柄に係る情報にとどまらず、同様に遊技者が特に関心を持つことが明らかであるところの弾球遊技の進行過程として、リーチ状態から大当たり図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程を記憶させて、記憶された前記変動過程を特別遊技を行わせる画像表示手段に再現させて表示すること、すなわち、前記相違点Bに係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

iii.相違点Cについて
引用発明は、大当たり動作の開始後に、大当り図柄、大当たり動作時の遊技指示、大当たり動作が規定回数の終了であるか否かに応じた最終回終了画像又は途中終了画像等の各種情報を特別遊技を行わせる画像表示装置に表示するものであり、大当り図柄及び大当たり動作の特徴を分析して表示するものといえる。
ところで、弾球遊技機の技術分野において、大当たり遊技が開始されると、大当り遊技の進行過程や大当り図柄の特徴を分析して、その分析結果に応じた各種の遊技情報やメッセージ、動画を特別遊技を行わせる画像表示装置に表示するようにした技術は、周知(例えば、第5引用例〔特開平2-124192号公報〕、第6引用例〔特開平2-174879号公報〕参照。以下、「周知技術C」という。)である。
すなわち、前記第5引用例には、大当たり遊技の開始時に動画の“大当たり図柄”、“爆発パターン”、“デター”を画像表示装置に切換え表示し、次に大当たり遊技中にサイクル継続に応じて遊技情報としての継続表示データ(“2回目ヒラキマス”、“3回目ヒラキマス”、・・・)を表示し、大当たり遊技の終了時に継続回数が10回での終了であれば、動画の“バンザイパターン”に次いで動画の“ファイトパターン”とメッセージの“モウ1回”を表示し、また、継続回数が10回未満での終了であれば、動画の“バンザイパターン”を表示することなく動画の“ファイトパターン”とメッセージの“モウ1回”を表示するようにして、大当り遊技の進行過程に応じた遊技情報やメッセージ、動画を特別遊技を行わせる画像表示装置に表示する技術が開示されており、大当たり遊技が開始されると、大当り遊技の進行過程の特徴を分析して表示しているものである。
また、前記第6引用例には、大当り図柄がラッキーナンバーであるかどうかを判別して、大当たり遊技の任意の時点において大当り図柄がラッキーナンバーの場合にはゲーム続行可能を意味する『ゾッコウ』の文字を特別遊技を行わせる画像表示装置に表示し、またラッキーナンバー以外の場合にはゲーム終了を意味する『シュウリョウ』の文字を前記画像表示装置に表示する技術が開示されており、大当たり遊技が開始されると、大当り遊技が発生する契機となった大当り図柄の特徴を分析して前記画像表示装置に表示しているものである。
そうすると、引用発明に示される、大当たり遊技の開始後に大当り図柄を再現させて表示するとともに、大当り図柄及び大当たり動作の特徴を分析して表示するものに代えて、前記相違点Bについて検討したように、リーチ状態から大当たり図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程を特別遊技を行わせる画像表示手段に再現させて表示するものとしたときに、前記変動過程を再現する技術に付随させて、前記周知技術Cに示される、大当り遊技の進行過程や大当り図柄の特徴を分析し、その分析結果に応じた各種の遊技情報やメッセージ、動画を特別遊技を行わせる画像表示装置に表示するようにした技術を適用して、前記変動過程の特徴を分析して、その分析結果を表示すること、すなわち、前記相違点Cに係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
iv.作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明並びに前記周知技術A乃至Cに基づいて、当業者が容易に予測できるものである。
v.請求人の主張について
請求人は、リーチ状態から大当たり図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程の如何によって大当り遊技となる確率が異なることのない第1引用例(引用発明)において、前記図柄の変動過程を画像表示手段に再現させて表示すること、さらに、リーチ状態再現画面の解説として分析結果を表示することは、容易に想到できるものではない旨主張している。
しかしながら、前記相違点Bについて検討したように、引用発明は、次の大当たりの発生確率が高くなる特別の図柄によるリーチ状態になると、通常のリーチ態様とは異なる特別リーチ態様をもって表示するものであるから、大当り遊技が発生する契機となった大当り図柄のみならず、前記リーチ態様、すなわち、リーチ状態から大当たり図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程の如何についても遊技者が関心を持つことは明らかであり、該変動過程を再現させて表示する意義及び動機付けがあるといえる。
そうすると、前記相違点Aについて検討したように、リーチ状態から大当り図柄がでるまでの状態の図柄の変動過程の如何によって大当り遊技となる確率が異なるようにした弾球遊技機は、周知技術Aであるところ、該変動過程を示すリーチ態様に遊技者が関心を持つことは引用発明のリーチ態様と同様に明らかであるから、引用発明に前記周知技術Aを採用したものについて、前記周知技術B及びCを適用して、本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
よって、請求人の主張は、採用できない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知技術A乃至Cに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、第1引用例に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-01 
結審通知日 2007-11-08 
審決日 2007-11-20 
出願番号 特願平5-351761
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 中槙 利明
太田 恒明
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 北村 仁  
代理人 竹山 宏明  
代理人 米山 淑幸  

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