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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B65D
管理番号 1170634
判定請求番号 判定2007-600065  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2008-02-29 
種別 判定 
判定請求日 2007-09-10 
確定日 2008-01-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第2947349号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「破断開始部を備えた粘着ラベルを使用した物品包装体の連結構造物」は、特許第2947349号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1.請求の趣旨・手続の経緯
本件判定請求は、平成19年9月10日になされ、その請求の趣旨は、イ号図面及びイ号物件説明書に示す「破断開始部を備えた粘着ラベルを使用した物品包装体の連結構造物」(以下「イ号物件」という。)は、特許第2947349号の発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。
これに対して、平成19年10月10日付けで被請求人に請求書副本を送達するとともに、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの応答もなかった。

第2.本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであって(以下、請求項1、2に係る発明をそれぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)、その構成要件を符号A?Hを付して分説すると次のとおりである。

「【請求項1】
A 内部に物品を収納した物品収納部と
B 該物品収納部の周囲を保持する周縁部と
C を備えた物品包装単体を、
D 複数個位置をずらしてテープ片又はラベルで貼着連接した連結体において、
E 前記物品包装体と前記テープ片又はラベルとの貼着部は、前記物品収納部のみであり、
F 前記テープ片又はラベルは、ミシン目、V字カット又はI字カットを備えている
G ことを特徴とする物品包装単体の連結体。
【請求項2】
H 前記ミシン目、V字カット又はI字カットは、前記周縁部に位置される
ことを特徴とする請求項1に記載の物品包装単体の連結体。」

第3.イ号物件の特定
判定請求書に添付されたイ号説明書の記載事項及びイ号図面の図示内容を総合すると、イ号物件は次のとおり特定されるものである(その構成を符号a?gを付して分説した)。

「a 内部に物品を収納した物品収納部(2)と
b 前記物品収納部(2)の周囲を保持する封止部(3)と
c を備えた物品包装体(1A、1B、1C)を
d 複数個ずらして粘着ラベル(5)で貼着連接した連結体において、
e 前記物品包装体(1A、1B、1C)と前記粘着ラベル(5)の貼着部は前記物品収納部(2)と前記封止部(3)の両方であり、
f-1 前記粘着ラベル(5)は、一方向に複数条の短尺切込み線(7)が配列されて成る破断開始部(6)を備え、
f-2 前記短尺切込み線(7)は、それぞれ平行し且つその配列方向に対して傾斜していると共に、粘着ラベル(5)の縁部に接することなくその近傍に位置し、また、物品収納部(2)及び封止部(3)にまたがって連続して位置している
g ことを特徴とする物品包装体(1A、1B、1C)の連結構造物。」

第4.本件特許発明1についての対比・判断
1.構成要件Aについて
イ号物件の構成aは、本件特許発明1の構成要件Aと同一であり、本件特許発明1の構成要件Aを充足する。
2.構成要件Bについて
イ号物件の構成bの「封止部(3)」は、本件特許発明1の「周縁部」に相当する。そうすると、イ号物件の構成bである「前記物品収納部(2)の周囲を保持する封止部(3)」は、本件特許発明1の構成要件Bである「該物品収納部の周囲を保持する周縁部」を充足する。
3.構成要件Cについて
イ号物件の構成cの「物品包装体(1A、1B、1C)」は、本件特許発明1の「物品包装単体」に相当する。そうすると、イ号物件の構成cは、本件特許発明1の構成要件Cを充足する。
4.構成要件Dについて
イ号物件の構成dの「粘着ラベル(5)」は、本件特許発明1の「テープ片又はラベル」に相当する。そうすると、イ号物件の構成dである「複数個ずらして粘着ラベル(5)で貼着連接した連結体」は、本件特許発明1の構成要件Dである「複数個位置をずらしてテープ片又はラベルで貼着連接した連結体」を充足する。
5.構成要件Gについて
イ号物件の構成gの「物品包装体(1A、1B、1C)」は、上記(3)のとおり、本件特許発明1の「物品包装単体」に相当し、イ号物件の構成gの「連結構造物」は、本件特許発明1の「連結体」に相当するといえる。そうすると、イ号物件の構成gは、本件特許発明1の構成要件Gを充足する。
6.構成要件Eについて
(1)構成要件Eについての充足性の判断
イ号物件の構成eの「前記物品包装体(1A、1B、1C)と前記粘着ラベル(5)の貼着部は前記物品収納部(2)と前記封止部(3)の両方であり」という貼着部の態様は、「前記物品包装体と前記テープ片又はラベルとの貼着部は、前記物品収納部のみであり」という本件特許発明1の貼着部の態様とは明らかに異なるものである。したがって、イ号物件は、少なくとも、本件特許発明1の構成要件Eを文言上充足しない。

(2)構成要件Eについての均等の判断
最高裁判決(平成10年2月24日判決言渡:平成6年(オ)第1083号)は、特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中に、相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、以下の要件をすべて満たす対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であるとしている。
(1)上記異なる部分が特許発明の本質的部分でない。
(2)上記異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏する。
(3)上記異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えることが、対象製品等の製造等の時点において、当業者が容易に想到することができたものである。
(4)対象製品等が特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は公知技術から当業者が容易に推考することができたものではない。
(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情がない。
そこで、イ号物件が上記要件(1)を満たすか否かについて検討するに、本件特許明細書及び図面の記載によれば、従来の複数の物品包装単体を貼着連接した連結体は「例えば、食肉を収納する物品収納部とその周囲に位置する周縁部とからなる各物品包装単体をその位置を少しずらしてずらし重ねした上で、これら各物品包装単体における各物品収納部と各周縁部との上下面をテープ片(又はラベル)の全面で貼着することにより連接して形成されている」(本件特許明細書段落【0002】)ものであり、かかる従来の技術においては、「テープ片(又はラベル)の全面が前記物品包装単体の連結体の収納部と周縁部とに貼着されていて、物品包装単体とテープ片(又はラベル)との接着面積が多くなっているために、テープ片を切断すること、あるいは剥離することが面倒であり、場合によっては、前記テープ片を切断するために刃物の使用を余儀なくされている」(本件特許明細書段落【0003】)という課題を有していたところ、本件特許発明1は、このような課題を解決し、「物品包装単体の連結に適用されたテープ片(又はラベル)を刃物等の器具を使用せずに容易に切断及び剥離可能とし、物品包装単体毎に簡単に分離・保管し得るようにした物品包装単体の連結体を提供すること」(本件特許明細書段落【0004】)を目的として、特に「前記物品包装体と前記テープ片又はラベルとの貼着部は、前記物品収納部のみであり」及び「前記テープ片又はラベルは、ミシン目、V字カット又はI字カットを備えている」という技術的手段を採用したものであり、前者の技術的手段により、「連結体を各物品包装単体に分離するとき、前記テープ片又はラベルを物品包装体の貼着部でない部から剥がすことができる」(本件特許明細書段落【0006】)という作用効果を、後者の技術的手段により「該テープ片又はラベルの切断・剥離作業が容易で、連結体からの物品包装単体の分離が極めて簡単にできる」(本件特許明細書段落【0006】)という作用効果を奏するものである。
本件特許発明1に関する上記記載事項に照らせば、本件特許発明1の目的は、上記のとおり、テープ片(又はラベル)の全面が物品包装単体の連結体の収納部と周縁部とに貼着されていて、物品包装単体とテープ片(又はラベル)との接着面積が多くなっているために、テープ片を切断すること、あるいは剥離することが面倒であり、場合によっては、テープ片を切断するために刃物の使用を余儀なくされているという従来の技術の課題を解決するものであり、少なくとも、物品包装体とテープ片又はラベルとの貼着部は物品収納部のみであることが、上記本件特許発明1の目的を達成するために必須の構成要件であるといういうことができる。
また、本件判定請求人が甲第2号証として提示した実用新案登録第2574527号公報は本件特許発明1に係る特許出願後に公知となったものであるが、その公開公報である実願平3-84806号(実開平5-26870号)のCD-ROMには、「収納部と周縁部とを有する包装体数個を少しずつずらして重ねた上で、その表及び裏にそれぞれ1枚ずづの印刷ラベル又は印刷ステッカーを当接して、その収納部と周縁部とを順次連結貼付してなる連結包装食品」が記載されているものと認められ、当該文献の記載事項に照らせば、「内部に物品を収納した物品収納部と該物品収納部の周囲を保持する周縁部とを備えた物品包装単体を複数個位置をずらしてテープ片又はラベルで貼着連接した物品包装単体連結体」(構成要件A?D、Gを具備するものに相当する。)は、本件特許発明1に係る特許出願前の公知技術であると認められる。
このように、本件特許明細書及び図面並びに当該公知技術から判断すれば、本件特許発明1の構成中でイ号物件と異なる部分、すなわち、少なくとも、物品包装体とテープ片又はラベルの貼着部は物品収納部のみである点(構成要件E)は、本件特許発明1の本質的部分であるといわざるを得ない。
したがって、イ号物件は、上記要件(1)を満たしていないから、他の要件について検討するまでもなく、本件特許発明1と均等なものであるということはできない。

7.構成要件Fについて
構成要件Eについての対比・判断は、上記6.のとおりであるから、イ号物件は本件特許発明1の技術的範囲に属しないが、一応、構成要件Fについての対比・判断も付言するに、イ号物件の構成f-1の「短尺切込み線(7)」は、本件特許明細書及び図面の記載に照らせば、明らかに本件特許発明1の「ミシン目」とは異なるものである。また、本件特許発明1の「V字カット」及び「I字カット」については、本件特許明細書及び図面にはそれらの用語の定義等に関する記載は見当たらないものの、技術常識に照らせば、テープ片(又はラベル)の縁部に設けられ、各物品包装単体の各々を両手で把持して分離する際にテープ片(又はラベル)の切断の基点となるV字状又はI字状の「切欠き」ないし「切込み」を意味するものと認められ、そうであるとすれば、イ号物件の「短尺切込み線(7)」は、構成f-2のとおり、「粘着ラベル(5)の縁部に接することなくその近傍に位置」するものであるから、本件特許発明1の「V字カット」及び「I字カット」とは異なるものであって、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件Fを充足しないということができる。

第5.本件特許発明2についての対比・判断
本件特許発明2は、本件特許発明1の構成要件A?Gを全て具備するとともに、更に構成要件Hを具備するものであるから、イ号物件は、本件特許発明1と同様に、少なくとも本件特許発明2の構成要件Eを充足するものではなく、また、本件特許発明2と均等なものであるということはできない。

第6.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明1及び2の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2007-12-21 
出願番号 特願平10-154082
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 溝渕 良一  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 平瀬 知明
山内 康明
登録日 1999-07-02 
登録番号 特許第2947349号(P2947349)
発明の名称 物品包装単体の連結体  
代理人 小林 智昭  

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