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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61H
審判 全部無効 判示事項別分類コード:83  A61H
管理番号 1171285
審判番号 無効2004-80198  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-22 
確定日 2007-12-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2773896号「マッサージ機」の特許無効審判事件についてされた平成17年9月13日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成17年(行ケ)第10750号、決定日:平成18年2月22日)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2773896号の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
(1)本件特許第2773896号に係る発明についての出願は、平成1年5月10日に出願され、平成10年4月24日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。
(2)これに対し、請求人は、平成16年10月22日に請求項1?4に係る発明について特許無効審判を請求した。
(3)被請求人は、平成17年1月14日付けで答弁書及び訂正請求書を提出し、また、請求人は、同年2月24日付けで弁駁書を提出した。
(4)請求人及び被請求人は、平成17年6月29日にそれぞれ口頭審理陳述要領書を提出し、同日に口頭審理が行われた。
(5)平成17年9月13日付けで請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする旨の審決がなされた。
(6)これに対し、被請求人は、平成17年10月24日に審決の取消しを求める訴えを知的財産高等裁判所に提起した(平成17年(行ケ)第10750号)後、90日の期間内に特許請求の範囲の減縮等を目的とする訂正審判を請求したところ、当該裁判所は、平成18年2月22日付けで、特許法181条2項の規定を適用して審決の取消しの決定をした。
(7)その後、被請求人は、特許法134条の3第2項の規定により指定された期間内の平成18年7月28日付けで訂正請求書を提出し、これに対し、請求人は、同年9月8日付けで弁駁書を提出し、さらに、これに対し、被請求人は、平成18年10月20日付けで答弁書を提出した。
(8)なお、被請求人は、平成18年8月8日付けで答弁書(上申書)を提出したので、これに対し、請求人は、平成18年10月16日付けで弁駁書を提出した。

第2.訂正の可否に対する判断
1.訂正の内容
本件特許の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、平成18年7月28日付け訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)によると、次の事項をその訂正内容とするものである。
(1)訂正事項1
本件特許明細書における特許請求の範囲の記載、
「【請求項1】 昇降駆動装置(1)によって昇降操作される昇降フレーム(2)を設け、マッサージ子(3)を備えたマッサージ子作動装置(4)を、前記昇降フレーム(2)に設けてあるマッサージ機であって、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して運動自在に取付け、前記組付枠体(5)を前記昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置(6)を、前記組付枠体(5)と前記昇降フレーム(2)との間に設けてあるマッサージ機。」を、
「【請求項1】 昇降駆動装置(1)によって昇降操作される昇降フレーム(2)を設け、マッサージ子(3)を備えたマッサージ子作動装置(4)を、前記昇降フレーム(2)に設けてあるマッサージ機であって、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して運動自在に取り付け、前記組付枠体(5)を前記昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置(6)を、前記組付枠体(5)と昇降フレーム(2)との間に設け、前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができるマッサージ機。」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件特許明細書における特許請求の範囲の記載、
「【請求項2】 前記組付枠体(5)の前記昇降フレーム(2)に対する運動は、前後移動又は左右移動又は左右回動のうちの少なくとも一種の動きである請求項1記載のマッサージ機。」を、
「【請求項2】 前記組付枠体(5)の前記昇降フレーム(2)に対する運動は、前後移動又は左右移動又は左右回動のうちの少なくとも一種の動きであって、前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、前記マッサージ子作動装置(4)によるマッサージ子の動作に組付枠体(5)によるマッサージ子の動作を加えた複合的なマッサージ動作をマッサージ子(3)に与える請求項1記載のマッサージ機。」に訂正する。
(3)訂正事項3
本件特許明細書における特許請求の範囲の記載、
「【請求項4】 前記マッサージ子作動装置(4)は、前記マッサージ子(3)を、もみ動作又はたたき動作又は振動動作のうちの少なくとも一つを行わせる駆動伝達機構(7)を備えたものである請求項1又は2又は3記載のマッサージ機。」を、
「【請求項4】 前記マッサージ子作動装置(4)は、前記マッサージ子(3)にたたき動作を行わせる駆動伝達機構(7)を備え、アーム支持体(21)を介してアーム(20)が上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子(3)にたたき動作をさせるように構成して成り、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して前後平行移動自在に取付けた請求項1、2又は3記載のマッサージ機。」に訂正する。
(4)訂正事項4
本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載のうち、
「本発明のマッサージ機の特徴構成は、マッサージ子作動装置の組付枠体を、昇降フレームに対して運動自在に取付け、前記組付枠体を前記昇降フレームに対して動かす駆動装置を、前記組付枠体と前記昇降フレームとの間に設けてあることにあり、その作用、効果は次の通りである。」(特許公報2ページ3欄20?25行)を、
「本発明のマッサージ機の特徴構成は、マッサージ子作動装置の組付枠体を、昇降フレームに対して運動自在に取付け、前記組付枠体を前記昇降フレームに対して動かす駆動装置を、前記組付枠体と前記昇降フレームとの間に設け、前記マッサージ子作動装置と前記駆動装置とによって、複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えるように構成したことにあり、その作用、効果は次の通りである。」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載のうち、
「個人差のないマッサージ効果を機体できるようになる。」(特許公報3ページ6欄16?17行)を、
「個人差のないマッサージ効果を期待できるようになる。」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1におけるマッサージ子作動装置(4)及び駆動装置(6)について「前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができる」という構成を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
また、上記訂正事項1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、「本発明の目的は、簡単な改造で、もみ動作及びたたき動作だけでなく、より多くの種類の動作又はそれらの複合動作を行わせられるマッサージ機を提供する点にある。」(特許公報の2ページ3欄15?18行参照)、「駆動装置によって、昇降フレームに対して組付枠体を動かせば、マッサージ子作動装置全体が動き、マッサージ子作動装置によるマッサージ子の動きに加えて、別の動きが、駆動装置によってマッサージ子に与えられる。」(特許公報の2ページ3欄27?31行参照)、「組付枠体を運動自在に取付けて、その駆動装置を設けるだけの簡単な改造で、マッサージ子作動装置の構造を変えずとも、例えばもみ動作及び、たたき動作や、その他の動作の少なくとも2種以上の動作を、マッサージ子に与えて、今までになかった複合動作を行わせることができ、マッサージ機の機能をより向上させやすくなった。」(特許公報の2ページ3欄33?39行参照)との記載があることから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
上記訂正事項2は、訂正前の請求項2におけるマッサージ子作動装置(4)及び駆動装置(6)について「前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、前記マッサージ子作動装置(4)によるマッサージ子の動作に組付枠体(5)によるマッサージ子の動作を加えた複合的なマッサージ動作をマッサージ子(3)に与える」という構成を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
また、上記訂正事項2は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、「本発明の目的は、簡単な改造で、もみ動作及びたたき動作だけでなく、より多くの種類の動作又はそれらの複合動作を行わせられるマッサージ機を提供する点にある。」(特許公報の2ページ3欄15?18行参照)、「駆動装置によって、昇降フレームに対して組付枠体を動かせば、マッサージ子作動装置全体が動き、マッサージ子作動装置によるマッサージ子の動きに加えて、別の動きが、駆動装置によってマッサージ子に与えられる。」(特許公報の2ページ3欄27?31行参照)、「組付枠体を運動自在に取付けて、その駆動装置を設けるだけの簡単な改造で、マッサージ子作動装置の構造を変えずとも、例えばもみ動作及び、たたき動作や、その他の動作の少なくとも2種以上の動作を、マッサージ子に与えて、今までになかった複合動作を行わせることができ、マッサージ機の機能をより向上させやすくなった。」(特許公報の2ページ3欄33?39行参照)との記載があることから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
上記訂正事項3は、訂正前の請求項4における駆動伝達機構(7)について「たたき動作」を行わせるものだけに限定するとともに、「アーム支持体(21)を介してアーム(20)が上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子(3)にたたき動作をさせるように構成して成り」という構成を付加し、さらに、マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)について「前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して前後平行移動自在に取付けた」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
また、上記訂正事項3は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、「つまり、前記第1横軸(18)の両端部夫々に、ベアリング(24)取付用軸部(25)を、偏心させて連設し、軸部(25)にベアリング(24)を介してクランク用ロッド(26)の一端側を取付け、クランク用ロッド(26)の他端をアーム支持体(21)に連結して、第1横軸(18)の回転に伴って、クランク用ロッド(26)が上下に往復移動し、このクランク用ロッド(26)の上下往復移動によって、アーム支持体(21)を介してアーム(20)が上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子(3)を夫々たたき動作させるように構成してある。」(特許公報の2ページ4欄33?42行参照)、「前記組付枠体(5)は、前後揺動自在に横軸(11)で枢支する以外に、前後平行移動自在に昇降フレーム(2)に取付けてあってもよく、また、左右揺動自在や左右平行移動自在に昇降フレーム(2)に取付けてあってもよく、更には、組付枠体(5)を、上下軸芯周りに左右回動自在に取付けてあってもよく、また、前記各動きを組合わせた複合的な動きを行わせられるように、昇降フレーム(2)に取付けてあってもよい。」(特許公報の3ページ5欄19?26行参照)との記載があることから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
上記訂正事項4は、上記訂正事項1の訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るためになされた訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、「(1)訂正事項1について」で述べた理由と同様の理由により、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(5)訂正事項5について
上記訂正事項5は、発明の詳細な説明における「個人差のないマッサージ効果を機体できるようになる。」に含まれた誤記を、「個人差のないマッサージ効果を期待できるようになる。」に訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものであって、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法134条の2第1項ただし書に適合し、特許法134条の2第5項において準用する同法126条3項及び4項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3.本件発明について
平成18年7月28日付けの訂正請求による訂正は認められたので、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下順に、「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、訂正明細書の記載からみて、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次のとおりのものと認められる。
(1)本件発明1
「【請求項1】 昇降駆動装置(1)によって昇降操作される昇降フレーム(2)を設け、マッサージ子(3)を備えたマッサージ子作動装置(4)を、前記昇降フレーム(2)に設けてあるマッサージ機であって、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して運動自在に取り付け、前記組付枠体(5)を前記昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置(6)を、前記組付枠体(5)と昇降フレーム(2)との間に設け、前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができるマッサージ機。」
(2)本件発明2
「【請求項2】 前記組付枠体(5)の前記昇降フレーム(2)に対する運動は、前後移動又は左右移動又は左右回動のうちの少なくとも一種の動きであって、前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、前記マッサージ子作動装置(4)によるマッサージ子の動作に組付枠体(5)によるマッサージ子の動作を加えた複合的なマッサージ動作をマッサージ子(3)に与える請求項1記載のマッサージ機。」
(3)本件発明3
「【請求項3】 請求項1記載のマッサージ機であって、人体と前記昇降フレーム(2)との遠近方向における人体の凹凸形状を検出する第1検出手段を設けると共に、人体に対するマッサージ子(3)の相対位置を検出する第2検出手段を設け、前記第1検出手段と前記第2検出手段からの検出結果に基づいて、前記マッサージ子(3)の人体に対する相対位置が一定になるように、前記組付枠体(5)を前記昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置用制御手段を設けてあるマッサージ機。」
(4)本件発明4
「【請求項4】 前記マッサージ子作動装置(4)は、前記マッサージ子(3)にたたき動作を行わせる駆動伝達機構(7)を備え、アーム支持体(21)を介してアーム(20)が上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子(3)にたたき動作をさせるように構成して成り、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して前後平行移動自在に取付けた請求項1、2又は3記載のマッサージ機。」

第4.請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第10号証を提出するとともに、無効とすべき理由を次のように主張する。
(理由1)
請求項1?4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2?10号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法29条1項3号の規定又は同法29条2項の規定に違反してされたものである。
(理由2)
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、請求項3及びこれを引用する請求項4に係る発明につき、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載したものではないから、本件特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則6条2項の規定によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法(昭和62年法律27号)36条3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(証拠方法)
甲第1号証:特開昭52-82883号公報
甲第2号証:特開昭63-315053号公報
甲第3号証:特開昭62-240056号公報
甲第4号証:特公昭59-24825号公報(後記の乙第1号証と同じ)
甲第5号証:特開昭64-83260号公報
甲第6号証:特開昭63-183058号公報
甲第7号証:特開昭63-186649号公報
甲第8号証:特開昭63-79655号公報
甲第9号証の1:米国特許第3882856号明細書
甲第9号証の2:米国特許第3882856号明細書の翻訳文
甲第10号証:実願昭61-162056号(実開昭63-68338号)のマイクロフィルム

第5.被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として乙第1号証?乙第3号証を提出するとともに、その理由を次のように主張する。
(1)訂正後の請求項1?4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許は、特許法29条1項3号の規定又は同法29条2項の規定に違反してされたものではない。
(2)請求項3に記載した構成要件は、例えば乙第1号証に示されるように当業者であれば容易に想到することができるものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明において「これ以上の具体的な構成説明をするには及ば」ないものといえるから、本件特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則6条2項の規定によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法(昭和62年法律27号)36条3項に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。また、請求項3を引用する請求項4についても同様である。
(証拠方法)
乙第1号証:特公昭59-24825号公報
乙第2号証:日本語大辞典、第2版、講談社、p.2058
乙第3号証:特開平5-84266号公報

第6.甲各号証の記載事項
請求人が提出した甲各号証のうちの甲第1号証?甲第4号証、甲第8号証?甲第10号証には、それぞれ、次の事項が記載されている。
1.甲第1号証の記載事項
本件発明の特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開昭52-82883号公報)には、図面の第1図?第7図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「背もたれ部内に揉み球の上下用の螺軸およびガイド支柱を備えたマツサージ機において、該螺軸およびガイド支柱に枠体を装着するとともに、該枠体内に揉み球の揺動駆動部を背もたれ部の前面と直交する垂直な面上において角度回動可能に枢着し、背もたれ部からの揉み球の突出量を任意に変えることができるようになしたことを特徴とする椅子式電気マツサージ機。」(公報1ページ左下欄5?12行)
(ロ)「本発明は背もたれ部の前面に上下動可能な揉み球を備えた椅子式電気マツサージ機における揉み球の突出度合を調節できるものに関する。」(公報1ページ左下欄14?16行)
(ハ)「以下本発明の実施例を示した図面について説明すると、1はマツサージ機主体、2は背もたれ部、3は揉み球、4は揉み球3の揺動駆動部、5は揉み球の上下動用の螺軸、そして6はガイド支柱であつて、周知のように螺軸5に正回転あるいは逆回転を与えることにより背もたれ部2の前面に突出した揉み球3を所望の位置に上下動し得るようになつている。本発明においては、かかるマツサージ機において、上記した揺動駆動部4を直接螺軸5およびガイド支柱6に装着せず、該螺軸5およびガイド支柱6に上部において水平に断面すると、その形状が略コ字状をした枠体7を装着するとともに、該枠体7内に揉み球3の揺動駆動部4を背もたれ部2の前面2’を直交する垂直な面上において角度回動可能に枢着し、背もたれ部からの揉み球の突出量を任意に変えることができるようにしたものであつて、」(公報1ページ右下欄第16行?2ページ左上欄第12行)
(ニ)「このように本発明は、背もたれ部2内に揉み球3の上下動用螺軸5、ガイド支柱6を備えたマツサージ機において、該螺軸5およびガイド支柱6に枠体7を装着するとともに、該枠体7内に揉み球3の揺動駆動部4を背もたれ部2の前面2’と直交する垂直な面上において角度回動可能に枢着したものであるから、ハンドレバー12又はつまみ部19を回動操作することにより、揉み球3の突出量を簡易且つ確実に調節することができる。」(公報2ページ左下欄15行?右下欄3行)
(ホ)「従つて本発明によれば人体に対する揉み球3の作用位置に適応して背もたれ部2の前面2’からの揉み球3の突き出し量を定めて使用することができ、特に背もたれ部2の傾斜角度をリクライニングできるマツサージ機に適用すれば、背もたれ部2の傾斜によつて生じる前述した問題点を解消することができ、安楽な姿勢でもつて快適なマツサージ作用を得ることができる。」(公報2ページ右下欄4?11行)

上記記載事項(イ)?(ホ)、並びに図面に示された内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
(引用発明1)
「背もたれ部2内に揉み球3の上下動用の螺軸5及びガイド支柱6を備えたマツサージ機において、該螺軸5及びガイド支柱6に略コ字状の枠体7を装着するとともに、該枠体7内に揉み球3の揺動駆動部4を背もたれ部2の前面2’と直交する垂直な面上において角度回動可能に枢着し、背もたれ部2からの揉み球3の突出量を、ハンドレバー12又はつまみ部19を回動操作することにより、任意に変えることができるようにした椅子式電気マツサージ機。」

2.甲第2号証の記載事項
同じく甲第2号証(特開昭63-315053号公報)には、図面の第1図?第13図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「本発明は少なくとも偏心または傾斜した内輪に対して遊転自在とされている外輪より突設したアームに施療子を設けているマッサージ機に関するものである。」(公報1ページ右下欄第4?7行)
(ロ)「以下本発明を図示の実施例に基づいて詳述する。このマッサージ機は、椅子の背もたれやベッド内に組み込まれるものであるが、図示例では第8図に示すように、椅子のリクライニング自在とされている背もたれ内に組み込むものを示している。」(公報3ページ左上欄2?6行)
(ハ)「次に動作について説明する。モータによって主軸1を回転させた場合、主軸1と共に回転する内輪2が主軸1に対して偏心且つ傾斜したものとなっているために、この内輪2に遊転自在に装着されている外輪3にアーム4を介して取り付けられた施療子5は、連結リンク8によってアーム4の動きに制限が加えられていることもあって、主軸1の回転に伴ない、第2図乃至第4図に示す3次元的な軌跡lを描く運動、すなわち上下方向と主軸1の軸方向と主軸1からの突出方向とに位置を変化させる運動を行なう。…(中略)… このような動きを対称に行なう一対の施療子5,5は、使用者の背面にいわゆる「ねりもみ」のマッサージを与える。…(中略)… モータによって送りねじ25を回転させることで、リンク16と回転板15とを介して、第5図に示すように、補助軸13のまわりに回転軸12を回転させると、これに伴なってアーム4及び外輪3が内輪2のまわりを回転し、そして施療子5は使用者の背面が位置することになる正面方向への突出量を変化させることから、主軸1を回転させてマッサージを得るにあたり、施療子5を第5図中に実線で示す位置においている時には強い「ねりもみ」のマッサージを、鎖線で示す位置においている時には、弱い「ねりもみ」のマッサージを行なう。強弱の調節を行なえるようになっているわけである。」(公報4ページ右上欄17行?右下欄10行)
(ニ)「主軸1ではなく、回転軸12を回転させた場合、回転軸12と共に偏心部材7が回転することから、この場合には第6図に示すように、回転軸12の軸まわりの偏心部材7の回転につれて動かされる連結リンク8が、ボールジョイント44で連結されているアーム4を動かすものであり、この時のアーム4の動きは止まっている内輪2のまわりを外輪3と共に回動する動きとなることから、アーム4先端の施療子4は、内輪2の位置にもよるが、正面から見て、ほぼ上下方向の直線往復運動となり、たたきマッサージを行なうことになる。」(公報4ページ右下欄11行?5ページ左上欄2行)

上記記載事項(イ)?(ニ)、並びに図面に示された内容を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
(引用発明2)
「椅子のリクライニング自在とされている背もたれ内に組み込まれるマッサージ機であって、マッサージ動作を行う一対の施療子5,5の使用者の背面が位置することになる正面方向への突出量を変化させるためにモータを用いた駆動装置を具備するマッサージ機。」

3.甲第3号証の記載事項
同じく甲第3号証(特開昭62-240056号公報)には、「ローラマッサージ機」の発明に関して、マッサージの種別(指圧、たたき、バイブレーションの区別)および振幅(強さ)、周期(ピッチ)、波形(圧力変化の度合)の異なったパターンを記憶し、機能すべき特性曲線を選択することにより、マッサージローラの転動圧力を当該記憶した特性曲線にもとづき変化させることができるようにしたものが記載されている(公報2ページ右上欄20行?左下欄12行参照)。

4.甲第4号証の記載事項
同じく甲第4号証(特公昭59-24825号公報)には、「マッサージ機」の発明に関して、図面の第1図?第9図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「背面曲線が記憶されたならば、制御素子CPUは次のプログラムに移り、モータ12を回転させてキヤリア6を定速移動させるとともにモータ29の正逆回転を制御して施療子22を身体の背面に所定の圧力で接触させるのである。すなわち、すでに記憶されたxi点におけるyiと施療子22とともに身体に接している接触子37から求めた現時点におけるy’iとの差|yi+ΔA-y’i|が一定量ΔE内に納まるようにモータ29を制御するのである。つまりyi+ΔA-y’i>0であれば上下軸25を上げ、yi+ΔA-y’i<0であれば上下軸25を上げyi’の数値を可減し、|yi+ΔA-y’i|≦ΔEとなるまでモータ29を回転させるわけである。ΔAがすなわち施療子22の身体への圧接力となるわけであり、ΔEは許容誤差となる微少量である。この制御フローチャートを第9図に示す。施療子22は前に記憶したxi点におけるyiよりもΔA±ΔEだけ上方に位置して動くわけであるからxiの各点において常に所定圧で接触子22が身体に接するわけである。」(公報3ページ5欄6行?6欄2行)
(ロ)「ΔAの値を随時切換えることができるようにすれば強弱を選択できるものとなる。」(公報3ページ6欄2?4行)
(ハ)「上記実施例においては施療台1を寝台型としたが、背もたれ内に組み込んだ椅子型でも良く、また施療子22も単にローリングマッサージを行なうだけのローラ型のものを示したが、もちろんもみ運動を行なうもの、例えば回転駆動される一対の相対して傾斜したもみ輪のような構成のものであってもよい。」(公報3ページ6欄9?15行)

5.甲第8号証の記載事項
同じく甲第8号証(特開昭63-79655号公報)には、「マッサージ装置」の発明に関して、図面の第1図?第15図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「一対のマッサージ子1,1は基板2上に回転可能に支持された互いに噛み合つているギア8,8上に固定されており、該ギア8,8の正逆回転でマッサージ子1,1相互の間隔が広くなつたり狭くなつたりする。…(中略)…4はマッサージ子を左右揺動させるためのモータであって、該モータ4の出力軸に固定の小ギア3’が前記ギア3の1方と噛み合つている。」(公報2ページ右下欄6?18行)
(ロ)「6は該基板2を上下(又は前後)に押し出すための押出用のモータであつて、該モータ6の出力軸には偏心カム7が固定されているので、この偏心カム7による押出機構で基板2は軸支5,5部を支点として上下(又は前後)方向へ押出されるように形成されている。尚基板を上下(又は前後)動させる押出手段は前記に限定されるものではなく、例えば第7図に示すような偏心クランクその他の回転機構も採用される。」(公報3ページ左上欄1?9行)
(ハ)「第5図乃至第8図に示す如く、ねじ棒8の正逆回転によつてガイド棒9に沿つて上下往復移動するにようして椅子内に組込んで椅子式マッサージ機としたり、…(中略)…することもできる。」(公報3ページ左上欄14?20行)
(ニ)「第9図のA1の如きマッサージ子の左右揺動幅変更手段14によつてもみ幅を変化させるモータ4の特性曲線を選定し、例えば、第9図のA2の如きマッサージ子の押出量変更手段15によつてマッサージ子の押出量を変化させるモータ6の特性曲線を選択すれば、第10図、第11図に示すように、その合成されたマッサージ子の軌跡を示す曲線は前記第9図のA1,A2の特性曲線を種々に変えることによつて大、中、小の数段階に亘り変化させることができる。前記マッサージ子の左右揺動用のモータ4及び上下(又は前後)に押し出す押出用のモータ6は速度トルク特性曲線が垂下特性を有するもの(例えば第12図の特性曲線)を使用し、モータ4,6に対する入力電流又は電圧をマイクロコンピュータによつて制御し、マッサージ子の身体に対する接触圧を所定の振幅、波形、周期で選んだ特性曲線で変化させるものである。」(公報3ページ右上欄6行?左下欄3行)
(ホ)「もみマッサージにおいてはもみ幅の変更、指圧、たたき、バイブレーションマッサージ等においては当接位置の変更はマッサージ子の左右揺動幅変更手段14を使用者が操作することによつて、使用者の体格や好みにあつた、もみ幅調整や、マッサージ子の当接位置調整が簡易に得られる。又、例えば、指圧マッサージや、たたきマッサージ等において、マッサージ子の身体に対する押圧力が弱く、もの足りないと感じた時や、逆に強過ぎると感じた時は、マッサージ子の押出量変更手段15を強弱調整することによつて、ユーザーにおいて各自の好みに合つたマッサージの押圧力を自由に選定することができる。更に前記マッサージ子の左右揺動幅変更手段14とマッサージ子の押出量変更手段15を同時に作動させると、いままでにない立体的なもみマッサージが施される。」(4ページ左上欄1?17行)
(へ)第10図には、横軸にマッサージ子の左右揺動幅をとり、縦軸にマッサージ子の押出量をとった座標に、合成されたマッサージ子の軌跡を示す曲線が図示されている。

6.甲第9号証の記載事項
同じく甲第9号証(米国特許第3882856号明細書)には、「人体用の治療操作器具」に関して、図面の第1図?第4図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「ドライブモータ41、減速ギヤボックス43及び出力軸44は、バイブレイションマウント42によって十字支持板32の下にぶら下がるように取り付けられている。出力軸44はスプロケット45及びチェーン46によって軸33aに設けられたスプロケット47につながっている。このように、モータ41は減速ギヤボックス43を通してローラドラム装置33を回転させるため、ローラ38,39,40は開口部15に接する身体各部が上下するように圧力及び極小の突きを加える。この方法により、起伏及び周期的振動に富んだ効果的なマッサージと操作を得ることができる。」(特許明細書3欄54?66行、翻訳文(23))
(ロ)「ローラが人体にかかる圧力を変化させるために、矩形状開口部15に対するローラドラム装置33の仰角位置が調節される。指示アーム30,31の位置は十字支持板32に固定され、下方へ延びる支柱アーム51によって制御されている。往復台の枠組み23に取り付けられた電動ウインチ52はばね54へつながるケーブル53を備えている。ばね54の一端部はアーム51の端に取り付けられている。このように、ローラドラム装置33の仰角位置は、ばね54の張力が増すようにケーブル53を張ることにより上げることが可能である。ケーブル53を張ったり緩めたりすることにより、アーム30,31はA方向へ移動し、ローラ38,39,40が人体にかける圧力が増減する。ストップ55がケーブル53に取り付けられており、作動中のローラドラム装置の上下の仰角位置を制御するためにリミットスイッチ(図示しない)に接するようになっている。ケーブル53とばね54の一端の間に張力計(図示しない)を挿入し、ローラによって人体にかかっている力を電気信号によって表示することも可能である。」(特許明細書4欄15?39行、翻訳文(26))

7.甲第10号証の記載事項
同じく甲第10号証(実願昭61-162056号(実開昭63-68338号)のマイクロフィルム)には、「全身マッサージ機」に関して、図面の第1図?第5図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「駆動モーター8を駆動させることにより減速機7を介してラックギア6が回転し、移動台車3はガイドレール2上を長手方向に沿って往復動する。」(明細書4ページ18行?5ページ1行)
(ロ)「移動台車3の左方部には振動ローラ10を有する振動機構が設けられている。」(明細書5ページ8?9行)
(ハ)「また、以上の振動機構を保持するフレーム18下部にはモータ20及び減速機21の駆動により上下動可能なギア軸19が設けられており、振動ローラ10の高さ位置を任意に調節することができる。」(明細書6ページ3?7行)
(ニ)「シート11上によこたわる患者の体は、その自重によって回転ローラ9及び振動ローラ10に圧接する。従って、この状態において移動台車3を往復動させると、回転ローラ9及び振動ローラ10は患者の体をその下方から連続して加圧作用する。またモータ16の駆動によって振動ローラ10を振動させながら、移動台車3を往復動させると、振動ローラ10の振動加圧作用により患者の全身にわたって優れたマッサージ効果を奏する。」(明細書6ページ14行?7ページ2行)
(ホ)「振動ローラ10の加圧力調整についてはモータ20の駆動により振動ローラ10の高さ位置を調節できるので、これによって行なうことができる。」(明細書7ページ11?13行)
(ヘ)第1図には、移動台車3の移動方向に対して、振動ローラ10が垂直方向に平行移動する点が図示されており、上記(ロ)及び(ハ)に摘記した事項を併せて参酌すると、振動ローラ10を設けたフレーム18は移動台車4の移動方向に対して垂直方向に平行移動するものと認められる。

第7.当審の判断
1.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、その機能ないし構造からみて、引用発明1における「揉み球3」は本件発明1の「マッサージ子(3)」に、引用発明1の「椅子式電気マツサージ機」は本件発明1の「マッサージ機」に、それぞれ相当することは明らかであり、また、引用発明1の「椅子式電気マツサージ機」における「上下動用の螺軸5」及び「揉み球3の揺動駆動部4」がモータ等の駆動源により駆動されるものであることは自明な事項であるから、引用発明1における「上下動用の螺軸5及びガイド支柱6」は本件発明1の「昇降駆動装置(1)」に、引用発明1における「略コ字状の枠体7」は本件発明1の「昇降フレーム(2)」に、引用発明1における「揉み球3の揺動駆動部4」は本件発明1の「マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)」に、それぞれ相当するといえる。
さらに、引用発明1における「枠体7内に揉み球3の揺動駆動部4を背もたれ部2の前面2’と直交する垂直な面上において角度回動可能に枢着し」た点は、本件発明1における「前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して運動自在に取り付け」た点に相当するといえる。
してみると、両者は、
「昇降駆動装置によって昇降操作される昇降フレームを設け、マッサージ子を備えたマッサージ子作動装置を、前記昇降フレームに設けてあるマッサージ機であって、前記マッサージ子作動装置の組付枠体を、前記昇降フレームに対して運動自在に取り付けたマッサージ機。」
である点(以下、「一致点」という。)で一致し、次の点(以下、それぞれ「相違点1」、「相違点2」という。)で相違する。

(相違点1)
組付枠体を昇降フレームに対して運動自在に取り付けた態様に関して、本件発明1は「組付枠体(5)を昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置(6)を、前記組付枠体(5)と前記昇降フレーム(2)との間に設け」たものであるのに対して、引用発明1は、このような駆動装置を組付枠体と昇降フレームの間に設けるという構成を有しておらず、ハンドレバー12又はつまみ部19の操作により組付枠体を昇降フレームに対して動かすものである点。
(相違点2)
本件発明1は「マッサージ子作動装置(4)と駆動装置(6)とによって、複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができる」ものであるのに対して、引用発明1は、背もたれ部2からの揉み球3の突出量を任意に変えることができるものであって、複合的なマッサージ動作を行うためのものとしていない点。

(2)判断
そこで、相違点1,2について検討する。
(a)相違点1について
甲第8号証に記載されたマッサージ動作を行う「一対のマッサージ子1,1」が本件発明1の「マッサージ子(3)」に相当することは明らかであり、モータ6を駆動することによってマッサージ子1,1を備えた基板2が前後方向に押し出されるところからみて、甲第8号証に記載された「基板2」が本件発明1の「組付枠体(5)」に相当し、「モータ6」が「駆動装置(6)」に相当するといえるから、甲第8号証には、椅子式マッサージ機において、マッサージ子の押出量即ち突出量を変化させるために、モータ6で昇降フレームに対して組付枠体を前後方向に動かすことが記載されていると認められる。そして、(椅子の背もたれ内に組み込まれる)マッサージ機において、使用者の背面が位置することになる正面方向へのマッサージ子の突出量を変化(強弱調整)させるためにモータ等の駆動源を有する駆動装置を用いることは、甲第8号証のみならず、例えば甲第2号証などにも見られるように従来周知の技術であったということができる(ちなみに、乙第1号証にも、このような強弱調整を行うことが開示されている。)。
そうすると、引用発明1において、背もたれ部2からの揉み球3の突出量を任意に変えるために、ハンドレバー12又はつまみ部19を操作するものに代えて、モータ等の駆動源を有する駆動装置を採用することは、当業者が容易に想到し得た設計上の変更であるといえる。
そして、上記設計上の変更に際して、その駆動装置の配置態様につき、相対移動するもの同士の間に介在させる配置とすること、すなわち組付枠体と昇降フレームとの間に位置するような配置態様を選択することは、当業者がごく普通に想起する配置態様であるということができる。しかも、甲第8号証に開示されたモータ6の配置態様からみても、そのような配置態様を選択することが格別困難であったということはできない。
してみると、相違点1に係る本件発明1の構成は、引用発明1に上述の周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものといわざるを得ない。
(b)相違点2について
本件発明1において「前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができる」ものであると規定した点は、訂正明細書における発明の詳細な説明に、「駆動装置によって、昇降フレームに対して組付枠体を動かせば、マッサージ子作動装置全体が動き、マッサージ子作動装置によるマッサージ子の動きに加えて、別の動きが、駆動装置によってマッサージ子に与えられる。」(訂正明細書の2ページ26行?3ページ2行)との記載、「マッサージ子作動装置(4)によるマッサージ子(3)の動きは、人体に対して左右一定位置で固定的に圧接して、もみ動作又はたたき動作等の多くとも2種の動作を与える」(訂正明細書の2ページ13?15行参照)との記載、「組付枠体を運動自在に取付けて、その駆動装置を設けるだけの簡単な改造で、マッサージ子作動装置の構造を変えずとも、例えばもみ動作及び、たたき動作や、その他の動作の少なくとも2種以上の動作を、マッサージ子に与えて、今までになかった複合動作を行わせることができ、マッサージ機の機能をより向上させやくすなった。」(訂正明細書の3ページ4?8行参照)との記載、及び「組付枠体(5)を昇降フレーム(2)に対して前後揺動させる駆動装置(6)を、組付枠体(5)と昇降フレーム(2)との間に設け、マッサージ子(3)を前後に出退させて指圧効果を求められるようにしてある。」(訂正明細書の3ページ18?20行参照)との記載があることからみて、「複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができる」とは、マッサージ子作動装置(4)による「もみ動作又はたたき動作」と、駆動装置(6)によりマッサージ子を前後動させる「指圧動作」とを同時に行うことが可能であることを意味したものということができる。
ところで、甲第4号証に記載されたマッサージ機は、上記「第6.4.(ハ)」の摘記事項に従って施療子22のタイプとしてローリングマッサージを行うローラ型に代えてもみ運動を行う構成のものを採用した場合、もみ運動と同時に、身体の背面に所定の圧力で接触させることができ、さらには上記「第6.4.(ロ)」の摘記事項に従って所定圧を随時変化させることもできるから、甲第4号証に記載されたマッサージ機は、「複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができる」ものということができる。
また、甲第8号証には、上記「第6.5.(ホ)」に摘記したように、「マッサージ子の左右揺動幅変更手段14とマッサージ子の押出量変更手段15を同時に作動させる」ことにより「立体的なもみマッサージ」を行うことができると記載され、また、その第10図に図示された、合成されたマッサージ子の軌跡を示す曲線によれば、マッサージ子はもみ動作と指圧動作を同時に行うものと解されることから、甲第8号証に記載されたマッサージ装置も、「複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができる」ものということができる。
さらに、甲第9号証には、上記「第6.6.」に摘記したように、ローラドラム装置33がモータ41によって回転されると、ローラ38,39,40が身体に圧力及び極小の突きを加えるとともに、電動ウインチ52を作動させてケーブル53を張ったり緩めたりすることにより、ローラ38,39,40による身体にかかる圧力を増減することができる構成が開示されており、ローラドラム装置33の回転によるマッサージ動作に加え、電動ウインチ52を駆動することによって人体にかかる圧力を増減することができるから、甲第9号証の記載された治療操作器具も、「複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができる」ものということができる。
そうすると、これらの例からも明らかなように、マッサージ機において、複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることは、従来周知の技術であったということができる。
してみると、相違点2に係る本件発明1の構成は、相違点1につき上述した設計上の変更により得られたところの引用発明1における揉み球3の突出量を任意に変える動作を行う駆動装置、いいかえれば、揉み球を前後動させる動作を行なう駆動装置を、マッサージ動作の際にも動作することが可能であるように単に設定することにより、当業者が容易に採用し得たものといわざるを得ない。

そして、本件発明1が奏する作用効果も、引用発明1及び上述の周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

(3)むすび
したがって、本件発明1は、引用発明1及び上述の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2.本件発明2について
(1)対比
本件発明2は、本件発明1の構成を全て含むとともに、さらに、「前記組付枠体(5)の前記昇降フレーム(2)に対する運動は、前後移動又は左右移動又は左右回動のうちの少なくとも一種の動きであって、前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、前記マッサージ子作動装置(4)によるマッサージ子の動作に組付枠体(5)によるマッサージ子の動作を加えた複合的なマッサージ動作をマッサージ子(3)に与える」という限定事項を付加したものといえる。
そして、引用発明1における「該枠体7内に揉み球3の揺動駆動部4を背もたれ部2の前面と直交する垂直な面上において角度回動可能に枢着し、揉み球3の突出量を、ハンドレバー12又はつまみ部19を回動操作することにより、任意に変えることができる」という動作が、上記「前記組付枠体(5)の前記昇降フレーム(2)に対する運動」の内の「前後移動」の「動き」に相当することは明らかである。
そうすると、本件発明2と引用発明1とを対比すると、上記「1.(1)」に記載した一致点、及び「前記組付枠体(5)の前記昇降フレーム(2)に対する運動は、前後移動又は左右移動又は左右回動のうちの少なくとも一種の動きで」ある点で一致し、相違点1、2に加え、次の点(以下、「相違点3」という。)で相違する。
(相違点3)
本件発明2は「前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、前記マッサージ子作動装置(4)によるマッサージ子の動作に組付枠体(5)によるマッサージ子の動作を加えた複合的なマッサージ動作をマッサージ子(3)に与える」ものであるのに対して、引用発明1は、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
相違点1、2については、上記「1.(2)」で説示したとおりであるから、相違点3について検討する。
相違点3に係る本件発明2の構成のうち、「前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって」「複合的なマッサージ動作をマッサージ子(3)に与える」点については、相違点2に係る本件発明2の構成と同じであるから、結局、相違点3は、本件発明2における複合的なマッサージ動作が「前記マッサージ子作動装置(4)によるマッサージ子の動作に組付枠体(5)によるマッサージ子の動作を加えた」ものであるのに対して、引用発明1は、そのような構成を備えていない点にある、と言い替えることができる。
ところで、相違点2についての上記判断に基づいて、引用発明1における揉み球3の突出量を任意に変える動作を行う駆動装置、言い替えれば、揉み球を前後動させる動作を行なう駆動装置を、マッサージ動作の際にも動作することが可能であるように設定した場合、その時のマッサージ動作は、マッサージ子作動装置によるマッサージ子の動作に組付枠体によるマッサージ子の動作を加えた複合的なものになることは自明のことである。しかも、マッサージ子作動装置によるマッサージ子の動作に組付枠体によるマッサージ子の動作を加えた複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えること自体は、例えば甲第8号証などに見られるように、従来周知の技術であって格別なことではない。
そうすると、相違点3に係る本件発明2の構成は、引用発明1及び上述の周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものといわざるを得ない。

そして、本件発明2が奏する作用効果も、引用発明1及び上述の周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

(3)むすび
したがって、本件発明2は、引用発明1及び上述の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.本件発明3について
(1)対比
本件発明3は、本件発明1の構成を全て含むとともに、さらに、「人体と前記昇降フレーム(2)との遠近方向における人体の凹凸形状を検出する第1検出手段を設けると共に、人体に対するマッサージ子(3)の相対位置を検出する第2検出手段を設け、前記第1検出手段と前記第2検出手段からの検出結果に基づいて、前記マッサージ子(3)の人体に対する相対位置が一定になるように、前記組付枠体(5)を前記昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置用制御手段を設けてある」という限定事項を付加したものであるから、本件発明3と引用発明1とを対比すると、上記「1.(1)」に記載した一致点で一致し、相違点1、2に加え、さらに、次の点(以下、「相違点4」という。)で相違する。
(相違点4)
本件発明3は「人体と前記昇降フレーム(2)との遠近方向における人体の凹凸形状を検出する第1検出手段を設けると共に、人体に対するマッサージ子(3)の相対位置を検出する第2検出手段を設け、前記第1検出手段と前記第2検出手段からの検出結果に基づいて、前記マッサージ子(3)の人体に対する相対位置が一定になるように、前記組付枠体(5)を前記昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置用制御手段を設けてある」のに対して、引用発明1はそのような構成を備えていない点。

(2)判断
相違点1、2については、上記「1.(2)」で説示したとおりであるから、相違点4について検討する。
被請求人は、平成17年1月14日付け答弁書において、本件発明3の相違点4に係る構成は、乙第1号証である特公昭59-24825号公報に開示されている事項から、(本件特許の出願時に)当業者が容易に想到することができる程度の事項、言い替えれば、当業者にとって従来より周知の事項であった旨を主張している(同上答弁書第12ページ参照)。
そうすると、本件特許の出願人である特許権者が乙第1号証に基づき当業者が容易に想到し得た事項であったことを自認しているのであるから、本件発明3の相違点4に係る構成は、引用発明1に乙第1号証(甲第4号証)に示された技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たものといわざるを得ない。

そして、本件発明3が奏する作用効果も、引用発明1及び上述の周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

(3)むすび
したがって、本件発明3は、引用発明1及び上述の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.本件発明4について
(1)対比
本件発明4は、本件発明1の構成を全て含むとともに、さらに、「マッサージ子作動装置(4)は、前記マッサージ子(3)にたたき動作を行わせる駆動伝達機構(7)を備え、アーム支持体(21)を介してアーム(20)が上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子(3)にたたき動作をさせるように構成して成り、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して前後平行移動自在に取付けた」という限定事項を付加したものであるから、本件発明4と引用発明1とを対比すると、上記「1.(1)」に記載した一致点で一致し、相違点1、2に加え、次の点(以下、「相違点5」という。)で相違する。
(相違点5)
本件発明4は、「マッサージ子作動装置(4)は、前記マッサージ子(3)にたたき動作を行わせる駆動伝達機構(7)を備え、アーム支持体(21)を介してアーム(20)が上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子(3)にたたき動作をさせるように構成して成り、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して前後平行移動自在に取付けた」のに対して、引用発明1は、そのように構成されていない点。

(2)判断
相違点1、2については、上記「1.(2)」で説示したとおりであるから、相違点5について検討する。
相違点5に係る本件発明4の構成は、「マッサージ子作動装置(4)は、前記マッサージ子(3)にたたき動作を行わせる駆動伝達機構(7)を備え、アーム支持体(21)を介してアーム(20)が上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子(3)にたたき動作をさせるように構成して成り」という構成(以下、「たたき構成」という。)と、「前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して前後平行移動自在に取付けた」構成(以下、「前後平行移動構成」という。)とからなるということができる。
そこで、まず「たたき構成」について検討する。
マッサージ子にたたき動作を行わせるマッサージ機は、例えば、甲第2号証、甲第3号証、甲第8号証などに見られるように従来から広く一般に知られているものであり、マッサージ機の技術分野において、マッサージ子にたたき動作をさせることは、ごくありふれた技術にすぎない。
そうすると、引用発明1において、マッサージ子にたたき動作を行わせるために、駆動伝達機構を設け、アーム支持体を介してアームが上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子にたたき動作をさせるように構成することは、周知技術(例えば甲第2号証についての前記「第6.2.(ニ)」の摘記事項を参照)に倣って当業者が容易に想到できたことであるといえる。
次に「前後平行移動構成」について検討する。
甲第10号証には、シート11上を長手方向に移動し得る移動台車3に、振動ローラ10を有する振動機構を保持するフレーム18を上下動し得るように設け、フレーム18の高さを任意に調節することができるようにした全身マッサージ機が記載されている。そして、甲第10号証に記載された「移動台車3」は、その機能又は作用からみて、本件発明4の「昇降フレーム(2)」に相当し、以下同様に、「振動ローラ10」が「マッサージ子(3)」に相当し、フレーム18が「組付枠体(5)」に相当するから、甲第10号証には、組付枠体を昇降フレームに対して前後平行移動自在に取付けた構成、即ち「前後平行移動構成」が記載されていると認められる。そして、このような「前後平行移動構成」を備えたマッサージ機は、従来周知であるということができる。
ところで、本件発明4においては、組付枠体を昇降フレームに対して「前後平行移動自在」に取り付けているのに対して、引用発明1においては、「角度回動可能」に取り付けている点で、両者は相違するものの、どちらも組付枠体を昇降フレームに対して前後移動自在に取り付けた点では共通しており、その前後移動が単に「平行移動」か「角度回動」かの点で相違するにすぎない。
しかしながら、組付枠体の前後移動を「角度回動」とするか「平行移動」とするかは当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎないというべきであり、しかも、マッサージ機において、前後平行移動構成を採用することは、例えば甲第10号証に見られるように従来周知であったということができる。
そうすると、引用発明1において、組付枠体を昇降フレームに対して角度回動可能に取り付ける代わりに、前後平行移動自在に取り付けることは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。

そして、本件発明4が奏する作用効果も、引用発明1及び上述の周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

(3)むずび
したがって、本件発明4は、引用発明1及び上述の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第8.むすび
以上のとおり、本件発明1?4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法123条1項2号に該当し、他の理由及び証拠を検討するまでもなく、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
マッサージ機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】昇降駆動装置(1)によって昇降操作される昇降フレーム(2)を設け、マッサージ子(3)を備えたマッサージ子作動装置(4)を、前記昇降フレーム(2)に設けてあるマッサージ機であって、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して運動自在に取り付け、前記組付枠体(5)を前記昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置(6)を、前記組付枠体(5)と昇降フレーム(2)との間に設け、前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えることができるマッサージ機。
【請求項2】前記組付枠体(5)の前記昇降フレーム(2)に対する運動は、前後移動又は左右移動又は左右回動のうちの少なくとも一種の動きであって、前記マッサージ子作動装置(4)と前記駆動装置(6)とによって、前記マッサージ子作動装置(4)によるマッサージ子の動作に組付枠体(5)によるマッサージ子の動作を加えた複合的なマッサージ動作をマッサージ子(3)に与える請求項1記載のマッサージ機。
【請求項3】請求項1記載のマッサージ機であって、人体と前記昇降フレーム(2)との遠近方向における人体の凹凸形状を検出する第1検出手段を設けると共に、人体に対するマッサージ子(3)の相対位置を検出する第2検出手段を設け、前記第1検出手段と前記第2検出手段からの検出結果に基づいて、前記マッサージ子(3)の人体に対する相対位置が一定になるように、前記組付枠体(5)を前記昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置用制御手段を設けてあるマッサージ機。
【請求項4】前記マッサージ子作動装置(4)は、前記マッサージ子(3)にたたき動作を行わせる駆動伝達機構(7)を備え、アーム支持体(21)を介してアーム(20)が上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子(3)にたたき動作をさせるように構成して成り、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)を、前記昇降フレーム(2)に対して前後平行移動自在に取付けた請求項1、2又は3記載のマッサージ機。
【発明の詳細な発明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、昇降駆動装置によって昇降操作される昇降フレームを設け、マッサージ子を備えたマッサージ子作動装置を、前記昇降フレームに設けてあるマッサージ機に関する。
〔従来の技術〕
従来の上記マッサージ機は、第7図に示すように、マッサージ子作動装置(4)を昇降フレーム(2)に固定してあった(例えば特開昭60-45347号公報)。
〔発明の解決しようとする課題〕
しかし、マッサージ子作動装置(4)によるマッサージ子(3)の動きは、人体に対して左右一定位置で固定的に圧接して、もみ動作又はたたき動作等の多くとも2種の動作を与えることしかできず、動きが限られてしまうと欠点があった。
本発明の目的は、簡単な改造で、もみ動作及びたたき動作だけでなく、より多くの種類の動作又はそれらの複合動作を行わせられるマッサージ機を提供する点にある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明のマッサージ機の特徴構成は、マッサージ子作動装置の組付枠体を、昇降フレームに対して運動自在に取付け、前記組付枠体を前記昇降フレームに対して動かす駆動装置を、前記組付枠体と前記昇降フレームとの間に設け、前記マッサージ子作動装置と前記駆動装置とによって、複合的なマッサージ動作をマッサージ子に与えるように構成したことにあり、その作用、効果は次の通りである。
〔作用〕
つまり、駆動装置によって、昇降フレームに対して組付枠体を動かせば、マッサージ子作動装置全体が動き、マッサージ子作動装置によるマッサージ子の動きに加えて、別の動きが、駆動装置によってマッサージ子に与えられる。
〔発明の効果〕
従って、組付枠体を運動自在に取付けて、その駆動装置を設けるだけの簡単な改造で、マッサージ子作動装置の構造を変えずとも、例えばもみ動作及び、たたき動作や、その他の動作の少なくとも2種以上の動作を、マッサージ子に与えて、今までになかった複合動作を行わせることができ、マッサージ機の機能をより向上させやすくなった。
〔実施例〕
次に、本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
第1図及び第2図に示すように、背もたれ部(8)のフレーム(9)内に固定した左右一対のガイドパイプ(10)に、昇降案内自在に昇降フレーム(2)を取付け、昇降フレーム(2)を昇降操作する昇降駆動装置(1)を設け、
マッサージ子(3)を備えたマッサージ子作動装置(4)を、昇降フレーム(2)に設けて背もたれ椅子式のマッサージ機を構成してある。
そして、前記マッサージ子作動装置(4)の組付枠体(5)の上部を、横軸(11)を介して昇降フレーム(2)に枢着して、前後方向に揺動自在に形成してあり、
組付枠体(5)を昇降フレーム(2)に対して前後揺動させる駆動装置(6)を、組付枠体(5)と昇降フレーム(2)との間に設け、マッサージ子(3)を前後に出退させて指圧効果を求められるようにしてある。
前記昇降フレーム(2)は、ガイドパイプ(10)に外嵌して摺動するガイド部材(12)を介してガイドパイプ(10)に取付けてある。
前記昇降駆動装置(1)を構成するに、ほぼ全長にわたって雄ネジを形成したネジ軸(13)を、その軸芯(P)を上下姿勢にした状態で回動自在に、ベアリング(14)を介してフレーム(9)に取付け、ネジ軸(13)をベルト伝達機構(15)を介して駆動回転させる昇降モータ(M_(1))をフレーム(9)に取付け、ネジ軸(13)に螺合する昇降用ナット(17)を、昇降フレーム(2)に取付けてあり、昇降モータ(M_(1))の駆動回転によってネジ軸(13)を回転させれば、昇降用ナット(17)を介して昇降フレーム(2)が昇降するように構成してある。
前記マッサージ子作動装置(4)を構成するに、第2図、第4図、及び第5図に示すように、組付枠体(5)の上下に、マッサージ駆動モータ(M_(2))によって回転作動する第1横軸(18)と第2横軸(19)を各別に配設し、横軸芯(Q)周りに回転自在なマッサージ子(3)を一端に設けたアーム(20)の他端を、アーム支持体(21)に取付け、このアーム支持体(21)を、第2横軸(19)の両端夫々に、ベアリング(22)を介して取付け、アーム(20)を上下に往復揺動させるように、第1横軸(18)の回転を上下直線移動に変更してアーム支持体(21)の端部に伝達する第1クランク機構(23)を設けてある(第4図)。
つまり、前記第1横軸(18)の両端部夫々に、ベアリング(24)取付用軸部(25)を、偏心させて連設し、軸部(25)にベアリング(24)を介してクランク用ロッド(26)の一端側を取付け、クランク用ロッド(26)の他端をアーム支持体(21)に連結して、第1横軸(18)の回転に伴って、クランク用ロッド(26)が上下に往復移動し、このクランク用ロッド(26)の上下往復移動によって、アーム支持体(21)を介してアーム(20)が上下揺動し、もって左右一対のマッサージ子(3)を夫々たたき動作させるように構成してある。
そして、前記アーム支持体(21)を夫々取付ける第2横軸(19)の両端側には、アーム支持体(21)を上下回動自在に取付ける支持体取付軸(27)を、第2横軸(19)の軸芯に対して傾斜させた状態で一体連設してある。従って、第2横軸(19)を回転させれば、アーム(20)先端のマッサージ子(3)は、ほぼ横方向に往復運動してもみ動作する(第5図)。
前記第1横軸(18)と第2横軸(19)に対しては、駆動伝達機構(7)として組付枠体(5)内に設けたクラッチ機構を介してマッサージ駆動モータ(M_(2))の動力を、択一的に伝達切換自在に形成してある。
前記フレーム(9)の上部及び下部には、昇降フレーム(2)との接当に基づいて昇降モータ(M_(1))の回転方向を切換えるリミットスイッチ(28)を、夫々設けて、昇降モータ(M_(1))によって昇降フレーム(2)が上昇又は下降して、フレーム(9)の上端近く又は下端近くに移動した時に、リミットスイッチ(28)に昇降フレーム(2)が当たって、逆方向に昇降フレーム(2)が移動するようにして、上下往復移動が自動的に行われるように構成してある。
前記駆動装置(6)は、第3図に示すように、昇降フレーム(2)に取付けた揺動用モータ(M_(3))と、このモータ(M_(3))の回転を前後移動に変換して組付枠体(5)に伝達する第2クランク機構(29)とから形成してある。
〔別実施例〕
前記組付枠体(5)は、前後揺動自在に横軸(11)で枢支する以外に、前後平行移動自在に昇降フレーム(2)に取付けてあってもよく、また、左右揺動自在や左右平行移動自在に昇降フレーム(2)に取付けてあってもよく、更には、組付枠体(5)を、上下軸芯周りに左右回動自在に取付けてあってもよく、また、前記各動きを組合わせた複合的な動きを行わせられるように、昇降フレーム(2)に取付けてあってもよい。
第6図に示すように、前記一対のマッサージ子(3)、(3)夫々に、マッサージ子作動装置(4)を設け、それら両マッサージ子作動装置(4)、(4)の各組付枠体(5)、(5)を、横方向に離間又は近接移動自在に昇降フレーム(2)に取付け、両組付枠体(5)、(5)を離間又は近接操作する駆動装置(6)を設けてあってもよい。
前記駆動装置(6)は、モータ(M_(3))と第2クランク機構(29)とから成るものに代えて、流体圧シリンダから成るものであってもよく、また、磁気による吸引又は反発力を利用して往復運動させるものであってもよい。
本発明のマッサージ機には、人体と昇降フレーム(2)との遠近方向における人体の凹凸形状を検出する第1検出手段を設けると共に、人体に対するマッサージ子(3)の相対位置を検出する第2検出手段を設け、第1検出手段と第2検出手段からの検出結果に基づいて、マッサージ子(3)の人体に対する相対位置が一定になるように、組付枠体(5)を昇降フレーム(2)に対して動かす駆動装置用制御手段を設けてあってもよく、この場合には、身長や体の凹凸形状の異なる人に対しても、適正な人体の箇所を安定してマッサージすることができ、個人差のないマッサージ効果を期待できるようになる。
尚、前記マッサージ子(3)の形状は、ローラ型以外に、各種変更してもよい。
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にする為に符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明に係るマッサージ機の実施例を示し、第1図は一部切欠いた全体側面図、第2図は要部背面図、第3図は駆動装置の平面図、第4図は要部側面図、第5図は要部平面図、第6図は別実施例の要部平面図、第7図は従来例を示す要部側面図である。
(1)……昇降駆動装置、(2)……昇降フレーム、(3)……マッサージ子、(4)……マッサージ子作動装置、(5)……組付枠体、(6)……駆動装置、(7)……駆動伝達機構。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-11-21 
結審通知日 2005-09-02 
審決日 2006-12-18 
出願番号 特願平1-116600
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A61H)
P 1 113・ 83- ZA (A61H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 稲積 義登  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 川本 真裕
芦原 康裕
登録日 1998-04-24 
登録番号 特許第2773896号(P2773896)
発明の名称 マッサージ機  
代理人 森田 拓生  
代理人 辻本 希世士  
代理人 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所  
代理人 窪田 雅也  
代理人 神吉 出  
代理人 上野 康成  
代理人 森田 拓生  
代理人 窪田 雅也  
代理人 辻本 一義  
代理人 辻本 一義  
代理人 神吉 出  
代理人 上野 康成  
代理人 辻本 希世士  

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