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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
管理番号 1171326
審判番号 不服2005-10183  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-30 
確定日 2008-01-28 
事件の表示 平成6年特許願第506311号「個々に包装される使い捨て吸収性物品用の再固定可能な接着ファスナシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成6年3月3日国際公開、WO94/04111、平成8年1月23日国内公表、特表平8-500502〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1993年(平成5年)8月3日(パリ条約による優先権主張1992年8月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、原審において平成17年2月22に付け拒絶査定されたところ、同査定を不服として、本件審判請求がなされ、当審において、平成18年4月20日付けで拒絶理由が通知されている。
本願の請求項1?10に係る発明は、平成17年6月29日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるところ、請求項1の記載は下記の通りである(以下、これによって特定される発明を「本願発明1」という。)。
「身体に面する側と、下着に面する側と、二つの長さ方向マージンと二つの側方マージンとを有する吸収性物品と、
包装本体と包装フラップと有する前記吸収性物品を収容する包装と、
前記包装フラップを前記包装本体に固定する接着テープファスナシステムであって、(a)前記包装フラップに固定された第1部分と前記包装フラップを前記包装本体に剥離可能に固定する第2部分とを有し、前記第2部分が接着剤を塗布された固定表面を有しているテープタブと、(b)前記テープタブの前記固定表面が接着されるランディング面と、平均厚さが0.020ミリメートル乃至0.036ミリメートルのフィルムとを有する前記包装本体の部分と、からなる接着テープファスナシステムと、を有し、
前記テープファスナシステムは、前記テープタブの10ミリメートル幅の標本片が前記ランディング面に接着され前記標本片と前記ランディング面が毎分508ミリメートルの速さで反対方向に引っ張られたときに900グラム以上の動的剪断強度を有し、これにより再固定可能な接着ファスナシステムを構成している、個々に包装された吸収性物品。」

2.引用文献
これに対して、当審が平成18年4月20日付で通知した拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された国際公開91/18574号パンフレット(以下、「引用文献1」という。)には、その翻訳文である特表平5-507427号公報の記載を参酌すると、図面とともに、以下の旨が記載されている。
a 第1頁第5?7行に、「発明の分野
本発明は衛生ナプキン、さらに詳しくは個々に包装される衛生ナプキンに関するものである。」
b 第2頁第8?10行に、「使用ずみ衛生ナプキンを包装部材の中に包囲して廃棄することが公知である。」
c 第2頁第24?26行に、「本発明の目的は、使用ずみ製品の廃棄に使用される包装部材を有する個々に包装される衛生ナプキンを提供するにある。」
d 第4頁第24?28行に、「衛生ナプキン20は、液体透過性のトップシート22と、液体不透過性バックシート24と、トップシートとバックシートとの間の吸収性コア26とによって特徴付けられている。衛生ナプキン20の周辺部は、2つの長さ方向の側部マージン30と2つの横方向の側部マージン32とによって画成されている。」と、
e 第12頁第34?37行に、「剥離可能な包装材34は、クラフト紙、カレンダー紙、または本発明の精神及び範囲から逸脱しない業界公知の材料で製造することができる。」
f 第13頁第35行?第14頁第11行に、「第3図に図示するように、衛生ナプキン20及び剥離可能な包装材34は2本の相互に隔離された横方向折り畳み線に沿って折り畳まれる。この場合「相互に隔離された横方向折り畳み線」とは、長さ方向に偏倚し、横方向にほぼ平行な線であり、それに沿って、衛生ナプキン20と剥離可能な包装材34が共に折り畳まれる。衛生ナプキン20をこの折り畳み線に沿って折り畳むと、製品は3つの3等分部分、すなわち中央部分51及び2つの外側部分52を形成する。外側部分52はさらに内部外側部分52aと外部外側部分52bとなる。」
g 第14頁第20?30行に、「第4図の折り畳み構造では、…(中略)…剥離可能な包装材34は接着剤40aが露出しないように3つの部分51、52の全てを覆うのに十分な長さ方向の寸法を有する。」
h 第14頁第31行?第15頁第24行に、「第1図を参照すると、剥離可能な包装材34は、さらに衛生ナプキン20及び剥離可能な包装材34を前記の折り畳み状態に保持するための手段を含む。この手段は、商標Vercroで市販されているようなフック/ループ型機械ファスナ、先行技術に見られる接着剤タブ、または好ましくは剥離可能な包装材34の長さ方向縁に並置された接着剤54とすることができる。…(中略)…1つの実施態様において、接着剤54は、外部外側部分52a(「52b」の誤記と解される)の側縁部を超えて長さ方向にタブ55の上に配置することができる。この側縁部を超えて長さ方向に延在していないタブ55の部分の接着剤54は内部外側部材52b(「外部外側部材」の誤記と解される)の露出面に固着される。接着剤は連続ストリップ状、断続ストリップ状あるいは単一のスポット状に付けることができる。接着剤54がどのような形で付けられるかは重要ではなく、着用者が最初に使用するために衛生ナプキン20と剥離可能な包装材34とを開こうとするまでこの折り畳み状態を保持するだけの引っ張り抵抗力を有すればよい。」

同じく引用され、本願優先日前に頒布された、特開平3-176376号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「生理用ナプキンの包装方法」として、包材とナプキンを折り畳んで包装し、折り畳まれた包材の最上位の端部とそれに重なり合う包材の表面を剥離可能なタックシールで固定する方法において、包材としてフィルムが好ましく、基材フィルムの厚さは15?100μ、好ましくは20?50μであることが示されている。

また、同じく引用され、本願優先日前に頒布された、実願昭61-25218号(実開昭62-137019号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には、生理用ナプキンの個装体を構成する包装体において、蓋部を袋部の外面に止着するシールとして複数回の粘着、剥離が可能なものを用い、ナプキンを取り出し後の袋体中に、それまで着用していた生理ナプキンを収納し、袋体を完全に再封鎖することが記載されている。

3.対比・判断
本願発明1と引用文献1に記載された発明とを対比する。
引用文献1に記載された発明に係る「衛生ナプキン」は、本願発明1の「吸収性物品」に相当し、「身体に面する側と、下着に面する側と、二つの長さ方向マージンと二つの側方マージンとを有する」ものである。
引用文献1に記載された「剥離可能な包装材34」は、本願発明の「包装」に相当し、本願発明の「包装」を構成する「包装本体」及び「包装フラップ」について本願明細書には明確な定義はないが、本願明細書第40頁第15?18行の「(第1フラップは、個々の包装を閉鎖するのに使用される外部外側部分52bによって形成された上述の包装用フラップである)」の記載及び請求項1の記載から「包装」の、タブ55を固定している外部外側部分52bにおける部分が「包装フラップ」であり、その余の部分が「包装本体」であると推認でき、そうすると、引用文献1に記載された、折り畳み構造の外部外側部分52bを含む3つの部分の全てを覆う「剥離可能な包装材34」(上記摘示記載f及びg参照)も、本願発明1でいう「包装本体」及び「包装フラップ」を有するものということができる。
また、引用文献1に記載されたタブ55は、衛生ナプキン20と剥離可能な包装材を着用者が最初に開こうとするまで折り畳み状態に保持するものであって、本願発明1の「接着テープファスナシステム」を構成するものであり、上記摘示記載hに不明確な部分があるものの、図面の記載等を参酌すれば、折り畳み構造の外部外側部分52b(本願発明1でいう「包装フラップ」に相当)に固着される部分(第1部分)と、そこから延在して、包装材の他の部分である内部外側部分52aの面、すなわちランディング面に固定するように表面に接着剤を設けられた部分(第2部分)を有しており、後者は、使用時に剥離可能であることは明らかである。
してみれば、本願発明1と引用文献1に記載された発明とは、
「身体に面する側と、下着に面する側と、二つの長さ方向マージンと二つの側方マージンとを有する吸収性物品と、
包装本体と包装フラップと有する前記吸収性物品を収容する包装と、
前記包装フラップを前記包装本体に固定する接着テープファスナシステムであって、前記包装フラップに固定された第1部分と前記包装フラップを前記包装本体に剥離可能に固定する第2部分とを有し、前記第2部分が接着剤を塗布された固定表面を有しているテープタブと前記テープタブの前記固定表面が接着されるランディング面とを有する前記包装本体の部分とからなる接着テープファスナシステムとを有する個々に包装された吸収性物品。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。
[相違点1]本願発明1において、包装本体が「平均厚さが0.020ミリメートル乃至0.036ミリメートルのフィルム」を有するとしているのに対し、引用文献1において、剥離可能な包装材34は、業界公知の材料で製造することができるとされているものの、上記のような特定がなされていない点。
[相違点2]本願発明1において、テープファスナシステムは、「テープタブの10ミリメートル幅の標本片が前記ランディング面に接着され前記標本片と前記ランディング面が毎分508ミリメートルの速さで反対方向に引っ張られたときに900グラム以上の動的剪断強度を有し、これにより再固定可能な接着ファスナシステムを構成している」とされているのに対し、引用文献1には、衛生ナプキン20及び剥離可能な包装材34を前記の折り畳み状態に保持するための手段として公知の接着剤タブを用いた「テープファスナシステム」について、「着用者が最初に使用するために衛生ナプキン20と剥離可能な包装材34とを開こうとするまでこの折り畳み状態を保持するだけの引っ張り抵抗力を有」することは示されているが、本願発明1のような「動的剪断強度」の特定はなされていない点

そして、引用文献1のFIG1?4の記載も、上記相違点を除いては、本願発明の実施例を示す図面として添付された図面のFig1?4と同様の開示である。

以下、上記の相違点について検討する。
[相違点1]について、
生理ナプキンのような吸収性物品を個々に包装する包装材として、合成樹脂等からなるフィルムを用いることは本願出願前周知慣用の技術的事項であり、フィルムの厚さも、素材や包装対象物に応じて当業者が適宜選択決定しうる事項と認められるところ、上記引用文献2には、生理用ナプキンの包材として、厚さが20?50μ(0.02ミリメートル乃至0.05ミリメートル)のフィルムの使用が好ましいことが記載されており、引用文献1において「業界公知の材料」と記載された包装材として、「平均厚さが0.020ミリメートル乃至0.036ミリメートルのフィルム」を採用することは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

〔相違点2]について
本願明細書の記載によれば、本願発明1の上記[相違点2]に係る特定事項は、使用ずみの製品の処理に使用することができる包装を備えた、個々に包装された衛生ナプキンを提供するように、再固定可能な包装用ファスナシステムを提供するためのものと認められる。
衛生ナプキンをプラスチックフィルム等で個々に包装し、使用時に、その前に使用した衛生ナプキンを包装部材の中に包囲して廃棄すること、そのために、接着剤を用いた包装体の封止手段を剥離及び再固定可能とすることは本願出願前周知の事項である(必要なら、実願昭62-59449号(実開昭63-166221号)のマイクロフィルム、実願昭63-29457号(実開平1-133915号)のマイクロフィルム等参照)ところ、上記引用文献3には、生理用ナプキンの個装体を構成する包装体において、蓋部を袋部の外面に止着するシールとして複数回の粘着、剥離が可能なものを用い、ナプキンを取り出し後の袋体中に、それまで着用していた生理ナプキンを収納し、袋体を完全に再封鎖することが記載されており、引用文献3に記載されたシールは、本願発明1の「包装フラップ」に相当する蓋部と、本願発明1の「包装本体」に相当する袋体のランディング面とに、複数回の粘着、剥離可能に固定されるものであり、「再固定可能な接着ファスナシステム」を構成するタブということができ、引用文献1に記載された発明も、「使用ずみ製品の廃棄に使用される包装部材を有する個々に包装される衛生ナプキンを提供する」ことを目的とするものであり(上記摘示記載c参照)、タブ55の接着剤54は、少なくとも使用前は折り畳み状態を保持するだけの引っ張り抵抗力を有するのである(上記摘示記載h参照)から、該タブを用いた「テープファスナシステム」を、引用文献3に示されたように完全な再封鎖の可能な「再固定可能な接着ファスナシステム」とすることは、当業者が適宜選択しえた設計変更と云うべき事項である。
そして引用文献3に示される使用ずみのナプキンを収容した袋体を「完全に再封鎖」するものであることは、その粘着力は、自然に剥離することのないように、粘着面に平行な方向にも所定値以上の接着強度を具備するものであることは明らかであり、再封鎖状態を保持するだけの所定の引っ張り抵抗力を有するものとすることは、当業者がその設計にあたり、当然に考慮すべき事項である。
さらに、本願発明1が「テープタブの10ミリメートル幅の標本片が前記ランディング面に接着され前記標本片と前記ランディング面が毎分508ミリメートルの速さで反対方向に引っ張られたときに900グラム以上の動的剪断強度」を有することについて、その数値を「900グラム以上」としたものが、引用文献3の「完全に再封鎖」なるものを排除して構成を特定するものかを検討する。
当審で通知した、本願請求項1に規定するようなパラメータで示されるものとしたことに格別の技術的意義を認めない旨の拒絶理由対し、請求人は、同パラメータが引用文献3のものとは別異の値となることを何等示すことなく、引用文献3のものが、本願発明1と同様の方法で「動的剪断強度」を測定することを開示したものではないことを主張している。たしかに、請求人が主張するとおり、引用文献3には、「動的剪断強度」を測定することは、開示されていないものの、測定方法が新規であることが、物品の構成として、新規な構成を特定するものと直ちにいうことはできず、その特定が従来のものとは、別異の値となることによって、はじめて物品の構成として新規な構成を特定すると云うべきところ、引用文献3のものは、それまで着用していた生理ナプキンを収納し、袋体を完全に再封鎖することは、その直接の記載がなくても、一定範囲の動的剪断強度が達成されていることは、明らかであり、本件発明1が「900グラム以上」とする数値に関して、上限が、剥離時にランディング面を構成する包装材を損傷したのでは発明本来の目的に反することから包装材の材質等から自ずと限定されることを勘案すると、引用文献3のものの「完全に再封鎖」も、上限に関しては、同様であり、その下限も所期の目的に応じた自明の範囲にあることは明らかであり、所期の目的を達成する以上の動的剪断強度であることは、その直接の記載に関わらず、明らかな事項である。
相違点2の数値限定は、引用文献3に記載される「完全な再封鎖」なる構成を排除するものとは認められない。
したがって、「900グラム以上」なる数値もまた、包装の対象である吸収性物品の種類、接着テープ及び接着剤の材質、接着長さなどに応じて、当業者が適宜決定しうる設計的事項である。
したがって、相違点2は、引用文献1,3に記載された発明および周知の技術に基づいて、当業者が容易になしえたものと認める。

そして、本願発明1が奏する効果は、各引用文献に記載される発明及び周知の技術から予測される以上の格別のものとは認められない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、本願出願前周知の技術的事項を勘案すれば、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-04 
結審通知日 2006-12-05 
審決日 2006-12-27 
出願番号 特願平6-506311
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上條 のぶよ  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 関 信之
豊永 茂弘
発明の名称 個々に包装される使い捨て吸収性物品用の再固定可能な接着ファスナシステム  
代理人 岡田 淳平  
代理人 永井 浩之  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 吉武 賢次  

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