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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1171349 |
審判番号 | 不服2003-17986 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-09-17 |
確定日 | 2008-01-15 |
事件の表示 | 平成5年特許願第6389号「電気機械、特に自動車用の切換え及び制御機械」拒絶査定不服審判事件〔平成5年10月29日出願公開、特開平5-283876号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年1月19日(パリ条約による優先権主張1992年1月21日、ドイツ国、1992年6月2日、ドイツ国)の出願であって、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成14年5月16日付け及び平成14年12月6日付けの各手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 電気機械、特に自動車用の切換え又は制御機械であって、電子回路を支持する少なくとも1つのプリント配線板(10,10A)がケーシング内に配置されていて、このケーシングが少なくとも1つのフード状のケーシングカバー(18,18A)とフード状のケーシング底部(26,26A)とを有していて、ケーシングカバー(18,18A)及びケーシング底部(26,26A)がそれぞれ1つのつば状の縁部範囲(22,22A;28,28A)を備えている形式のものにおいて、 ケーシングカバー(18,18A)が複数の側壁を有しており、これらの側壁の内の1つ(19)が差込み条片(16)のための切欠きを有しており、ケーシングカバー(18,18A)のその他の側壁(21)が連続したつば状の縁部域(22,22A)を有しており、該縁部域がプリント配線板(10,10A)の外側範囲に載着しており、この場合、このプリント配線板(10,10A)の外側範囲には回路構成部材及び導体路は設けられておらず、プリント配線板(10,10A)の外側範囲におけるケーシング底部のつば状の縁部域(28,28A)がプリント配線板(10,10A)に載着しており、プリント配線板(10,10A)が、少なくともケーシングカバー(18,18A)及びケーシング底部(26,26A)の縁部範囲(22,22A;28,28A)の支え範囲で、熱伝導性の良い材料から成る層を有していることを特徴とする電気機械。」(以下「本願発明」という。) 2.引用刊行物とその記載事項 これに対して、当審が平成18年5月24日付けの拒絶理由通知で引用した刊行物のうちの (1)実公昭52-31390号公報(以下「刊行物1」という。) (2)実願平1-63761号(実開平3-61387号) のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。) には、それぞれ、次の事項が記載されている。 (1)刊行物1(実公昭52-31390号公報)の記載事項 刊行物1には、「プリント基板などの取付装置」に関して、図面第1図、第2図とともに次の事項が記載されている。 (ア)「まず、図において1は第2図に示すように円形の鍔部2を有する下面が開口した内面中空の円形上ケースで、その鍔部2には90度間隔の4箇所にわたり裂け目3が1箇所当り2個形成されている。4は上記ケース1と向い合うように設けられた同じく円形鍔部5を有する上面が開口した内面中空の円形下ケースである。6は上記上ケース1の円形鍔部2と下ケース4の円形鍔部5間にその周縁部が挟持されて上ケース1と下ケース4間に装置された円形のプリント基板で、このプリント基板6の上面部および下面部には抵抗、コンデンサ、トランジスタなどの電子部品7が取付けられており、かつこれら電子部品7間を接続する導体部(図示せず)がプリント基板6上には設けられている。8は上記裂け目3の部分に位置して上ケース1と下ケース4を締付けている取付けねじであり、この取付けねじ8を締付けることにより裂け目3の部分が変形し、この裂け目3の部分の弾性力によつてプリント基板6が強く圧接されるものである。」(第1頁第1欄第34行?第2欄第16行) (イ)「なお、上記の一実施例においては上ケースと下ケースとも円形としたが、これは別段角形であつても差支えないものである。」(第1頁第2欄第35?37行) 上記記載事項(イ)には、上ケース1が角形であっても差支えない旨が記載されており、そのように上ケース1が角形である場合には、当該上ケース1が複数の側壁を有することは明らかであるから、上記記載事項(ア)、(イ)及び図面第1図、第2図の記載を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。 「プリント基板などの取付装置であって、電子部品7及び導体部を支持する少なくとも1つのプリント基板6がケース1,4内に配置されていて、このケース1,4が少なくとも1つのフード状の上ケース1とフード状の下ケース4とを有していて、上ケース1及び下ケース4がそれぞれ鍔部2,5を備えている形式のものにおいて、 上ケース1が複数の側壁を有しており、上ケース1の側壁が連続した鍔部2を有しており、該鍔部2がプリント基板6の外側範囲に載着しており、プリント基板6の外側範囲における下ケース4の鍔部5がプリント基板6に載着している、プリント基板などの取付装置。」(以下、「引用発明」という。) (2)刊行物2(実願平1-63761号(実開平3-61387号)のマイクロフィルム)の記載事項 刊行物2には、「電子機器の放熱装置」に関して、図面第1図とともに、明細書第5頁第1?10行には、 「図示するように、ACアダプタ10は、上ケース11aと下ケース11bとからなるケース体11と、このケース体11内に収納配設された回路基板12と、回路基板12に立設される発熱回路部品としてのトランス13および半導体14と、AC側コネクターとなるACインレット15と、コード17を介したDC出力端子16と、下ケース11bの内側と回路基板12の下面との間に間隙21を設けて配設される絶縁層18と電熱層19を有する平板20とから大略構成されている。」 と記載されている。 上記記載事項及び図面第1図の記載を総合すると、刊行物2には、 「上ケース11aの側壁の内の1つがAC側コネクターとなるACインレット15のための切欠きを有する」 ことが記載されているものと認められる。 3.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「電子部品7及び導体部」は本願発明の「電子回路」に相当し、以下同様に、「プリント基板6」は「プリント配線板(10,10A)」に、「上ケース1」は「ケーシングカバー(18,18A)」に、「下ケース4」は「ケーシング底部(26,26A)」に、上ケース1の「鍔部2」はケーシングカバー(18,18A)の「つば状の縁部範囲(22,22A)」及び「つば状の縁部域(22,22A)」に、下ケースの「鍔部5」はケーシング底部(26,26A)の「つば状の縁部範囲(28,28A)及び「つば状の縁部域(28,28A)」に、それぞれ相当する。また、引用発明の「プリント基板などの取付装置」及び本願発明の「電気機械」は、いずれも「装置」といえる点では同じである。 よって、本願発明と引用発明とは、 [一致点] 「装置であって、電子回路を支持する少なくとも1つのプリント配線板がケーシング内に配置されていて、このケーシングが少なくとも1つのフード状のケーシングカバーとフード状のケーシング底部とを有していて、ケーシングカバー及びケーシング底部がそれぞれつば状の縁部範囲を備えている形式のものにおいて、 ケーシングカバーが複数の側壁を有しており、ケーシングカバーの側壁が連続したつば状の縁部域を有しており、該縁部域がプリント配線板の外側範囲に載着しており、プリント配線板の外側範囲におけるケーシング底部のつば状の縁部域がプリント配線板に載着している、装置」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 装置に関し、本願発明では、「電気機械、特に自動車用の切換え又は制御機械」との用途限定が付されているのに対して、引用発明では、そのような用途限定がない点。 [相違点2] つば状の縁部範囲に関し、本願発明では、それぞれ「1つの」つば状の縁部範囲と限定されているのに対して、引用発明では、鍔部2,5(つば状の縁部範囲)をそれぞれ「少なくとも1つ」備えているとはいえるものの、本願発明のように「1つ」に限定されるものではない点。 [相違点3] ケーシングカバーの側壁に関し、本願発明では、「これらの側壁の内の1つ(19)が差込み条片(16)のための切欠きを有しており」と限定されているのに対して、引用発明では、差込み条片のための切欠きについての限定がない点。 [相違点4] プリント配線板に関し、本願発明では、「この場合、このプリント配線板(10,10A)の外側範囲には回路構成部材及び導体路は設けられておらず」と限定されているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。 [相違点5] プリント配線板に関し、本願発明では、「プリント配線板(10,10A)が、少なくともケーシングカバー(18,18A)及びケーシング底部(26,26A)の縁部範囲(22,22A;28,28A)の支え範囲で、熱伝導性の良い材料から成る層を有している」と限定されているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。 4.当審の判断 そこで、上記各相違点について以下で検討する。 (1)[相違点1]について 引用発明のようなプリント基板6を取り付けた装置を、電気機械や自動車用の切換え又は制御機械に用いることは周知の技術であるから、上記相違点1の本願発明の限定事項は、単なる用途の限定にすぎないものである。 (2)[相違点2]について 引用発明においても、上ケース1及び下ケース4がそれぞれ少なくとも1つの鍔部2,5(つば状の縁部範囲)を備えているといえるし、また、鍔部2,5(つば状の縁部範囲)の数は上ケース1及び下ケース4の形状等に応じて当業者が適宜設定しうるから、本願発明において、つば状の縁部範囲の数を1つと限定したことに、格別の困難性があるとはいえない。また、本願発明において、つば状の縁部範囲の数を「少なくとも1つ」でなく「1つ」と限定したことに格別の技術的意義があるともいえない。 (3)[相違点3]について 上記のとおり、刊行物2には、「上ケース11aの側壁の内の1つがAC側コネクターとなるACインレット15のための切欠きを有する」ことが記載されているものと認められ、当該刊行物2記載の事項の「上ケース11aの側壁」及び「AC側コネクターとなるACインレット15」は、それぞれ、本願発明の「ケーシングカバー(18,18A)の側壁」及び「差込み条片(16)」に相当するから、上記刊行物2記載の事項は、上記相違点3の本願発明の「これらの側壁の内の1つ(19)が差込み条片(16)のための切欠きを有しており」という限定事項に相当する。 そして、引用発明においても「差込み条片(16)」に相当する部材は適宜設けられるものであるから、当該「差込み条片(16)」に相当する部材のために、上ケース1(ケーシングカバー)の側壁の内の1つが切欠きを有するようにすることは、上記刊行物2記載の事項に基づいて、当業者であれば容易に想到することができた事項である。 (4)[相違点4]について プリント配線板の外側範囲に回路構成部材及び導体路を設けるか否かは、プリント配線板上の電子回路の配置とケーシングカバーとの関係において当業者が適宜設定しうる事項であるから、上記相違点4の本願発明の限定事項は、単なる設計上の事項にすぎないものである。 (5)[相違点5]について 引用発明の電子部品7には種々の型式のものがあり、それらには熱を発生する電子部品が通常含まれるから、その熱を排出するための手段を設ける必要があるという課題は、引用発明に内在しているといえる。 そして、電子部品から発生する熱をケーシング用の部材に熱伝導する手段を、少なくともプリント配線板の支え範囲に備えることは周知の技術である(例えば、前審の拒絶査定において例示した、実願昭63-142084号(実開平2-110392号)のマイクロフィルムの明細書第3頁第16行?第5頁第11行及び図面第1図、第2図のプリント基板1、電子部品2、放熱プレート3及び金属ケース5に関する記載を参照)。また、プリント配線板に熱伝導性の良い材料から成る層を備えることも周知の技術である(例えば、当審の拒絶理由通知において例示した、実願昭63-57293号(実開平1-161355号)のマイクロフィルム、実願昭63-89268号(実開平2-11391号)のマイクロフィルム、実願昭62-134955号(実開昭64-39673号)のマイクロフィルムを参照)。 そうすると、刊行物1の記載事項(ア)に、「6は上記上ケース1の円形鍔部2と下ケース4の円形鍔部5間にその周縁部が挟持されて上ケース1と下ケース4間に装置された円形のプリント基板」とあるように、引用発明のプリント基板6は、その周縁部が上ケース1の鍔部2と下ケース4の鍔部5に挟持されて支えられるものであるから、引用発明において、電子部品7から発生する熱をケーシング用の部材である上ケース1及び下ケース4に熱伝導する手段を、少なくともプリント基板6の支え範囲である周縁部に備えるとともに、当該熱伝導する手段として、プリント配線板に備えられた熱伝導性の良い材料から成る層を採用することは、上記各周知の技術に基づいて、当業者であれば容易に想到することができた事項である。 (6)作用効果について また、本願発明により得られる効果も、引用発明、刊行物2記載の事項及び上記各周知の技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の事項及び上記各周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の請求項2ないし9に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-10 |
結審通知日 | 2007-08-15 |
審決日 | 2007-08-30 |
出願番号 | 特願平5-6389 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深澤 幹朗、新海 岳 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
佐藤 正浩 柴沼 雅樹 |
発明の名称 | 電気機械、特に自動車用の切換え及び制御機械 |
代理人 | ラインハルト・アインゼル |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |