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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1171488 |
審判番号 | 不服2005-5976 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-07 |
確定日 | 2008-01-17 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 45624号「電子部品組み込み樹脂成形基板」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 8日出願公開、特開2000-244077〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成11年2月24日に出願したものであって、原審において平成16年12月10日付で拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成17年2月14日付で意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年3月3日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年4月26日付で手続補正書が提出されたものである。 II.平成17年4月26日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年4月26日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?3のうち、請求項1は次のように補正されたものと認める。 「【請求項1】 電極パターンの表面を樹脂にて覆うとともにその部品実装位置に、電子部品の少なくとも一部を埋設可能な凹部を形成して前記凹部の底部に前記電極パターンの一部を露出させるとともに、この凹部の側壁が凹部の内側に向かって傾いた傾斜辺で形成され、前記凹部の底部で前記電極パターンの一部を露出させた基板を設け、 基板の前記凹部に配置した電子部品の側面と前記傾斜辺の間に隙間を空けた状態で前記電子部品の底面電極と基板の前記電極パターンとを導通させた状態に固定した電子部品組み込み樹脂成形基板。」 なお、補正後の請求項1には上記下線部が「前記傾斜面」と記載されているが、「前記」に文言通り対応する構成はないため、補正後の請求項1の記載、補正前の請求項1の記載、本願明細書段落【0033】の記載から判断すると、「前記」に実質的に対応する構成は「傾斜辺」であるから、本願の請求項1を上記下線部のように「前記傾斜辺」と認定した。 そこで、上記補正を検討すると、補正後の請求項1は、実質的に、補正前の請求項1の「電極パターンと電子部品の電極とを接続可能にした」構成について、「基板の前記凹部に配置した電子部品の側面と前記傾斜辺の間に隙間を空けた状態で前記電子部品の底面電極と基板の前記電極パターンとを導通させた状態に固定した」という事項で限定するものであるから、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そして、上記補正については、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。 なお、審判請求人は、平成17年4月26日付の審判請求書の手続補正書において、補正後の請求項1は、補正前の請求項5を一部限定した旨主張しているが、補正後の請求項1には、補正前の請求項5における「導電樹脂または前記凹部に充填した絶縁樹脂にて電子部品の電極と基板の電極パターンとを導通させた状態に固定した」構成について、「導電樹脂または前記凹部に充填した絶縁樹脂にて」が省かれており、補正後の請求項1は、補正前の請求項5を限定するものではない。 次に、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかについて以下に検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である、国際公開第97/01263号(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)刊行物(国際公開第97/01263号) (1a)「技術分野 本発明は、電気機器の電気回路を構成する回路基板に設けられる部品を保持するための部品保持具及び部品保持具を有する基板に関するものである。」(第1頁第3?5行) (1b)「第1の保持部である第1の保持部a45及び第1の保持部b46は第1の絶縁板43の銅板16と反対側の面に設けられており、第1の部品である挿入される部品47を絶縁板である樹脂の弾性により挟持する。・・・・・・第2の保持部である第2の保持部a52及び第2の保持部b53は第2の絶縁板44の銅板16と反対側の面に設けられおり、第2の部品である挿入される部品54を絶縁板である樹脂の弾性により扶持するものである。」(第12頁第3?16行) (1c)「(実施の形態8) 第14図は本発明の一実施の形態である部品保持具を備えた基板を示す図である。なお、上記の実施の形態と同様の構成については同じ符号を用い、説明を省略する。 第1の絶縁板43は所定の電気回路を形成するための導電板である銅板16の一方に面に設けられており、第2の絶縁板44は銅板16の他方の面に設けられている。第1の保持部である第1の保持部a60及び第1の保持部b61は第1の絶縁板43の銅板16と反対側の面に設けられており、第1の部品たるチップ部品62が載置された際に、そのチップ部品62を包持するものである。第1の載置部63は第2の絶縁板44の銅板16側に設けられ、チップ部品62を載置するものである。第1の接続電極部64は銅板16に設けられており、チップ部品62を第1の載置部63に載置した際にチップ部品62に設けられた電極65が第1の接続電極部64に電気的に接触する。 第2の保持部である第2の保持部a66及び第2の保持部b67は第2の絶縁板57の銅板40と反対側の面に設けられており、第2の部品たるチップ部品68が載置された際に、そのチップ部品68を包持するものである。第2の載置部69は第1の絶縁板43の銅板40側に設けられ、チップ部品62を載置するものである。第2の接続電極部70は銅板16に設けられており、チップ部品68を第2の載置部69に載置した際にチップ部品68に設けられた電極71が第2の接続電極部70に電気的に接触する。チップ部品62を第1の載置部63に載置した際に第1の保持部a60と第1の保持部b61とがチップ部品62を包持し、チップ部品68を第2の載置部69に載置した際に第2の保持部a66と第2の保持部b67とがチップ部品68を包持する。 このような構成によれば、チップ部品62、68を第1の保持部60、61と第2の保持部66、67で包持することで部品を基板の両面に保持することができ、基板の搬送中に基板からチップ部品62、68が外れ、後のはんだ付け工程で接触不良を発生することを防止できるとともに両面実装を容易に行うことができる。 また、接着剤による部品の仮止めを行う必要もない。 なお、本実施の形態では第1の保持部60、61及び第2の保持部66、67はチップ部品62、68を把持しているが、チップ部品62、68を保持できればどのような保持の方法でもかまわない。」(第14頁第2行?第15頁第6行) (1d)「(実施の形態11) 第19図は本発明の一実施の形態である部品保持具を備えた基板を製造する方法を示す工程図である。 まず、第19図(a)に示すように導電板である銅板4を所定の電気回路が形成できるように所定の形状とする。この際に、プレスにより所定の形状としてもよいし、エッチングにより所定の形状としてもよい。つぎに、絶縁材料を用いて銅板4を少なくとも一方の面を覆うようにする。具体的には、第19図(b)に示すように銅板を型78に挿入して射出成形等で成形する。本実施例では銅板を型78に挿入し、絶縁材料である樹脂80を樹脂注入口79より型に注入し、樹脂80を固化させている。この際に、絶縁材料である樹脂80が銅板を被覆厚さ0.5?1mmで覆うようにし、その上に導線であるリード線13を有する部品11を実装する位置の周囲には保持部8、9を設ける。また、部品11を保持部8、9に保持した際に部品11のリード線13又はチップ部品25の電極部26が銅板4の一部に電気的に接触できるようにしている。すなわち、後に半田づけを行えるように銅板4の所定の箇所を露出させて銅板4と樹脂80を成形する。 最後に、第19図(c)に示すように銅板4に入り込んだ余分の樹脂をプレス機81によりプレスして、抜き取る。 このような方法により、本発明の部品保持具を有する基板を製造できるとともに、一体成形により容易に製造することができる。」(第17頁第26行?第18頁第17行) (1e)第14図(a)には、銅板16上に第1の絶縁板43が形成された基板において、第1の載置部63の第1の接続電極部64が露出するように、該第1の絶縁板43を除去した凹部が形成されており、チップ部品62の一部が該凹部に埋設されるように載置されており、該凹部に載置されたチップ部品62の側面と、該凹部の側壁の間に隙間が空けられた状態であることが示されている。 3.対比・判断 刊行物には、上記摘記事項(1b)の記載、及び上記摘記事項(1d)の「具体的には、第19図(b)に示すように銅板を型78に挿入して射出成形等で成形する。本実施例では銅板を型78に挿入し、絶縁材料である樹脂80を樹脂注入口79より型に注入し、樹脂80を固化させている。この際に、絶縁材料である樹脂80が銅板を被覆厚さ0.5?1mmで覆うようにし、・・・」という記載から、銅板を被覆する絶縁板が樹脂であることが示唆されており、上記摘記事項(1c)の「なお、上記の実施の形態と同様の構成については同じ符号を用い、説明を省略する。」という記載を考慮すれば、上記摘記事項(1c)の(実施の形態8)における第1の絶縁板43も、樹脂であるということができる。 よって、上記摘記事項(1c)、(1e)に示されている「(実施の形態8)」を中心にして、上記摘記事項(1a)?(1e)を総合すると、刊行物には、 「所定の電気回路を形成するための導電板である銅板16の一方の面を樹脂である第1の絶縁板43で被覆し、チップ部品62が載置される第1の載置部63に、該チップ部品62の一部が埋設されるような凹部を形成して、該凹部の底部に、該銅板16に設けた第1の接続電極部64を露出させた基板を設け、 基板の該凹部に載置したチップ部品62の側壁と、該凹部の側壁の間に隙間を空けた状態で、該チップ部品62の電極65と基板の該第1の接続電極部64とを電気的に接触させて保持した、回路基板。」の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていることになる。 そこで、本願補正発明1と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の「一方の面」、「樹脂である第1の絶縁板43」、「チップ部品62が載置される第1の載置部63」、「チップ部品62」、「載置」は、本願補正発明1の「表面」、「樹脂」、「(その)部品実装位置」、「電子部品」、「配置」にそれぞれ相当する。 また、刊行物発明の「所定の電気回路を形成するための導電板である銅板16」は、電気回路を形成するためのものであるから、本願補正発明1の「電極パターン」に相当し、刊行物発明の「第1の接続電極部64」も、電極パターンである銅板16に設けられているから、本願補正発明1の(露出される)「電極パターン(の一部)」に相当するといえる。 そして、刊行物発明の「(該チップ部品62の一部が)埋設されるような凹部」とは、本願補正発明1の「(電子部品の一部を)埋設可能な凹部」を意味し、刊行物発明の「被覆」することは、本願補正発明1の「覆う」ことに相当し、刊行物発明の「電気的に接触させて保持した」ことは、本願補正発明1の「導通させた状態に固定した」ことに相当し、刊行物発明の「回路基板」は、電子部品であるチップ部品を載置した、樹脂で被覆された回路基板であることから、本願補正発明1「電子部品組み込み樹脂形成基板」に外ならないから、両者は、 「電極パターンの表面を樹脂にて覆うとともにその部品実装位置に、電子部品の一部を埋設可能な凹部を形成して、前記凹部の底部に前記電極パターンの一部を露出させ、前記凹部の底部で前記電極パターンの一部を露出させた基板を設け、 基板の該凹部に配置した電子部品の側面と、該凹部の側壁の間に隙間を空けた状態で、前記電子部品の電極と基板の前記電極パターンとを導通させた状態に固定した、電子部品組み込み樹脂形成基板。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:凹部の側壁が、本願補正発明1では、凹部の内側に向かって傾いた傾斜辺で形成されているのに対し、刊行物発明では、そのようになっていない点。 相違点2:基板の凹部で、電極パターンと導通される電子部品の電極が、本願補正発明1では、電子部品の底面電極であるのに対し、刊行物発明では、そのようになっていない点。 そこで、上記相違点1、2について検討する。 [相違点1について] 電子部品を埋め込む基板の凹部の側壁を、凹部の内側に向かって傾いた傾斜辺で形成することは、例えば、次の特許文献に記載されているように本願の出願日前に周知であり、刊行物発明の凹部の側壁を、部品搭載の便等を考慮して、凹部の内側に向かって傾いた傾斜辺とすることは、当業者ならば容易に想到しうることである。 周知例1:実願昭53-56号(実開昭54-102646号)のマイクロフィルム (特に、第2頁第14行?第3頁第18行、第3図、第4図参照。周知例1の「傾斜部14」が、本願補正発明1の「凹部の内側に向かって傾いた傾斜辺」に相当する。) 周知例2:特開平8-130356号公報 (特に、段落【0005】、図1参照。周知例2の「凹部5」の「SMDタイプ部品1のはんだ付け端子を有する端面側」が、本願補正発明1の「凹部の内側に向かって傾いた傾斜辺」に相当する。) 周知例3:特開平10-229144号公報 (特に、段落【0010】、図1参照。周知例3の「テーパ面」の「側壁9a」が、本願補正発明1の「凹部の内側に向かって傾いた傾斜辺」に相当する。) [相違点2について] 基板の凹部に電子部品を埋め込む際に、電子部品の底面電極でもって、基板の電極パターンと導通を図ることは、例えば、上記周知例3(特に、段落【0010】、図1参照。)や、次に挙げる特許文献に記載されているように本願の出願日前に周知であり、刊行物発明において、実装面積の縮小化等の目的のために、電子部品の電極として、底面電極を採用することは、当業者にとって格別なこととはいえない。 周知例4:特開平10-92968号公報 (特に、段落【0042】?【0044】、図1?図3参照。周知例4の「半導体ベアチップ20」の「フェースダウン実装」が、本願補正発明1の「電子部品の底面電極と基板の電極パターンとを導通させた状態に固定」することに相当する。) 周知例5:特開平5-63136号公報 (特に、段落【0015】?【0016】、図1、図2参照。周知例5の「半導体ペレット4」のバンプ6が設けられた「電極面」が、本願補正発明1の「電子部品の底面電極」に相当する。) そして、本願補正発明1による効果も刊行物の記載、及び上記周知技術から予測することができる程度のものであって格別顕著なものとは認められない。 したがって、本願補正発明1は、刊行物に記載された発明、及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明 平成17年4月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成17年2月14日付手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 電極パターンの表面を樹脂にて覆った樹脂成形基板であって、部品実装面の部品実装位置に電子部品の少なくとも一部を埋設可能な凹部を形成して前記凹部の底部に前記電極パターンの一部を露出させるとともに、この凹部の側壁が凹部の内側に向かって傾いた傾斜辺で形成され、前記電極パターンと電子部品の電極とを接続可能にした樹脂成形基板。」 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物及びその記載事項は、上記「II.2.引用刊行物とその記載事項」欄に記載されたとおりである。 3.対比・判断 本願発明1は、実質的には、前記「II.平成17年4月26日付の手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明1の「基板の前記凹部に配置した電子部品の側面と前記傾斜辺の間に隙間を空けた状態で前記電子部品の底面電極と基板の前記電極パターンとを導通させた状態に固定した」という構成において、「基板の前記凹部に配置した電子部品の側面と前記傾斜辺の間に隙間を空けた状態で」という事項、及び電子部品の「底面電極」という事項で限定する構成を省き、「電極パターンと電子部品の電極とを接続可能にした」という構成にしたものである。 そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「II.3.対比・判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1は、刊行物に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-14 |
結審通知日 | 2007-11-20 |
審決日 | 2007-12-03 |
出願番号 | 特願平11-45624 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長屋 陽二郎 |
特許庁審判長 |
岡 和久 |
特許庁審判官 |
前田 仁志 正山 旭 |
発明の名称 | 電子部品組み込み樹脂成形基板 |
代理人 | 板垣 孝夫 |
代理人 | 原田 洋平 |
代理人 | 笹原 敏司 |
代理人 | 森本 義弘 |