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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200515647 審決 特許
不服200513231 審決 特許
不服20051439 審決 特許
不服200516538 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1171550
審判番号 不服2004-14570  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-12 
確定日 2008-01-16 
事件の表示 特願2000-190119「チルト及び/または集束ずれ補償方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月26日出願公開、特開2001- 23174〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成12年6月23日(パリ条約による優先権主張1999年6月25日、1999年9月9日 韓国)に出願されたものであって、平成15年10月29日付けで手続補正がなされたところ、平成16年4月6日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされ、これに対して、平成16年7月12日付けで拒絶査定不服審判の請求とともに、手続補正がなされたものである。

II.平成16年7月12日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年7月12日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.本件補正について補正の内容
平成16年7月12日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、請求項の数を22から18に減ずると共に、請求項1乃至18について、
「【請求項1】 光記録媒体のチルトを補償する方法において、
(a)前記光記録媒体のチルトを検出する段階と、
(b)検出されたチルトに従って所定の体系を用いて所定の記録パターンを有する記録信号を補償する段階を含み、
前記(b)段階は、(b2)前記記録信号に対応する記録マークの大きさを補償するために前記検出されたチルトに従って記録に必要なパワー及び/または時間を調節する段階を含んでなり、
前記(b2)段階では、前記マークの長さの補償は記録に必要なパワーで調節し、前記マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節し、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節することを特徴とする方法。
【請求項2】 前記(b)段階は、
(b1)前記検出されたチルトに従って記録パターンをシフトする段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】 入力データに対して所定の記録パターンを有する記録パルスによりマークとスペースで記録されている光記録媒体のチルトを補償する方法において、
(a)前記光記録媒体のチルトを検出する段階と、
(b)チルト及び/またはマークの長さに従って記録パターンのシフト量、マークの長さと幅を補償するために記録に必要なパワー及び/または時間などが貯蔵されたメモリを用いて前記(a)段階で検出されたチルトに従って適応的に記録パターンを補償する段階を含んでなり、
前記マークの長さの補償は記録に必要なパワーで調節し、前記マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節し、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節することを特徴とする方法。
【請求項4】 光記録媒体のチルト及び集束ずれを補償する方法において、
(a)前記光記録媒体の集束ずれを検出する段階と、
(b)検出された集束ずれに従って所定の体系により所定の記録パターンを有する記録パルスを補償する段階と、
(c)前記光記録媒体のチルトを検出する段階と、
(d)検出されたチルトに従って所定の記録パターンを有する記録パルスを補償する段階とを含み、
前記(d)段階は、(d2)前記記録信号に対応する記録マークの大きさを補償するために記録に必要なパワー及び/または時間を調節する段階を含んでなり、
前記(d2)段階では、前記マークの長さの補償は記録に必要なパワーで調節し、前記マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節し、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節することを特徴とする方法。
【請求項5】 前記所定の体系は、検出された集束ずれに従って光パワーレベルを調節することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】 前記(d)段階は、
(d1)前記検出されたチルトに従って記録パターンをチルトに従ってシフトされただけ逆方向にシフトする段階を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】 入力データに対して所定の記録パターンを有する記録パルスによりマークとスペースで記録されている光記録媒体のチルト及び/または集束ずれを補償する方法において、
(a)前記光記録媒体のチルト及び/または集束ずれを検出する段階と、
(b)集束ずれに従う補償記録パワー、チルト/マークの長さに従って記録パターンのシフト量、マークの長さと幅を補償するために記録に必要なパワー及び/または時間などが貯蔵されたメモリを用いて前記(a)段階で検出されたチルト及び/または集束ずれに従って適応的に記録パターンを補償する段階とを含んでなり、
前記マークの長さの補償は記録に必要なパワーで調節し、前記マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節し、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節することを特徴とする方法。
【請求項8】 光記録媒体上に情報を記録及び/または再生する装置において、
光記録媒体のチルトを検出するチルト検出器と、
前記チルト検出器により検出されたチルトに従って所定の体系を用いて所定の記録パターンを有する記録信号を補償する記録補償器とを含んでなり、
前記記録補償器は、前記マークの長さの補償を記録パワーで調節し、前記マークの幅の補償を記録に必要な時間で調節し、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節することを特徴とするチルト補償装置。
【請求項9】 前記記録補償器は、前記検出されたチルトに従って記録パターンをシフトさせることを特徴とする請求項8に記載のチルト補償装置。
【請求項10】 前記光源の波長が青色波長であることを特徴とする請求項8に記載のチルト補償装置。
【請求項11】 入力データに対して所定の記録パターンを有する記録パルスによりマークとスペースで記録されている光記録媒体のチルトを補償する装置において、
前記光記録媒体のチルトを検出するチルト検出器と、
チルト及び/またはマークの長さに従って記録パターンのシフト量、マークの長さと幅を補償するために記録に必要なパワー及び/または時間などが貯蔵されたメモリを用いて前記チルト検出器で検出されたチルトに従って適応的に記録パターンを補償する記録補償器とを含んでなり、
前記記録補償器は、前記マークの長さの補償を記録パワーで調節し、前記マークの幅の補償を記録に必要な時間で調節、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節することを特徴とするチルト補償装置。
【請求項12】 光記録媒体上に情報を記録及び/または再生する装置において、
光記録媒体の集束ずれ及び/またはチルトを検出する集束ずれ/チルト検出器と、
前記集束ずれ/チルト検出器により検出された集束ずれ及び/またはチルトに従って所定の体系により所定の記録パターンを有する記録パルスを補償する記録補償器とを含んでなり、
前記記録補償器は、前記マークの長さの補償を記録に必要なパワーで調節し、前記マークの幅の補償を記録に必要な時間で調節し、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節することを特徴とするチルト/集束ずれ補償装置。
【請求項13】 前記所定の体系は、検出された集束ずれに従って前記記録パルスを記録するのに必要な光パワーレベルを調節することを特徴とする請求項12に記載のチルト/集束ずれ補償装置。
【請求項14】 前記所定の体系は、検出されたチルトに従って前記記録パルスを記録するのに必要なパワー及び/または時間を調節することを特徴とする請求項12に記載のチルト/集束ずれ補償装置。
【請求項15】 前記記録補償器は、前記検出された集束ずれに従って記録パワーを調節した後、前記検出されたチルトに従って記録パターンをチルトに従ってシフトされただけ補償するために時間的に先立つ記録パルスを生成することを特徴とする請求項12に記載のチルト/集束ずれ補償装置。
【請求項16】 前記光源の波長が青色波長であることを特徴とする請求項12に記載のチルト/集束ずれ補償装置。
【請求項17】 入力データに対して所定の記録パターンを有する記録パルスによりマークとスペースで記録されている光記録媒体のチルト及び/または集束ずれを補償する装置において、
前記光記録媒体の集束ずれ及び/またはチルトを検出する集束ずれ/チルト検出器と、
集束ずれに従う補償記録パワー、チルト/マークの長さに従って記録パターンのシフト量、マークの長さと幅を補償するための記録に必要なパワー及び/または時間などが貯蔵されたメモリを用いて前記集束ずれ/チルト検出器から検出された集束ずれ及び/またはチルトに従って適応的に記録パターンを補償する記録補償器とを含んでなり、
前記記録補償器は、前記マークの長さの補償を記録に必要なパワーで調節し、前記マークの幅の補償を記録に必要な時間で調節し、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節することを特徴とするチルト/集束ずれ補償装置。
【請求項18】 前記メモリには集束ずれとチルトが同時に発生した場合、集束ずれまたはチルトが単独で発生した場合に各々対応して記録に必要なパワー及び/または時間、シフト量が貯蔵されていることを特徴とする請求項17に記載のチルト/集束ずれ補償装置。」
として、補正前の請求項1,4,5,9,10,14,15,21に係る各発明について、各発明の構成要件であるマークの幅の補償処理態様を、「前記マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節」の後に、
「し、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節する」
と、上記下線部の構成を付加し限定するものである。

2.本件補正の目的
本件補正の内容は、本件補正前の請求項3,8,12,19を削除するとともに、補正前の請求項1,4,5,9,10,14,15,21に係る発明の要件を具体的に限定しようとするものであるから、本件補正は、平成18年改正法前特許法第17条の2第4項第1,2号に規定された請求項の削除、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
次に、本件補正の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)否かについて、検討する。

(1)補正後発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、上記1.の【請求項1】に記載されたとおりのものである。

(2)刊行物及びその記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特公平5-54183号公報(平成5年8月11日出願公告、以下「刊行物」という。)には、以下の記載がある。
-刊行物-
刊行物は、光ディスクと光学ヘッド間に傾きの存在する場合であつても、ピット長を適当に保ち、しかもジッタ量を低減し、これにより信号を再生するさいの誤り率を低下させることのできる光ディスク装置を提供することを目的とした光学的記録装置に関する発明について、以下の記載がある。
(i)「1 光ビームを光ディスク上に照射することにより前記光ディスクに信号を記録するものにおいて、
トラックエラー信号のエンベロープ信号を検出する手段と、
検出されたエンベロープ信号に基づいて、前記光ディスクの相対的傾きを検出する手段と、
検出された前記相対的傾きに基づいて所定の長さのピットが形成されるように前記光ビームのエネルギーを補正する手段と
を有することを特徴とする光学的記録装置。
2 前記光ビームのエネルギーを補正する手段は、検出された前記相対的傾きに基づいて所定の長さのピットが形成されるように前記光ビームの強度を補正することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の光学的記録装置。
3 前記光ビームのエネルギーを補正する手段は、検出された前記相対的傾きに基づいて所定の長さのピットが形成されるように前記光ビームの発光時間を補正することを特徴とする特許請求の範囲第1項または第2項に記載の光学的記録装置。」(特許請求の範囲)
(ii)「従来、一定の角速度で光ディスクに信号を記録する場合には、第1図に示すように、光ディスクの径rによつてピット長が最適になるようにあらかじめ定められた記録パワー(光ビームの強度)Pに従つて、記録が行われていた。
この方法では、ディスクの傾き、反り、面振れ等によつて光ヘッドと記録媒体との間に相対的に傾き(以下単に傾きと称す)が生じた場合、光ディスク上に集光する光ビームにコマ収差が生じる。すなわち、ディスクの傾きがないときは第2図aに示すように中心強度の大きな対称強度分布が得られる。しかし、ディスクが傾くと、第2図bに示すように、光ビームの中心強度が小さくなるとともに光ビームの分布が非対称で片側の広がりが大きくなる。この結果、前記傾きがあると、第3図に示すように、記録ピット長が適正な長さL_(0)より短くなる。(なお、第3図は光ディスクに反りのみ存在し、面振れ等のない場合の例である。)さらに傾きが大きくなると、記録パワーが第2図に示す閾値パワーP_(0)よりも小さくなり、記録できなくなる。ここで、閾値パワーP_(0)は光ディスクに信号を記録するときの記録パワーの下限を示す。」(1頁2欄8行?2頁3欄10行)
(iii)「前述したように、傾きが存在するとジッタが増加する。一方、記録パワーを上げるとピット長は長くなり、ジッタは減少する。この関係を第9図および第10図に示す。第9図および第10図において、実線のグラフは破線のグラフに比して記録パワーの大きい場合を示す。このグラフから、傾きが存在する場合には、その傾きに応じて記録パワーを補正すれば、ピット長を適正にでき、ジッタを減少できることがわかる。この補正された記録パワーと発光時間の関係を第11図に示す。第11図aは傾きが存在しない場合、bは傾きが小さい場合、cは傾きが大きい場合の例である。
第12図は、第11図に示したような関係で記録パワーを補正する構成の実施例を示す。例えば第7図に示す構成により得られたトラックエラー信号のエンベロープ信号E_(b)は、差動アンプ26の負入力端子に入力される。一方差動アンプ26の正入力端子には一定の電圧E_(0)が印加される。この電圧は光ディスクの反射率等によりあらかじめ設定される値であり、傾きが0の場合のエンベロープ信号E_(b)と等しい。差動アンプ26はエンベロープ信号E_(b)と傾きが0の場合のエンベロープ信号の値E_(0)の差を取り信号E26として出力する。絶対値回路27に入力される。絶対値回路27は信号E26の絶対値をとり、信号E27として出力する。信号E27は乗算器28の一方の入力端子に入力される。乗算器28の他方の入力端子には、光ディスクの径rに応じた位置信号E_(r)が入力される。この信号E_(r)は、光ディスク用ピックアップの位置検出回路から得られる。乗算器28は、信号E27と信号E_(r)を乗算し、必要に応じて、適当な係数をかけて、補正された信号E28を出力する。信号E28と信号E_(r)は加算増幅器30に入力される。加算増幅器30は2つの入力信号を加えて適当に増幅し、任意の径における傾きにより不足した記録パワーを補正するための信号E30を出力する。信号E30はLDD(レーザダイオード ドライバ)32に入力される。LDD32は、LD(レーザダイオード)34の発光量が信号E30により指示された値になるようにLD34を駆動する。この際ピンダイオード36を用いてLDD32にフィードバックをかけAPC(Automatic Power Control)を形成し、LD34の発光を制御している。以上述べたように、信号E30を補正することにより、記録パワー(LD34の発光量)を適宜補正できる。これにより、傾きが存在する場合でも適正なピット長が確保され、ジッタが減少する。
以上述べた実施例では、LD34からの記録パワー(光ビームの強度)を変えているが、傾きに応じて光ビームの発光時間を長くすることも可能である。
第13図は記録パワーと発光時間の関係を示す。第13図aは傾きが存在しない場合を示しbは傾きが少さい場合を示す。bの場合、aに比して発光時間がΔt1だけ長くなる。第13図cは傾きが大きい場合である。この場合はaの場合に比してΔt2(Δt2>Δt1)だけ発光時間が長くなる。なお、ここでは記録パワー(光ビームの強度)は一定であるとする。」(3頁5欄7行?同頁6欄22行)
(iv)「以上の説明では、実施例として主に第12図及び第14図に示す構成の場合について説明した。しかし、この発明はこれに限定されず他の構成を用いてもよい。たとえば、記録パワーと光ビームの発光時間を個別に補正する場合について述べたが、記録パワーと光ビームの発光時間を関連をもって同時に補正してもよい。また、あらかじめ大きめの記録パワーで、適正ピット長を形成するように光ビームの発光時間を短かめに調整しておいてもよい。このようにすると、LD34の発光時間の変化幅を大きくとることができる。」(4頁7欄42行?同頁8欄8行)

以上の記載を光学的記録装置の信号処理内容に着目し、信号処理段階に従って時系列的に整理すると、刊行物には、結局、以下の発明が記載されているものと認める。
「光ビームを光ディスク上に照射することにより光ディスクに信号を記録する方法において、
トラックエラー信号のエンベロープ信号を検出する段階と、
検出されたエンベロープ信号に基づいて、光ディスクの相対的傾きを検出する段階と、
検出された相対的傾きに基づいて所定の長さのピットが形成されるように光ビームのエネルギーを補正する段階と
を有し、
光ビームのエネルギーを補正する段階は、検出された相対的傾きに基づいて所定の長さのピットが形成されるように、光ビームの強度、又は、発光時間を個別、又は、関連をもって同時に補正するものである光学的記録方法。」

(3)対比・判断
〔対比〕
補正後発明と刊行物記載の発明とを対比する。
いずれの発明も、反り、面振れ等による傾き、いわゆる、チルトがある光記録媒体(光ディスク)に情報を記録する際に、検出された光記録媒体のチルトに応じて記録パワー(光ビームの強度)を調整(補正)することにより、光記録媒体に生じる記録マーク(記録ピット)の長さの短縮等の変形を補償しようとする点で共通するものである。
i.刊行物記載の発明における「検出されたエンベロープ信号に基づいて、光ディスクの相対的傾きを検出する段階」が、結果的に、補正後発明における(a)の「光記録媒体のチルトを検出する段階」に相当する。
ii.補正後発明における「所定の記録パターンを有する記録信号」は、図21、【0041】【0042】等の記載から見て、いわゆる、周知のマルチパルス方式を想定していると解される。
一方、光記録方法において、記録マーク(ピット)と記録信号とは、一定の対応関係を有し、記録信号が所定の記録パターンを有していることは自明であるから、刊行物記載の発明においても、マルチパルス方式か否かはともかく、記録マーク(ピット)と対応した所定の記録パターンを有する記録信号を用いていることは明らかであり、この点で補正後発明と差異はない。
刊行物記載の発明において、「検出された相対的傾きに基づいて所定の長さのピットが形成されるように光ビームのエネルギーを補正する段階」が、補正後発明における(b)の「検出されたチルトに従って所定の体系を用いて所定の記録パターンを有する記録信号を補償する段階」に相当することは明らかである。
iii.刊行物記載の発明における「光ビームのエネルギーを補正する段階」が、「検出された相対的傾きに基づいて所定の長さのピットが形成されるように、光ビームの強度、又は、発光時間を補正する」という具体的信号処理内容において、補正後発明における(b2)の「前記記録信号に対応する記録マークの大きさを補償するために前記検出されたチルトに従って記録に必要なパワー及び/または時間を調節する段階」に相当することは明らかである。
iv.さらに、刊行物記載の発明では、光ビームのエネルギーを補正する段階は、検出された相対的傾きに基づいて所定の長さのピットが形成されるように、光ビームの強度、または、発光時間を補正するとしていて、所定の長さのピット、即ち、記録マークを形成するのに、光ビームの強度、発光時間の何れか一方、または、両者同時に補正するとされており、光ビームの強度を補正する場合、補正後発明での「マークの長さの補償は記録に必要なパワーで調節」する点と差異はない。

結局、両発明の[一致点]及び[相違点]は、以下のとおりである。
[一致点]
「光記録媒体のチルトを補償する方法において、
(a)前記光記録媒体のチルトを検出する段階と、
(b)検出されたチルトに従って所定の体系を用いて所定の記録パターンを有する記録信号を補償する段階を含み、
前記(b)段階は、(b2)前記記録信号に対応する記録マークの大きさを補償するために前記検出されたチルトに従って記録に必要なパワー及び/または時間を調節する段階を含んでなり、
前記(b2)段階では、前記マークの長さの補償は記録に必要なパワーで調節する方法。」

[相違点]
記録マークの大きさを規定する幅の補償について、補正後発明が、記録に必要な時間で調節するとし、さらに、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節するとしているのに対して、刊行物記載発明では、記録マークの幅の補償については不明である点。

〔判断〕
光ディスクへの情報記録において、周知のマルチパルス方式の記録信号を用いた上で、記録マークの特に幅方向の変形を補償するのに、光ビームの強度または光ビームの各パルス幅、即ち、光ビームの発光時間を制御調整することは、ごく周知のことである(例:原査定の拒絶理由で引用された特開昭64-46231号公報、特開平1-150230号公報等参照)。
刊行物記載の発明においても、光ディスクの傾きによって、光ビームの中心強度が小さくなるとともに光ビームの分布が非対称で片側の広がりが大きくなるとされ、記録マークの幅が変化することは当然に考えられることであり、記録マークの長さの補償と共に、記録マークの幅についても、光ビームの強度、又は、発光時間を補正することによって補償するようにすることは、格別の困難性を要することなく、必要に応じて、適宜に採用し得る範囲内のことである。

さらに、補正後発明では、記録マークの幅を補償するのに、特に、記録に必要な時間(光ビームの発光時間)で調節するとしているので、記録マークの幅と光ビームの強度(記録パワー)及び発光時間との対応関係について検討する。
本願明細書の【0028】【発明の実施の形態】以下での本発明に係るチルト及び又は集束ずれ補償方法及びその装置の望ましい実施形態の説明の中で、
「記録パワーが小さいほど記録マークの幅が縮む」とする記載(【0032】)、「記録パワーが大きくなるほど記録マークの長さと幅が大きくなる」とする記載(【0045】【0047】【0050】【0051】)があり、
さらに【0041】【0048】【0053】【0055】【0059】では、マルチパルスについてではあるが、記録パワーを調節して、記録マークの幅を補償するとしており、記録パワーの調節のみでマークの長さと幅とを補償できることが記載されている。
また、【0034】には、一例としてではあるが、記録マークの長さについて、記録時間を調節して補償することについても記載されている。

結局、記録パワーの調整、時間の調整のいずれによっても、記録マークの大きさ、即ち、長さ及び幅が補償されることは明らかである。

次に、記録マークの幅を記録時間で補償することが効果的であるとする記載(図20についての【0041】、図24についての【0047】)があるので、検討する。
記録パワーと記録時間に従う補償効果を示す図20では、記録パワーPwが6mWから7mWとしたときには、長さの上昇度合いより幅の上昇度合いが大きく、記録パワーによる記録マークの長さ及び記録マークの幅の補償効果を示す図23では、直線の傾きが幅の方が長さより大きく、いずれの図面をみても、記録パワーの増加による補償効果は、長さより幅の方が大きいともいえ、各図からは、上記効果的とする記載と逆のことがいえる。
結局、記録マークの幅を記録時間で補償することが効果的であるとする点は、主観的な判断によると考えられ、格別の技術的な根拠に基づくものとはいえない。
とすると、補正後発明のように、記録マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節するとしたとしても、結局、長さも補償されることになり、この点では、記録マークの長さを補償するために、記録パワー又は発光時間を補正(調節)する刊行物記載の発明と、格別の技術的な差異は認められない。

結局、補正後発明のように、記録マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節するとして、マークの幅と時間とを対応させることは、主観的な判断によるものであって、技術的に格別に困難なこととはいえず、適宜になし得る範囲内のものと認める。
そして、記録パターンを構成するパルスの時間を調節するのに、パルスの終了時間又はパルスの開始時間で調整することも、前記周知例後者第3図でも、(a)と(b)とで、2番目の記録パルスが、最初のパルスの終了時間及び最後のパルスの開始時間を、それぞれ異ならせており、適宜になし得る範囲内のことと認める。

以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであり、特許法第29条第2項の規定より、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.補正についての結び
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明
1.本願発明
平成16年7月12日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1ないし22に係る各発明は、平成15年10月29日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】 光記録媒体のチルトを補償する方法において、
(a)前記光記録媒体のチルトを検出する段階と、
(b)検出されたチルトに従って所定の体系を用いて所定の記録パターンを有する記録信号を補償する段階を含み、
前記(b)段階は、(b2)前記記録信号に対応する記録マークの大きさを補償するために前記検出されたチルトに従って記録に必要なパワー及び/または時間を調節する段階を含んでなり、
前記(b2)段階では、前記マークの長さの補償は記録に必要なパワーで調節し、前記マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節することを特徴とする方法。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物及びその記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載は、上記II.3 .(2)-刊行物-のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記II.で検討した補正後発明から、マークの幅の補償処理態様について、「前記マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節し、すなわち、記録パターンの最初のパルスの終了時間及び/または最後のパルスの開始時間で調節する」としていた構成から、上記下線部の構成要件を省いた「前記マークの幅の補償は記録に必要な時間で調節する」とする上位概念の構成にあたるものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後発明が、上記「II.〔理由〕3.(3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-31 
結審通知日 2007-08-07 
審決日 2007-08-31 
出願番号 特願2000-190119(P2000-190119)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 聡岩井 健二  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 中野 浩昌
山田 洋一
発明の名称 チルト及び/または集束ずれ補償方法及びその装置  
代理人 志賀 正武  
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