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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47B
管理番号 1171565
審判番号 不服2005-18726  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-29 
確定日 2008-01-16 
事件の表示 平成11年特許願第317496号「テーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月11日出願公開、特開2000-102419〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成8年5月15日に出願した特願平8-120671号の一部を平成11年11月8日に新たな特許出願としたものであって、平成17年8月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年9月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年10月28日付けで手続補正がなされ、
これに対し、平成19年6月25日付けで「平成17年10月28日付けの手続補正を却下する。」を結論とする補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶理由を当審より通知したところ、平成19年9月3日付けで手続補正書及び意見書の提出がなされたものであり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成19年9月3日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。(以下、「本願発明」という。)

(本願発明)
「天板の縁部を、少なくとも直線部と、この直線部から突出し当接対象物に当接したときに該当接対象物と前記直線部との間に略一定幅の隙間を形成するための2つの隆起部とから構成しているテーブルであって、
天板を平面視概略矩形状のものとし、その長辺側の縁部の両端部から隆起部を突出させているとともに、
当接対象物が同一構造を有する他のテーブルであり前記隆起部を前記他のテーブルの隆起部と当接させた場合に前記他のテーブルに直接的には当接しない前記直線部にバンパー部材を取り付けているとともに、前記隆起部を同一構造を有する他のテーブルの隆起部と当接させた場合に床面から起立させた配線具を前記他のテーブルとの間に形成される隙間内に該隙間の長手方向に余地を残した状態で配置可能であることを特徴とするテーブル。」

2.刊行物に記載された発明

(1)これに対して、本願の出願前に頒布された刊行物であり、平成19年6月25日付けで当審より通知した拒絶の理由に引用した刊行物である、実願平2-14405号(実開平3-105336号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、「テーブル等の天板」に関して、以下の記載がある。

(ア)「2.実用新案登録請求の範囲
1 平面が弯曲した繭型形状の平板で、内側の弯曲凹部続く両側の弯曲凸部の形状が該弯曲凹部の形状と同一又はそれより小さく形成されたことを特徴とするテーブル等の天板。」(明細書第1ページ第4行?8行)

(イ)「〔実施例〕
次に、本考案の実施例を図により説明する。
1は本考案の一例の天板で、図示のように、平面が弯曲した繭型形状をなし、その内側の弯曲凹部11が円弧状に形成され、該弯曲凹部11に続く両側の弯曲凸部12,13が弯曲凹部11の円弧と同一の曲率の円弧に形成されている。」(同第2ページ第15行?第3ページ第1行)

(ウ)「また、第2図に示すように、2個のテーブルを互いに弯曲凸部12を向い合せて配置すれば、弯曲凹部11により空間部14が形成される。従って、この空間部14に床から電話やOA機器のディスプレイのコードを通してそれらを天板1上に載置したり、或は前記空間部14に床から支柱を立設して、該支柱に説明用のパネル等を掛けるようにし、図示のように、関係者が着席するようにすれば、従来の円形テーブルを用いた場合に比べて、会議や打合せなどの場合に好都合である。」(同第3ページ第10行?19行)

(エ)「4.図面の簡単な説明
・・・第2図は前記テーブルを2個連接し、使用者が着席した状態の平面図、」(同第5ページ第9行?12行)

そして、上記刊行物1に記載された事項(ア)?(エ)を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明1)
「平面が弯曲した繭型形状をなし、その内側の弯曲凹部が円弧状に形成され、該弯曲凹部に続く両側の弯曲凸部が弯曲凹部の円弧と同一の曲率又はそれより小さい円弧に形成されたテーブルであって、前記テーブルを2個連接し2個のテーブルを互いに弯曲凸部を向い合せて配置することで、弯曲凹部により空間部が形成され、この空間部に床から電話やOA機器のディスプレイのコードを通してそれらを天板上に載置したり、或は前記空間部に床から支柱を立設して、該支柱に説明用のパネル等を掛けるようにした、テーブルの天板。」

(2)また、本願の出願前に頒布された刊行物であり、平成19年6月25日付けで当審より通知した拒絶の理由に引用した刊行物である、特開平7-8327号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「可動テーブル及びそのシステム」に関して、以下の記載がある。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 隣接する可動テーブルの同様の側縁とほぼぴったりと接するように構成されて実質的に連続する拡大された作業面を形成する一対の相対する側縁と、ユーザーに適応するように構成された外側周縁と、隣接する可動テーブルの同様の内側周縁と配列されたときに中央空間を区画する凹形の内側周縁とを有するテーブルトップと、
前記テーブルトップに垂下されるように結合され且つ可動テーブルを床面上に自立式に支える複数の脚部とを備え、前記複数の脚部のうち少なくとも一つの第1の脚部は前記外側周縁に近接する位置にて前記テーブルトップに結合された上端と、床面に接する脚先が備えられた下端とを有し、少なくとも一つの第2の脚部は前記内側周縁に近接する位置にて前記テーブルトップに結合された上端と、可動テーブルを一輪車式に床面上を手動で移動させるためのローラが備えられた下端とを有することを特徴とする可動テーブル。」

(イ)「【0008】図4及び5に示されるように、図示のテーブル2?5の各々は、同様の構造を有しており、テーブルトップ6が実質的に平坦で互いに平行な上面25及び下面26を有している。テーブルトップ6の側縁7及び8は、互いに長さが等しく、互いにほぼ垂直に配向され、その両端はそれぞれ外側周縁9と内側周縁10に交差している。図12に示されているように、テーブルトップ6の側縁7及び8は、いずれもテーブルトップ6の上面25と下面26の両方に垂直に配置された概ね平坦または平らな形状を有している。これら側縁7及び8が平坦で鉛直に配向されていることによって、図10に示され且つ以下に詳述されるように、テーブルを互いに隣接させて配置した場合に、これらの側縁7及び8はシステム1の他のテーブル2?5の側縁7及び8にぴったり接することになる。図4及び5に示されるように、各テーブル2?5の内側周縁10は1/4円の平面形状を有し、側縁7及び8とは対照的に異なる輪郭を有している。内側周縁10の両端部は、それぞれ側縁7及び8にほぼ垂直に交差している。図11から分かるように、内側周縁10は、内側周縁10の全長に沿って延びる突出状縁部成形体27を備えている。縁部成形体27は特殊な形状を有しており、図示の例では、平らな中央帯29と、中央帯29の両側部に沿って連続的に延び且つ外方に突出する一対の円弧状のリブまたは縁部30とを備えている。縁部成形体27は、テーブルトップ2の内側周縁10の保護カバーまたは緩衝装置としても作用すると共に、審美的に満足する縁部の形状を提供し、しいてはテーブル全体の美学に寄与する。・・・。」

(ウ)「【0013】図2及び3に分かりやすく示されているように、図示のテーブル2?5は、可動テーブルシステム1が種々の異なる方法で配列されてグループ活動および個人活動の両方に適した様々な形状を得ることができるように、形状の異なるテーブルトップ6を有している。テーブル2?5の外側周縁9は、種々の活動に適応するように、あるテーブルから隣のテーブルにつながる種々の平面形状を有している。しかしながら、各テーブル2?5においては、形成された外側周縁9の両端部は、実質的に垂直に側縁7及び8と交差している。また、各可動テーブル2?5の外側周縁9は同様な輪郭形状を有し、内側周縁10の輪郭形状についても同じである。図示の例では、各可動テーブル2?5の外側周縁9は、図11に詳細に示されている前述の縁部成形体27を備えている。」

(エ)「【0016】可動テーブルシステム1は次のようにして操作され機能する。複数の可動テーブル2?5は、典型的には、会議室、カフェテリア、レストラン、または他の同様の環境のように、グループ活動を実施する建物の空間内に配置される。テーブル2?5は、いずれも自立式であり、壁に当てて、隅で、または独立して室内のいたる場所で、単独状態で使用することができる。テーブル2?5は、会議等のためといった複数ユーザーの活動に適応するように、集合させて構成することも可能である。・・・。テーブル2?5は、図1及び2のように概ねその周縁を閉じた集合体に構成することも可能であるし、あるいは図3のように細長い形状に構成することも可能である。このような構成のいずれにおいても、ユーザーは単に、テーブル集合体の両側に複数の作業領域を有する実質的に連続した大きな作業面を形成するように、選択されたテーブル2?5の側縁7及び8が隣接するテーブルの側縁と一直線に合って互いに隣合う状態に選択テーブル2?5を置くだけである。」

(オ)「【0018】テーブル2?5が図2のように閉じた配置で構成される場合、隣接し合うテーブル2?5の内側周縁10は互いに配列されて、平面円形状の中央空間11を限定する。以下に記すように、電気、通信、データ用の線路等をテーブル集合体に提供するために、中央空間11内に設備支柱90を置くこともできる。」

(カ)「【0027】図28?30に分かりやすく示されているように、設備支柱90は、閉じた集合体に配置されたテーブル2?5によって作られる中央空間11内に配置されるように構成されており、直立する長柱146を備えたベース145を有している。・・・。設備支柱90は、長柱146の上端に取り付けられた円形のトップキャップ149を有しており、トップキャップ149には、長柱146の内部にアクセスできるように取り外し可能なカバー150が付けられている。電気コンセント152及びデータレセプタクル153のような複数の設備ポートが、トップキャップ149の下でテーブルトップ6の高さより上の長柱146の表面147に取り付けられ、テーブル集合体に実利性を提供する。・・・。電線または他の設備配管(図示せず)を中央空間11を介して配設することができる。」

そして、上記明細書に記載された事項(ア)?(カ)を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明2)
「隣接する可動テーブルの同様の側縁とほぼぴったりと接するように構成されて実質的に連続する拡大された作業面を形成する一対の相対する側縁と、ユーザーに適応するように構成された外側周縁と、隣接する可動テーブルの同様の内側周縁と配列されたときに中央空間を区画する凹形の内側周縁とを有するテーブルトップと有し、
テーブルが閉じた配置で構成される場合、隣接し合うテーブルの内側周縁は互いに配列されて平面円形状の中央空間を形成し、電気、通信、データ用の線路等をテーブル集合体に提供するために、中央空間内に設備支柱を置くようにし、
前記設備支柱は、長柱の上端に取り付けられた円形のトップキャップを有しており、電気コンセント及びデータレセプタクルのような複数の設備ポートが、トップキャップの下でテーブルトップの高さより上の長柱の表面に取り付けられ、
前記内側周縁は、その全長に沿って延びる突出状縁部成形体を備え、該縁部成形体は、テーブルトップの内側周縁の保護カバーまたは緩衝装置としても作用するようにした、可動テーブル。」

3.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「平面」の「両側の弯曲凸部」は、本願発明の「縁部」から「突出」した「2つの隆起部」に相当する。
また、引用発明1の「2個のテーブル」は、それぞれが同一構造を有したものであることが明らかであるのだから、引用発明1の「2個のテーブル」は、本願発明の「テーブル」及び「同一構造を有する他のテーブル」に相当するといえる。そして、引用発明1の「2個のテーブルを互いに弯曲凸部を向い合せて配置」は本願発明の「隆起部を前記他のテーブルの隆起部と当接させた場合」に相当し、引用発明1の「弯曲凹部」は、本願発明の「他のテーブルに直接的には当接しない」部分に相当する。
また、引用発明1の「空間部」は、本願発明の「他のテーブルとの間に形成される隙間」と、テーブルにより形成された空間である点で共通し、引用発明1の「この空間部に床から電話やOA機器のディスプレイのコードを通して」は、本願発明と、「床面から」の「配線」を「他のテーブルとの間に形成される」空間内に「配置可能」とした点で共通するものであるといえる。

してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「天板から隆起部を突出させているとともに、
前記隆起部を同一構造を有する他のテーブルの隆起部と当接させた場合に床面からの配線を前記他のテーブルとの間に形成される空間内に配置可能であるテーブル。」

(相違点1)
本願発明では、天板の縁部を、少なくとも直線部と、この直線部から突出し当接対象物に当接したときに該当接対象物と前記直線部との間に略一定幅の隙間を形成するための2つの隆起部とから構成し、天板を平面視概略矩形状のものとし、その長辺側の縁部の両端部から隆起部を突出させているのに対し、引用発明1の天板は繭型形状で空間を形成している点。

(相違点2)
本願発明では、他のテーブルに直接的には当接しない部分にバンパー部材を取り付け、さらに、床面から起立させた配線具を他のテーブルとの間に形成される隙間内に該隙間の長手方向に余地を残した状態で配置可能であるのに対し、引用発明1はそのようになっていない点。

4.当審の判断
上記の相違点について検討する。

(相違点1について)
ところで、テーブルを形成する天板において、その形状を平面視矩形形状とすることは、例を挙げるまでもなく周知である。
一方、平面視矩形形状の天板において、天板どうしを突き合わせた部分に、天板とは別部材を通過させるために、天板の縁部に対し、その直線部から突出し当接対象物に当接したときに該当接対象物と前記直線部との間にスリット、いいかえれば一定幅の隙間を形成するためにその直線部の辺の縁部の両端部から隆起部を突出させることが、特開平4-183407号公報にもみられるように従来より周知であることを考慮すれば、隙間にコードや説明用のパネル等を掛ける支柱といった、天板とは別部材を通過させることを前提とした引用発明1の天板の縁部の繭型形状を、直線部と、この直線部から突出し当接対象物に当接したときに該当接対象物と前記直線部との間に略一定幅の隙間を形成するための2つの隆起部とから構成し、天板を平面視概略矩形状のものとし、その長辺側の縁部の両端部から隆起部を突出させた形状とすることは、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎないことである。

(相違点2について)
上記引用発明2の「テーブルトップ」は、本願発明の「天板」に相当する。
また、引用発明2の「凹形の内側周縁」は、隣接する可動テーブルの側縁と接するものではないことから、本願発明の「当接対象物に直接的には当接しない」部分に相当する。また、引用発明2の「縁部成形体」は、保護カバーまたは緩衝装置としても作用するものであることから、本願発明の「バンパー部材」に相当する。さらに、引用発明2の「設備支柱」は、電気、通信、データ用の線路等をテーブル集合体に提供するために置いたものであるから、本願発明の「床面から起立させた配線具」に相当する。
そして、引用発明2の「中央空間」と、本願発明の「隙間」とは、他のテーブルとの間に生じた空間である点で共通するものといえる。

そうすると、上記引用発明2より、他のテーブルに直接的には当接しない部分にバンパー部材を取り付け、さらに、床面から起立させた配線具を他のテーブルとの間に形成される空間内に配置したテーブルが、本願出願前に公知の技術であったということができる。

そして、引用発明1と引用発明2はいずれも、複数のテーブルを配置し、その配置により形成される空間部から配線を行う技術である点で共通していることから、引用発明1の、2個のテーブルを互いに弯曲凸部を向い合せて配置する際に直接的には当接しない部分に、バンパー部材を取り付け、床面から起立させた配線具を他のテーブルとの間に形成される空間内に配置することは、当業者が容易に想到しうることである。

ところで、引用発明1の天板の縁部の繭型形状を、直線部と、この直線部から突出し当接対象物に当接したときに該当接対象物と前記直線部との間に略一定幅の隙間を形成するための2つの隆起部とから構成し、天板を平面視概略矩形状とすることが、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎないものであることは、上記(相違点1について)にて説示したとおりである。
一方、床面から起立させ机の背部に設置する配線具として、ポール型をした配線具が例えば特開昭62-107626号公報にもみられるように従来より周知であり、配線具としてこのような従来より周知の形状の配線具を平面視矩形形状の天板と天板の間の隙間を通過させた際には、その結果として該配線具が隙間の長手方向に余地を残した状態で配置されることとなることは、当業者にとって明らかなことである。
上記事項を考慮すれば、引用発明1の天板の縁部の繭型形状を、直線部と、この直線部から突出し当接対象物に当接したときに該当接対象物と前記直線部との間に略一定幅の隙間を形成するための2つの隆起部とから構成し、天板を平面視概略矩形状のものとし床面から起立させた配線具を該隙間内に配置するにあたって、従来より周知の形状の配線具を用いて隙間の長手方向に余地を残した状態となるように配置することは、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎないことである。

また、本願発明全体の効果も、引用発明1、引用発明2及び当該技術分野における周知の技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということはできない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び当該技術分野における周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2007-11-08 
結審通知日 2007-11-13 
審決日 2007-11-27 
出願番号 特願平11-317496
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 五十幡 直子
石井 哲
発明の名称 テーブル  
代理人 赤澤 一博  

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