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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1171728
審判番号 不服2004-26656  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-28 
確定日 2008-01-24 
事件の表示 平成 7年特許願第 25589号「記録媒体が装填可能な電子カメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月30日出願公開、特開平 8-221525〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年2月14日の出願であって、平成16年6月9日付けで拒絶理由が通知され、同年8月12日付けで手続補正がなされたもの、同年11月25日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年12月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるともに、平成17年1月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年1月27日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年1月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)平成17年1月27日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)の内容は、特許請求の範囲を、

「【請求項1】 記録媒体が装填される装填室と、
前記装填室を開閉する蓋部材と、
前記装填室に装着された記録媒体とその挿脱方向に電気的に接触する第1の電気接点と、
前記装填室に装着された記録媒体とその挿脱方向に電気的に接触し、かつ前記記録媒体の排出時には前記第1の電気接点よりも早い時期に前記記録媒体との接触が外れる第2の電気接点と、
前記第2の電気接点と前記記録媒体との接触が外れるよりも早い時期に前記蓋部材の開動作を検出する開動作検出手段と、
を備えたことを特徴とする記録媒体が装着可能な装置。
【請求項2】 前記記録媒体へのデータ記録中に前記開動作検出手段が前記蓋部材の開動作を検出するのに伴い、前記記録媒体にファイル管理情報の記録を開始することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体が装着可能な装置。」

から

「【請求項1】 側面に凹部を有する記録媒体が装填され、該凹部と嵌合することで前記記録媒体の挿入姿勢を正常姿勢とする凸部を備えた装填室と、
前記装填室を開閉可能に設けられ、前記装填室に前記記録媒体が正常姿勢で装填された場合は前記装填室を閉成可能で、前記記録媒体が誤った姿勢で挿入された場合は、挿入しきれない前記記録媒体との干渉により閉成不可能となる蓋部材と、
前記装填室に正常姿勢で装着された前記記録媒体とその挿脱方向に電気的に接触する第1の電気接点と、
前記装填室に正常姿勢で装着された記録媒体とその挿脱方向に電気的に接触し、かつ前記記録媒体の排出時には前記第1の電気接点よりも早い時期に前記記録媒体との接触が外れる第2の電気接点と、
前記第2の電気接点と正常姿勢で装填された前記記録媒体との接触が外れるよりも早い時期に前記蓋部材の開動作を検出する開動作検出手段と、
を備えたことを特徴とする記録媒体が装着可能な電子カメラ。
【請求項2】 前記記録媒体へのデータ記録中に前記開動作検出手段が前記蓋部材の開動作を検出するのに伴い、前記記録媒体にファイル管理情報の記録を開始することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体が装着可能な電子カメラ。」

と補正することを含むものである。

(2)補正の適否
上記補正後の請求項1又は2における補正は、補正前の「記録媒体」「記録媒体が装填される装填室」及び「装填室を開閉する蓋部材」を、それぞれ、「側面に凹部を有する記録媒体」「該凹部と嵌合することで前記記録媒体の挿入姿勢を正常姿勢とする凸部を備えた装填室」及び「前記装填室を開閉可能に設けられ、前記装填室に前記記録媒体が正常姿勢で装填された場合は前記装填室を閉成可能で、前記記録媒体が誤った姿勢で挿入された場合は、挿入しきれない前記記録媒体との干渉により閉成不可能となる蓋部材」に補正するものである。
そこで、この補正が特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するかどうか検討する。
補正前の請求項1又は2に記載された発明は、記録媒体にデータを記録している途中で記録媒体が排出されたときの不都合を防止することを課題とし、その課題を解決するための構成の一部として「記録媒体」「記録媒体が装填される装填室」及び「装填室を開閉する蓋部材」を有している。これに対し、補正後の請求項1又は2に記載された発明は、補正前の前記課題に加えて、記録媒体が誤った姿勢のまま装填されることに起因する不都合を防止するという新たな課題を解決するための構成を付加するものであり、この新たな課題を解決するために補正前の「記録媒体」「記録媒体が装填される装填室」及び「装填室を開閉する蓋部材」に対し、前述のような補正を加えている。このように、補正前の発明を構成する一部である「記録媒体」「記録媒体が装填される装填室」及び「装填室を開閉する蓋部材」は、記録媒体にデータを記録している途中で記録媒体が排出されたときの不都合を防止することを課題を解決するための構成の一部であったのに対し、補正後の限定を加えられた「記録媒体」「記録媒体が装填される装填室」及び「装填室を開閉する蓋部材」は、記録媒体が誤った姿勢のまま装填されることに起因する不都合を防止するという新たな課題を解決するための構成の一部ともなっている。
従って、補正後の発明は補正前の発明と解決しようとする課題が同一でないから、補正後の発明は、解決しようとする課題を同一とする補正前の発明の構成に欠くことができない事項を限定したものということはできず、特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当しない。
また、この補正前の特許請求の範囲に記載された「記録媒体」「記録媒体が装填される装填室」及び「装填室を開閉する蓋部材」の構成は明瞭であるから、この補正は、明瞭でない記載の釈明にも該当しない。
更に、この補正が、請求項の削除又は誤記の訂正に該当しないことは明らかである。
したがって、この補正は、特許法第17条の2第3項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

(3)むすび
以上のとおり、本件手続補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願の請求項1に係る発明
平成17年1月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年8月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「 【請求項1】 記録媒体が装填される装填室と、
前記装填室を開閉する蓋部材と、
前記装填室に装着された記録媒体とその挿脱方向に電気的に接触する第1の電気接点と、
前記装填室に装着された記録媒体とその挿脱方向に電気的に接触し、かつ前記記録媒体の排出時には前記第1の電気接点よりも早い時期に前記記録媒体との接触が外れる第2の電気接点と、
前記第2の電気接点と前記記録媒体との接触が外れるよりも早い時期に前記蓋部材の開動作を検出する開動作検出手段と、
を備えたことを特徴とする記録媒体が装着可能な装置。」

(2)引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-300371号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

A.「前記ICカードやRAMカ-ド(以下、総称してカードと略す)は、読出し/書込み装置に装填されて、必要な情報が読出され、もしくは書込まれる。この処理の後、たとえば、カードがファイル形式で情報を記憶しているような場合には、そのファイルを閉じる(クローズ)などのいわゆるソフトウェア的な処理を行ない、さらにカードと読出し/書込み装置との電気的な接続を断って(接続端子の非アクティブ化)、カードの抜去が可能な状態にし、その後、操作者はカードを抜去する。
カードに記憶されている情報の読出し、もしくはカードへの情報の書込みを実行中に、操作者が過ってカードを読出し/書込み装置から抜去すると、カード内の各種集積回路記憶素子の破壊など、いわゆるハードウェア的な破壊が予想される。このようなハードウェア的な破壊を防ぐために、通常、読出し/書込み装置のカード装填部には蓋が設けられ、蓋が閉じた状態でのみ情報の読出し/書込みが可能となるように工夫されている。すなわち、情報の読出し/書込み中に操作者がカードを抜去しようとして蓋を開いた場合には、カードと読出し/書込み装置とを接続する端子を非アクテイブ化して、カードを保護するようになっている。
発明が解決しようとする問題点
前述のような読出し/書込み装置によって、カード内の集積回路記憶素子の破壊などの、いわゆるハードウェア的な破壊は防ぐことができるが、たとえばカードがファイル形式で情報を記憶しているような場合には、読出し/書込み中にカードが抜去されると、ファイルが開かれた状態(オープン状態)のままになっているため、記憶素子のファイルを管理している記憶領域(以下、ディレクトリと称する)が破壊されるなどの、いわゆるソフトウェア的な破壊を防ぐことはできない。
本発明の目的は、集積回路記憶素子に対する情報の読出し/書込み処理時における、繰作者の異常操作による集積回路記憶素子の破壊、並びにそこに記憶されたデータの破壊を防ぎ、該集積回路記憶素子に記憶した情報の安全性を格段に向上する集積回路記憶素子の読出し/書込み装置を提供することである。」(公報1頁右下欄11行?2頁右上欄12行)

B.「実施例
第1図は本発明の一実施例である集積回路記憶素子である、いわゆるICカードやRAMカードなどの、読出し/書込み装置であるリーダ・ライタ1の概観を示す斜視図である。リーダ・ライタ1は陰極線管や各種発光素子などによって実現される表示部2と、キーボードなどの入力部3と、ICカード装填部4と、RAMカード装填部5とを含んで構成される。
さらに第2図は前記リーダ・ライタ1の断面図である。ICカード装填部4には蓋6が設けられてICカード7の装填/抜去を可能にし、この蓋6の開閉状態は、異常操作検出手段として設けられる蓋開閉検出器8によって検出される。装填されたICカード7は、読出し/書込み処理手段である読出し/書込み処理部9に設けられるコネクタ部10に接続されて、情報の相互伝送を行なう。RAMカード装填部5にも同様に蓋11が設けられ、RAMカード12の装填/抜去が可能とされ、蓋11の開閉状態は異常操作検出手段である蓋開閉検出器13によって検出される。装填されたRAMカード12は読出し/書込み処理部9に設けられるコネクタ部14を介して、情報の相互伝送を行なう。
第3図は前記リーダ・ライタ1の電気的構成を示すブロック図である。前記リーダ・ライタ1は、操作者によって処理内容が入力される入力部3と、前記蓋開閉検出器8および13と、ICカード7およびRAMカード12とリーダ・ライタ1とを結合するインタフェース15および18と、リード・オンリ・メモリやランダム・アクセス・メモリを含み処理内容に対するプログラムなどを記憶した記憶器16と、表示部2と、CPUなどによって実現され、リーダ・ライタ1を制御する制御部17とを含んで構成される。インタフェース15および18と、記憶器16と、制御部17とは前記読出し/書込み処理部9に含まれる。
本実施例においては、前記ICカード7およびRAMカード12に対する処理は、基本的に同様であるので、以下においてはICカード7に関してのみ説明する。
制御部17は記憶器16内のプログラムに基づいて、演算処理など各種の動作を行なう。操作者が表示部2を目視しながら入力部3を操作することによって、ICカード7とのデータの相互伝送を指示すると、制御部17はインタフェース15を介してICカード7内のデータの読出し、もしくはICカード7へのデータの書込みを行なう。
読出し/書込み処理の実行中に蓋6が開かれると、蓋開閉検出器8は制御部17へ信号を送り、制御部17は、たとえばICカード7がファイル形式で情報を記憶しているような場合にはファイルをクローズするなど、後述のいわゆるソフトウェア的な処理を行ない、その後にインタフェース15とICカード7とを接続している接続端子を非アクティブ化するなど、いわゆるハードウェア的な処理を行なう。
通常、蓋6が開かれたことを蓋開閉検出器8が検出して、ハードウェア的な処理が終了するまでの時間は、操作者がICカード7を抜去するのに要する時間に比べて充分短い。
第4図はリーダ・ライタ1のICカード7に対する読出し/書込み処理実行中の動作を示すフローチャートである。読出し/書込み処理が指示されて実行が開始されると、まずステップn1において蓋6が閉じているかどうかを調べる。そして蓋6が閉じていればステップn2において読出し/書込み処理を行なう。次にステップn3に進んで、読出し/書込み処理が終了したかどうかを調べ、終了した場合にはリーダ・ライタ1の動作が停止され、終了していない場合にはステップn1へ戻る。
ステップn1において蓋6が閉じていないと判断されると、ステップn4へ進んで処理中のファイルをクローズするなどのソフトウェア的な処理を行ない、次にステップn5において接続端子を非アクティブ化する。」(公報2頁左下欄13行?3頁左下欄9行)

上記A.B及び第1,2図の記載によれば、ICカード7はコネクタ部10に接続されて情報の相互伝送を行うものであるから、コネクタ部は電気的に接触するコネクタを有するものであり、また、ICカードの規格に鑑みれば複数のコネクタを有するものである。

以上の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

ICカード7が装填されるICカード装填部4と、
前記ICカード装填部4を開閉する蓋6と、
前記ICカード装填部4に装着されたICカード7と電気的に接触する複数のコネクタを有するコネクタ部10と、
前記蓋6の開閉動作を検出する蓋開閉検出器8
を備えたICカードの読出し/書込み装置

また、原査定の拒絶の理由で引用された特開平4-97498号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

C.「[産業上の利用分野]
本発明はメモリーカードと外部機器とから構成される記録装置に係り、特に活線状態での外部機器へのメモリーカードの挿入・抜出しを防止し得るようにした記録装置に関するものである。
[従来の技術]
近年、我々の社会生活においては、磁気カード、光カード、ICカード等の各種メモリーカードが多く用いられてきている。この種のメモリーカードは、外部機器であるリーダー・ライターに挿入・抜出しをすることにより使用されている。そして、このメモリーカードとリーダー・ライターとからなる記録装置が構成されている。
ところで、この種の従来の記録装置は、内部に集積回路(メモリー)が設けられ、当該集積回路の電源ラインに接続された電源端子、および集積回路に接続された信号線端子を有するメモリーカードと、このメモリーカードの電源端子に接続され、電源を供給する電源供給用接触子、およびメモリーカードの信号線端子に接続され、データの授受を行なう信号線用接触子を有する外部機器とから構成されている。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、この種の従来の記録装置においては、外部機器に対するメモリーカードの挿入・抜出しが、電源が入ったままの状態すなわち活線状態で行なわれていることから、時にはメモリーカード内のメモリー内容が破壊してしまい、場合によってはメモリーカードが使いものにならなくなるという問題があった。
本発明は、上記のような問題を解決するために成されたもので、その目的は活線状態での外部機器へのメモリーカードの挿入・抜出しを防止してメモリー内容の破壊をなくして長寿命化を図ることが可能な極めて信頼性の高い記録装置を提供することにある。」(公報1頁右下欄11行?2頁右上欄6行)

D.「[実施例]
以下、本発明の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。
第1図は、本発明によるカード状の記録装置の全体構成例を示す概要図である。本実施例の記録装置は、第1図に示すように、ICカード等のメモリーカード1と、外部機器であるリーダー・ライター本体2と、制御装置3とから構成している。
ここで、メモリーカード1は、内部に集積回路(メモリー)4か設けられており、その一端面部には、集積回路4の電源ラインに接続された2つの電源端子5と、集積回路4に接続された複数の信号線端子6と、リーダー・ライター本体2側と接続される2つの接続検知端子7とを有している。
また、リーダー・ライター本体2は、メモリーカード1の電源端子5に接続され、電源を供給する2つ(VCC側およびGND側)の電源供給用接触子8と、メモリーカード1の信号線端子6に接続され、データの授受を行なう複数の信号線用接触子9と、メモリーカード1の接続検知端子7に接続され、メモリーカード1との接続の検知を行なう2つの接続検知用接触子10とを有している。
さらに、制御装置3は、リーダー・ライター本体2へのメモリーカード1の装着時に、信号線用接触子9および信号線端子6を介して、メモリーカード1内の集積回路4の内容をアクセスする本来の読出書込機能に加えて、リーダー・ライター本体2へのメモリーカード1の挿入時には接続検知用接触子10と接続検知端子7との接続を検知したことでリーダー・ライター本体2からメモリーカード1へ電源を供給し、またリーダー・ライター本体2からのメモリーカード1の抜出し時には接続検知用接触子10と接続検知端子7との切離しを検知したことでリーダー・ライター本体2からメモリーカード1への電源供給を停止するように制御する電源供給/停止制御機能を有している。
一方、上記において、電源端子5、信号線端子6、および接続検知端子7の長さ寸法は全てほぼ同寸法となるようにしている。また、電源供給用接触子8、信号線用接触子9、接続検知用接触子10は、接続検知用接触子10、信号線用接触子9、電源供給用接触子8の順に長くなるように、すなわち接続検知用接触子10が接続検知端子7から若干離れた状態で信号線用接触子9が信号線端子6に接続され、さらに信号線用接触子9が信号線端子6から若干離れた状態で電源供給用接触子8が電源端子5に接続されるような寸法構成としている。
次に、以上のように構成した本実施例の記録装置において、まずリーダー・ライター本体2ヘメモリーカード1を挿入する場合には、接続検知用接触子10に接続検知端子7が接続されたことを検知(この時点では、電源供給用接触子8と電源端子5か既に接続されている)した後に、リーダー・ライター本体2側からメモリーカード1へ電源か供給され、信号ラインをイネーブルとなるようにすることにより、チャタリングによる影響を受けることがない。
一方、リーダー・ライター本体2からメモリーカード1を抜出す場合には、接続検知用接触子10から接続検知端子7が切離されたことを検知(この時点では、電源供給用接触子8と電源端子5がまだ接続されている)した後に、リーダー・ライター本体2側からメモリーカード1への電源の供給が停止され、信号ラインをハイ・インピーダンスとなるようにすることにより、リーダー・ライター本体2側で活線状態でのメモリーカードの挿入・抜出しを防止することができる。」(公報2頁右下欄8行?3頁左下欄17行)

上記C.Dの記載より、引用文献2には、次の事項が記載されている。

メモリーカードとその挿脱方向に電気的に接触する電源供給用接触子8と、
メモリーカードとその挿脱方向に電気的に接触する接続検知用接触子10と、
電源供給用接触子8の長さを接続検知用接触子10より長くすることにより、メモリーカードを抜き出す時に、接続検知用接触子10は電源供給用接触子8より早い時期にメモリーカードとの接触が外れるようにしたメモリーカード用コネクタ機構

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「ICカード7」「ICカード装填部4」「蓋6」「蓋開閉検出器8」は、それぞれ、本願発明の「記録媒体」「装填室」「蓋部材」「開動作検出手段」に相当する。
本願発明の「第1の電気接点」「第2の電気接点」は、引用発明の「複数のコネクタ」に対応するものであり、記録媒体と電気的に接触する接続部である点で一致している。
引用発明の「ICカードの読出し/書込み装置」は、ICカードが装着される装置であるから、本願発明の「記録媒体が装着可能な装置」と言って良いものである。

よって、本願発明と引用発明とは、

記録媒体が装填される装填室と、
前記装填室を開閉する蓋部材と、
前記装填室に装着された記録媒体とその挿脱方向に電気的に接触する接続部と、
前記蓋部材の開動作を検出する開動作検出手段と、
を備えたことを特徴とする記録媒体が装着可能な装置

の点で一致し、次の点で相違している。

相違点1
記録媒体と電気的に接触する接続部が、本願発明では第1の電気接点と記録媒体の排出時には前記第1の電気接点よりも早い時期に前記記録媒体との接触が外れる第2の電気接点であるのに対し、引用発明では複数のコネクタの相互関係が不明である点

相違点2
開動作検出手段が、本願発明では第2の電気接点と前記記録媒体との接触が外れるよりも早い時期に前記蓋部材の開動作を検出するものであるのに対し、引用発明では開動作検出と複数のコネクタが外れる時期との関係が不明である点

(4)検討
相違点1について
引用文献2には、上記(2)引用文献の項で認定したように、メモリーカード用コネクタ機構が記載されており、これによれば、コネクタを構成する電源供給用接触子の長さを接続検出用接触子より長くすることにより、カード抜き出し時には接続検知用接触子10は電源供給用接触子8より早い時期にメモリーカードとの接触が外れるようにすることができ、これにより括線状態でのカードの抜き出しを防止できるものである。従って、引用発明におけるコネクタ部を構成する複数のコネクタとして引用文献2に記載されたコネクタ機構を採用することによりICカードの抜き出し時の安全性や操作性を高めるようにすることは容易に為し得ることである。

相違点2について
引用発明のコネクタ部として引用文献2に記載されたメモリーカード用コネクタ機構を採用したときには、ICカードを抜き出す際に、まず蓋を開き、その後でICカードをコネクタ部から抜き出すことになるから、蓋の開動作の検出はコネクタ部のいずれの接触子が外れるより早い時期に行われることになる。従って、本願発明において第2の電気接点と前記記録媒体との接触が外れるよりも早い時期に前記蓋部材の開動作を検出する点は格別のことではない。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1-2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-22 
結審通知日 2007-11-27 
審決日 2007-12-12 
出願番号 特願平7-25589
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 州一郎奥村 元宏林 毅赤川 誠一  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 橋本 正弘
桑江 晃
発明の名称 記録媒体が装填可能な電子カメラ  
代理人 永井 冬紀  

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