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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60G
管理番号 1171731
審判番号 不服2005-4211  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-10 
確定日 2008-01-24 
事件の表示 特願2000-241441「懸架装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月 8日出願公開、特開2001-121936〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成12年8月9日(優先権主張平成11年8月16日)の出願であって、平成17年1月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年4月8日付けで手続補正がなされたものである。

【2】本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成17年4月8日付けの手続補正書によって補正がなされた明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は、以下に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 緩衝装置2と、コイルスプリング3とエアスプリング4とを備えた懸架装置に於て、該コイルスプリング3の上部もしくは下部に、上下開口するビア樽型乃至円筒型の弾性膜4aと該弾性膜4aを上下塞ぐ上板部材20と下板部材21とを有するドーナツ形状のエアスプリング4を、直列的に配設し、上記緩衝装置2のロッド2aが、該エアスプリング4の該上板部材20と該下板部材21とを貫通して、該緩衝装置2が、車体6と車軸8を連結しており、さらに、該エアスプリング4の内圧が無い状態で、該上板部材20と該下板部材21とが相互当接して上下方向の荷重を支持することを特徴とする懸架装置。」(以下「本願発明」という。)

【3】引用例とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、西独国特許出願公告第1136219号明細書(以下「第1引用例」という。)には、「Federung fur Fahrzeuge, insbesondere fur Kraftfahrzeuge」(乗り物特に自動車用懸架装置)に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
図面を参酌すると、第1引用例記載の懸架装置は、「Stossdampfer 6」(ショックアブソーバ6)と、「Schraubenfeder 17」(コイルスプリング17)と、「Balg 21」(ベローズ21)とを備え、「Stossdampfer 6」(ショックアブソーバ6)は「Aufbau 2」(上部構造2)と「Achse 3」(車軸3)とを「Trager 5」(台5)、「Auge 7」(穴7)、「Bolzen 8」(ピボット8)を介して連結し、更に「Kolbenstange 9」(ピストンロッド9)は、「Federteller 19」(スプリング受け皿19)と「Stutzplatte 20」(支え板20)の下部表面とをそれぞれ貫通していることが見て取れる。また、「Stossdampfer 6」(ショックアブソーバ6)と「Schraubenfeder 17」(コイルスプリング17)とは直列的に配設されていることも見て取れる。更に、「Balg 21」(ベローズ21)に関して、第1引用例の第2頁第3欄第13行?同第16行の記載である「Durch eine Zufuhr von Druckol in den Balg 21 dehnt sich der Balg axial aus und der Abstand zwischen den Teilen 19,20 wird grosser. 」(ベローズ21内への油の供給によって該ベローズは軸方向に膨張し、部材19と20間の距離が大きくなる。)を参酌すると、ベローズ21は油を注入排出できる室を形成していることは明白であるので、「Federteller 19」(スプリング受け皿19)と「Stutzplatte 20」(支え板20)はベローズの上下開口を塞いでいることが明白である。そして、該構成を備えることにより、ベローズ21がドーナツ形状の外形をなしていることを見て取ることができる。
したがって、上記各記載事項を総合すると、第1引用例には、
「ショックアブソーバ6と、コイルスプリング17と油の供給によって膨張するベローズ21によって形成された室とを備えた懸架装置に於て、該コイルスプリング17の上部に、上下開口するベローズ21と該ベローズ21を上下塞ぐ支え板20とスプリング受け皿19とを有するドーナツ形状のベローズ21によって形成された室を、直列的に配設し、上記ショックアブソーバ6のピストンロッド9が、該ベローズ21によって形成された室の該支え板20の下部表面と該スプリング受け皿19とを貫通して、該ショックアブソーバ6が、上部構造2と車軸3を台5、穴7、ピボット8を介して連結している懸架装置。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(2)また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特公昭46-9005号公報(以下「第2引用例」という。)には、「乗物用のスプリング支持」に関して、次のイ?ハの事項が記載されている。
イ 「本発明が関係しているスプリングシステム即ち、アセムブリーは、ソリツド構造スプリング手段27と、直列に設けられた(in series)エアースプリング手段28、とから構成されているが、図示されている様にエアースプリング手段は、ソリツド構造スプリング手段の上方に位置している。」(明細書第2頁第4欄第4行?同第9行)
ロ 「必要に応じてフロアの高さを固定又は変化させその状態を保持するために、エアースプリング手段に気体流を供給し車の荷重に従つて圧力を調節する通常の手段(図示せず)は設置されている。」(明細書第2頁第4欄第26行?同第29行)
ハ 「通常はカーボデー10上の座15に近接している浮動スプリング座33上の上部に載置されているバンパバツド34が更に載置され、それによつて気体スプリング手段28が故障破損した場合でもそれに課する荷重を変化させることなくカーボデー10の荷重を該スプリング座15,33を通つてソリツド構造スプリング手段27に伝える・・・スプリング支持システム」(明細書第3頁第6欄第32行?同第41行)

【4】発明の対比
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ショックアブソーバ6」は本願発明の「緩衝装置2」に相当し、以下同様に、「コイルスプリング17」は「コイルスプリング3」に、「ベローズ21」は「弾性膜4a」に、「支え板20」は「上板部材20」に、「スプリング受け皿19」は「下板部材21」に、「ピストンロッド9」は「ロッド2a」に、「上部構造2」は「車体6」に、「車軸3」は「車軸8」にそれぞれ相当する。そして引用発明の「油の供給によって膨張するベローズ21によって形成された室」と本願発明の「エアスプリング4」とは、膨張する弾性膜によって形成された室である点で共通するものであるといえる。
(2)以上の対比から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定できる。
[一致点]「緩衝装置2と、コイルスプリング3と膨張する弾性膜によって形成された室とを備えた懸架装置に於て、該コイルスプリング3の上部もしくは下部に、上下開口する弾性膜4aと該弾性膜4aを上下塞ぐ上板部材20と下板部材21とを有するドーナツ形状の膨張する弾性膜によって形成された室を、直列的に配設し、上記緩衝装置2のロッド2aが、該膨張する弾性膜によって形成された室の該下板部材21を貫通している懸架装置。」である点。
[相違点1]本願発明は膨張する弾性膜によって形成された室がエアスプリング4であって、該エアスプリング4の内圧が無い状態で、上板部材20と下板部材21とが相互当接して上下方向の荷重を支持するのに対して、引用発明は膨張する弾性膜によって形成された室がベローズ21内へ油を供給するものであって、ベローズ21内に油が存在しない場合にどのように上下方向の荷重を支持するか明らかでない点。
[相違点2]本願発明の弾性膜4aはビア樽型乃至円筒型であるのに対して、引用発明のベローズ21は蛇腹型である点。
[相違点3]本願発明は緩衝装置2のロッド2aが、エアスプリング4の該上板部材20と該下板部材21とを貫通しているのに対して、引用発明はショックアブソーバ6のピストンロッド9が、ベローズを膨張させる機構のスプリング受け皿19を貫通しているものの、支え板20を貫通しているとはいえない点。
[相違点4]本願発明の緩衝装置2は、車体6と車軸8を直接連結しているのに対して、引用発明では車体6と車軸8を台5、穴7、ピボット8を介して間接的に連結している点。

【5】相違点についての判断
(1)相違点1について
懸架装置における車高調節機構として、エアスプリングを採用することは周知の事項である(周知例:特開昭58-85704号公報)とともに、油圧を作用させる車高調節機構も周知である(周知例:特開平10-250338号公報,特開昭61-295111号公報)。また、第2引用例記載のスプリング支持システムは、荷重をスプリング座15,33を通つて伝えるという点(記載事項ハ)についてみると、スプリング座15とスプリング座33とはカーボデー10の荷重を支えるために間接的にせよ荷重が伝達できる状態で接触しうるように構成されていることは自明である。また、気体スプリングが故障破損した場合にスプリング座15とスプリング座33がバンパパツド34を介して荷重を伝える構造であることからみて、気体スプリングの内圧が失われた場合に、スプリング座15とスプリング座33とが相互当接することは明白である。そして、懸架装置に車高調節機構を組合わせるに当たって、種々の形式の車高調節機構から適宜のものを選択して採用することに格別の創意は要しない。また、引用発明の膨張する弾性膜によって形成された室と、第2引用例の気体スプリングは、ともに車高調節機構としての機能を有するものであるから、引用発明において第2引用例に記載された気体スプリングを採用することにより、この相違点に係る本願発明の構成とすることに、格別の困難性はない。
(2)相違点2について
車高調節機構を構成する可撓性部材として、ビア樽型のような円弧状断面を有するものを用いることは周知の事項である(周知例:実公昭33-15529号公報)。そして、かかる周知の事項を引用発明に適用することにより、この相違点にかかる本願発明の構成とすることに格別の創意は要しない。
(3)相違点3について
緩衝装置が車体と車軸等の車輪を保持する機構との間を繋ぐものであることは技術常識であるところ、緩衝装置をどのように設置するかは、当業者が適宜設定し得る設計事項というべきものであり、緩衝装置の設置形態として、この相違点にかかる本願発明の構成を採用することに格別の困難性はない。
(4)相違点4について
上記相違点3において指摘したと同様、車体と車軸等の車輪を保持する機構との間を繋ぐものである緩衝装置をどのように設置するかは、当業者が適宜設定し得る設計事項というべきものであり、緩衝装置の設置形態として、この相違点にかかる本願発明の構成を採用することに格別の困難性はない。

(5)作用効果等について
上記の相違点1ないし4に係る構成を併せ備える本願発明の作用効果についてみても、上記引用発明及び第2引用例、各周知例に記載された事項から、当業者が容易に予測しうる域を超えるものがあるとは認められない。
したがって、本願発明は、上記引用発明及び第2引用例、各周知例の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【6】むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、上記引用発明及び第2引用例、各周知例の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、そのような本願発明を含む本願は、請求項2に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-06 
結審通知日 2007-11-13 
審決日 2007-12-04 
出願番号 特願2000-241441(P2000-241441)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘小関 峰夫太田 良隆  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 佐藤 正浩
柿崎 拓
発明の名称 懸架装置  
代理人 中谷 武嗣  

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