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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20061228 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1171753
審判番号 不服2005-16163  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-24 
確定日 2008-01-24 
事件の表示 特願2002- 21841「遊技機の図柄表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月13日出願公開、特開2002-224345〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成5年8月27日に出願した特願平5-235510号の一部を新たに平成9年12月10日に出願した特願平9-356281号(原出願)の一部を更に平成14年1月30日に新たな特許出願としたものであって、平成17年6月29日付で拒絶査定がなされ、平成17年8月24日に審判請求がなされ、平成17年9月21日付の手続補正がなされ、当審において、平成19年7月20日付で拒絶理由が通知され、平成19年10月12日付の手続補正書と意見書が提出されたものである。

そして、平成19年10月12日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載されたとおりと認められ、その請求項1に係る発明は、下記に特定されるとおりのものである。

「表示板の複数の表示領域内のそれぞれに複数の図柄要素をスクロール表示し、複数の表示領域内の図柄要素のスクロール停止時の組合せで大当りおよび外れを知らせる構成のものにおいて、
所定の表示領域内にスクロール表示される複数の図柄要素には、第1の絵柄に「2」の数字絵柄が表示順序として重ねられた第1の図柄要素と前記第1の絵柄の外形と異なる外形の第2の絵柄に「3」の数字絵柄が表示順序として重ねられた第2の図柄要素とが存在し、この第1の絵柄は「2」の数字絵柄と一緒にスクロール表示され、この第2の絵柄は「3」の数字絵柄と一緒にスクロール表示され、
前記第1の図柄要素および前記第2の図柄要素は、当該順序で連続的にスクロール表示され、
前記第1の絵柄は、前記第2の絵柄を特定することができる内容が切り離された内容の絵柄のみから構成されており、
前記「2」と「3」の数字絵柄は同じ円形状の囲いで囲まれた状態で表示され、且つ、その囲いは「2」の数字絵柄と一緒にスクロール表示される第1の絵柄に一部が重なっており、「3」の数字絵柄と一緒にスクロール表示される第2の絵柄に一部が重なった状態で表示され、
前記所定の表示領域内にスクロール表示される複数の図柄要素は、それぞれ、前記数字絵柄及び前記絵柄のみで構成され、当該数字絵柄の一部分と当該絵柄の一部分とが重なって成る一塊のものであり、 前記複数の図柄要素のそれぞれの輪郭は、前記絵柄の輪郭線の一部と前記上記数字絵柄の円形状の囲いの一部によって構成されている、
ことを特徴とする遊技機の図柄表示装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項について
(1)引用例1について
当審の平成19年7月20日付の拒絶理由に引用された特開昭63-197474号公報には、以下の事項が図面とともに記載されている(以下、「引用例1」という。)。

・記載事項1
「第1図は、この発明の一実施例に係るパチンコ機10の正面図である。パチンコ機10の遊技盤12中央部には可変表示部材14が配設されている。可変表示部材14は、水平方向に回転する上ドラム16aと下ドラム16bとを含み、さらに、その上方にディジタル表示器18を備えている。」(公報2頁左下欄下から4行?右下欄2行)

・記載事項2
「遊技者が押ボタン30を押すか、または可変表示部材14の可変表示開始後一定時間が経過したときに、可変表示部材14の表示が停止する。すなわち、水平方向に回転していた上ドラム16aおよび下ドラム16bの回転が停止し、かつ、ディジタル表示器18が「0」?「9」のいずれかの数値を表示する。」(公報3頁左上欄下から6行?右上欄1行)

・記載事項3
「上ドラム16aおよび下ドラム16bには、それぞれ、その周面に、後述するように5つの絵柄が描かれている。よって、上ドラム16aの周面に描かれた絵柄のうち、図示の王冠の上部の絵柄は、5分の1の確率で現われる。また、下ドラム16bの周面に描かれた5種類の絵柄のうち、図示の王冠の下側の絵柄は5分の1の確率で現われる。よって、上ドラム16aとドラム16bとの停止時の絵柄の組合わせが一致する確率は、25分の1である。」(公報3頁右上欄7行?16行)

・記載事項4
「第6図は、上ドラム16aおよび下ドラム16bの停止時の図柄の組合わせと、受光素子90a?90dの受光信号との関係を表わす図である。
第6図に示すように、回転ドラムによって図柄A「王冠」が表わされたときには、受光素子90aと受光素子90cとが光を受光し、受光索子90bおよび受光素子90dは光を受光しない。
これら受光素子90a?90dの受光の組合わせにより、図柄A?図柄Eのいずれが現われたかを知ることができる。
なお、上ドラム16aと下ドラム16bとによって表わされる図柄が意味を持たない図柄の場合は、受光素子90a?90dは上記以外の出力を導出する。」(公報5頁左下欄下から3行?右上欄11行)

以上の記載事項1?4および第1図、第3図、第6図によれば、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。

「上ドラム16aと下ドラム16bの5種類の絵柄A?絵柄Eを回転させた後停止させて表示し、上ドラム16aの絵柄と下ドラム16bの絵柄の回転停止時の組合わせで、意味を持つ絵柄からなる組合わせおよび意味を持たない絵柄からなる組合わせを知らせる弾球遊技機において、停止時の上ドラム16aと下ドラム16bに表示される5種類の絵柄には、王冠の絵柄とその王冠絵柄と異なる4つの絵柄とがある弾球遊技機の可変表示部材14。」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)

(2)引用例2について
当審の平成19年7月20日付の拒絶理由に引用されたデジパチ必勝ガイドvol.6、株式会社白夜書房、1993年6月15日、第82?83頁には、以下の事項が図面とともに記載されている(以下、「引用例2」という。)。

・記載事項ア
「ピカイチ天国1 元祖液晶花札デジパチ遂に攻略 何の変哲もない当りの判定の方法 使われているプロセッサは、パチンコ台独特のCPUモトローラ6802。(パチンコ台の写真)」(82頁上部)

・記載事項イ
「リーチの瞬間全ては終了 このタイミングでリーチになれば大当り!! 真ん中の絵柄が左右絵柄の半コマ前でリーチがかかればOK!
(挿絵)
スロー回転の開始位置が当り絵柄の1コマ前なら、結果は必ず大当り。「運の強さメータ」なぞアテにすることはない」(82頁右下部)

以上の引用例の記載事項ア?記載事項イ及び82頁の上部のパチンコ台の写真と同頁右下部の梅等からなる絵柄と、桜等からなる絵柄と「三」を示した上記挿絵によれば、引用例2には次の技術事項が記載されていると認められる。
「桜等からなる絵柄に「三」の数字絵柄が重ねられた状態の花札が表示されている液晶花札デジパチ」(以下、「引用例2に記載の技術事項」という。)

(3)引用例3について
当審の平成19年7月20日付の拒絶理由に引用されたパチンコ攻略マガジン1月号、株式会社双葉社、1993年1月1日、第9?10頁には、以下の事項が図面とともに記載されている(以下、「引用例3」という。)。

・記載事項A
「ピカイチ天国1 液晶デジパチの最高傑作(デジパチの写真)」(9頁上部)

・記載事項B
「▲大当り絵柄は15通り」(9頁中央部左側の挿絵)

・記載事項C
「・・・絵柄の順序は、絵柄の下部に数字が書かれてあるので、それでわかる。・・・」(10頁上段部の「あてになりましぇ?ん」の欄)

以上の引用例の記載事項A?記載事項C及び9頁の中央部左側の大当り絵柄の15通りの梅等からなる絵柄と数字「二」から構成される花札と桜等からなる絵柄と数字「三」から構成される花札等の上記挿絵並びに10頁中央部のアヤメ等からなる絵柄と数字「五」から構成される花札の挿絵(▲「運メータ」がリーチ時に大活躍)に基づけば、引用例3には次の技術事項が記載されていると認められる。
「梅等からなる絵柄に「二」の数字絵柄が重ねられた状態の第1の花札と、桜等からなる絵柄に「三」の数字絵柄が重ねられた状態の第2の花札とから構成されて表示されている液晶花札デジパチ」(以下、「引用例3に記載の技術事項」という。)

3.対比並びに判断
引用例1に記載された発明と本願発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「上ドラム16aと下ドラム16bの5種類の絵柄A?絵柄Eを回転させた後停止させて表示し」は本願発明の「複数の図柄要素をスクロール表示し」に相当し、以下同様に、「回転表示」は「スクロール表示」に、「上ドラム16aの絵柄または下ドラム16bの絵柄」は「複数の図柄要素」に、「回転停止時」は「スクロール停止時」に、「組合わせ」は「組合せ」に、「意味を持つ絵柄からなる組合わせ」は「大当り」に、「意味を持たない絵柄からなる組合わせ」は「外れ」に、「弾球遊技機」は「構成のもの」に、「停止時の上ドラム16aと下ドラム16bに表示される5種類の絵柄」は「スクロール表示される複数の図柄要素」に、「王冠の絵柄」は「第1の図柄要素」に、「その王冠絵柄と異なる4つの絵柄」は「第2の図柄要素」に、「弾球遊技機」は「遊技機」に、「可変表示部材14」は「図柄表示装置」にそれぞれ相当している。

そして、以下のことが言える。
引用例1の王冠絵柄およびその王冠絵柄以外の4つの絵柄は、上ドラム16a又は下ドラム16bに表示されており、そのドラムが回転して停止した時に、各絵柄は遊技者に向けて遊技盤上の予め定められた領域で表示され、そして、それぞれの絵柄は外形が異なる絵柄であり、連続的にその順序で回転表示され停止されて遊技者に遊技盤上の予め定められた領域に絵柄を表示していることは明らかであって、上記のように引用例1に記載された発明の「王冠絵柄」および「その王冠絵柄と異なる4つの絵柄」は、「第1の図柄要素」および「第2の図柄要素」に、引用例1に記載された発明の「回転表示」は「スクロール表示」に相当しているのであるから、引用例1に記載された発明の「上ドラム16aと下ドラム16bの5種類の絵柄A?絵柄Eを回転させた後停止させて表示し」は、「表示板の複数の表示領域内のそれぞれに複数の図柄要素をスクロール表示し」と実質的に言い換えることができ、以下同様に、「上ドラム16aの絵柄または下ドラム16bの絵柄」は「複数の表示領域内の図柄要素」に、「上ドラム16aと下ドラム16bに表示される5種類の絵柄」は「所定の表示領域内にスクロール表示される複数の図柄要素」に、「王冠絵柄」および「その王冠絵柄と異なる4つの絵柄」は、「第1の絵柄」および「第2の絵柄」並びに「第1の絵柄からなる第1の図柄要素」および「第1の絵柄の外形と異なる外形の第2の絵柄からなる第2の図柄要素」と実質的に言い換えることができるとともに、「第1の図柄要素および第2の図柄要素は、当該順序で連続的にスクロール回転表示している」ということができる。

そこで、本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、両者は、

「表示板の複数の表示領域内のそれぞれに複数の図柄要素をスクロール表示し、複数の表示領域内の図柄要素のスクロール停止時の組合せで大当りおよび外れを知らせる構成のものにおいて、所定表示領域内にスクロール表示される複数の図柄要素には、第1の図柄要素と、第2の図柄要素がある遊技機の図柄表示装置 」の点で一致するとともに、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明において、第1の絵柄は、第2の絵柄を特定できる内容のものであって、その内容に基づき、第1の絵柄と第2の絵柄は切り離されたものであるのに対して、引用例1に記載された発明において、第1の絵柄は、第2の絵柄を特定できる内容が切り離された内容の絵柄から構成されていない点。

<相違点2>
第1の図柄要素および第2の図柄要素が、本願発明においては、数字絵柄及び絵柄のみで構成され、第1の絵柄に「2」の数字絵柄および第1の絵柄の外形と異なる外形の第2の絵柄に「3」の数字絵柄が表示順序として重ねられて構成され、かつ、絵柄と数字絵柄は同時にスクロール表示されて、数字絵柄の一部分と絵柄の一部分とが重なって成る一塊のものであり、数字絵柄「2」と数字絵柄「3」の表示順序で連続的にスクロール表示されるのに対して、引用例1に記載された発明においては、単に絵柄が図柄要素を形成しており、数字絵柄を有しない点。

<相違点3>
本願発明においては、第1の絵柄は、第2の絵柄を特定することができる内容が切り離された内容の絵柄のみから構成され、「2」と「3」の数字絵柄は同じ円形状の囲いで囲まれた状態で表示され、且つ、その囲いは「2」の数字絵柄と一緒にスクロール表示される第1の絵柄に一部が重なっており、「3」の数字絵柄と一緒にスクロール表示される第2の絵柄に一部が重なった状態で表示され、複数の図柄要素のそれぞれの輪郭は、絵柄の輪郭線の一部と数字絵柄の円形状の囲いの一部によって構成されているのに対して、引用例1に記載された発明においては、そのように構成されていない点。

4.相違点についての検討
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
引用例1に記載された発明の上ドラム16aまたは下ドラム16bに連続してスクロール表示される第1の絵柄は、第2の絵柄を特定することができる内容ではなく、互いにそれぞれ外形は異なるものであり、具体的には、王冠と三ヶ月や星のように異なっており、両者は絵柄の内容関係で特定できない関係にある。
ところで、トランプのカードを用いるゲームの遊技機において、カードを絵柄と数字絵柄で構成し、かつ、それらを一体的な図柄要素として図柄表示装置に表示し、さらに、図柄表示装置に連続して表示する図柄要素は、それぞれ同じ種類の絵柄を使用していることからみて、遊技機の図柄表示装置において、連続表示する前の絵柄である第1の絵柄は、それに続く後の絵柄である第2の絵柄を特定できる内容のものであり(例:ダイヤの絵柄が1つ示されたカードとダイヤの絵柄が2つ示されたカード)、その内容に基づいて、前の絵柄である第1の絵柄と後の絵柄である第2の絵柄は切り離したものとすること(例:ダイヤ◇の絵柄が1つ示されたカードとそのカードに示された数字の1と、ダイヤ◇の絵柄が2つ示されたカードとそのカードに示された数字の2)は周知技術ということができる(以下、「周知技術」という。必要であれば、特開平4-90777号公報、特開平5-154242号公報および特開平4-364871号公報等参照されたい)。
そうすると、上記周知技術を参酌して、引用例1に記載された発明の図柄表示装置の第1の絵柄は、第2の絵柄を特定できる内容のものとし、その内容に基づいて、第1の絵柄と第2の絵柄は切り離されたものとすること、すなわち、本願発明の相違点1に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことにすぎないということができる。

<相違点2について>
引用例2に記載の技術事項において、梅等からなる絵柄に続いて、数字絵柄「三」とその数字絵柄を一体的に重ねた状態の桜等からなる絵柄から構成されており、その数字絵柄「三」と桜等からなる絵柄から構成される図柄は同時に下方向にスクロールしながら、梅等からなる絵柄と異なった状態の絵柄で構成される図柄で表示され(82頁の下の絵を真ん中の表示と左右の表示を参照)、そして、梅等からなる絵柄が「二」を暗示すること、および数字絵柄「二」は引用例2の82頁の右下挿絵の中央部分の下側に未だ表示されていないものの、梅等からなる絵柄に数字絵柄「二」が一体的に重ねた状態で図柄を構成すると解することが花札ゲームの常識から見て合理的であり、また、上記のカードの絵柄と数字絵柄が同時に一体的にスクロールされる周知技術に基づけば、引用例2に記載の技術事項の梅等からなる絵柄と数字絵柄「二」から構成される図柄と、桜等からなる絵柄と数字絵柄「三」から構成される図柄は、数字絵柄と絵柄のみで構成され、梅等からなる絵柄に「二」の数字絵柄が重ねられ、桜等からなる絵柄に「三」の数字絵柄が重ねられて図柄要素を構成し、各図柄要素の絵柄と数字絵柄は同時に一体として下方にスクロール表示され、絵柄に付された数字絵柄は実質的にスクロール順序を示しているということができる。そして、記載事項アおよび82頁の上部の写真からみて、遊技盤面上に図柄を表示する図柄表示装置を有する遊技機であることは明らかであるから、「液晶花札デジパチ」は、「遊技機の図柄表示装置」と言い換えることができる。従って、引用例2に記載の技術事項は、「スクロール表示する図柄要素を数字絵柄および絵柄のみで構成し、絵柄に数字絵柄を表示順序として重ねられて構成し、絵柄と数字絵柄は同時にスクロール表示され、数字絵柄と絵柄が重なって一塊の図柄要素を構成し、その図柄要素は数字絵柄の順に連続してスクロール表示される遊技機の図柄表示装置」(以下、「引用例2に記載された発明」という。)が記載されていると言い換えることができる。
一方、引用例3の記載事項Bの「・・・絵柄の順序は、絵柄の下部に数字が書かれてあるので、それでわかる。・・・」なる記載および上記周知技術に基づけば、数字は絵柄の表示順序を示すものであることは明らかであり、各図柄要素は、数字絵柄と絵柄のみで構成され、絵柄に数字絵柄が重ねられた状態で構成されていることは明らかであり、さらに、引用例3の各図柄要素において、数字絵柄は同じ四角の形状の囲いで囲まれた状態で表示され、その四角の囲いで囲まれた数字絵柄と各絵柄は一緒にスクロール表示されるとともに、各絵柄の一部に数字絵柄の一部が重なった状態で表示されて、数字絵柄の一部分と絵柄の一部分とが重なって成る一塊のものを形成しており、そして、複数の図柄要素のそれぞれの輪郭は、絵柄の輪郭線の一部と数字絵柄の四角状の囲いの一部によって構成され、連続して表示されるそれぞれの図柄要素の数字絵柄のそれぞれの輪郭は、絵柄の輪郭線の一部と数字絵柄の四角状の囲いの一部によって構成されていることは、9頁の中央部左側の写真からみて、明らかなことである。また、記載事項Aおよび9頁上部の写真からみて、遊技盤面上に図柄を表示する図柄表示装置を有する遊技機であることは明らかであるから、「液晶花札デジパチ」は、「遊技機の図柄表示装置」と言い換えることができる。従って、引用例3に記載の技術事項は、「スクロール表示する図柄要素を数字絵柄および絵柄のみで構成し、絵柄に数字絵柄を表示順序として重ねて構成し、絵柄と数字絵柄は同時にスクロール表示し、数字絵柄と絵柄が重なって一塊のものとし、および数字絵柄の順に連続して図柄要素をスクロール表示する遊技機の図柄表示装置であって、数字絵柄は同じ四角状の囲いで囲まれた状態で表示され、且つ、その囲いは数字絵柄と一緒にスクロール表示される第1の絵柄に一部が重なっており、数字絵柄と一緒にスクロール表示される第2の絵柄に数字絵柄の一部が重なった状態で表示され、複数の図柄要素のそれぞれの輪郭は、絵柄の輪郭線の一部と数字絵柄の四角状の囲いの一部によって構成する遊技機の図柄表示装置」(以下、「引用例3に記載された発明」という。)と言い換えることができる。
そして、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および引用例3に記載された発明は、遊技機技術分野の数字絵柄と絵柄からなる複数の図柄要素を用いて、大当りや外れを遊技者に知らせる点で関連するのであるから、三者間において、相互に技術利用する点に格別の困難性はない。
したがって、引用例1に記載された発明の図柄表示装置の図柄要素に、引用例2に記載された発明の数字絵柄と絵柄のみからなる図柄要素を採用して、第1の図柄要素および第2の図柄要素とする際に、引用例3に記載された発明を参酌して、第1の図柄要素の数字絵柄を「2」、第2図柄要素の数字絵柄を「3」とするとともに、第1の絵柄に「2」の数字絵柄および第1の絵柄の外形と異なる外形の第2の絵柄に「3」の数字絵柄が表示順序として重ねて構成し、かつ、絵柄と数字絵柄は同時にスクロール表示して、数字絵柄の一部分と絵柄の一部分とが重なって成る一塊のものとし、数字絵柄「2」と数字絵柄「3」の表示順序で図柄要素を連続的にスクロール表示する」ようにすること、すなわち、本願発明の上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことと言うことができる。

<相違点3について>
上記相違点2において示したように、引用例2に記載された発明は「スクロール表示する図柄要素を数字絵柄および絵柄のみで構成し、絵柄に数字絵柄を表示順序として重ねられて構成し、絵柄と数字絵柄は同時にスクロール表示され、数字絵柄と絵柄が重なって一塊のものであり、および数字絵柄の順に連続してスクロール表示される遊技機の図柄表示装置」であり、また、引用例3に記載された発明は、「スクロール表示する図柄要素を数字絵柄および絵柄のみで構成し、絵柄に数字絵柄を表示順序として重ねて構成し、絵柄と数字絵柄は同時にスクロール表示し、数字絵柄と絵柄が重なって一塊のものとし、および数字絵柄の順に連続して図柄要素をスクロール表示する遊技機の図柄表示装置であって、数字絵柄は同じ四角状の囲いで囲まれた状態で表示され、且つ、その囲いは数字絵柄と一緒にスクロール表示される第1の絵柄に一部が重なっており、数字絵柄と一緒にスクロール表示される第2の絵柄に数字絵柄の一部が重なった状態で表示され、複数の図柄要素のそれぞれの輪郭は、絵柄の輪郭線の一部と数字絵柄の四角状の囲いの一部によって構成する遊技機の図柄表示装置」である。
そして、上記相違点2と同じ理由により、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および引用例3に記載された発明は、三者間において、相互に技術利用する点に格別の困難性はない。
したがって、引用例1に記載された発明の図柄表示装置の図柄要素に、引用例2に記載された発明の数字絵柄と絵柄のみからなる図柄要素を採用して、第1の図柄要素および第2の図柄要素とする際に、引用例3に記載された発明を参酌して、「数字絵柄の四角の形状を丸の形状にして、同じ円形状の囲いで囲まれた状態で表示するとともに、第1の図柄要素の数字絵柄を「2」、第2の図柄要素の数字絵柄を「3」とし、その数字絵柄「2」と「3」は一緒にスクロール表示する第1および第2の絵柄に一部が重なった状態で表示し、第1および第2の図柄要素のそれぞれの輪郭は、絵柄の輪郭線の一部と数字絵柄の円形状の囲いの一部によって構成する」ようにすること、すなわち、本願発明の上記相違点3に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことと言うことができる。

以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

5.作用効果
本願発明によって奏する効果も、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明および周知技術に基づいて、普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-14 
結審通知日 2007-11-20 
審決日 2007-12-07 
出願番号 特願2002-21841(P2002-21841)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 林 晴男
小林 俊久
発明の名称 遊技機の図柄表示装置  
代理人 特許業務法人コスモス特許事務所  
代理人 山中 郁生  
代理人 田中 裕人  

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