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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1171810
審判番号 不服2005-21257  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-04 
確定日 2008-01-21 
事件の表示 特願2002- 66410「多層配線回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月31日出願公開、特開2003-309368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成14年3月12日(優先日、平成14年2月13日)に出願したものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年8月4日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 銅層上に一体乃至一体的に銅からなる上下配線間接続用のバンプを形成し、上記銅層上の該バンプのない部分に層間絶縁層を形成した一つの配線回路形成用基板の該層間絶縁層及び上記バンプの上面上に銅層又は他の配線回路形成用基板を積層した多層配線回路形成用基板において、
上記銅層及び上記バンプのビッカース硬度が80?150Hvである
ことを特徴とする多層配線回路基板。」

2.引用刊行物及びその摘記事項
原査定の拒絶の理由に引用した、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である、特公平7-36468号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び特開平10-330983号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)刊行物1(特公平7-36468号公報)
(1a)「【0023】転写部材の構造は、配線と、固体金属スタッドの上面におけるC4(Controlled Collapse Chip Connection)ジョイント接続による接点パッド(電気相互接続部として作用する)と、導電性接点パッドからなる。・・・
【0024】【発明が解決しようとする課題】本発明により、パッケージの構造的一体性すなわちデバイスの機能性を侵さない導電転写部材を提供する。
【0025】本発明の他の目的は、電気配線、スタッド、スタッド・キャップ、C4ジョイント接点パッド、導電性接点パッドその他を有する、改良された導電性転写部材を提供することにある。
【0026】本発明のさらに他の目的は、互いに積層および結合できる複数の導電性転写部材を提供することにある。本発明の他の目的は、基板に固定することのできる導電性転写部材を提供することにある。
・・・
【0028】本発明の他の目的は、電気的相互接続部を有する絶縁層を与えることにある。」

(1b)「【0036】図1にワークピースすなわちベース5を示す。ベース5は、中間層のエッチ・ストップ層11と、これを挟む導電金属層13および15からなる三層構造である。エッチ・ストップ層11は導電物質であり、他の2つの金属層13および15を選択的にエッチングできる任意の物質である。エッチ・ストップ層11の目的は後に説明する。エッチ・ストップ層11はエッチング液の浸透を妨げる十分な厚さでなければならない。エッチ・ストップ層に適切な物質は、アルミニウム、クロム、銅、金、モリブデン、ニッケル、パラジウム、白金、銀、チタン、タングステン、またはこれらの合金を含むグループから選択された物質である。
【0037】2つの外部層である導電物質13および15は、所望の最終結果に応じて、同じかまたは異なる物質とすることができる。導電物質13および15の適切な物質は、アルミニウム、銅、金、鉄、モリブデン、ニッケル、タングステン、またはそれらの合金を含むグループから選択される物質である。・・・
【0038】図1に示すワークピースすなわちベース5は、多くの従来技術、例えば被覆、コーティング、蒸着、メッキ、スパッタリング、または他の適切な方法により製造することができる。・・・
【0039】図2に、両面にレジスト・パターンを有するベース5を示す。ベース5が完成されると、導電物質13および15の露出表面にフォトレジスト17および19が設けられる。・・・
【0041】図3はベース5の部分エッチングを示す。・・・
導電物質13および15の1回めのエッチングは、上面が開口部16を通してエッチングされ、エッチ・ストップ層11が露出された後に終了する。これにより、キャップ12および回路配線14を画定する開口部21が形成される。このエッチングされたメタラジはアイランドと呼ばれる。使用されるエッチング物質またはエッチング・プロセスは、所望の物質および形状のみをエッチングするのに適切なエッチング物質またはエッチング・プロセスでなければならない。図3において、ベース5の上面に画定された回路配線14およびスタッド・キャップ12を示す。薄い導電金属層15のエッチングは、スタッド・キャップ12と回路配線14を、導電性のエッチ・ストップ層11を通じての他は、互いを電気的に接続する物質がなくなるまで続けられる。
・・・
【0042】図4はベース5の上面からレジスト17を除去した図である。・・・
【0043】図5は部分エッチングしたベース5の上面へ、接着剥離物質25を設ける工程を示す。・・・
【0044】図6は支持部材すなわち担体29を、部分エッチングしたベース5の接着剥離物質25に固定する様子を示す。・・・
・・・
【0046】図7にベース5の下部を完全にエッチングした様子を示す。所望のイメージを保護するフォトレジスト19および担体29がそれぞれ上面と下面に付いたベース5は、2回めのエッチングによって、エッチ・ストップ層11の底面が露出されるまでエッチングされる。この2回めのエッチングにより開口部33が形成され、スタッドすなわち相互接続部31が形成される。エッチングされたこのメタラジもアイランドと呼ばれる。ベース5の下部のこのエッチングは、化学エッチング、電解エッチング、またはドライエッチング等の従来の手段によって行われる。
【0047】図8はベース5からフォトレジスト19を除去した状態を示す図である。・・・
【0048】図9は、露出されたエッチ・ストップ層11を最終的に除去し、エッチ・ストップによる相互接続部すなわちアイランド32が形成された転写ベース5を示す。・・・
・・・
【0050】図10は完全にエッチングされたベース5中の開口部35を、無機絶縁物質のスラリ39で充填した状態を示す図である。無機絶縁物質39は、エッチ・ストップによる相互接続部すなわちアイランド32を完全に囲み、さらに、スタッド・キャップ12またはスタッド31のどちらか、またはその両方の少なくとも一部を囲み、隣接する電気部材との間の電気ショートを防ぐようにしなければならない。無機絶縁体即ち誘電物質39は、通常は酸化アルミニウム、セラミック、またはガラス・セラミック物質からなるグループから選択される。開口部35の充填は、ローラ・コーティング、スプレー、スピニング等によって行うことができる。誘電物質39の厚さは、スタッド31の高さより低い。スプレー工程中にスラリはスタッドの上から流れて“自浄する”ように付着する。スタッド31の上面41の無機汚染は最小であろう。スタッド31の終端41は誘電物質39の表面42から突出てもよいし、あるいは誘電物質39の表面42と同一平面であってもよい。これは適切な被覆技術、平坦化、またはドライエッチング工程により行われる。
・・・
【0053】図11は図10に示した転写部材を、基板45または他の層45に結合した状態を示す図である。導電性転写部材即ち電気接続部材は、燒結前の無機基板あるいは他の導電性転写部材に重ねられるか結合され、その後、積層および焼結される。転写部材のイメージまたは形状は基板45すなわち次の層45のイメージまたは形状に対して位置合せされ、加熱または加圧により結合される。この導電デカルは燒結前の無機層または基板45に結合されねばならない。担体29は、誘電体39が層または基板45の誘電体43に結合された後、焼結サイクルに先立って、転写部材から剥離され除去される。担体29が剥離または除去された後に転写部材上に残る接着剥離物質25は、焼結工程中に焼かれて除去され、表面52を形成する。この結合工程の間、層または基板45のスタッド接続部44は、転写部材のスタッド31の端部41と接着し、焼結工程の際互いに溶け合う。転写部材を焼結した後、電気的連続性または構造的一体性は容易に検査でき、最終生産物の欠陥を削減することができる。」

(1c)図1及び図11を図面を上下逆にして見ると、図1には、導電金属層15の面上に、エッチ・ストップ層11を介して、導電金属層13を積層してベース5を形成していること、そして、図11には、図1の導電金属層15をエッチングして形成したスタッドキャップ12の面上に、同じく図1の導電金属層13をエッチングして形成したスタッド31が形成されていること、スタッド31が無機絶縁物質39で埋められていること、及び無機絶縁物質39とスタッド31の上面上に基板45又は他の層45が積層されていることが、それぞれ示されている。

(2)刊行物2(特開平10-330983号公報)
(2a)「【請求項1】 25℃でのビッカース硬度が180?320の範囲であり、 220℃で30分間の熱処理を行ったときのビッカース硬度が150以上の電解銅箔。」

(2b)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、二次電池用電極集電材及び印刷回路用の電解銅箔とその製造方法に関するものである。」

(2c)「【0014】【発明の実施の形態】
【実施例】以下に本発明の実施例を記す。・・・
【0015】機械的特性評価及び粗面粗さ
実施例1?13で得た電解銅箔の常態及び熱時(180℃)の抗張力(kgf/mm^(2))及び伸び率(%)をIPC規格のIPC-TM-650に基づき、引張試験機を用いて、また耐折性(回)をJIS P 8115に基づき、折り曲げ試験機(曲げ半径0.8mm,試料幅15mm)を用いて、銅箔硬度は熱処理(220℃,30分間)の前後においてビッカース硬度計を用いて光沢面側を、粗さ(Ry及びRz(μm))は光沢面及び粗面側をJIS B 0651,B 0601に基づき、表面粗さ計を用いてそれぞれ測定し、その結果を表2に一括して示した。・・・
【0016】・・・
比較例1
表1の比較例1に示した添加剤組成となるように調整した硫酸酸性硫酸銅電解液を用いて、実施例と同様の方法で造箔して得られた箔厚70μmの電解銅箔を実施例と同様の特性項目について評価した結果を表2に示した。
比較例2
表1の比較例2に示した添加剤組成となるように調整した硫酸酸性硫酸銅電解液を用いて、実施例と同様の方法で造箔して得られた箔厚さ35μmの電解銅箔を実施例と同様の特性項目について評価した結果を表2に示した。
比較例3
表1の比較例3に示した添加剤組成となるように調整した硫酸酸性硫酸銅電解液を用いて、実施例と同様の方法で造箔して得られた箔厚さ18μmの電解銅箔を実施例と同様の特性項目について評価した結果を表2に示した。
・・・
比較例7
表1の比較例7に示した添加剤組成となるように調整した硫酸酸性硫酸銅電解液を用いて、実施例と同様の方法で造箔して得られた箔厚さ35μmの電解銅箔を実施例と同様の特性項目について評価した結果を表2に示した。
【0017】以下、本発明の実施例及び比較例について詳述すれば、実施例1?15に示したオキシエチレン系界面活性と塩化物を主たる添加剤として硫酸酸性硫酸銅電解液に添加した浴から生成した電解銅箔は高い硬度を有することが確認でき、さらには加熱熱処理後にも高い硬度を保持していることが特徴的と言える。・・・実施例1?15の電解銅箔中には80ppm以上の塩素が存在する一方で、比較例1?5のようなゼラチンと塩化物を主な添加剤として硫酸酸性硫酸銅電解液に添加した浴から生成した銅箔中には約50ppmの塩素が存在することが確認できた。また比較例7に示した銅箔は非常に低い塩化物濃度の硫酸酸性硫酸銅電解液を用いて造箔しており、銅箔中の塩素含有量が非常に低い。このような塩素含有量の差は熱安定性の向上に寄与しているこが推測できる。そこで実施例9に代表されるような塩素を比較的多く含む電解銅箔と、塩素の殆ど無い比較例7に代表されるような電解銅箔との間で、硬度の熱処理温度変化を測定し、その結果を図1にまた、同様に抗張力の熱処理温度変化を測定し、その結果を図2にそれぞれ示した。」

(2d)段落【0020】の【表2】には、実施例14、15の熱処理後のビッカース硬度が、それぞれ、120、130であり、比較例1?3のビッカース硬度が、熱処理前で、それぞれ、103、95、121、熱処理後で、それぞれ、95、90、105であることが示されている。

(2e)図1には、比較例7において、熱処理を行った際に、ある温度以上で、ビッカース硬度が80?150の範囲になることが示されている。

3.当審の判断
3-1.刊行物1記載の発明
上記摘記事項(1b)段落【0036】には、「ベース5は、中間層のエッチ・ストップ層11と、これを挟む導電金属層13および15からなる三層構造である。」、及び段落【0038】の「図1に示すワークピースすなわちベース5は、多くの従来技術、例えば被覆、コーティング、蒸着、メッキ、スパッタリング、または他の適切な方法により製造することができる。」という記載から、導電金属層13および15が、層状であって、エッチ・ストップ層11を介して一体化されてベース5を形成していると云え、そして、段落【0037】の「2つの外部層である導電物質13および15は、所望の最終結果に応じて、同じかまたは異なる物質とすることができる。導電物質13および15の適切な物質は、・・・、銅、・・・、またはそれらの合金を含むグループから選択される物質である。」という記載から、導電金属層13および15は銅からなっているものと云える。
また、上記摘記事項(1b)段落【0046】の「・・・ベース5は、2回めのエッチングによって、エッチ・ストップ層11の底面が露出されるまでエッチングされる。この2回めのエッチングにより開口部33が形成され、スタッドすなわち相互接続部31が形成される。」という記載、段落【0036】の「ベース5は、中間層のエッチ・ストップ層11と、これを挟む導電金属層13および15からなる三層構造である。」という記載、及び上記摘記事項(1c)から、ベース5の片面を形成する導電金属層13が、エッチングされて相互接続部であるスタッド31になっていると理解でき、そして、導電金属層13が銅からなっているから、スタッド31も銅からなり、導電金属層13がエッチ・ストップ層11を介して導電金属層15と一体化しているから、スタッド31も、エッチ・ストップ層11を介して導電金属層15と一体化していることになる。
それから、上記摘記事項(1b)段落【0050】には、「無機絶縁物質39は、エッチ・ストップによる相互接続部すなわちアイランド32を完全に囲み、さらに、スタッド・キャップ12またはスタッド31のどちらか、またはその両方の少なくとも一部を囲み、隣接する電気部材との間の電気ショートを防ぐようにしなければならない。・・・スタッド31の終端41は誘電物質39の表面42から突出てもよいし、あるいは誘電物質39の表面42と同一平面であってもよい。これは適切な被覆技術、平坦化、またはドライエッチング工程により行われる。」という記載、及び上記摘記事項(1c)から、無機絶縁物質39が、スタッド31のない部分に被覆されて形成されることが理解できる。
更に、上記摘記事項(1a)段落【0023】によれば、転写部材の構成として「配線」が、そして、上記摘記事項(1b)の段落【0041】によれば、転写部材の構成として「回路配線14」があることから、転写部材自体が回路配線の基板であると云えるし、また、上記摘記事項(1b)段落【0053】の、「導電性転写部材即ち電気接続部材は、燒結前の無機基板あるいは他の導電性転写部材に重ねられるか結合され、その後、積層および焼結される。転写部材のイメージまたは形状は基板45すなわち次の層45のイメージまたは形状に対して位置合せされ、加熱または加圧により結合される。・・・担体29は、誘電体39が層または基板45の誘電体43に結合された後、焼結サイクルに先立って、転写部材から剥離され除去される。・・・この結合工程の間、層または基板45のスタッド接続部44は、転写部材のスタッド31の端部41と接着し、焼結工程の際互いに溶け合う」という記載、及び上記摘記事項(1c)から、転写部材の無機絶縁物質39とスタッド31上面上に基板45又は他の層45が積層されていることになり、転写部材と基板45又は他の層45全体で、多層の回路配線基板を形成していると云える。
そうして、上記摘記事項(1a)?(1c)を総合すると、刊行物1には、
「銅からなる導電金属層15上に、エッチ・ストップ層11を介して一体化された、銅からなる相互接続部のスタッド31を形成し、該導電金属層15上の該スタッド31のない部分に無機絶縁物質39を形成して、回路配線の基板である転写部材を構成し、該転写部材の該無機絶縁物質39及び該スタッド31の上面上に、基板45又は他の層45を積層した、多層の回路配線基板。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていることになる。

3-2.対比・判断
そこで、本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「(銅からなる)導電金属層15」、「(相互接続部の)スタッド31」、「無機絶縁物質39」、「基板45又は他の層45」、及び「多層の回路配線基板」は、本願発明の「銅層」、「(上下配線接続用の)バンプ」、「層間絶縁層」、「他の配線形成用基板」、及び「多層配線形成用基板」に相当し、刊行物1発明の「エッチ・ストップ層11を介して一体化され」る形態は、本願発明の「一体乃至一体的に」なる形態の範疇にあり、刊行物1発明の「転写部材」は、回路配線の基板であるため、本願発明の「一つの配線回路形成用基板」に外ならないから、
両者は、
「銅層上に一体乃至一体的に銅からなる上下配線間接続用のバンプを形成し、上記銅層上の該バンプのない部分に層間絶縁層を形成した一つの配線回路形成用基板の該層間絶縁層及び上記バンプの上面上に他の配線回路形成用基板を積層した多層配線回路形成用基板。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点:銅層及びバンプのビッカース硬度について、本願発明では、80?150Hvであるのに対し、刊行物1発明では、不明である点。

そこで、上記相違点について検討する。
刊行物2には、比較例を中心として、上記摘記事項(2a)?(2e)を総合すると、印刷回路用の電解銅箔について、ビッカース硬度が80?150の範囲にあることが示されていることがわかる。
また、配線回路として用いられる銅箔において、電解銅箔を用いることは文献を挙げることなく周知のことであるし、該銅箔のビッカース硬度についていえば、次の特許公報に記載されているように、80?150Hvの範囲とすることが一般的である。

周知例1:特開平11-163018号公報
(特に、段落【0108】、【0116】参照。銅箔をBT積層板の両面に形成した銅張積層板において、銅箔を加工して、配線した際の、配線の銅の硬度が100Hv程であることが示されている。)

周知例2:特開2002-33581号公報
(特に、段落【0013】参照。プリント配線板に用いられる銅箔のビッカース硬度を150前後にすることが示されている。)

周知例3:特開平1-248648号公報
(特に、特許請求の範囲、第3頁左下欄表の実施例3、4欄、参照。)

更に、銅箔で、多層配線回路の上下配線間接続用のバンプを形成することは、次の特許公報に記載されているように周知である。

周知例4:特開2001-36200号公報
(特に、段落【0023】、【0025】、【0050】?【0052】、図3参照。段落【0023】において、「配線パターン化される導電性金属」として「銅箔」が挙げられており、段落【0025】において、この「導電性金属」を配線パターン化した「凸状の配線パターン」が、本願発明の「上下配線間接続用のバンプ」に相当する。)

周知例5:特開昭63-260198号公報
(特に、第2頁左下欄第3行?同頁右下欄第12行、第3頁左上欄第2?17行、第1図?第7図参照。Cu箔の金属導体箔3により形成された「厚肉導体部20」が、本願発明の「上下配線間接続用のバンプ」に相当する。)

そうすると、80?150Hvの範囲内のビッカース硬度は、元々、配線回路用の銅箔に使われる程度のものであり、また、上下配線間接続用のバンプを銅箔により形成することは周知であるから、銅箔、及び銅箔で形成されるバンプについて、ビッカース硬度を80?150Hvとすることは、当業者にとって格別なものとはいえない。

そして、HO(Hot Oil)試験前後の抵抗値の変化率を10%以下にしようとすることについては、例えば、特開2001-185844号公報(特に、段落【0022】?【0024】参照)、特開2001-94256号公報(特に、段落【0005】、【0017】、【0026】参照)等に、
半田耐熱試験前後の抵抗値の変化を10%以内にしようとすることについては、例えば、特開2001-94256号公報(特に、段落【0005】参照)、特開2000-13028号公報(特に、段落【0027】参照)等に、
PCT(Pressure Cooker Test)前後のでの抵抗値の変動率が10%以内にしようとすることについては、例えば、特開2001-237552号公報(特に、段落【0078】参照)、特開2000-119373号公報(特に、段落【0059】参照)等に、
マイグレーション試験で絶縁抵抗10^(8)Ωより大きくしようとすることについては、例えば、特開平5-175650号公報(特に、段落【0036】、【0039】、【0042】参照)、特開2000-114696号公報(特に、段落【0055】参照)等に、
それぞれ記載されており、これらは、接続信頼性の確保のための基準として周知のものであって、従来から求められている水準と云えるから、効果についても、当業者にとって格別顕著なものとは認められない。

したがって、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-24 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-11 
出願番号 特願2002-66410(P2002-66410)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 小川 武
正山 旭
発明の名称 多層配線回路基板  
代理人 奥山 尚一  
代理人 尾川 秀昭  
代理人 有原 幸一  
代理人 松島 鉄男  

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