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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C08G |
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管理番号 | 1171817 |
審判番号 | 不服2006-3986 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-03 |
確定日 | 2008-01-21 |
事件の表示 | 特願2000-374070「プリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物、その樹脂化合物を用いた絶縁層形成用樹脂シート及び樹脂付銅箔、並びにそれらを用いた銅張積層板」拒絶査定不服審判事件〔平成14年6月26日出願公開、特開2002-179772〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年12月8日にした特許出願であって、同年12月18日に手続補正書が提出され、平成17年10月17日付けで拒絶理由が通知され、同年12月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年3月3日に審判請求がなされ、同年3月29日に手続補正書及び審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年7月28日付けで前置報告がなされ、当審において平成19年8月20日付けで審尋がなされ、同年10月19日に回答書が提出されたものである。 2.補正の却下の決定 [結論] 平成18年3月29日提出の手続補正書による明細書についての補正を却下する。 [理由] 2-1.補正の内容 平成18年3月29日提出の手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求の日から30日以内にされた補正であり、その内容は、平成17年12月22日提出の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の 「 【請求項1】プリント配線板の層間絶縁層を構成するために用いる樹脂化合物において、 当該樹脂化合物は、 1分子あたり2個以上のグリシジル基を有し、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂と、 末端基に水酸基を有するポリエーテルサルホン樹脂、分子内に繰り返しの水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上である、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーおよび必要に応じて添加される架橋剤と、 メラミン、ベンゾクアナミンの1種又は2種と、フェノール類およびホルムアルデヒドを用いた縮合反応により得られる化合物とからなり、窒素含有量が5?25重量%である分子内にトリアジン環を含有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤と、からなるエポキシ系樹脂、及び 熱硬化性を有するマレイミド化合物を含み、 実質的にハロゲン元素を含有しない組成とし、これらを有機溶剤で溶解して得られたものであることを特徴とするプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物。 【請求項2】 1分子あたり2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂は、 ハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂であって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上である請求項1に記載のプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物。 【請求項3】 熱硬化性を有するマレイミド化合物は、N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニ)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、及びこれらのマレイミド化合物とポリアミン類のマイケル付加反応により得らわる熱硬化性マレイミド化合物のいずれか1種又は2種以上である請求項1または請求項2に記載のプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物。 【請求項4】 請求項1?請求項3のいずれかに記載のプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物の製造方法であって、 溶媒を除く樹脂化合物の総量を100重量部としたときに、エポキシ樹脂は20?70重量部、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーは5?30重量部、熱硬化性を有するマレイミド化合物は10?50重量部、残部が必要に応じて添加される架橋剤及び分子内にトリアジン環を含有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤となる組成割合とし、これを溶媒中に添加し溶解した後の固形分が40?50重量%になるようにするものであることを特徴とするプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物の製造方法。 【請求項5】 溶媒は、N-メチルピロリドンとメチルエチルケトンとの混合溶媒であって、N-メチルピロリドン/メチルエチルケトン=50/50?40/60(重量比)の範囲の混合比としたものである請求項4に記載のプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物の製造方法。 【請求項6】 請求項1?請求項3のいずれかに記載のプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物を半硬化状態のシート状とした銅張積層板製造用の絶縁層形成用樹脂シート。 【請求項7】請求項1?請求項3のいずれかに記載のプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物を用いて銅箔の表面に樹脂層を形成した樹脂付銅箔。 【請求項8】請求項6に記載の絶縁層形成用樹脂シートを用いて製造した銅張積層板。 【請求項9】請求項7に記載の樹脂付銅箔を用いて製造した銅張積層板。」を、 「 【請求項1】プリント配線板の層間絶縁層を構成するために用いる樹脂化合物により、銅箔の表面に樹脂層を形成した樹脂付銅箔において、 当該樹脂化合物は、 ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上からなる、1分子あたり2個以上のグリシジル基を有する、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂と、 末端基に水酸基を有するポリエーテルサルホン樹脂、分子内に繰り返しの水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上である、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーおよび必要に応じて添加される架橋剤と、 メラミン、ベンゾクアナミンの1種又は2種と、フェノール類およびホルムアルデヒドを用いた縮合反応により得られる化合物とからなり、窒素含有量が5?25重量%である分子内にトリアジン環を含有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤と、からなるエポキシ系樹脂、及び N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニ)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、及びこれらのマレイミド化合物とポリアミン類のマイケル付加反応により得られる熱硬化性マレイミド化合物とを含み、 実質的にハロゲン元素を含有しない組成とし、これらを有機溶剤で溶解して得られたものであることを特徴とする、樹脂付銅箔。 【請求項2】 請求項1に記載の樹脂付銅箔の製造方法であって、 溶媒を除く樹脂化合物の総量を100重量部としたときに、エポキシ樹脂は20?70重量部、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーは5?30重量部、熱硬化性を有するマレイミド化合物は10?50重量部、残部が必要に応じて添加される架橋剤及び分子内にトリアジン環を含有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤となる組成割合とし、これを溶媒中に添加し溶解した後の固形分が40?50重量%になるようにして形成した樹脂化合物を、 銅箔表面に塗り、乾燥させることで、半硬化状態の樹脂層を銅箔表面に形成することを特徴とする樹脂付銅箔の製造方法。 【請求項3】 溶媒は、N-メチルピロリドンとメチルエチルケトンとの混合溶媒であって、N-メチルピロリドン/メチルエチルケトン=50/50?40/60(重量比)の範囲の混合比としたものである請求項2に記載の樹脂付銅箔の製造方法。 【請求項4】請求項1に記載の樹脂付銅箔を用いて製造した銅張積層板。」 と補正するものである。 2-2.補正の適否 上記補正は、補正前の請求項4の「プリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物の製造方法」に対して、前記方法により「形成した樹脂化合物を、銅箔表面に塗り、乾燥させることで、半硬化状態の樹脂層を銅箔表面に形成する」工程を付加して「樹脂付銅箔の製造方法」とし、項番を繰り上げて請求項2とする補正事項を含むものである。 また、補正前の請求項4を引用する請求項5に対しても、上記と同様の内容の補正をし、項番を繰り上げて請求項3としたものである。 上記補正事項について検討すると、補正後の請求項2において付加された、樹脂化合物から樹脂層を銅箔表面に形成する工程及び樹脂付銅箔の製造方法に関して、補正前の請求項4には何ら記載されていないから、当該補正事項は、補正前の請求項4に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。 また、補正前の請求項1?3、5?9のいずれにも、上記「樹脂付銅箔の製造方法」の発明は記載されていないから、上記補正事項は、補正前の請求項1?3、5?9のいずれかに記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものでもない。 したがって、上記補正事項は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、同補正事項が請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものではないことは明らかであるから、同補正事項は、特許法第17条の2第4項に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。 2-3.まとめ よって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法17条の2第4項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明の認定 上記2.のとおり、平成18年3月29日提出の手続補正書による補正は却下された。 本願の請求項1?9に係る発明は、当該補正に先立つ平成17年12月22日提出の手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「 【請求項1】プリント配線板の層間絶縁層を構成するために用いる樹脂化合物において、 当該樹脂化合物は、 1分子あたり2個以上のグリシジル基を有し、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂と、 末端基に水酸基を有するポリエーテルサルホン樹脂、分子内に繰り返しの水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上である、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーおよび必要に応じて添加される架橋剤と、 メラミン、ベンゾクアナミンの1種又は2種と、フェノール類およびホルムアルデヒドを用いた縮合反応により得られる化合物とからなり、窒素含有量が5?25重量%である分子内にトリアジン環を含有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤と、からなるエポキシ系樹脂、及び 熱硬化性を有するマレイミド化合物を含み、 実質的にハロゲン元素を含有しない組成とし、これらを有機溶剤で溶解して得られたものであることを特徴とするプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物。」 4.原査定の理由 原査定の理由とされた平成17年10月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由1の概要は以下のとおりである。 「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1-10 ・引用文献等1,2,4 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開平11-140281号公報 2.特開平11-5828号公報 4.特開平9-124775号公報」 5.合議体の判断 5-1.刊行物の記載事項 原査定において引用された刊行物である引用文献1、2及び4には、それぞれ、以下の事項が記載されている。 5-1-1.引用文献1の記載事項 (1-1)「【請求項1】 以下の成分 1)エポキシ樹脂およびその硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物 2)マレイミド化合物、および 3)エポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有し、溶剤に可溶な芳香族ポリマー を含むことを特徴とする銅張積層板用樹脂組成物。 ・・・ 【請求項5】 多層プリント配線板用の層間絶縁樹脂成分として請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物を銅箔の片面に塗工して得られることを特徴とする樹脂付き銅箔。」(請求項1、5) (1-2)「【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明の銅張積層板用樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。本発明の銅張積層板用樹脂組成物では、使用されるエポキシ樹脂およびその硬化剤のうち、エポキシ樹脂としては電気、電子材料に使用される品種であれば特に制限なく使用できる。例示すると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノール樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等である。これらのエポキシ樹脂は、2種以上を併用しても良い。 【0015】エポキシ樹脂の硬化剤としては、樹脂付き銅箔として使用されることが前提であるので、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族アミン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹指等の室温では活性が低く、加熱により硬化するいわゆる潜在性硬化剤が好適である。このときにエポキシ樹脂とその硬化剤との反応を促進する硬化促進剤も好ましく使用できる。硬化促進剤としては、3級アミン類、イミダゾール類が使用できるが、イミダゾール類は上記マレイミド化合物の硬化促進剤とも作用するので、さらに好適である。」(段落【0014】?【0015】) (1-3)「【0017】マレイミド化合物としては、N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等の化合物が好適である。このときにマレイミド樹脂の含有率は樹脂組成物の総量100重量部に対して10?50重量部であることが望ましい。10重量部未満であれば耐熱性を確保することが不十分となり、50重量部を越えると硬化物が非常に脆くなり耐クラック性が非常に悪くなる。 【0018】エポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有し、溶剤に可溶な芳香族ポリマーとしては、分子中または分子末端にフェノール性水酸基やカルボキシル基、アミノ基を有するポリエーテルスルホン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が使用できる。これらの芳香族ポリマーは、2種以上を併用しても良い。樹脂のTg(ガラス転移温度)や分子量は特に制限されないが、-65℃?+150℃のヒートサイクル試験に合格するためにはTgが150℃以上であることが望ましい。これらの樹脂は樹脂組成物の脆さを改良するために使用されるポリビニルアセタール樹脂の代わりに使用されることから、これらの樹脂もポリビニルアセタール樹脂と同等の引張り強度、フィルム形成性を有することが必要である。」(段落【0017】?【0018】) (1-4)「【0020】本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記必須成分以外の樹脂成分、例えば熱硬化性ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等を添加することもできる。これらの樹脂の添加により、耐炎性の向上、樹脂流動性の改良等に効果がある。」(段落【0020】) (1-5)「【0021】 【実施例】以下に、実施例及び比較例に基づき本発明を詳細に説明する。 実施例1 1-1)エポキシ樹脂 ビスフェノールA型エポキシ樹脂エポミックR-140(三井石油化学製、商品名)及びο-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂エポトートYDCN-704(東都化成製、商品名)を重量比100:100で混合して得た。 【0022】1-2)エポキシ樹脂硬化剤 ミレックスXL-225(三井東圧化学製、商品名)を上記エポキシ樹脂に等量配合した。 【0023】1-3)エポキシ樹脂硬化促進剤 キュアゾール2PZ(四国化成工業製、商品名)を上記エポキシ樹脂に対して1重量部添加した。上記エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂硬化促進剤をジメチルホルムアミドに溶解して50%溶液とした、エポキシ樹脂配合物を準備した。 【0024】2)ビスマレイミド化合物 ビス(3-エチル-5-メチル-マレイミドフェニル)メタンを用いた。 【0025】3)エポキシ樹脂またはマレイミド化合物重合可能な官能基を有する芳香族ポリマー 水酸基当量約1500、ガラス転移温度約230℃のポリエーテルサルホン樹脂を用いた。これらの成分を以下の表1に示される比率で配合して樹脂組成物を調製した。 【0026】 【表1】 上記樹脂組成物を18μm電解銅箔の粗化面に塗布して、風乾後、140℃で5分間加熱して、半硬化状態の樹脂層を有する樹脂付き銅箔を得た。このときの樹脂層の厚さは100?105μmであった。この樹脂付き銅箔を常圧にて200℃で4時間加熱し、冷却後銅箔をエッチングにより除去し、硬化樹脂フィルムを得た。 【0027】また、上記樹脂付き銅箔を用いて、所定の回路が形成されたFR-4内層材(コア厚さ0.5mm、銅箔厚さ35μm)の両面に樹脂付き銅箔の樹脂層が内層材表面に接するように重ねて、圧力20kgf/cm^(2)、温度200℃にて4時間の熱プレスを行い、4層の銅箔層を有する多層銅張りプリント配線板を得た。」(段落【0021】?【0027】) 5-1-2.引用文献2の記載事項 (2-1)「【請求項1】 以下の成分 1)エポキシ樹脂およびその硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物、 2)マレイミド化合物、および 3)水酸基および水酸基以外のエポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有するポリビニルアセタール樹脂 を含むことを特徴とする銅張積層板用樹脂組成物。 ・・・ 【請求項5】 多層プリント配線板用の層間絶縁樹脂成分として請求項1から4のいずれかに記載の樹脂組成物を銅箔の片面に塗工して得られることを特徴とする樹脂付き銅箔。」(請求項1、5) (2-2)「【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の銅張積層板用樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。本発明の銅張積層板用樹脂組成物では、使用されるエポキシ樹脂およびその硬化剤のうち、エポキシ樹脂としては電気、電子材料に使用される品種であれば特に制限なく使用できる。例示すると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹詣、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノール樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂等である。またエポキシ樹脂の硬化剤としては、樹脂付き銅箔として使用されることが前提であるので、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族アミン類、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等の室温で活性が低く、加熱により硬化するいわゆる潜在性硬化剤が好適である。このときにエポキシ樹脂とその硬化剤との反応を促進する硬化促進剤も好ましく使用できる。硬化促進剤としては、3級アミン類、イミダゾール類が使用できるが、イミダゾール類は上記マレイミド化合物の硬化促進剤とも作用するので、さらに好適である。尚、前記エポキシ樹脂配合物は、エポキシ樹脂およびその硬化剤からなるが、硬化促進剤を含んでいても良い。エポキシ樹脂配合物の含有率は樹脂組成物の総量100重量部に対して40?80重量部であることが望ましい。40重量部未満では接着性が低下し、また80重量部を越えると耐熱性向上効果が期待できない。 【0013】マレイミド化合物としてはN,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5メチル-4-マレイミドフェニ)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等の化合物が好適である。このときにマレイミド化合物の含有率は樹脂組成物の総量100重量部に対して10?50重量部であることが望ましい。10重量部未満であれば耐熱性を確保することが不十分となり、また50重量部を越えると硬化物が非常に脆くなり、耐クラック性が非常に悪くなる。」(段落【0012】?【0013】) (2-3)「【0015】本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記必須成分以外の樹脂成分、例えば熱硬化性ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等を添加することもできる。これらの樹脂の添加により、耐炎性の向上、樹脂流動性の改良等に効果がある。」(段落【0015】) (2-4)「【0019】 【実施例】以下に、実施例及び比較例に基づき本発明を詳細に説明する。 実施例1 1-1)エポキシ樹脂 ビスフェノールA型エポキシ樹脂エポミックR-140(三井石油化学製、商品名)及びo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂エポトートYDCN-704(東都化成製、商品名)を重量比100:100で混合して得た。 1-2)エポキシ樹脂硬化剤 ミレックスXL-225(三井東圧化学製、商品名)を上記エポキシ樹詣に等量配合した。 1-3)エポキシ樹脂硬化促進剤 キュアゾール2PΖ(四国化成工業製、商品名)を上記エポキシ樹脂に対して1重量部添加した。 【0020】上記エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂促進剤をジメチルホルムアミドに溶解して50%溶液とした、エポキシ樹脂配合物を準備した。 2)ビスマレイミド化合物 N,N´-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミドを用いた。 3)水酸基及び水酸基以外のエポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有するポリビニルアセタール樹脂 原料ポリビニルアルコールの重合度2400、アセタール化度80、アセトアルデヒド/ブチルアルデヒド=50/50(モル比)、水酸基濃度17重量%、カルボキシル基濃度1重量%のカルボキシル基変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた。これらの成分を以下の表1に示される比率で配合した。 【0021】 【表1】 上記樹脂組成物を18μm電解銅箔の粗化面に塗布して、風乾後、120℃で5分間加熱して、半硬化状態の樹脂層を有する樹脂付き銅箔を得た。このときの樹脂層の厚さは100?105μmであった。この樹脂付き銅箔を常圧にて200℃4時間加熱し、冷却後銅箔をエッチングにより除去し、硬化樹脂フィルムを得た。また、上記樹脂付き銅箔を用いて、所定の回路が形成されたFR-4内層材(コア厚さ0.5mm、銅箔厚さ35μm)の両面に樹脂付き銅箔の樹脂層が内層材と接するように重ねて、圧力20kgf/cm^(2)、温度200℃にて4時間の熱プレスを行い、4層の銅箔層を有する多層銅張積層板を得た。次いで、上記多層銅張積層板の外層の銅箔を公知のエッチング方法でエッチングして回路を形成し、4層の多層プリント配線板を製造した。」(段落【0019】?【0021】) 5-1-3.引用文献4の記載事項 (4-1)「【請求項1】エポキシ樹脂と硬化剤と分子中に少なくともエチレン性不飽和基を2個以上有するイミド化合物からなるエポキシ樹脂組成物において、硬化剤としてフェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類との混合物又は縮合物からなり、該混合物又は縮合物中に未反応アルデヒド類を含まず、かつメチロール基を実質的に含まないフェノール樹脂組成物を使用することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。」(請求項1) (4-2)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、耐熱性、耐湿性、誘電特性、熱膨張特性、難燃性に優れ、封止材、積層板等の電気電子材料用に適するエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意検討した結果、フェノール類と特定のトリアジン環を有する化合物等の特定組成を有する混合物又は共縮合物を、エチレン性不飽和基を有するイミド化合物とともにエポキシ樹脂硬化剤として用いた場合に、上記課題が解決されることを見い出し、本発明を完成するに至った。」(段落【0003】?【0004】) (4-3)「【0008】さらに本発明のフェノール樹脂組成物を得るためのトリアジン環を含む化合物としては、特に限定されるものではないが、次の一般式(I)及び/又は一般式(II)で表わされる化合物であることが好ましい。 【0009】 【化7】 【0010】 (式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)は、アミノ基、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エーテル基、エステル基、酸基、不飽和基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを表す) ・・・ 一般式(I)中、R_(1)、R_(2)、R_(3)のうち少なくとも2つがアミノ基であることが好ましい。 【0013】一般式(I)で表わされる化合物としては、具体的にはメラミン、あるいはアセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのグアナミン誘導体、シアヌル酸、あるいはメチルシアヌレート、エチルシアヌレート、アセチルシアヌレート、塩化シアヌルなどのシアヌル酸誘導体等が挙げられる。これらの中でも、R_(1)、R_(2)、R_(3)のうちのいずれか2つ又は3つがアミノ基であるメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのグアナミン誘導体がより好ましい。」(段落【0008】?【0013】) (4-4)「【0015】これらの化合物も使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく2種以上を併用することも可能である。本発明のフェノール性組成物を得るためのアルデヒド類は特に限定されるものではないが、取扱いの容易さの点からホルムアルデヒドが好ましい。ホルムアルデヒドとしては、特に限定するものではないが、代表的な供給源としてホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。」(段落【0015】) (4-5)「【0019】以下に本発明のフェノール樹脂組成物を得るための代表的な方法について説明する。 ・・・ 【0023】反応終了後、未反応のアルデヒド類、フェノール類、溶媒等を常圧蒸留、真空蒸留等の常法にしたがって除去する。この時、本発明の硬化剤樹脂組成物の特徴である未反応のアルデヒド類とメチロール基を実質的に含まない樹脂組成物を得るためには120℃以上の加熱処理を必要とする。120℃以下の加熱処理ではメチロール基を実質的に消滅させるのは困難である。また120℃以上の温度であれば充分時間をかけることによりメチロール基を消滅させることができるが、効率的に消滅させるにはより高い温度、好ましくは150℃以上の加熱処理を行うことが好ましい。この時高温においてはノボラック樹脂を得るときの常法にしたがい、加熱とともに蒸留することが好ましい。またこの時前記したように未反応一官能性のフェノール単量体類を3重量%以下にすることが好ましい。」(段落【0019】?【0023】) (4-6)「【0024】このようにして得られたフェノール樹脂組成物は、未反応アルデヒド類を含まず、かつメチロール基を実質的に含まないことを特徴とするものである。本発明のエポキシ樹脂組成物を得るための前記エポキシ樹脂とは、1分子中に1個以上のオキシラン環を有する化合物をいい、代表的なものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エステル型エポキシ樹脂、環状脂肪族エステル型エポキシ樹脂、脂肪族エステル型エポキシ樹脂、エーテルエステル型エポキシ樹脂、およびエポキシ化大豆油の如き非グリシジル系エポキシ樹脂およびこれらの臭素あるいは塩素等のハロゲン置換体等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂を単独又は数種類混合して使用しても何等差し支えない。 【0025】本発明のエチレン性不飽和基を有するイミド化合物とは、その分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも2個以上有するイミド化合物をいい、ここでエチレン性不飽和基とは、例えばビニル基、アリル基、イソプロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、脂環式不飽和基等を指し、イミド化合物とは分子構造中にイミド環を有する化合物を指す。このような化合物として特に限定するものではないが、以下のものが好ましい。 【0026】分子中に少なくとも2個以上のマレイミド構造を有するもの、例えば4,4’-ジフェニルメタン-ビスマレイミド、」(段落【0024】?【0026】) (4-7)「【0037】本発明のエポキシ樹脂組成物は必要に応じて溶剤で希釈することができる。その溶剤としては、特に限定されず、必要に応じて種々のものが使用出来る。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、メチレンクロライド、メタノール、エタノール、ブタノールなどが挙げられ、これらの溶剤は、適宜に2種または、それ以上の混合溶剤として使用することも可能である。イミド化合物の溶解性を考慮すると、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンを使用するのが好ましい。」(段落【0037】) (4-8)「【0043】[合成例2](フェノール樹脂組成物の合成例) フェノール94部、ベンゾグアナミン66部に41.5%ホルマリン49部、およびトリエチルアミン0.7部を加え、100℃にて3時間反応させた。常圧下にて水を除去しながら120℃まで昇温し、温度を保持したまま3時間反応させた。常圧下にて水を除去しながら180℃まで2時間かけて昇温し、次いで減圧下にて未反応のフェノールを除去し、軟化点135℃のフェノール樹脂組成物を得た。フェノールとベンゾグアナミンの重量比率、未反応ホルムアルデヒド量、メチロール基の存在の有無、および未反応フェノールモノマー量を求め、結果を表1にまとめて示した。 【0044】以下この組成物を「N2」と略記する。」(段落【0043】?【0044】) (4-9)「【0046】 【表1】 」(段落【0046】) (4-10)「【0048】実施例4、比較例3?4 エピクロンN660(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 エポキシ当量210[大日本インキ化学工業(株)製])95部、エピクロン153(難燃型エポキシ樹脂 エポキシ当量360[大日本インキ化学工業(株)製])5部に対して、硬化剤としてN2、及びPNの化合物とエチレン性不飽和基を含むイミド化合物を、各々表3に示した割合にて配合した。さらに溶融シリカ300部、トリフェニルホスフィン2部を加え、充分に混合し、さらに95℃?100℃で2軸ロールにより混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂封止材料を得た。この成形材料を170℃にて90秒間トランスファー成形し、その後170℃で5時間アフターキュアを行い、試験片を作成した。試験片について各物性試験を行ったところ表3に示されるような結果が得られた。 【0049】 【表3】 」 5-2.対比、判断 5-2-1.引用文献1に記載された発明の認定 摘示(1-1)の記載からみて、引用文献1の請求項1には、「以下の成分 1)エポキシ樹脂およびその硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物 2)マレイミド化合物、および 3)エポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有し、溶剤に可溶な芳香族ポリマー を含むことを特徴とする銅張積層板用樹脂組成物」 が記載され、同請求項5には、前記樹脂組成物が「多層プリント配線板用の層間絶縁樹脂成分」として用いられることが記載されている。 また、摘示(1-2)において、上記「エポキシ樹脂」として、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等」が用いられること、「その硬化剤」として、「フェノールノボラック樹脂」等が用いられることが記載され、摘示(1-3)において、「マレイミド化合物」として、「N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等の化合物」が用いられること、「エポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有し、溶剤に可溶な芳香族ポリマー」として、「分子中または分子末端にフェノール性水酸基やカルボキシル基、アミノ基を有するポリエーテルスルホン樹脂等」が用いられることが記載されていることからみて、引用文献1には、「以下の成分 1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、および、フェノールノボラック樹脂等の硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物 2)N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のマレイミド化合物、および 3)分子末端にフェノール性水酸基を有するポリエーテルスルホン樹脂 を含む、多層プリント配線板用の層間絶縁樹脂成分として用いられる銅張積層板用樹脂組成物」が記載されているといえる。 そして、上記「ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂」は、本願明細書の段落【0024】において「1分子あたり2個以上のグリシジル基を有」し「ハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂」として例示された樹脂と同じものであり、「N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のマレイミド化合物」は、本願明細書の段落【0032】において「熱硬化性を有するマレイミド化合物」として例示された化合物と同じものであり、「分子末端にフェノール性水酸基を有するポリエーテルスルホン樹脂」は、本願請求項1において「分子内に架橋可能な官能基を有するポリマー」として列記された樹脂と同じものである。 また、上記樹脂組成物は、その構成成分にハロゲン元素を含有しないものであるから、「実質的にハロゲン元素を含有しない組成」であり、摘示(1-5)の実施例において、その構成成分がN-メチルピロリドンに溶解されているから、「有機溶剤で溶解して得られたもの」であり、その構成成分の化学反応により得られるものであるから「樹脂化合物」ということができる。 してみると、引用文献1には、「プリント配線板の層間絶縁層を構成するために用いる樹脂化合物において、当該樹脂化合物は、1分子あたり2個以上のグリシジル基を有し、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂と、末端基に水酸基を有するポリエーテルサルホン樹脂である、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーと、フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ系樹脂、及び、熱硬化性を有するマレイミド化合物を含み、実質的にハロゲン元素を含有しない組成とし、これらを有機溶剤で溶解して得られたものであるプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。 5-2-2.引用発明1との対比、判断 本願発明と引用発明1とを対比すると、両発明は、 「プリント配線板の層間絶縁層を構成するために用いる樹脂化合物において、当該樹脂化合物は、1分子あたり2個以上のグリシジル基を有し、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂と、末端基に水酸基を有するポリエーテルサルホン樹脂である、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーと、フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ系樹脂、及び、熱硬化性を有するマレイミド化合物を含み、実質的にハロゲン元素を含有しない組成とし、これらを有機溶剤で溶解して得られたものであるプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物」の発明である点で一致し、前記「フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤」について、本願発明においては、「メラミン、ベンゾクアナミンの1種又は2種と、フェノール類およびホルムアルデヒドを用いた縮合反応により得られる化合物とからなり、窒素含有量が5?25重量%である分子内にトリアジン環を含有する」ものを用いる旨の規定がなされているのに対し、引用発明1においては、当該規定がなされていない点において相違する。 上記相違点について検討する。 摘示(4-1)及び(4-2)の記載、摘示(4-10)の表3における実施例4及び比較例4の消炎性の評価試験結果からみて、引用文献4には、「エポキシ樹脂と、硬化剤と、分子中に少なくともエチレン性不飽和基を2個以上有するイミド化合物からなるエポキシ樹脂組成物において、硬化剤としてフェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類との縮合物からなり、該縮合物中に未反応アルデヒド類を含まず、かつメチロール基を実質的に含まないフェノール樹脂組成物を使用したものが優れた消炎性を有すること」が記載されているといえる。 また、摘示(4-3)において、上記「トリアジン環を有する化合物」として、メラミン及びベンゾグアナミンが用いられることが記載され、摘示(4-4)において、「アルデヒド類」として、ホルムアルデヒドが用いられることが記載されている。 さらに、摘示(4-5)において、「未反応アルデヒド類を含まず、かつメチロール基を実質的に含まない」フェノール樹脂組成物を得るための加熱処理が「ノボラック樹脂を得るときの常法にしたがい」行われることが記載されているからことからみて、前記フェノール樹脂組成物はノボラック型のものであり、摘示(4-8)の合成例2におけるフェノール、ベンゾグアナミン及びホルマリンの使用量、摘示(4-9)の表1におけるフェノールとベンゾグアナミンの重量比率から算出されるフェノール樹脂の窒素含有率は上記「5?25重量%」の範囲内である17.7重量%である。 そして、上記「硬化剤」がエポキシ樹脂を硬化させるためのものであること、フェノール樹脂組成物が分子内にトリアジン環を有するものであることは明らかであり、「エポキシ樹脂組成物」はその構成成分の化学反応により得られるものであるから「樹脂化合物」ということができる。 また、摘示(4-6)において、「エポキシ樹脂」及び「分子中に少なくともエチレン性不飽和基を2個以上有するイミド化合物」として例示されたものは、それぞれ、引用発明1において規定された「1分子あたり2個以上のグリシジル基を有し、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂」及び「熱硬化性を有するマレイミド化合物」と同じものである。 してみると、引用文献4には、「1分子あたり2個以上のグリシジル基を有し、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤と、熱硬化性を有するマレイミド化合物からなる樹脂化合物において、硬化剤として、メラミン又はベンゾグアナミンと、フェノール類と、ホルムアルデヒドを用いた縮合反応により得られた化合物からなり、窒素含有量が5?25重量%の範囲内であり、分子内にトリアジン環を含有するものを使用したものが優れた消炎性を有すること」が記載されているといえる。 一方、摘示(1-4)の記載からみて、引用発明1の樹脂化合物において、耐炎性を向上させることは、公知の課題であるということができ、また、前記「耐炎性」は、引用文献4に記載された「消炎性」なる物性と同種のものであるといえる。 してみると、引用発明1の樹脂化合物において、その耐炎性の向上を目的として、引用文献4の記載に従い、フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤として、メラミン、ベンゾクアナミンの1種又は2種と、フェノール類およびホルムアルデヒドを用いた縮合反応により得られる化合物とからなり、窒素含有量が5?25重量%である分子内にトリアジン環を含有するものを用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願発明の実施例において示された耐燃性の向上なる効果は、引用文献4の記載から予測し得るものである。 したがって、本願発明は、引用文献1及び4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5-2-3.引用文献2に記載された発明の認定 摘示(2-1)の記載からみて、引用文献2の請求項1には、「以下の成分 1)エポキシ樹脂およびその硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物 2)マレイミド化合物、および 3)水酸基および水酸基以外のエポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有するポリビニルアセタール樹脂 を含むことを特徴とする銅張積層板用樹脂組成物」 が記載され、同請求項5には、前記樹脂組成物が「多層プリント配線板用の層間絶縁樹脂成分」として用いられることが記載されている。 また、摘示(2-2)において、上記「エポキシ樹脂」として、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等」が用いられること、「その硬化剤」として、「フェノールノボラック樹脂」等が用いられること、「マレイミド化合物」として、「N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニ)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等の化合物」が用いられることが記載されていることからみて、引用文献2には、「以下の成分 1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、および、フェノールノボラック樹脂等の硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物 2)N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のマレイミド化合物、および 3)水酸基および水酸基以外のエポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有するポリビニルアセタール樹脂 を含む、多層プリント配線板用の層間絶縁樹脂成分として用いられる銅張積層板用樹脂組成物」が記載されているといえる。 そして、上記「ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂」は、本願明細書の段落【0024】において「1分子あたり2個以上のグリシジル基を有」し「ハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂」として例示された樹脂と同じものであり、「N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のマレイミド化合物」は、本願明細書の段落【0032】において「熱硬化性を有するマレイミド化合物」として例示された化合物と同じものであり、「水酸基および水酸基以外のエポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有するポリビニルアセタール樹脂」は、本願請求項1において「分子内に架橋可能な官能基を有するポリマー」として列記された「分子内に繰り返しの水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂」と同じものである。 また、上記樹脂組成物は、その構成成分にハロゲン元素を含有しないものであるから、「実質的にハロゲン元素を含有しない組成」であり、摘示(2-4)の実施例において、その構成成分がメチルエチルケトンに溶解されているから、「有機溶剤で溶解して得られたもの」であり、その構成成分の化学反応により得られるものであるから「樹脂化合物」ということができる。 してみると、引用文献2には、「プリント配線板の層間絶縁層を構成するために用いる樹脂化合物において、当該樹脂化合物は、1分子あたり2個以上のグリシジル基を有し、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂と、分子内に繰り返しの水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂である、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーと、フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ系樹脂、及び、熱硬化性を有するマレイミド化合物を含み、実質的にハロゲン元素を含有しない組成とし、これらを有機溶剤で溶解して得られたものであるプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。 5-2-4.引用発明2との対比、判断 本願発明と引用発明2とを対比すると、両発明は、 「プリント配線板の層間絶縁層を構成するために用いる樹脂化合物において、当該樹脂化合物は、1分子あたり2個以上のグリシジル基を有し、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂と、分子内に繰り返しの水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤と、からなるエポキシ系樹脂、及び、熱硬化性を有するマレイミド化合物を含み、実質的にハロゲン元素を含有しない組成とし、これらを有機溶剤で溶解して得られたものであるプリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物。」である点で一致し、フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤について、本願発明においては、「メラミン、ベンゾクアナミンの1種又は2種と、フェノール類およびホルムアルデヒドを用いた縮合反応により得られる化合物とからなり、窒素含有量が5?25重量%である分子内にトリアジン環を含有する」ものを用いる旨の規定がなされているのに対し、引用発明2においては、当該規定はなされていない点において相違する。 上記相違点について検討する。 上記5-2-2.のとおり、引用文献4には、「1分子あたり2個以上のグリシジル基を有し、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤と、熱硬化性を有するマレイミド化合物からなる樹脂化合物において、硬化剤として、メラミン又はベンゾグアナミンと、フェノール類と、ホルムアルデヒドを用いた縮合反応により得られた化合物からなり、窒素含有量が5?25重量%の範囲内であり、分子内にトリアジン環を含有するものを使用したものが優れた消炎性を有すること」が記載されているといえる。 一方、摘示(2-3)の記載からみて、引用発明1の樹脂化合物において、耐炎性を向上させることは、公知の課題であるということができ、また、前記「耐炎性」は、引用文献4に記載された「消炎性」なる物性と同種のものであるといえる。 してみると、引用発明2の樹脂化合物において、その耐炎性の向上を目的として、引用文献4の記載に従い、フェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤として、メラミン、ベンゾクアナミンの1種又は2種と、フェノール類およびホルムアルデヒドを用いた縮合反応により得られる化合物とからなり、窒素含有量が5?25重量%である分子内にトリアジン環を含有するものを用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願発明の実施例において示された耐燃性の向上なる効果は、引用文献4の記載から予測し得るものである。 したがって、本願発明は、引用文献2及び4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5-2-5.補正案の検討 なお、請求人は、平成19年10月19日に提出された回答書において、特許請求の範囲を、平成18年3月29日提出の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下、「本願補正案発明」という。)とする補正案を提示している。 本願補正案発明は、本願発明の樹脂化合物において、1分子あたり2個以上のグリシジル基を有する、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上とし、熱硬化性マレイミド化合物を、N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニ)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、及びこれらのマレイミド化合物とポリアミン類のマイケル付加反応により得られる熱硬化性マレイミド化合物としたものにより、銅箔の表面に樹脂層を形成した樹脂付銅箔の製造方法であって、溶媒を除く樹脂化合物の総量を100重量部としたときに、エポキシ樹脂は20?70重量部、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーは5?30重量部、熱硬化性を有するマレイミド化合物は10?50重量部、残部が必要に応じて添加される架橋剤及び分子内にトリアジン環を含有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤となる組成割合とし、これを溶媒中に添加し溶解した後の固形分が40?50重量%になるようにして形成した樹脂化合物を、銅箔表面に塗り、乾燥させることで、半硬化状態の樹脂層を銅箔表面に形成し、前記溶媒を、N-メチルピロリドンとメチルエチルケトンとの混合溶媒であって、N-メチルピロリドン/メチルエチルケトン=50/50?40/60(重量比)の範囲の混合比としたものである。 しかるに、引用文献1及び2には、樹脂化合物により銅箔の表面に樹脂層を形成した樹脂付銅箔の製造方法、1分子あたり2個以上のグリシジル基を有する、実質的にハロゲン元素を含まないエポキシ樹脂を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂とすること、熱硬化性マレイミド化合物を、N,N’-(4,4-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニ)メタン、2,2ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンとすること、溶媒を除く樹脂化合物の総量を100重量部としたときに、エポキシ樹脂は20?70重量部、分子内に架橋可能な官能基を有するポリマーは5?30重量部、熱硬化性を有するマレイミド化合物は10?50重量部、残部が必要に応じて添加される架橋剤及び分子内にトリアジン環を含有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂硬化剤となる組成割合とし、これを溶媒中に添加し溶解した後の固形分が40?50重量%になるようにして形成した樹脂化合物を、銅箔表面に塗り、乾燥させることで、半硬化状態の樹脂層を銅箔表面に形成することも記載されているから、これらの点は新たな相違点とはならない。 そして、摘示(4-7)の記載からみて、引用文献4には、樹脂化合物の溶媒として、メチルエチルケトン及びN-メチルピロリドンなどを使用し得ること、これらの溶媒を適宜2種以上混合して使用し得ることが記載されているといえるから、樹脂化合物の溶媒を、N-メチルピロリドンとメチルエチルケトンとの混合溶媒とすること、その混合比を調整し、N-メチルピロリドン/メチルエチルケトン=50/50?40/60(重量比)の範囲とすることは、当業者が適宜なし得ることといえる。 また、本願明細書等の記載を参酌しても、樹脂化合物の溶媒として上記のものを用いたことにより、格別に優れた効果が奏せられるものとはいえない。 したがって、本願補正案発明も、引用文献1及び4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用文献2及び4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、上記回答書で提示された補正案は、採用することができないものである。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-27 |
結審通知日 | 2007-11-28 |
審決日 | 2007-12-11 |
出願番号 | 特願2000-374070(P2000-374070) |
審決分類 |
P
1
8・
57-
Z
(C08G)
P 1 8・ 121- Z (C08G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 辰己 雅夫、松岡 徹 |
特許庁審判長 |
井出 隆一 |
特許庁審判官 |
高原 慎太郎 山本 昌広 |
発明の名称 | プリント配線板の層間絶縁層構成用の樹脂化合物、その樹脂化合物を用いた絶縁層形成用樹脂シート及び樹脂付銅箔、並びにそれらを用いた銅張積層板 |
代理人 | 田中 大輔 |