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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1171832
審判番号 不服2005-16734  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-01 
確定日 2008-01-25 
事件の表示 平成11年特許願第313789号「ドットの形成位置ずれの調整」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月15日出願公開、特開2001-130112〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年11月4日に出願したものであって、平成17年7月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月1日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年同月26日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成17年9月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年9月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲(補正前の請求項数13から補正後の請求項数12)についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「主走査および副走査を行いつつ、複数のドット形成要素を用いてドットを形成する印刷部であって、前記複数のドット形成要素のそれぞれは、異なる飛行速度でインク量の異なるインク滴を吐出してサイズの異なるドットを形成可能な機構である、前記印刷部に、主走査方向の位置が同一の画素に形成されるべきドットの主走査方向の位置ずれを調べるための直線状のテストパターンを印刷させる印刷制御装置であって、
前記テストパターンを表す印刷制御データを生成するための印刷制御データ生成部を備え、
前記テストパターンは、
副走査方向に形成される複数のドットを含む第1のドット列であって、前記複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第1のドット形成要素群を第1の時期に駆動させることによって形成される前記第1のドット列と、
副走査方向に形成される複数のドットを含む第2のドット列であって、前記複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第2のドット形成要素群を前記第1の時期と異なる第2の時期に駆動させることによって形成される前記第2のドット列と、
を含み、
前記第1のドット列と前記第2のドット列との少なくとも一部の範囲では、前記第1のドット列を構成する2つのドット間に、前記第2のドット列を構成するドットが挟まれ、
前記第1のドット列に含まれる前記複数のドットは、第1の飛行速度で吐出される第1の量のインク滴によって形成される第1のサイズを有し、
前記第2のドット列に含まれる前記複数のドットは、前記第1の飛行速度と異なる第2の飛行速度で吐出される前記第1の量と異なる第2の量のインク滴によって形成される前記第1のサイズと異なる第2のサイズを有する、印刷制御装置。」
と補正された。(下線部が追加された。)
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「印刷部」について、「前記複数のドット形成要素のそれぞれは、異なる飛行速度でインク量の異なるインク滴を吐出してサイズの異なるドットを形成可能な機構である」と限定し、「第1のドット列に含まれる複数のドット」及び「第2のドット列に含まれる複数のドット」について、「前記第1のドット列に含まれる前記複数のドットは、第1の飛行速度で吐出される第1の量のインク滴によって形成される第1のサイズを有し、前記第2のドット列に含まれる前記複数のドットは、前記第1の飛行速度と異なる第2の飛行速度で吐出される前記第1の量と異なる第2の量のインク滴によって形成される前記第1のサイズと異なる第2のサイズを有する」と限定したものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-109657号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.「記録ヘッドを搭載したキャリジの往復両方向移動時に、該キャリジの移動に伴い、インクを吐出させて記録するインクジェット記録装置において、両方向でのドットずれを補正すべくインク吐出タイミングを変化させるためのディレイ手段と、前記ディレイ手段からのディレイ値を変化させてインクの吐出を行う為のインク吐出タイミング制御手段と、前記ディレイ手段からのディレイ値を設定する為のディレイ設定手段とを有するインクジェット記録装置。」(特許請求の範囲)
イ.「ところで、インクジェット記録装置で両方向印字をする場合、オリフィスからインクを吐出しインク滴として飛翔させて被記録部材に付着させることから、インク滴の吐出スピードと記録ヘッドを搭載したキャリジの移動速度とのベクトル和で被記録部材に付着する位置(ドット位置)が決まる。このため、記録ヘッドのばらつきや使用環境によるインク性状(粘度など)、あるいはキャリジの移動速度のばらつき等により付着位置に差が生じドットずれが生じることになる。」(第1頁右下欄第17行?第2頁左上欄第6行)
ウ.「第1図は本発明を適用するのに好適なインクジェット記録装置を示し、被記録部材(用紙)1をバックアップするプラテン(または紙送りローラ)2の前方にガイドシャフト3が設置され、該ガイドシャフトに沿って矢印A方向に往復動するキャリジ4上に記録ヘッド5が搭載されている。また、図示の例ではカラー印字のように複数色(イエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)のインクに対応して複数個(4個)の記録ヘッド5が搭載されている。
キャリジ4が両矢印A方向すなわち往復両方向に移動する際、該キャリジの移動に伴って記録ヘッド5が駆動され、該記録ヘッドのオリフィスから吐出されるインク滴により用紙1上に記録されていく。」(第2頁左下欄第4?18行)
エ.「第2図は第1図の記録装置の印字タイミングの制御系を示す。尚、以下の説明はオリフィスを1つ有する記録ヘッドを例にとって行う。
第2図において、中央処理装置(CPU)10、ROM11およびRAM12で制御部が構成され、特に、ROM11には印字タイミング制御用のプログラムが格納されており、RAM12には印字データが格納される。RAM12に格納された印字データはi/oポート(PiA)13を介して出力され、タイマー(PTM)14からのパルス信号でインクジェットヘッド(HD)15に印字パルスが印加される。」(第2頁左下欄第19行?右下欄第10行)
オ.「次に、両方向印字における往時と復時でのドットずれを検出するためのテストプリント動作を説明する。
テストプリントスイッチ16が入力されるとCPUl0がこれを検知してテストプリント動作が開始される。
これはプリントバッファであるRAM12内にある種の印字データ、例えば“H”という文字を、80桁格納し、これをインク吐出タイミング制御手段であるROM11に格納されたプログラム(所定のテスト印字手順)に従ってドット印字する方法で行われる。」(第3頁左上欄第6?17行)
カ.「RAM12に前記文字を格納した後、i/oポート13を介してキャリジモータ18を駆動する。これによって、まず、キャリジ17が往方向に移動し、スリット20から検出されるタイミングパルスによって印字位置を確認し、所定の位置からドット印字を開始する。
この場合、RAM12に格納された文字“H”を形成するドット群のうち一番上の段のドット(1ドット)の印字を予めタイマー14に設定されたディレイ値で実行していく。
80桁の“H”の一番上の段のドットの印字が終了(1回目の往方向の印字が終了)すると、パルスモータ19を駆動して用紙を1ドット分のピッチだけ紙送りし、キャリジモータ18を逆転駆動して“H”文字の二番目の段のドット(1ドット)の印字を復方向で実行する。
文字“H”が第3図に示すように5×7のドットマトリックスで構成される場合、前述のような紙送り方向の1ドット分づつの往復ドット印字を4往復繰返すことにより、第3図に示すような80桁の“H”文字の印字が行われる。」(第3頁左上欄第18行?右上欄第18行)
キ.「ここで、前述の両方向ドット印字において、ドットずれなしに文字を形成するためには、インク滴の吐出速度とキャリジ17の往復動時の移動速度とのベクトル和を考慮する必要がある。このため、例えば、第4図に示すように、往時では吐出サイクル(1)でディレイ時間(ディレイ値)aなるタイミングでインク吐出を行い、復時では1つ手前の吐出サイクル(2)でディレイ値aなるタイミングでインク吐出を行って、印字ドットの位置合わせが行われる。」(第3頁右上欄第19行?左下欄第8行)
ク.「この位置合わせがずれると、第5図に示すようなドットずれが生じる。すなわち、ディレイ値aが小さすぎる場合は、第5図(A)の方向のドットずれが生じ、ディレイ値aが大きすぎる場合は第5図(B)の方向のドットずれが生じる。
そこで、テストプリントの印字(インク吐出)タイミング制御用のタイマー14として、出力するパルスのタイミングを変化させる形式のものを使用し、変化させるべきディレイ値を入力して前述のドット印字動作を所望の繰返しモードで実行し、テストプリントを終了させる。又、このテストプリント時には、ディレイ値を変化させる毎に、前記RAMの内容に、そのディレイ値を表す数字やディレイ値とディップスイッチ等の一致をとっている場合はその位置(ON、OFF)を表す英数字又は記号を格納して前記同様に印字させ、このディレイ値表示の印字も併せて印字させる。この場合のパルスの出力タイミングを変化させるタイマー14としては、例えば、モトローラ社製のMC6840など、プログラマブルタイマーモジュールでありプログラム値によって出力するパルスのタイミングを変化させうる素子が使用される。
前述の往復ドット印字動作を4回繰返せばあるディレイ値に設定したHパターン印字が実行される。これに続いて1行分の紙送りを行い別のディレイ値で同様の印字動作を行う。」(第3頁左下欄第9行?右下欄第14行)
ケ.第1図から、キャリジ4上に4個の記録ヘッド5が搭載され、各記録ヘッドは、矢印A方向(主走査方向)より矢印B方向(副走査方向)に長いことが看取できる。
コ.第5図(A)、(B)から、“H”文字の縦線部に関し、奇数番目のドットからなるドット列に対し、偶数番目のドットからなるドット列がずれ、前記奇数番目のドットからなるドット列を構成する2つのドット間に、前記偶数番目のドットからなるドット列を構成するドットが挟まれていることが看取できる。

上記刊行物は、インクジェット記録装置に関するものであるが、インクジェット記録装置である以上、印刷制御装置を有しており、したがって、印刷制御装置を認識できる。上記ウ.、カ.、ケ.の記載から、記録ヘッドは主走査および副走査を行いつつドットを形成し、上記エ.に、「以下の説明はオリフィスを1つ有する記録ヘッドを例にとって行う。」と記載されているから、該記録ヘッドは1つのドット形成要素を有するものと認められる。よって、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「主走査および副走査を行いつつ、1つのドット形成要素を用いてドットを形成する記録ヘッドであって、前記1つのドット形成要素は、両方向印字における往時と復時で、インク滴を吐出してドットを形成可能な機構である、前記記録ヘッドに、両方向印字における往時と復時でのドットずれを検出するための5×7のドットマトリックスで構成されるHパターンを印字させる印刷制御装置であって、
印字タイミングの制御系を備え、
前記Hパターンの縦線部は、
副走査方向に形成される奇数番目のドットからなるドット列であって、前記1つのドット形成要素を往時に駆動させることによって形成される前記奇数番目のドットからなるドット列と、
副走査方向に形成される偶数番目のドットからなるドット列であって、前記1つのドット形成要素を復時に駆動させることによって形成される前記偶数番目のドットからなるドット列と、
を含み、
前記奇数番目のドットからなるドット列を構成する2つのドット間に、前記偶数番目のドットからなるドット列を構成するドットが挟まれる、印刷制御装置。」

(3)対比
本願補正発明と刊行物記載の発明とを比較すると、刊行物記載の発明の「記録ヘッド」、「奇数番目のドットからなるドット列」及び「偶数番目のドットからなるドット列」は、それぞれ本願補正発明の「印刷部」、「第1のドット列」及び「第2のドット列」に相当する。
刊行物記載の発明は、両方向印字における往時と復時でのドットずれを検出するためのものであるから、主走査方向の位置が同一の画素に形成されるべきドットの主走査方向の位置ずれを調べるためのものといえる。
刊行物記載の発明の「5×7のドットマトリックスで構成されるHパターン」と本願補正発明の「直線状のテストパターン」は、いずれも「直線部を有するテストパターン」の点で共通する。
刊行物記載の発明の「印字タイミングの制御系」がテストパターンを表す印刷制御データを生成することは明らかであるから、テストパターンを表す印刷制御データを生成するための印刷制御データ生成部といえる。
刊行物記載の発明の各ドット列は、「前記奇数番目のドットからなるドット列を構成する2つのドット間に、前記偶数番目のドットからなるドット列を構成するドットが挟まれ」るものであるから、本願補正発明の「前記第1のドット列と前記第2のドット列との少なくとも一部の範囲では、前記第1のドット列を構成する2つのドット間に、前記第2のドット列を構成するドットが挟まれ」る各ドット列に包含される。
よって、両者は、
「主走査および副走査を行いつつ、ドット形成要素を用いてドットを形成する印刷部であって、前記ドット形成要素は、インク滴を吐出してドットを形成可能な機構である、前記印刷部に、主走査方向の位置が同一の画素に形成されるべきドットの主走査方向の位置ずれを調べるための直線部を有するテストパターンを印刷させる印刷制御装置であって、
前記テストパターンを表す印刷制御データを生成するための印刷制御データ生成部を備え、
前記テストパターンは、
副走査方向に形成される複数のドットを含む第1のドット列と、
副走査方向に形成される複数のドットを含む第2のドット列と、
を含み、
前記第1のドット列と前記第2のドット列との少なくとも一部の範囲では、前記第1のドット列を構成する2つのドット間に、前記第2のドット列を構成するドットが挟まれる、印刷制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]印刷部に関し、本願補正発明は、複数のドット形成要素を用いてドットを形成するものであって、前記複数のドット形成要素のそれぞれは、異なる飛行速度でインク量の異なるインク滴を吐出してサイズの異なるドットを形成可能な機構であるのに対し、刊行物記載の発明は、1つのドット形成要素を用いてドットを形成するものであって、本願補正発明のような特定を有さない点。
[相違点2]直線部を有するテストパターンに関し、本願補正発明は、直線状のテストパターンであるのに対し、刊行物記載の発明は、縦線部を有するテストパターンであるものの、Hパターンである点。
[相違点3]第1のドット列と第2のドット列に関し、本願補正発明は、第1のドット列が複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第1のドット形成要素群を第1の時期に駆動させることによって形成され、第2のドット列が前記複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第2のドット形成要素群を前記第1の時期と異なる第2の時期に駆動させることによって形成され、前記第1のドット列に含まれる前記複数のドットは、第1の飛行速度で吐出される第1の量のインク滴によって形成される第1のサイズを有し、前記第2のドット列に含まれる前記複数のドットは、前記第1の飛行速度と異なる第2の飛行速度で吐出される前記第1の量と異なる第2の量のインク滴によって形成される前記第1のサイズと異なる第2のサイズを有するのに対し、刊行物記載の発明は、本願補正発明のような特定を有さない点。

(4)判断
上記相違点1について検討する。
刊行物の上記エ.に「以下の説明はオリフィスを1つ有する記録ヘッドを例にとって行う。」と記載されているように、オリフィスが1つの記録ヘッドは、一例であるから、オリフィスが複数の記録ヘッド、即ち、複数のドット形成要素を用いてドットを形成する記録ヘッドが示唆されており、また、刊行物の上記ケ.のような記録ヘッドは、通常、副走査方向に配列された複数のドット形成要素を用いてドットを形成するものであるから、刊行物記載の発明が制御する記録ヘッドを(副走査方向に配列された)複数のドット形成要素を用いてドットを形成する印刷部とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。
また、印刷制御装置において、良好な階調印刷をすることは自明の課題であり、インク量の異なるインク滴を吐出してドットサイズを異ならせて階調印刷することは周知技術(一例として、特開平9-109395号公報、以下、「周知刊行物」という。)であって、周知刊行物の段落【0012】に「従来の印刷装置において、ドット径が異なる階調印刷を行う場合、インク吐出量に応じて吐出に必要な印加時間が異なり、かつインク吐出速度がインク吐出量やインクジェット装置の使用環境(温度、湿度、気圧)により異なる・・・」と記載されているように、前記階調印刷をする際、インク滴の飛行速度が異なるのは必然であるから、刊行物記載の発明が制御する記録ヘッドのドット形成要素を異なる飛行速度でインク量の異なるインク滴を吐出してサイズの異なるドットを形成可能な機構とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
よって、本願補正発明の上記相違点1のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
刊行物記載の発明のテストパターンは、Hパターンであるが、Hパターンの縦線部でドットずれを認識しているものである。Hパターンの横線部は、ドットずれの認識には関与していないから、横線部を印刷せず、縦線部のみ印刷、即ち、直線状のテストパターンとすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点3について検討する。
刊行物記載の発明のHパターンを印刷する際、1つのドット形成要素を何往復も往復させて印刷するのは、時間がかかる。短時間でドットずれが検出できるようにすることは当然の課題であり、印刷部を本願補正発明のようなものとすることが容易であることについては既に相違点1で検討した(複数のドット形成要素が副走査方向に配列されることについても既に言及してある。)とおりであって、複数のドット形成要素が副走査方向に配列されている印刷部であれば、刊行物記載の発明の副走査方向に形成される奇数番目のドットからなるドット列(本願補正発明の「第1のドット列」に相当。)を、複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第1のドット形成要素群を第1の時期に駆動させることによって形成し、副走査方向に形成される偶数番目のドットからなるドット列(同「第2のドット列」)を、複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第2のドット形成要素群を前記第1の時期と異なる第2の時期に駆動させることによって形成することは、当業者が容易になし得る程度のことである。また、第1のドット列が複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第1のドット形成要素群を第1の時期に駆動させることによって形成され、第2のドット列が前記複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第2のドット形成要素群を前記第1の時期と異なる第2の時期に駆動させることによって形成されることは、周知技術(例えば、特開平7-223338号公報、特に【図11】?【図14】に示すH字型の例参照。)でもあるから、該周知技術を適用することによっても、当業者が容易になし得るものといえる。
相違点3の内、残る「前記第1のドット列に含まれる前記複数のドットは、第1の飛行速度で吐出される第1の量のインク滴によって形成される第1のサイズを有し、前記第2のドット列に含まれる前記複数のドットは、前記第1の飛行速度と異なる第2の飛行速度で吐出される前記第1の量と異なる第2の量のインク滴によって形成される前記第1のサイズと異なる第2のサイズを有する」について以下検討する。
刊行物記載の発明は、両方向印字における往時と復時でのドットずれを検出するものであるが、主走査方向のドットずれが生じるのは、両方向印字の場合に限らず、異なる色のヘッド間や、インク量の異なるドット同士でも生じることは周知技術(特開平11-291470号公報の段落【0074】、周知刊行物)である。印刷部を本願補正発明のようなものとすることが容易であることについては既に検討したとおりであって、印刷部のドット形成要素が異なる飛行速度でインク量の異なるインク滴を吐出してサイズの異なるドットを形成可能な機構であれば、刊行物記載の発明の奇数番目のドットからなるドット列に含まれる複数のドットを、第1の飛行速度で吐出される第1の量のインク滴によって形成される第1のサイズとし、偶数番目のドットからなるドット列に含まれる複数のドットを、前記第1の飛行速度と異なる第2の飛行速度で吐出される前記第1の量と異なる第2の量のインク滴によって形成される前記第1のサイズと異なる第2のサイズを有するようにすることは、当然のことといわざるをえない。
よって、本願補正発明の上記相違点3のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年9月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年7月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「主走査および副走査を行いつつ、複数のドット形成要素を用いてドットを形成する印刷部に、主走査方向の位置が同一の画素に形成されるべきドットの主走査方向の位置ずれを調べるための直線状のテストパターンを印刷させる印刷制御装置であって、
前記テストパターンを表す印刷制御データを生成するための印刷制御データ生成部を備え、
前記テストパターンは、
副走査方向に形成される複数のドットを含む第1のドット列であって、前記複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第1のドット形成要素群を第1の時期に駆動させることによって形成される前記第1のドット列と、
副走査方向に形成される複数のドットを含む第2のドット列であって、前記複数のドット形成要素のうちの副走査方向に配列された第2のドット形成要素群を前記第1の時期と異なる第2の時期に駆動させることによって形成される前記第2のドット列と、
を含み、
前記第1のドット列と前記第2のドット列との少なくとも一部の範囲では、前記第1のドット列を構成する2つのドット間に、前記第2のドット列を構成するドットが挟まれる、印刷制御装置。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「印刷部」についての限定事項である「前記複数のドット形成要素のそれぞれは、異なる飛行速度でインク量の異なるインク滴を吐出してサイズの異なるドットを形成可能な機構である」との特定を省き、「第1のドット列に含まれる複数のドット」及び「第2のドット列に含まれる複数のドット」についての限定事項である「前記第1のドット列に含まれる前記複数のドットは、第1の飛行速度で吐出される第1の量のインク滴によって形成される第1のサイズを有し、前記第2のドット列に含まれる前記複数のドットは、前記第1の飛行速度と異なる第2の飛行速度で吐出される前記第1の量と異なる第2の量のインク滴によって形成される前記第1のサイズと異なる第2のサイズを有する」との特定を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-20 
結審通知日 2007-11-27 
審決日 2007-12-10 
出願番号 特願平11-313789
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 徹三後藤 時男  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 尾崎 俊彦
菅藤 政明
発明の名称 ドットの形成位置ずれの調整  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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