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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F |
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管理番号 | 1171833 |
審判番号 | 不服2005-20556 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-25 |
確定日 | 2008-01-25 |
事件の表示 | 特願2001-286229「フロートスイッチ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月28日出願公開、特開2003- 90755〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年9月20日の出願であって、平成17年2月23日付け(発送日同年3月8日)拒絶理由通知に対し、出願人(審判請求人)から何らの応答なく、同年9月22日付け(発送日:同年10月4日)で拒絶査定がされ、これに対し、同年 10月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月24日付け手続補正により明細書又は図面についての補正がなされたものである。 2.平成17年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年11月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項2を、補正前の請求項5である 「液面の変動に応じて上下動する磁気を帯びた磁性フロートと、この磁性フロートの上下動をガイドし、前記検出用磁性フロートの接近を検出して接点を開閉する磁気感応スイッチを内蔵するステム部とを有するフロートスイッチに於いて、前記磁性フロートの前記ステム部と対向する面が下方端部へ向かって前記磁気感応スイッチを内蔵するステム部との間隔が増大する形状を有していることを特徴とするフロートスイッチ。」 から、補正後の請求項2である 「液面の変動に応じて上下動する磁気を帯びた磁性フロートと、この磁性フロートの上下動をガイドし、前記検出用磁性フロートの接近を検出して接点を開閉する磁気感応スイッチを内蔵するステム部とを有するフロートスイッチに於いて、前記磁性フロートの前記ステム部のガイド部と直接対向する全ての面が下方端部へ向かって前記磁気感応スイッチを内蔵するステム部との間隔が増大する形状を有していることを特徴とするフロートスイッチ。」 に補正する補正事項を含むものである。 なお、補正前の請求項1、請求項2、請求項4、請求項7及び請求項8は本件補正により削除された。 そしてこの補正は、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である、(ステム部と対向する)「面」について「ステム部のガイド部と直接対向する全ての」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (2)独立特許要件の検討 [検討その1] (i)引用例記載の発明・事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-94631号公報(以下「引用例1」という。)は、フロートスイッチ(発明の名称)に関するものであり、次の事項が図面とともに記載されている。(下線部は当審で付した。) (a)「スイッチ内蔵部材と、前記スイッチ内蔵部材に沿って液面の変化に伴って移動するマグネット内蔵フロートを組み合わせたフロートスイッチにおいて、前記マグネット内蔵フロートが、端部へ向かって前記スイッチ内蔵部材との間隔が増大する形状を有していることを特徴とするフロートスイッチ。」(特許請求の範囲の請求項6) (b)「【従来の技術】図1は液面を検出する装置として従来から用いられているフロートスイッチの一例である。リードスイッチ1を内蔵したガイドパイプ2と、マグネット4を内蔵したフロート3を組み合わせたフロートスイッチが使用されている。液面の上昇下降に応じて、フロート3がガイドパイプ2に沿って上下動し、フロート3に内蔵されるマグネット4がリードスイッチ1の接点を開閉することでスイッチ作用を行う。・・・。」(段落【0002】、図1) (c)「また、図5は本発明の他の実施例である。この例では、マグネット内蔵フロートの形状を、端部へ向かってスイッチ内蔵部材との間隔が増大する形状としている。図6に示すようにフロートの内面側にリブ9を設け、円錐状部を設ける。・・・本実施例では、現像液内を円錐状にしたために流体抵抗が小さくなり、液面の上昇下降に直ぐに対応して追随できるものとなり、遅れのない応答性のよいスイッチ機能が得られる。」(段落【0014】?【0015】、図5、図6) (d)「本発明により、フロートの固着問題が解消され、誤動作もなくなるばかりでなくギャップを狭くして検出の位置精度を保持できる。また、接触部分を最小にできるので液面の動きに対して摩擦も小さくなり追随性・応答性もよくなる。 写真の現像機用のタンクに用いられるリードスイッチとマグネットを内蔵したフロートからなる液面検出スイッチにおいて、リードスイッチのガイドパイプに沿って摺動するフロートの内面側にリブを設け、その一方に円錐状部を設けたことで、液面の上下動の対して追随性・応答性が改善された。」(段落【0021】?【0022】) そして上記記載事項(a)、(c)に係る改良されたフロートスイッチの基本構成は記載事項(b)に記載の従来のフロートスイッチの基本構成を採用しているから、この点を踏まえると、上記記載事項(a)?(c)及び図1、図5、図6から、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。 「液面の変動に応じて上下動するマグネット4を内蔵したフロート3と、このフロート3の上下動をガイドし、前記マグネット4を内蔵したフロート3の接近を検出して接点を開閉するリードスイッチ1を内蔵するガイドパイプ2とを有するフロートスイッチにおいて、前記マグネット4を内蔵したフロート3の内面にリブ9を設けるとともに、フロート3の、リブ9がある部分を除いたガイドパイプ2に直接対向する全ての面が、下方端部に向かって前記リードスイッチ1を内蔵するガイドパイプ2との間隔が増大する円錐状の形状を有しているフロートスイッチ。」(以下、「引用例記載の発明1」という。) (ii)対比 本願補正発明と引用例記載の発明1とを対比する。 引用例記載の発明1における、「リードスイッチ1」、「ガイドパイプ2」は、 本願補正発明の、「磁気感応スイッチ」、「ステム部」にそれぞれ相当する。 また、補正後の請求項5に「前記磁性フロートがプラスチックマグネットフロートまたは磁石内蔵フロートからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のフロートスイッチ。」とあるように、本願補正発明の「磁性フロート」は、磁石内蔵フロートを含むものであるから、引用例記載の発明1における「マグネット4を内蔵したフロート3」は、本願補正発明における「磁気を帯びた磁性フロート」に相当する。 してみると、両者は 「液面の変動に応じて上下動する磁気を帯びた磁性フロートと、この磁性フロートの上下動をガイドし、前記検出用磁性フロートの接近を検出して接点を開閉する磁気感応スイッチを内蔵するステム部とを有するフロートスイッチにおいて、前記磁性フロートの前記ステム部のガイド部と対向する面が、下方端部へ向かって前記磁気感応スイッチを内蔵するステム部との間隔が増大する形状を有しているフロートスイッチ。」で一致し、以下の点で相違する。 相違点:ステム部のガイド面(ガイドパイプ)と直接対向する磁性フロートの面、すなわち磁性フロートの内面について、 本願補正発明では、磁性フロートの内面の全ての面について、その間隔が増大する形状としているのに対し、引用例記載の発明1では、リブ9が設けられていることからリブ9がある部分についてはその間隔が一定であるものの、それ以外の内面については全て、下方端部に向かって増大する形状となっている点。 (iii)当審の判断 上記相違点について検討する。 本願補正発明において、ステム部のガイド面(ガイドパイプ)と対向する磁性フロートの面を下方端部に向かってその間隔が増大する形状としたのは、(イ)ステム部と磁性フロートの接触面積を小さくし、(ロ)フロート内面を円錐状として流体抵抗を小さくし、ひいては液面の上下動に応じて磁性フロートの追従性・応答性の向上を図ったもの(本願明細書の発明の詳細な説明段落【0036】)である。 一方、引用例記載の発明1において、ガイドパイプ2(ステム部のガイド面)に対向するフロート面の形状を、リブを設け、かつ、下方端部に向かってガイドパイプ2との間隔を増大するように円錐状としたのは、(イ)ガイドパイプに沿って摺動する部分をフロートに設けられた4片のリブとすることでその接触面積を小さくし(前記(i)(d))、(ロ)フロート内面を円錐状として流体抵抗を小さくし(前記(i)(c))、ひいては液面の上下動に対してフロートの追随性・応答性の向上を図ったものであり、両者の作用は共通している。 そして、リブを設けたことと、フロート内面を円錐形状としたこととは、上記したように互いにその作用効果を異にし、また、リブを設けなくともそもそもフロートの内面は円錐形状に形成できるのである。 引用例1に記載のフロートスイッチはガイドパイプとフロートとの接触面積を小さくすることを意図しているから、これを更に小さくしようとするために、リブをもなくそうとすることは自然な考え方であり、事実、この種のフロートスイッチにおいて、リブを設けることなくその内面を円錐状としたフロートを用いることは周知な技術(例えば実願平4-32277号(実開平5-92655号公報)のCD-ROM:特に図2に示された、フロートの内面をテーパ状にした点を参照のこと、または、実願昭58-182371号(実開昭60-90628号公報)のマイクロフィルム:特に第2図に示された、フロートの内面を上端、下端に向かって漸次大径となるように湾曲した断面形状に形成した点を参照のこと)であるから、引用例記載の発明1においてリブをなくすことにより、本願補正発明のように、フロートの、ステム部のガイド面と直接対向する全ての面について、その間隔が増大する形状とすることは当業者ならば容易に推考し得たことである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例記載の発明1及び周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。 なお、審判請求人は審判請求の理由において、引用例1のフロートにはガイドパイプに沿った円筒部があるため、液面が傾いたときはフロートの動作摩擦抵抗が増大するから、追従性、応答性の向上は期待できない旨主張しているが、引用例1のフロートは上記で説示したように、その内面の形状を円錐状とするとともに、内面にリブ9を4片設けたもの(引用例1の図5、図6(水平断面図)にこの点が見て取れる)であり、ガイドパイプに沿った円筒部は存在しないから、請求人の主張は妥当でない。 したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 以上のとおり、本願補正発明は独立特許要件を欠くものであるが、念のために当審で発見した引用例に基づいてこの点をさらに検討しておく。 [検討その2] (i)引用例記載の発明・事項 本願出願前に頒布された刊行物である実願平4-32277号(実開平5-92655号公報)のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)は、液面レベルセンサ(考案の名称)に関するものであり、次の事項が図面とともに記載されている。 (a)「被計測液体の貯蔵槽内部に立設された柱状体と、孔があけられその孔がこの柱状体に挿通され磁石が装着され被計測液体に浮くフロートと、前記柱状体の内部に配置され前記磁石に感応する電磁的手段とを備えた液面レベルセンサにおいて、前記フロートにあけられた孔の径が、前記磁石が装着されたフロート下部近傍で大きく前記磁石から離れた部分で小さく設定されたことを特徴とする液面レベルセンサ。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1) (b)「【作用】柱状体に挿通するようにフロートにあけられた孔の径が、磁石が装着された下端部では大きく設定され、磁石から離れた上端部では小さく設定されていることから、壁面が下方に拡がりをもつテーパ面で形成される。・・・。」(段落【0006】) (c)「柱状体3の内部には、図2に示すように電磁的手段6を構成するリードスイッチ6aが設けられる。」(段落【0009】) (d)「・・・これらの被計測液体1は常時補充管路2aから所定の機器に補充され、その都度液面のレベルが下降する。この液面の下降に伴ってフロート5が下降し、液面が最小貯蔵量を示すレベルに達したときに、フロート5に内蔵された磁石4が柱状体3に内設されたリードスイッチ6aを動作させ、電気信号を送出して図外の表示器に被計測液体1の補給を指示する。 この補給指示にしたがって貯蔵槽2の上部に設けられた補給口2bから被計測液体1が補給されると、フロート5は液面とともに上昇し、磁石4がリードスイッチ6aの動作を解除して・・・。」(段落【0011】?【0012】) 以上の記載(a)ないし(d)及び図1、図2から、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。 「液面の変動に応じて上下動する磁石4を内蔵したフロート5と、このフロート5の上下動をガイドし、該磁石4を内蔵したフロート5の接近を検出して接点を開閉するリードスイッチ6aを内蔵する柱状体3とを有する液面レベルセンサにおいて、該柱状体3を挿通するように該フロート5にあけられた孔の径を、下端部で大きく、上端部で小さくし、孔の内面を下方に広がりを持つテーパ面で形成した液面レベルセンサ。」(以下、「引用例記載の発明2」という。) (ii)対比・当審の判断 本願補正発明と引用例記載の発明2とを対比する。 引用例記載の発明2における、「リードスイッチ6a」、「柱状体3」は、本願補正発明の、「磁気感応スイッチ」、「ステム部」にそれぞれ相当する。 また、前記[検討その1]の(ii)対比、で説示したことと同じ理由により、引用例記載の発明2における「磁石4を内蔵したフロート5」は、本願補正発明における「磁気を帯びた磁性フロート」に相当する。 また、引用例記載の発明2における、「該柱状体3を挿通するように該フロート5にあけられた孔の径を、下端部で大きく、上端部で小さくし、孔の内面を下方に広がりを持つテーパ面で形成した」ことは、本願補正発明の「前記磁性フロートの前記ステム部のガイド部と直接対向する全ての面が、下方端部へ向かって前記磁気感応スイッチを内蔵するステム部との間隔が増大する形状を有する」ことに相当することも明らかである。 してみると、本願補正発明は引用例記載の発明2と実質的に異なるところがない。 したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明2と同一であるから、特許法29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上、検討その1、検討その2で検討したとおり、いずれを引用例とした場合も、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成17年11月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項5(補正後の請求項2に対応)に係る発明は次のとおりである。 「液面の変動に応じて上下動する磁気を帯びた磁性フロートと、この磁性フロートの上下動をガイドし、前記検出用磁性フロートの接近を検出して接点を開閉する磁気感応スイッチを内蔵するステム部とを有するフロートスイッチに於いて、前記磁性フロートの前記ステム部と対向する面が下方端部へ向かって前記磁気感応スイッチを内蔵するステム部との間隔が増大する形状を有していることを特徴とするフロートスイッチ。」(以下、「本願発明」という。) (1)引用例記載の発明・事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1に記載された発明・事項は、前記2.(2)[検討その1](i)引用例記載の発明・事項、に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明と上記引用例記載の発明1とを対比する。 前記2.(2)[検討その1](ii)対比、で説示したように、引用例記載の発明1における「リードスイッチ1」、「ガイドパイプ2」、「マグネット4を内蔵したフロート3」は、本願補正発明の「磁気感応スイッチ」、「ステム部」、「磁気を帯びた磁性フロート」にそれぞれ相当する。 してみると引用例記載の発明1は、本願発明の要旨である「液面の変動に応じて上下動する磁気を帯びた磁性フロートと、この磁性フロートの上下動をガイドし、前記検出用磁性フロートの接近を検出して接点を開閉する磁気感応スイッチを内蔵するステム部とを有するフロートスイッチに於いて、前記磁性フロートの前記ステム部のガイド部と対向する面が、下方端部へ向かって前記磁気感応スイッチを内蔵するステム部との間隔が増大する形状を有しているフロートスイッチ。」の構成を備えているといえる。 しかも、フロートスイッチとしての追従性・応答性の向上を図るべく、フロートとステム部のガイド面との接触面積を小さくし、また、流体抵抗を小さくするという課題も両者で共通している。 したがって、本願発明は、引用例記載の発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-22 |
結審通知日 | 2007-11-28 |
審決日 | 2007-12-12 |
出願番号 | 特願2001-286229(P2001-286229) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01F)
P 1 8・ 121- Z (G01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 昭次、下中 義之、鈴野 幹夫 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
岡田 卓弥 中村 直行 |
発明の名称 | フロートスイッチ |