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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1171873
審判番号 不服2004-24931  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-06 
確定日 2008-01-28 
事件の表示 特願2001-537303「情報伝達システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月17日国際公開、WO01/35690〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は、平成12年11月9日(優先権主張平成11年11月9日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成16年10月28日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年12月6日に拒絶査定不服審判が請求されると共に同年12月28日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
補正却下の決定の結論

平成16年12月28日付けの手続補正を却下する。

理由
1.新規事項
本件補正により、特許請求の範囲の請求項14は、次のように補正された。

【請求項14】
予め付与されたユーザの個人識別情報を発信する端末と、
上記端末から発信された上記個人識別情報を受信し、当該受信した個人識別情報を管理部に通知する受信手段と、
情報発信源から発信される伝達情報、当該伝達情報を伝達すべき上記ユーザの個人識別情報及び上記ユーザの位置情報を記憶してなる第1の管理データによって上記伝達情報の伝達先を指定管理すると共に、上記受信手段が上記個人識別情報を受信したとき当該ユーザの個人識別情報及び位置情報を記憶してなる第2の管理データによってアクセス経路を管理する管理手段と
を具え、
上記管理手段は、予め上記第1の管理データを記憶した状態において、上記端末から通知された上記第2の管理データを記憶したとき、当該第2の管理データの位置情報が上記第1の管理データの位置情報と一致すれば上記第2の管理情報の個人識別情報をもつ上記ユーザの端末に上記第1の管理データの上記伝達情報を伝達する
ことを特徴とする情報伝達システム。

本件補正は、請求項14の「管理手段」を、「情報発信源から発信される伝達情報、当該伝達情報を伝達すべき上記ユーザの個人識別情報及び上記ユーザの位置情報を記憶してなる第1の管理データによって上記伝達情報の伝達先を指定管理すると共に、・・・を管理する管理手段」にする補正を含むものである。

そこで、この補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか(特許法第17条の2第3項の規定に適合するか)について検討をする。

審判請求書の「〔3〕本願発明が特許されるべき理由 2.補正の根拠」で、「平成16年12月28日(提出日)付手続補正書によって補正した特許請求の範囲の記載は、主として、本願図11及び図12に関連する本願明細書の「(7-4)情報伝達部5の管理部5Bにおける第3の通信処理手順」及び「(8)本実施の動作及び効果」の記載に基づくものである。」と説明しているが、これらには、「このときCPU60は、予め所定のIDを有するユーザ宛に情報発信源4から与えられた情報を第1のハードディスク装置67のデータベースに登録している場合、ステップSP43に進んで受信部5Aから通知されたユーザデータD1に基づくユーザのIDと、当該情報発信源4から指定されたユーザのIDとを照合し、これらが一致したときのみこの情報発信源4から与えられた情報を対象となるユーザに伝達して続くステップSP44に進む。」(当初明細書第21頁第19-24行)という記載があるものの、伝達情報を記憶してなる第1の管理データ(第1のハードディスク装置67に登録された情報発信源4から与えられた情報)が「ユーザの位置情報を記憶」することは記載されていない。
また、当初明細書等には、「またCPU60は、情報発信源4から供給される各種情報S1を通信制御部63及びバス70を順次介して第1のハードディスク装置67に取り込む。この第1のハードディスク装置67には、情報発信源4から供給された各種情報S1に基づいて、当該情報の内容と、その伝達対象として当該情報発信源4により指定されるユーザのIDとが伝達情報のデータベースとして登録されている。」(当初明細書第15頁第10-14行)という記載があるものの、第1の管理データが「ユーザの位置情報を記憶」することは記載されていない。

そして、第1の管理データが「ユーザの位置情報を記憶」することは、当初明細書等の記載から自明な事項ともいえない。

したがって、当該手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定ににより却下すべきものである。

2.独立特許要件
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。

【請求項1】
ユーザの個人識別情報を発信する複数の端末と、
所定の通信路を介して外部と通信を行う通信機能を有し、上記端末から発信された上記個人識別情報を受信する通信手段と、
情報発信源から発信される伝達情報及び当該伝達情報を伝達すべき上記ユーザの個人識別情報を記憶してなる第1の管理データによって上記伝達情報の伝達先を指定管理すると共に、上記通信手段が上記個人識別情報を受信したとき当該通信手段から上記所定の通信路を介して通知される当該個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶してなる第2の管理データによって上記ユーザへのアクセス経路を管理する管理手段と
を具え、
上記管理手段は、予め上記第1の管理データを記憶した状態において、上記端末から通知された上記第2の管理データを記憶したとき、上記第2の管理データの個人識別情報と上記第1の管理データの個人識別情報とを照合し、一致したとき上記第1の管理データの上記伝達情報を当該一致した個人識別情報をもつ上記ユーザの端末に伝達する
ことを特徴とする情報伝達システム。

本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「管理手段」について、「情報発信源から発信される伝達情報及び当該伝達情報を伝達すべき上記ユーザの個人識別情報を記憶してなる第1の管理データによって上記伝達情報の伝達先を指定管理する」、「上記ユーザへのアクセス経路を管理する」及び「予め上記第1の管理データを記憶した状態において、上記端末から通知された上記第2の管理データを記憶したとき、上記第2の管理データの個人識別情報と上記第1の管理データの個人識別情報とを照合し、一致したとき上記第1の管理データの上記伝達情報を当該一致した個人識別情報をもつ上記ユーザの端末に伝達する」と、その管理の内容を限定したものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物1記載の発明
原査定の拒絶の理由において引用された、特開平11-262061号公報には、図面と共に以下の記載がなされている。

【0012】
【発明の実施の形態】以下図面により本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]図1は本発明の第1実施形態に係わる腕装着携帯装置及び通信端末装置を備えた通信システムの電子回路の構成を示すブロック図である。
【0013】この通信システムは、腕時計(身体装着用個人識別ID送信機)10と携帯電話(個人ID受信付通信端末)11とを備えて構成される。腕時計10(身体装着用個人識別ID送信機)には、制御回路12をはじめ、発振器(1)13,時計回路14,操作部15,表示部16,データメモリ17等の時計機能部が設けられる他、個人識別IDメモリ18,通信設定データメモリ19,送信部20が設けられる。
【0014】そして、この腕時計10は、通常の身体装着用の個人の腕時計として機能する他、前記個人識別IDメモリ18に記憶された個人識別IDが、制御回路12から符号器/暗号器21,変調部22を介し、前記送信部20から個人識別ID符号aとして携帯電話11へ送信される。
【0015】携帯電話(個人ID受信付通信端末)11には、制御部23をはじめ、マイク24,スピーカ25,音声コーデック部26,チャネル・コーデック部27,TDMA(time division multiple access) 制御部28,変調器29,復調器30,無線RF送受信部31,操作部32,表示部33,アンテナ部34,対応無線基地局IDメモリ35,端末識別IDメモリ36等の一般的携帯電話に準じた電話機能部が設けられる他、前記腕時計10から送信されて受信部37にて受信された個人識別ID符号aが復調部38,復号器/解号器39を介し前記腕時計10の所有者の個人識別IDとして記憶される受信個人識別IDメモリ40が設けられる。
【0016】そして、この携帯電話11は、当該携帯電話11の端末識別IDに基づき定期的な位置登録処理により得られる対応無線基地局IDに従った無線基地局41を中継した電話通信を行なう際に、発振に伴ない課金対象となる個人の識別及び着信に伴なう呼び出し先となる個人の識別のための情報として、前記端末識別IDと個人識別IDとを組み合わせた情報が使用される。
【0017】すなわち、前記腕時計(身体装着用個人識別ID送信機)10を装着したユーザが前記携帯電話(個人ID受信付通信端末)11を使用した場合には、この携帯電話11による発信/通話処理、あるいは着信/通話処理は、前記ユーザ固有の個人識別ID及び該端末識別IDに基づき行なわれ、例えば発信処理に伴なう課金はこの個人識別IDに対応するユーザ個人に行なわれ、また、着信に伴なう呼び出しは、この個人識別IDを有する端末識別IDの携帯電話11に対し行なわれる。
【0018】図2は前記第1実施形態の通信システムにおける腕時計(身体装着用個人識別ID送信機)10,携帯電話(個人ID受信付通信端末)11の利用状態及び公衆回線網に設定されるデータベースを示す図である。
【0019】図3は前記第1実施形態の通信システムにおける公衆回線網に設定された各データベースの内容を示す図であり、同図(A)は個人/端末対応データベースの内容を示す図、同図(B)は位置登録データベースの内容を示す図、同図(C)は課金データベースの内容を示す図である。
【0020】通信端末(11)とは別筐体の腕時計(10)等、人体に装着使用する機器に、個人識別ID符号を内蔵させ、端末識別用ID符号及び対応基地局ID符号等、端末(11)とネットワーク(43)との対応管理用情報を通信端末(11)側のメモリ(35,36)に記憶させる。
【0021】腕時計型ID送信機(10)及び移動体通信端末(11)には、例えば赤外線光あるいは無線電波によるワイヤレスのデータ符号通信のための送/受信部(20/37)と符号/復号器(21/39)を設け、キー操作等により個人識別ID信号を通信端末(11)へ送信させる。端末(11)側では、受信した個人識別IDと内蔵の端末識別IDとを制御信号にのせて回線接続のための通信を基地局(41)と行なう。
【0022】つまり、ID送信機(10)で個人ID情報を、また端末(11)側でネットワーク接続情報を各々設定し組み合わせて使用し、ネットワーク(43)との通信接続の設定を行なう。
【0023】そして、サービス制御局のシステム側では、ネットワーク(43)に接続した加入者データベース(44,45,46)を、位置登録等の端末(11)と基地局(41)の対応や課金管理に加えて、端末識別IDと個人識別IDとの対応も管理する構成とし、回線接続時には、着信先個人IDに対応する端末識別ID、さらに、端末識別IDに対応する基地局(41)を、前記データベース(44,45)で検索し、該当基地局(41)を介して該当端末(11)に接続して、発着信の回線接続を端末識別IDでなく個人識別IDにより制御する。また、課金処理は、使用端末(11)や端末識別IDに拘らず個人識別IDに対応して管理する。
【0024】図2に示すように、腕時計(個人識別ID送信機J)10を装着した個人識別ID(j)のユーザが、例えば会社の携帯電話(通信端末A)11を使用した場合には、この携帯電話(A)11からの無線基地局(X)41を中継した公衆網43との通信処理は、端末識別ID(a)+個人識別ID(j)に基づき行なわれる。
【0025】この場合、個人識別ID(j)のユーザが使用する携帯電話(通信端末A)11の回線接続先を特定するために、公衆回線網43の個人/端末対応データベース44には、端末識別ID(a)に対して個人識別ID(j)を対応付けたデータが設定され、また、位置登録データベース45には、基地局ID(x)に対して端末識別ID(a)を対応付けたデータが設定される。また、前記携帯電話(通信端末A)11を使用する課金先ユーザを特定するために、課金データベース46には、個人識別ID(j)に対しその加入者名と課金情報とを対応付けたデータが設定される。

以上の記載により、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されていると認められる。

腕時計10、携帯電話11,基地局41、公衆回線網43、個人/端末対応データベース44、位置登録データベース45を備える通信システムであって、
携帯電話端末(11)では、腕時計10から受信した個人識別IDと内蔵の端末識別IDとを制御信号にのせて回線接続のための通信を基地局(41)と行ない、
腕時計(個人識別ID送信機J)10を装着した個人識別ID(j)のユーザが、例えば会社の携帯電話(通信端末A)11を使用した場合には、個人識別ID(j)のユーザが使用する携帯電話(通信端末A)11の回線接続先を特定するために、公衆回線網43の個人/端末対応データベース44には、端末識別ID(a)に対して個人識別ID(j)を対応付けたデータが設定され、また、位置登録データベース45には、基地局(X)41の基地局ID(x)に対して端末識別ID(a)を対応付けたデータが設定され、
回線接続時には、着信先個人IDに対応する端末識別ID、さらに、端末識別IDに対応する基地局(41)を、前記データベース(44,45)で検索し、該当基地局(41)を介して該当端末(11)に接続し、
発着信の回線接続を端末識別IDでなく個人識別IDにより制御する通信システム。

(2)刊行物2記載の発明
特開平9-153891号公報には、図面と共に以下の記載がなされている。

【0088】図18は本発明の第9の実施形態を示すブロック構成図である。この通信装置は、通信網152に接続された通信機器112と、この通信機器112による通信を管理するセンター装置113とを備え、通信機器112には外部携帯記憶媒体111を装着可能な構造となっている。

【0090】・・・通信機器112は、外部携帯記憶媒体111が装着されるカードインタフェース部118と、利用者が通話を行うための通話部119と、通信網152に接続される回線接続インタフェース部120と、利用者がキー入力およびダイヤル操作を行うためのダイヤル部121と、外部携帯記憶媒体111の接続を検出する接続検出部122と、センター装置113にデータを送信するデータ送信部123と、この通信機器112を制御する制御部124と、この通信機器112へ着信する着信アドレスを記憶する機器アドレス記憶部125とを備える。ここで制御部124は、接続検出部122において外部携帯記憶媒体111の接続を検出したとき、その外部携帯記憶媒体111のセンターアドレス記憶部115からセンターアクセス番号を読み出してセンター装置113へ自動発信し、センター装置113が応答すると、データ送信部123を起動し、外部携帯記憶媒体111の個人ID記憶部114に記憶されている個人IDと、通信機器112の機器アドレス記憶部125に記憶された着信アドレスとをセンター装置113へ送信する。
【0091】センター装置113は、通信網152に接続される回線接続インタフェース部128と、伝言ガイダンス、伝言メッセージの聴取および再生を行う通話部129と、制御部130と、通信機器112より送信されたデータを受信するデータ受信部131と、留守モードにおいて発信元に送出する伝言ガイダンスを蓄積する伝言ガイダンス記憶部132と、留守モードにおいて発信元が入力した個人IDごとの伝言メッセージを記録する個人ID別伝言メッセージ記憶部133と、通信機器112でのモード切替操作により設定された個人ID別ごとの現在のモード(在宅/留守)を記憶する個人ID別モード記憶部137と、データ受信部131で受信した個人IDと通信機器112の着信アドレスとを記憶する個人ID別機器アドレス記憶部138とを備える。ここで制御部130は、センター装置113への個人IDに対応する電話番号への着信時、個人ID別モード記憶部137に蓄積されたその個人IDのモードを呼び出し、モードが在宅モードのときは、個人ID別機器アドレス記憶部138に記憶されている着信アドレスを読み出し、該当する通信機器へ着信転送する。また、モードが留守モードのときは、伝言ガイダンス記憶部132より伝言ガイダンスを読み出し、発信元にガイダンスを送出するとともに、入力された発信元の伝言メッセージを個人ID別伝言メッセージ記憶部133に記録する。制御部130はまた、外部携帯記憶媒体111が通信機器112に接続されてセンター装置113への自動発信が行われたとき、データ受信部131で受信した個人IDにより、個人ID別伝言メッセージ記憶部133に記録されたメッセージを自動再生する。

【0117】また、着信者の通信可能な状態で応答ができないときには自動でセンター装置に伝言メッセージを記録することにより、発信者が再度発信を行うことなく着信者に正確に伝言を伝えることができ、着信者にとっては、通信不可能状態であってもセンター装置に伝言メッセージが記録されているので、連絡が確実に伝わり、十分な連絡体制が実現できる。

以上の記載により、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2記載発明」という。)が記載されていると認められる。

受信した個人IDを記憶する個人ID別機器アドレス記憶部138と、発信元が入力した個人IDごとの伝言メッセージを記録する個人ID別伝言メッセージ記憶部133とを有するセンタ装置113における通信サービスであって、
通信機器112が、センター装置113へ自動発信し、個人IDをセンター装置113へ送信すると、センター装置113は、受信した前記個人IDを個人ID別機器アドレス記憶部138に記憶し、受信した前記個人IDにより、個人ID別伝言メッセージ記憶部133に記録されたメッセージを自動再生することにより、
着信者に正確に伝言を伝えることができる通信サービス。

(3)対比
本願補正発明と刊行物1記載発明を対比すると、刊行物1記載発明の「通信システム」は、本願補正発明の「情報伝達システム」に相当する。

刊行物1記載発明において、「個人/端末対応データベース44」、「位置登録データベース45」に、それぞれ、「端末識別ID(a)に対して個人識別ID(j)を対応付けたデータ」、「基地局ID(x)に対して端末識別ID(a)を対応付けたデータ」を設定するにあたり、「個人/端末対応データベース44」及び「位置登録データベース45」が、基地局から端末識別ID、個人識別ID、基地局IDを通知されることは、当業者に明らかである。そして、「基地局41」が、「公衆回線網43」(本願補正発明の「所定の通信路」に相当。)を介して「個人/端末対応データベース44」、「位置登録データベース45」と通信を行う通信機能を有することは、当業者に明らかである。
よって、刊行物1記載発明の腕時計10から受信した個人識別IDと内蔵の端末識別IDとを制御信号にのせて回線接続のための通信を基地局(41)と行う「携帯電話11」、「基地局41」が、それぞれ、本願補正発明の「ユーザの個人識別情報を発信する複数の端末」、「所定の通信路を介して外部と通信を行う通信機能を有し、端末から発信された個人識別情報を受信する通信手段」に相当するといえる。
また、刊行物1記載発明の「個人/端末対応データベース44」及び「位置登録データベース45」は、「回線接続時には、着信先個人IDに対応する端末識別ID、さらに、端末識別IDに対応する基地局(41)を、前記データベース(44,45)で検索し、該当基地局(41)を介して該当端末(11)に接続」するから、ユーザが使用している携帯電話11へ回線接続するために介する基地局41の情報(本願補正発明の「アクセス経路」に相当する。)を管理するものであること、並びに、基地局(41)から公衆回線網(43)を介して通知される個人識別IDを基地局と関連付けて記憶したものと等価であることは、当業者に明らかであるから、本願補正発明の「通信手段から所定の通信路を介して通知される個人識別情報を通信手段と関連付けて記憶してなる第2の管理データによって上記ユーザへのアクセス経路を管理する管理手段」に相当するといえる。

したがって、両者の発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
「ユーザの個人識別情報を発信する複数の端末と、
所定の通信路を介して外部と通信を行う通信機能を有し、上記端末から発信された上記個人識別情報を受信する通信手段と、
上記通信手段から上記所定の通信路を介して通知される当該個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶してなる第2の管理データによって上記ユーザへのアクセス経路を管理する管理手段と
を具える情報伝達システム」である点。

[相違点]
管理手段は、本願補正発明では、「通信手段が個人識別情報を受信したとき」当該通信手段から所定の通信路を介して通知される当該個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶し、「情報発信源から発信される伝達情報及び当該伝達情報を伝達すべきユーザの個人識別情報を記憶してなる第1の管理データによって上記伝達情報の伝達先を指定管理」し、「予め上記第1の管理データを記憶した状態において、上記端末から通知された上記第2の管理データを記憶したとき、上記第2の管理データの個人識別情報と上記第1の管理データの個人識別情報とを照合し、一致したとき上記第1の管理データの上記伝達情報を当該一致した個人識別情報をもつ上記ユーザの端末に伝達する」のに対して、刊行物1記載発明では、そのようなことをしない点。

(4)判断
刊行物1記載発明において、携帯電話端末(11)が「腕時計10から受信した個人識別IDと内蔵の端末識別IDとを制御信号にのせて回線接続のための通信を基地局(41)と」行ったときに、「個人/端末対応データベース44」及び「位置登録データベース45」は設定されるから、通信手段が個人識別情報を受信したとき当該通信手段から所定の通信路を介して通知される当該個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶することは当業者に明らかである。

刊行物2記載発明の「個人ID別伝言メッセージ記憶部133」が記録する、発信元(本願補正発明の「情報発信源」といえる。)の入力した個人ID(本願補正発明の「個人識別情報」といえる。)ごとの伝言メッセージ(本願補正発明の「伝達情報」といえる。)は、発信元の発信した伝言メッセージと、当該伝言メッセージを伝達すべき個人IDとを管理するものであるから、本願補正発明の用語で表現すると、「情報発信源から発信される伝達情報及び当該伝達情報を伝達すべきユーザの個人識別情報を記憶してなる第1の管理データによって上記伝達情報の伝達先を指定管理」したものといえる。

刊行物2記載発明の「通信機器112が、センター装置113へ自動発信し、個人ID(本願補正発明の「個人識別情報」といえる。)をセンター装置113へ送信すると、センター装置113は、受信した前記個人IDを個人ID別機器アドレス記憶部138に記憶し、受信した前記個人IDにより、個人ID別伝言メッセージ記憶部133に記録されたメッセージ(本願補正発明の「第1の管理データ」といえる。)を自動再生することにより、着信者に正確に伝言を伝えることができる通信サービス」は、本願補正発明の用語で表現すると、「予め第1の管理データを記憶した状態において、端末から通知された個人識別情報を記憶したとき、当該記憶した個人識別情報と上記第1の管理データの個人識別情報とを照合し、一致したとき上記第1の管理データの上記伝達情報を当該一致した個人識別情報を持つ上記ユーザの端末に伝達する通信サービス」といえる。

したがって、刊行物1記載発明の情報伝達システムおいて、「個人/端末対応データベース44」及び「位置登録データベース45」(本願補正発明の「管理手段」に相当する。)は、「通信手段が個人識別情報を受信したとき当該通信手段から所定の通信路を介して通知される当該個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶」するようにし、そして、着信者に正確に伝言を伝えるために、刊行物2記載発明の通信サービスを付加して、「情報発信源から発信される伝達情報及び当該伝達情報を伝達すべきユーザの個人識別情報を記憶してなる第1の管理データによって上記伝達情報の伝達先を指定管理」すると共に第2の管理データを管理し、「予め第1の管理データを記憶した状態において、端末から個人識別情報を通知されたとき、上記個人識別情報と上記第1の管理データの個人識別情報とを照合し、一致したとき上記第1の管理データの上記伝達情報を当該一致した個人識別情報を持つ上記ユーザの端末に伝達する」ようにして、本願補正発明のようにすることは当業者が容易に為し得たことである。

そして、審判請求書の「請求の理由 〔3〕本願発明が特許されるべき理由 4.本願発明と引用例との対比」で主張している、本願補正発明の「伝達情報を必要とするユーザだけに伝達情報を確実に伝達できる」という作用効果も、刊行物発明から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明

1.本願発明
平成16年12月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年8月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

【請求項1】
ユーザの個人識別情報を発信する複数の端末と、
所定の通信路を介して外部と通信を行う通信機能を有し、上記端末から発信された上記個人識別情報を受信する通信手段と、
上記通信手段が上記個人識別情報を受信したときに当該通信手段から上記所定の通信路を介して通知される当該個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶し、管理する管理手段と
を具え、
上記管理手段は、情報を発信する情報発信源から指定される上記個人識別情報に基づいて、アクセス可能な上記通信手段を介して上記ユーザに上記情報を発信する
ことを特徴とする情報伝達システム。

2.刊行物1記載の発明
刊行物1には、前記「第2.補正却下の決定 3.請求項1についての検討(独立特許要件) (1)刊行物1記載の発明」で摘記した記載がなされている。

以上の記載により、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されていると認められる。

腕時計10、携帯電話11、基地局41、公衆回線網43、個人/端末対応データベース44を備える通信システムであって、
腕時計10は、個人識別IDメモリ18に記憶された個人識別IDを、制御回路12から符号器/暗号器21,変調部22を介し、送信部20から個人識別ID符号aとして携帯電話11へ送信し、
携帯電話11は、前記腕時計10から受信した個人識別ID符号aと内蔵の端末識別IDとを制御信号にのせて回線接続のための通信を基地局41と行ない、
腕時計(個人識別ID送信機J)10を装着した個人識別ID(j)のユーザが、例えば会社の携帯電話(通信端末A)11を使用した場合には、個人識別ID(j)のユーザが使用する携帯電話(通信端末A)11の回線接続先を特定するために、公衆回線網43の個人/端末対応データベース44には、端末識別ID(a)に対して個人識別ID(j)を対応付けたデータが設定され、
回線接続時には、着信先個人IDに対応する端末識別ID、さらに、端末識別IDに対応する基地局(41)を、前記データベース(44)で検索し、該当基地局(41)を介して該当端末(11)に接続し、
発着信の回線接続を端末識別IDでなく個人識別IDにより制御する通信システム。

3.本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本件発明と刊行物1記載発明を対比すると、刊行物1記載発明の「通信システム」は、本願発明の「情報伝達システム」に相当する。

刊行物1記載発明の個人識別ID(本願発明の「個人識別情報」に相当する。)を送信する「腕時計10」は、本願発明の「ユーザの個人識別情報を発信する複数の端末」に相当する。

刊行物1記載発明において、携帯電話11は、腕時計10から受信した個人識別ID符号aと内蔵の端末識別IDとを制御信号にのせて回線接続のための通信を基地局41と行ない、公衆回線網43の個人/端末対応データベース44に端末識別ID(a)に対して個人識別ID(j)を対応付けたデータが設定されるから、腕時計から発信された個人識別IDを受信する「携帯電話11」は、所定の基地局11と公衆回線網43(本願発明の「所定の通信路」に相当する。)を介して外部と通信を行う通信機能を有することは当業者に明らかで、本願発明の「所定の通信路を介して外部と通信を行う通信機能を有し、上記端末から発信された上記個人識別情報を受信する通信手段」に相当する。

刊行物1記載発明において、「端末識別ID(a)に対して個人識別ID(j)を対応付けたデータが設定される個人/端末対応データベース44」は、携帯電話から所定の基地局と公衆回線網43(本願発明の「所定の通信路」に相当する。)を介して送られてくる個人識別IDと前記携帯電話11(本願発明の「通信手段」に相当する。)を対応づけたデータが設定されることは、当業者に明らかであるから、本願発明の「通信手段から所定の通信路を介して通知される個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶し、管理する管理手段」に相当するといえる。

刊行物1記載発明において、回線接続時、発信元の携帯電話11(本願発明の「情報発信源」に相当する。)から指定された着信先個人IDに基づいて、「着信先個人IDに対応する端末識別IDを、前記データベース(44)で検索し」た、着信先個人が使用可能な(本願発明の「アクセス可能」に相当する。)携帯電話11を介して着信先個人に情報を発信することは、当業者に明らかであるから、本願発明の「情報を発信する情報発信源から指定される上記個人識別情報に基づいて、アクセス可能な上記通信手段を介して上記ユーザに上記情報を発信する」ことに相当するといえる。

したがって、両者の発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
ユーザの個人識別情報を発信する複数の端末と、
所定の通信路を介して外部と通信を行う通信機能を有し、上記端末から発信された上記個人識別情報を受信する通信手段と、
通信手段から上記所定の通信路を介して通知される当該個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶し、管理する管理手段と
を具え、
情報を発信する情報発信源から指定される上記個人識別情報に基づいて、アクセス可能な上記通信手段を介して上記ユーザに上記情報を発信する
ことを特徴とする情報伝達システム。

[相違点]
管理手段における通信手段から所定の通信路を介して通知される個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶することが、本願発明では「通信手段が個人識別情報を受信したときに」行われるのに対して、刊行物1記載発明では、そのようなときに行わない点。

4.判断
刊行物1記載発明において、「個人/端末対応データベース44」は、「携帯電話11が「腕時計10から受信した個人識別ID符号aと内蔵の端末識別IDとを制御信号にのせて回線接続のための通信を基地局41と」行ったときに設定されることは当業者に明らかであるから、通信手段が個人識別情報を受信したときに当該通信手段から所定の通信路を介して通知される当該個人識別情報を当該通信手段と関連付けて記憶し、管理するようにすることは設計事項である。

そして、「携帯する端末から通信手段を介して個人識別情報を通知したユーザに対して、通信手段を介して確実にアクセスすることができ、かくして情報伝達の信頼性を格段的に向上させ得る」(明細書より)という本願発明の作用効果も、刊行物1記載発明から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-29 
結審通知日 2007-11-30 
審決日 2007-12-13 
出願番号 特願2001-537303(P2001-537303)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 健  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 深津 始
和田 志郎
発明の名称 情報伝達システム及び方法  
代理人 田辺 恵基  

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