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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1171887
審判番号 不服2007-3954  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-08 
確定日 2008-01-28 
事件の表示 特願2005-253366「データベース機能向上支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 2日出願公開、特開2006- 59369〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年1月13日に出願した特願平7-19863号の一部を平成11年11月9日に新たな特許出願とした特願平11-318428号の一部を、さらに、平成12年5月22日に新たな特許出願とした特願2000-149535号の一部を、さらに、平成16年6月14日に新たな特許出願とした特願2004-174956号の一部を、さらに、平成17年9月1日に新たな特許出願としたものであって、平成18年12月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年2月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年2月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年2月8日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件出願の分割原出願である特願2004-174956号、の分割原出願である特願2000-149535号についての拒絶査定に対する不服審判の審決取消訴訟が平成17年(行ケ)10330号として知的財産高等裁判所に係属し、平成17年7月19日に判決言渡(以下、この判決を「10330判決」という)があり、また、その分割原出願である特願平11-318428号についての異議決定取消訴訟が平成17年(行ケ)10849号として知的財産高等裁判所に係属し、平成18年11月8日に判決言渡(以下、この判決を「10849判決」という)があり、また、その分割原出願である特願平7-19863号についての審決取消が平成17年(行ケ)10850号として知的財産高等裁判所に係属し、平成18年11月8日に判決言渡(以下、この判決を「10850判決」という)があったので、これら判決が本件の審判に拘束力を及ぼすことはないが、類似する技術内容及び同一の証拠を採用していることから、本件においてもこれら判決の趣旨を踏まえて審理する。

(2)特許請求の範囲の請求項1は、補正前には、
「地図,設計図,各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として、予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステムにおけるデータベース機能向上支援装置であって、
利用者が所有する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを入力し、前記文字情報群内の所望の文字情報を、画面上に表示された前記図形の画像上にて利用者によって指定された当該対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして情報記憶部に登録する文字情報登録手段と、前記既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを入力し、各文字情報を検索キーとして前記情報記憶部に登録された文字情報群を検索し、検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での各対象物の位置を求める画像位置検索手段と、前記画像位置検索手段により求めた当該対象物の位置を含む図形の画像を表示すると共に、前記登録された文字情報を前記当該対象物と関連付けて表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とするデータベース機能向上支援装置。」であったものが、
補正後には、「地図,設計図,各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として、予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステムにおけるデータベース機能向上支援装置であって、
前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを直接的に入力し、前記文字情報群内の所望の文字情報を、画面上に表示された前記図形の画像上にて利用者によって指定された当該対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして情報記憶部に登録する文字情報登録手段と、前記ファイルを入力し、各文字情報を検索キーとして前記情報記憶部に登録された文字情報群を自動検索し、前記自動検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での各対象物の位置を求める画像位置検索手段と、前記画像位置検索手段により求めた当該対象物の位置を含む図形の画像を表示すると共に、前記登録された文字情報を前記当該対象物と関連付けて表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とするデータベース機能向上支援装置。」となった。

(3)発明の詳細な説明の段落【0030】は、補正前には、
「図10は、本発明における文字情報の登録方法の第2の例を説明するための図である。画像上の該当の場所に関連する関連情報を入力する形態としては、前述のステップS14において第1の例として説明したように、関連情報をキーボード等から直接入力する形態の他に、図1に示したように入力装置1を介して既存データベースDBから関連情報を入力する形態がある。例えば、図10(A)に示すような、データ(文字情報群)が格納された既存データベースD1があり、同図において、それぞれ“KEYA”?“KEYE”が、画像位置の関連情報となる文字情報であると仮定する。この場合は、先ず利用者は、既存データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分KEYA,KEYB,……,KEYEだけを抽出し、例えば同図(B)に示すように、改行データを区分情報としてテキストファイルTX1に出力する。文字情報登録手段32では、テキストファイルTX1を入力し、前述のステップS15で説明したように該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない、同図(C)に示すように、文字情報を文字情報記憶部42に登録する。なお、利用者により登録指示がされ、図形情報との対応付けが行われた文字情報(図10(C)の例では“KEYA”?“KEYE”)は、図8に示したように、該当の図形情報に対応する管理コードと共に文字情報記憶部42に登録される。」であったものが、
補正後には、「図10は、本発明における文字情報の第2登録の方法の例を説明するための図である。画像上の該当の場所に関連する関連情報を入力する形態としては、前述のステップS14において第1登録の例として説明したように、関連情報をキーボード等から直接入力する形態の他に、図1に示したように入力装置1を経て既存データベースDBから関連情報を入力する形態がある。例えば、図10(A)に示すような、データ(文字情報群)が格納された既存データベースDBが、表示装置2、中央処理部3、情報記憶部4で構成されるコンピュータシステムの外部にあり、同図において、それぞれ“KEYA”?“KEYE”が、画像位置の関連情報となる文字情報であると仮定する。この場合は、先ず利用者は、データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分KEYA,KEYB,……,KEYEだけを抽出し、例えば同図(B)に示すように、改行データを区分情報としてテキストファイルTX1に出力する。文字情報登録手段32では、テキストファイルTX1を入力し、前述のステップS15で説明したように該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない、同図(C)に示すように、文字情報を文字情報記憶部42に登録する。図1では、既存データベースDBの文字情報群は入力装置1を経て中央処理部3に入力するようになっているが、上記第2登録の例では、上記第1登録の例が入力装置1をキーボードのように操作して文字情報群を中央処理部3に入力するのに対し、既存データベースDBの文字情報群の入力を指示することにより、文字情報群は自動的にかつ直接的に中央処理部3に入力する。
なお、利用者により登録指示がされ、図形情報との対応付けが行なわれた文字情報(図10(C)の例では“KEYA”?“KEYE”)は、図8に示したように、該当の図形情報に対応する管理コードと共に文字情報記憶部42に登録される。」となった。

(4)してみると、補正後の「ファイルを直接的に入力し」とは、補正後の段落0030でいう、「既存データベースDBの文字情報群の入力を指示することにより、文字情報群は自動的にかつ直接的に中央処理部3に入力する。」に基づくものと解される。
一方、補正前の段落0030においては、「先ず利用者は、既存データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分KEYA,KEYB,……,KEYEだけを抽出し、例えば同図(B)に示すように、改行データを区分情報としてテキストファイルTX1に出力する。文字情報登録手段32では、テキストファイルTX1を入力し、前述のステップS15で説明したように該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない、同図(C)に示すように、文字情報を文字情報記憶部42に登録する。」(以下、記載Aともいう)とあるように、利用者が既存データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分だけを抽出し、テキストファイルに出力し、文字情報登録手段が前記テキストファイルを入力することが記載されているのみであって、このことは、利用者がまず検索キーの部分をテキストファイルに出力し、その後、文字情報登録手段が前記テキストファイルを入力するのであって、利用者が既存データベースDBの文字情報群の入力を指示するわけではなく、文字情報群が自動的にかつ直接的に、すなわち、利用者によるテキストファイルへの出力段階を含むことなく、中央処理部3に入力するものでもないから、「既存データベースDBの文字情報群の入力を指示することにより、文字情報群は自動的にかつ直接的に中央処理部3に入力する。」(以下、補正点Aともいう)は、前記記載Aを意味するものとはいえないとともに、利用者が既存データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分だけを抽出し、テキストファイルに出力し、文字情報登録手段が前記テキストファイルを入力すること以外のもの、例えば、利用者によるテキストファイルへの出力段階を含むことなく、中央処理部3に入力するもの(このことは願書に最初に添付した明細書又は図面に記載がない)を含むものとなっているのであって、明細書全体からみても上記補正点Aについて願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつこれらから自明な事項ともいえない。また、上記補正点Aの記載に基づいて、「ファイルを直接的に入力し」ている点について願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつこれらから自明な事項ともいえない。
また、このことに関連して、10850判決においては、「本件明細書(中略)には、「直接的な」「連携」という用語は用いられていない。また、(中略)本件発明1における「既存データベース」と位置付けに関連する本件明細書の記載を検討しても、原告のいう「直接的な連携」の意味が明らかでないし、引用例との基本的な相違があると認められるものでもない。」(同判決第4 2(1))と判示されているように、本件明細書には、「直接的」と補正する根拠となる記載があるとはいえない。
してみると、この手続補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に適合しない。

(5)また、上記補正のうち、「前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベース」についても、10850判決の第4 2(3)に「本件明細書(中略)の上記記載によれば,本件発明1の「既存データベース」とは,利用者特有の情報につき利用者自身が作成した独自のユーザデータベースを含むものであるが,画像情報の検索及び表示を行うコンピュータシステムの「外部」に存在するものに限定する記載はない。したがって,本件発明1が,システム「外部」の既存データベースの存在を不可欠の要素とする原告の主張は,明細書の記載に基づかないものであって採用できない。」と判示されているように、外部に限定する記載が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつこれらから自明な事項ともいえない。
してみると、この手続補正についても、平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に適合しない。

(6)そして、上記補正が新規事項といえず限定的減縮を目的とするものといえたとしても、以下に述べるように、補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が独立して特許を受けることができるものとはいえない。

以下に、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(7)本願補正発明を分節符号AないしEを付加して記載すると以下のとおりである。

A 地図,設計図,各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として、予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステムにおけるデータベース機能向上支援装置であって、
B 前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを直接的に入力し、前記文字情報群内の所望の文字情報を、画面上に表示された前記図形の画像上にて利用者によって指定された当該対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして情報記憶部に登録する文字情報登録手段と、
C 前記ファイルを入力し、各文字情報を検索キーとして前記情報記憶部に登録された文字情報群を自動検索し、前記自動検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での各対象物の位置を求める画像位置検索手段と、
D 前記画像位置検索手段により求めた当該対象物の位置を含む図形の画像を表示すると共に、前記登録された文字情報を前記当該対象物と関連付けて表示する表示制御手段と
E を備えたことを特徴とするデータベース機能向上支援装置。

(8)刊行物
原審拒絶理由で引用された、本願の遡及日前である平成5年4月16日に頒布された「特開平5-94129号公報」(以下、「刊行物1」という)は、「地図情報表示装置」に関するものであって、その公報には図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「本発明は,地図情報表示装置に関し、例えばナビゲーション装置に用いて好適なものである。」(段落【0001】)
イ 「地図情報はCD-ROMに記憶されており、車両の現在位置を含む地図がこのCD-ROMから読み出されてモニタ上に表示される。この表示地図上には車両の現在位置も重ねて表示される。ここで車両の現在位置は、GPS、ビーコン、地磁気検出器などを利用して表示地図上において逐次更新されて行く。ユーザは、モニタを見ることにより、車両の現走行位置をリアルタイムで知ることができる。」(段落【0002】)
ウ 「ユーザは表示地図上において、その施設が存在する位置をカーソルによって設定し、その後その施設の名称などを文字、記号、アルファベットなどで入力することにより、その施設の位置と内容を装置に登録することができる。ナビゲ-ション装置側では、かかるメモ情報の位置および内容を互いに関連付けて装置内のメモリに記憶する。そして、ユーザからの表示指令に応じてこのメモリから所望の施設の位置情報が読み出され、これが識別できるように地図上に表示される。」(段落【0003】)
エ 「かかるメモ情報の表示には、従来、2通りの表示方法が採用されていた。1つは車両の現在位置を中心とした表示方法で、地図表示画面を車両の現在位置を中心とした地図表示画面に切り替え、この画面上にメモ情報を重ね表示する方法である。もう1つはメモ情報の施設の位置を中心とした表示方法で、地図表示画面を施設の位置を中心とした地図表示画面に切り替え、この画面上にメモ情報を重ね表示する方法である。」(段落【0004】)
オ 「メモ情報の登録は以下のようにして行う。上記のように所望領域の地図が表示されている状態において、まず装置本体の入力部7に配されたモード切り替えキーを操作することにより、装置をメモ情報登録モードに設定する。すると表示画面は、図3の右側の画面に示すように、表示されていた画面の中心位置にカーソルが、下部にタッチパネルとして機能するカーソル移動キー(矢印キー)および登録キーが付加された表示画面に切り替わる。ユーザは、かかる画面において、カーソル移動キーを操作することによってカーソルを登録したい施設の位置に移動し、その後、登録キーを操作する。以上の操作によって、登録したい施設の位置が決定される。尚、かかる施設の位置は、地図上における経度、緯度を示す座標情報に換算されて登録される。
以上の操作が終了すると、表示画面は図3の左側の状態に切り替わる。かかる状態においては、表示画面は全てタッチパネルとして機能する。かかる画面において、ユーザはカーソルキー(矢印キー)を操作することによって文字列上における文字を選び、“情報”の位置に施設の内容を示す文字を入力する。ここで、各文字は、カーソルキーによって文字を選んだ後、文字キーを操作することによって入力できる。情報として英数を入力したいときには英数キーを操作し、画面上に文字列に代えて英数列を表示せしめ、この英数列から所望の英数を選ぶことによって行う。このようにして“情報”の入力が終了すると、次にユーザは記号キーを操作し、施設の位置を表示する際の施設の目印となる記号の入力に移る。かかる記号キーを操作すると、“記号”の位置に所定の記号が表示される。ユーザは、かかる記号以外の記号を目印として採用する場合には、カーソルキーの内上下方向のキーを操作し、“記号”の位置に表示される記号を変更する。かかる記号は、装置内のメモリ(図示せず)に記号列情報として記憶されており、上下のカーソルキーの操作によってこの記号列が順方向あるいは逆方向に順番に読み出されて“記号”の位置に順番に表示される。
このようにして“情報”および“記号”の入力が終了すると、ユーザは設定キーを操作する。かかる設定キーの操作に応答してメモ情報の位置、内容および記号を示す各情報が図1における記憶回路4に互いに関連づけて記憶される。かかるメモ情報に関する記憶回路4のメモリマップを図4に示す。同図において、nはメモ情報の登録順序を示す。また座標情報は、前述したように、地図上における経度、緯度を示すものである。」(段落【0010】ないし【0012】、図3,4)
カ 「メモ情報を表示する場合、ユーザはかかるモード変更キーからメモキーを選択して操作する。かかるメモキーの操作に応答して表示画面は、図5の左上の画面、即ちメモ情報のリストを示す画面に切り替わる かかる表示画面は、上述した如くして、図1の記憶回路4に記憶されたメモ情報を読み出すことによって映写される。ここでメモ情報のリストは、記憶回路4に登録された順番に映写される。ユーザはかかるリストから表示したメモ情報を選択しこれを入力する。メモ情報の選択の入力は、上記と同様タッチパネルによって行う。このようにしてメモ情報の指定がなされると、対応するメモ情報の施設位置が地図上に表示される。」(段落【0013】、図5)
キ 「かかるメモ情報の表示について、図2のフローチャートに従って以下に説明する。上述した操作によりユーザがメモ情報を指定すると、まず指定されたメモ情報が記憶回路4から読み出されメモリ5にストアされる(ステップ1)。同時に車両の現在位置がメモリ5にストアされる(ステップ2)。次に、指定されたメモ情報に応じた施設の位置(登録地点)が、メモ情報指定前の表示地図上に存在するか否かが判別され(ステップ3)、もし存在していればこの地図上に車両の現在位置とメモ情報の登録地点が重ねられた画面がモニタ上に表示される(ステップ7)。一方、指定されたメモ情報の登録位置がメモ情報指定前の表示地図上に存在しなければ、現在位置と登録地点の間の距離が算出され(ステップ4)、かかる距離に応じて両位置が同一地図上に表示できるか否かが判別される(ステップ5)。」(段落【0014】、図2)
ク 「ここで、現在位置と登録地点が同一地図上に表示できるか否かは、メモ情報指定前に表示されている地図の縮尺に従って判別する。即ち、かかる縮尺においては、画面上に表示できる2地点間の最大距離は長方形の表示画面上における対角線の距離であるが、現在位置と登録地点の距離がこの対角線の距離を超えていれば、この2地点を同一地図上に表示することはできない。従ってこの場合は、ステップ5においてNOと判別する。かかる場合には登録地点が中心となるような地図に表示画面を変更する(ステップ6b)。一方、現在位置と登録地点の距離が前記対角線の距離を超えていなければ、これら2地点が画面上に表示できるような地図に表示地図を変更する(ステップ6a)。」(段落【0015】、図2)

以上の記載から、刊行物1には、ナビゲーション装置に好適な地図情報表示装置であって、ユーザが地図情報を再生してその施設が存在する位置を、カーソルを使って設定し、それに対応する文字・記号情報等を入力することにより、施設の位置と内容及び施設の目印となる記号を装置に登録すること、メモ情報の指定により、対応するメモ情報の施設位置を地図上に表示する、すなわちメモ情報により検索して対応する施設を地図上に表示すること、及びユーザがメモ情報を入力すると、指定されたメモ情報に応じた施設の位置(登録地点)と現在位置の距離が算出され、その距離が表示画面の対角線の距離より小さいときは、この地図上に車両の現在位置とメモ情報の登録地点が重ねられた画面がモニタ上に表示されること、そして、施設の位置(登録地点)と現在位置との距離が表示画面の対角線の距離より大きいときは、登録地点が中心となるような地図に表示地図を変更すること、(以下、「刊行物発明」という)が記載されていると認められる。

(9)対比・判断

ア 本願補正発明と刊行物発明との対比
(ア) 構成Aについて
「地図,設計図,各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として、予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステムにおけるデータベース機能向上支援装置であって、」について検討する。

刊行物発明は地図情報表示装置に関するもの(前掲2(8)ア)であり、地図の図形の画像情報を処理対象としており、地図情報はCD-ROMに記憶されている(前掲2(8)イ)ことから、刊行物発明は画像情報のデータベースを備えているといえる。
また、刊行物発明では、現在位置と登録地点が同一地図上に表示できない「場合は、ステップ5においてNOと判別する。かかる場合には登録地点が中心となるような地図に表示画面を変更する(ステップ6b)」(前掲2(8)ク)ことから、図形の任意の部分の画像を表示する機能を有していることが理解できる。
以上から、本願補正発明の構成Aについては、「地図の図形の画像情報を処理対象として、予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステム」で刊行物発明と一致し、次の相違が認められる。

(a) 本願補正発明が地図の他に、「設計図,各種構造物の構造図など」の図形を対象としているのに対し、刊行物発明では、地図の場合だけが示されている点。
(b) 本願補正発明が「データベース機能向上支援装置」であるのに対し、刊行物発明には、かかる表現が用いられていない点。

(イ) 構成Bについて
「前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを直接的に入力し、前記文字情報群内の所望の文字情報を、画面上に表示された前記図形の画像上にて利用者によって指定された当該対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして情報記憶部に登録する文字情報登録手段と、」について検討する。

刊行物1には、「ユーザはカーソルキー(矢印キー)を操作することによって文字列上における文字を選び、“情報”の位置に施設の内容を示す文字を入力する。」(段落【0011】)、「このようにして“情報”および“記号”の入力が終了すると、ユーザは設定キーを操作する。かかる設定キーの操作に応答してメモ情報の位置、内容および記号を示す各情報が図1における記憶回路4に互いに関連づけて記憶される。かかるメモ情報に関する記憶回路4のメモリマップを図4に示す。」(段落【0012】)、メモ情報を表示する場合は、「ユーザはかかるリストから表示したメモ情報を選択しこれを入力する。メモ情報の選択の入力は、上記と同様タッチパネルによって行う。このようにしてメモ情報の指定がなされると、対応するメモ情報の施設位置が地図上に表示される。」(段落【0013】)との記載があることから、入力されたメモ情報はテキスト形式の情報であり、「リストから表示したメモ情報を選択しこれを入力する」ことにより「対応するメモ情報の施設位置が地図上に表示される」から、メモ情報は検索キーの役割を果たしていることは当業者には容易に理解できる。
そうすると、本願補正発明の構成Bについては、刊行物発明と「文字情報を、画面上に表示された前記図形の画像上にて利用者によって指定された当該対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして情報記憶部に登録する文字情報登録手段」を備えている点で一致し、次の相違が認められる。

(c) 本願補正発明では、前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを直接的に入力するものであって、前記文字情報群内の所望の文字情報を検索キーとするのに対し、刊行物発明ではカーソルキーによりメモ情報を入力し、そのメモ情報を検索キーとする点。

(ウ)構成Cについて
「前記ファイルを入力し、各文字情報を検索キーとして前記情報記憶部に登録された文字情報群を自動検索し、前記自動検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での各対象物の位置を求める画像位置検索手段と、」について検討する。

刊行物1では、「リストから表示したメモ情報を選択しこれを入力する」ことにより「対応するメモ情報の施設位置が地図上に表示される」(段落【0013】)のであり、「検索」は「選択」も含むものであって、メモ情報を選択して施設の位置を地図上に表示する操作が、メモ情報を検索キーとして特定の施設を検索しているのにほかならない。
このことは、10850判決において、「構成D」、すなわち、「入力された文字情報を検索キーとして前記登録された文字情報群を検索し,検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での当該対象物の位置を求める画像位置検索手段と,」(10850判決、第3 1(2)参照)について、「一般に検索は選択を含むものであって,引用発明においてメモ情報を選択して施設の位置を地図上に表示する操作が,メモ情報を検索キーとして特定の施設を検索しているのにほかならないことは,上記(2)のとおりである。したがって,構成Dについて本件発明1と引用発明とは一致するとした本件審決の認定に誤りはない。」(10850判決、第4 3(3)参照)と判示されているとおりである。
そして、刊行物発明の「記憶回路4」は本願補正発明の「情報記憶部」に対応するということができる(10850判決、第3 3(2)イ(ウ)参照)から、本願補正発明と刊行物発明とは、「文字情報を入力し、各文字情報を検索キーとして前記情報記憶部に登録された文字情報群を検索し、前記検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での各対象物の位置を求める画像位置検索手段」を備えている点で一致し、次の相違点が認められる。

(d)本願補正発明では、文字情報がファイルであって、文字情報群を自動検索するのに対し、刊行物発明は、そのようなものでない点。

(エ)構成Dについて
「前記画像位置検索手段により求めた当該対象物の位置を含む図形の画像を表示すると共に、前記登録された文字情報を前記当該対象物と関連付けて表示する表示制御手段と」について検討する。

刊行物1では、「指定されたメモ情報の登録位置がメモ情報指定前の表示地図上に存在しなければ、現在位置と登録地点の間の距離が算出され(ステップ4)、かかる距離に応じて両位置が同一地図上に表示できるか否かが判別される(ステップ5)。」、そして、「現在位置と登録地点の距離がこの対角線の距離を超えていれば、この2地点を同一地図上に表示することはできない。従ってこの場合は、ステップ5においてNOと判別する。かかる場合には登録地点が中心となるような地図に表示画面を変更する(ステップ6b)。一方、現在位置と登録地点の距離が前記対角線の距離を超えていなければ、これら2地点が画面上に表示できるような地図に表示地図を変更する(ステップ6a)。」ことから、表示領域を調整して対象物を含む図形の画像を表示していることが理解できる。
また、本願補正発明の「検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示」することは、刊行物1においても、「地図表示画面を施設の位置を中心とした地図表示画面に切り替え、この画面上にメモ情報を重ね表示する方法である。」(段落【0004】)とあるように、メモ情報と施設の位置を関連づけて重ね表示していることから、この点は相違点とはいえない。
そうすると、本願補正発明の構成Dは、刊行物発明に示されている構成といえる。

(オ)構成Eについて
「を備えたことを特徴とするデータベース機能向上支援装置。」について検討する。
前記構成Aについて相違点として揚げた「本願補正発明が「データベース機能向上支援装置」(前掲2(5)ア(ア)(b))であるのに対し、刊行物発明には、かかる表現が用いられていない点。」と同じ相違がある。

イ してみると、両者は、
「地図の図形の画像情報を処理対象として、予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステムであって、文字情報を、画面上に表示された前記図形の画像上にて利用者によって指定された当該対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして情報記憶部に登録する文字情報登録手段と、文字情報を入力し、各文字情報を検索キーとして前記情報記憶部に登録された文字情報群を検索し、前記検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での各対象物の位置を求める画像位置検索手段と、前記画像位置検索手段により求めた当該対象物の位置を含む図形の画像を表示すると共に、前記登録された文字情報を前記当該対象物と関連付けて表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とするコンピュータシステム。」である点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。
(a)本願補正発明が地図の他に、「設計図,各種構造物の構造図など」の図形を対象としているのに対し、刊行物発明では、地図の場合だけが示されている点。
(b)本願補正発明が「データベース機能向上支援装置」であるのに対し、刊行物発明には、かかる表現が用いられていない点。
(c)本願補正発明では、前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを直接的に入力するものであって、前記文字情報群内の所望の文字情報を検索キーとするのに対し、刊行物発明ではカーソルキーによりメモ情報を入力し、そのメモ情報を検索キーとする点。
(d)本願補正発明では、文字情報がファイルであって、文字情報群を自動検索するのに対し、刊行物発明は、そのようなものでない点。

ウ 相違点についての検討
(ア)相違点(a)について
本願補正発明の「設計図,各種構造物の構造図など」は、地図と並列に記載され、設計図や構造図に特有の構成は記載されておらず、当業者であれば他の図形に応用できることを単に示しているにとどまり、この点に進歩性があるとはいえない。
請求人は、この点について差違があることを主張しているが、差違は認められるけれども進歩性の判断に影響を及ぼすほどの実質的な差違とはいえない。

(イ)相違点(b)(c)について
「既存データベース」の用語は、請求項1には、「前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを直接的に入力し」との記載がある。
この記載からは「既存データベース」が文字情報を有することは認められるが、データベースが文字情報を有することは当然のことであることから、「既存データベース」の用語の意味するところが明らかでない。
そこで、本件出願当初の明細書をみると、「利用者特有の情報を利用者自身が作成して利用者データベースに格納しておくなど、独自のユーザデータベースを構築していることが多い。」(段落【0006】)とあり、「利用者は、作画して指定した場所に対し、その場所を管理するための任意の文字情報を入力装置1から入力する。入力装置1を介してユーザデータベースDB等から入力された文字情報は、中央処理部3内の文字情報登録手段32によって情報記憶部4内の文字情報記憶部42に登録される。」(段落【0016】)との記載がある。
これらの記載によれば、本願補正発明において「既存データベース」の用語の意味するところは、「利用者が作成した情報を格納したもの」とみることができ、このように解しても他の記載と矛盾することはない。
そこで、刊行物1をみるに、段落【0010】ないし段落【0012】に記載されたメモ情報の登録は、「文字列上における文字を選び、“情報”の位置に施設の内容を示す文字を入力する」ことで、図4に示されるメモリマップのように記憶されることから、引用例は、「利用者が作成した情報を格納したもの」すなわち、データベースを備えており、登録後は、段落【0013】に「ユーザはかかるリストから表示したメモ情報を選択しこれを入力する。メモ情報の選択の入力は、上記と同様タッチパネルによって行う。このようにしてメモ情報の指定がなされると、対応するメモ情報の施設位置が地図上に表示される。」と記載されていることから、リストに表示されるユーザ独自のデータベースが「既存データベース」に対応するとみることができる。
そして、このデータベースの機能を向上するために、刊行物発明においても本願補正発明と同様に文字情報と対象物とを関連付けて表示しているから、相違点(b)は格別なものとはいえない。

そして、外部データベースから情報を直接的に入力することは、例えば特開平1-223600号公報、特開平6-274795号公報にあるように周知技術にすぎない。
すなわち、特開平1-223600号公報には、
「本発明は、(中略)内部または外部メモリとして標準的なデータベースと、外部メモリとしてこれを補完する個性的なデータベースを用意し、どの出発地からも目的地にまでナビゲーションを可能にすると共に、データ更新を比較的容易に行うことができるナビゲーションシステムを提供することを目的とする。」(3頁左下欄8行目ないし15行目)
「本発明においては、第1の外部記憶装置16例えばCDには、その地域の標準的な地図および案内情報のデータを格納し、第2の外部記憶装置17例えばICカードには、前記標準的な地図および案内情報のデータでは補完できない個性的なデータを格納する。具体的には、CDには日本全国或いは世界中の地域毎の主要な地図および案内情報を入力し、ICカードには、その地域の例えばホテル、ガソリンスタンド、レンタカー営業所等を中心とした地図および案内情報を入力する。(中略)また、CD、ICカードにデータを予め入力する代わりに、情報センターにそのデータを用意し、自動車電話等の通信装置により電話回線を介してデータをCPUのRAMまたはICカードに入力するようにしてもよい。」(3頁右下欄10行目ないし4頁左上欄15行目)
「第2図ないし第7図は本発明の車両用ナビゲーションシステムに使用される第1の外部記憶装置(例えばCD)に格納されるデータ構造を示している。
第2図(a)は、比較的広範囲でまとめられた地域名例えば都道府県名リストを示し、例えば県番号01は「愛知県」であり、データとして漢字、ひらがなおよびローマ字の県名、市名リスト格納番地(先頭番地)、市名リストデータ数、代表交差点特徴物番号等を持っている。第2図(b)は、地域名の下位情報である例えば区名或いは市名リストを示し、データとして漢字、ひらがなおよびローマ字の市名、町名リスト格納番地(先頭番地)、町名リストデータ数、代表交差点特徴物番号等を持っている。(中略)このような階層構造のデータを持つことにより、出発地、現在地或いは目的地の入力を県名から町名へと検索可能にし、また、代表交差点や特徴物も県単位、市単位、町単位で設定可能にしている。」(5頁右上欄20行目ないし右下欄3行目)
とあり、検索キーである市名、町名の文字情報が、外部データベースから直接的に入力されることが開示されている。

また、特開平6-274795号公報には、
「図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。本ナビゲーションシステムは、走行する車両等の移動体の現在地を検出して道路地図上に表示するという本来のナビゲーション機能を持つナビゲーションユニット1と、地図データを持つ外部地図データベースユニット2と、交通情報を管理する交通情報管理ユニット3とからなり、ナビゲーションユニット1と外部地図データベースユニット2との間で通信回線4を介してデータの送受信が行われ、外部地図データベースユニット2と交通情報管理ユニット3との間で通信回線5を介してデータの送受信が行われるようになっている。なお、交通情報管理ユニット3は、交通情報を提供している警視庁の交通情報センター等に相当するものであり、基地局として設けられることになる。」(段落【0008】、図1)
「本発明においては、地図データベース21や経路誘導部23等を含む外部地図データベースユニット2をナビゲーションユニット1の外部装置として設け、ナビゲーションユニット1側では現在地及び目的地の各情報を通信回線4を介して外部地図データベースユニット2へ送る一方、外部地図データベースユニット2側では地図データベース21を使って経路誘導部23により経路の演算を行い、その結果をナビゲーションユニット1側に返信するようにしている。」(段落【0016】)
とあり、外部データベースから情報が直接的に入力されることが開示されている。

そして、上記に検討したように、既存のデータベースがユーザ独自のデータベースとして刊行物1に示されている。そして、入力するテキスト形式の情報が、既存のデータベースから抽出したもの、言い換えれば文字情報が既存データベースに格納されていた情報であることは、刊行物1の文字情報も、「メモ情報」と記載されているように利用者のデータベースとして登録することができるものである。

この点に関連して、10330判決では次のとおり判示がなされており、上記当審の判断と齟齬をきたすものではない。
同判決では、刊行物1(判決では引用例1)の段落【0010】ないし段落【0012】を引用し、
「(イ) これらの記載によれば,引用例1記載の発明のメモ情報も,本願発明と同様に,入力装置を用いて入力され,記憶回路に登録して図形情報との対応付けがとられるものであると認められる。
ウ そうであれば、本願発明の「既存データベースとの関連」と引用例1記載の発明の「文字情報の登録」とは、入力装置を用いて入力し、記憶部に登録して図形情報との対応付けをとるという点で一致するものであり、本願発明における文字情報は、単に、既存データベースに格納されていた情報であるというにすぎないから、本願発明と引用例1に記載された発明とが基本的に相違するということはできない。」(同判決第4 1(1)ア(イ)及び(ウ))と判示され、さらに、
「(3) 相違点3について
ア 「既存データベースとの関連」について
(ア) 本願発明の「既存データベースとの関連」と引用例1記載の発明の「文字情報の登録」とは、上記1(1)ウのとおり、本願発明における文字情報が既存データベースに格納されていた情報であることを除き、入力装置を用いて入力し、記憶部に登録して図形情報との対応付けをとるという点で一致する。そして、引用例1記載の発明の文字情報も、「メモ情報」と記載されているように、利用者のデータベースとして登録することができるものであるから、引用例1記載の発明において、画像上において指定された登録したい施設の座標情報を文字情報と対応して登録するときに、既存データベースに記憶されている文字情報を用いて、その文字情報を、対象物の座標情報に対応させて付与した管理コードにより対応付けて登録するようにすることは、当業者が容易に考えるものであるといわなければならない。」(同判決第4 2(3)ア(ア)) と判示されている。

そして、前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを入力する点は、「必要な情報を他のデータベースから抽出したテキスト形式のファイルを一括して貼り付ける構成は設計的事項の域をでない」(10850判決 第4 6(2)、10849判決 第4 4(4)イ参照)と判示されているように、適宜なし得る程度のことであり格別のこととはいえない。

してみれば、既存のデータベースがユーザ独自のデータベースとして刊行物1に示されており、そして、入力するテキスト形式の情報が,既存のデータベースから抽出したもの、言い換えれば文字情報が既存データベースに格納されていた情報であることは、刊行物1の文字情報も、「メモ情報」と記載されているように利用者のデータベースとして登録することができるものであるところ、上記周知技術を採用して、入力するテキスト形式のファイルが、前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを直接的に入力するものとし、前記文字情報群内の所望の文字情報を検索キーとすることは、当業者が容易に推考し得る程度のものといえる。

(ウ)相違点(d)について
上記2.(9)ウ(イ)において検討したように、外部データベースから文字情報を直接入力することは適宜なし得るものといえるところ、例えば、特開平6-250585号公報、特開平6-162115号公報にあるように、文字情報につき検索を自動的に行うことは周知技術である。
すなわち、特開平6-250585号公報には、「ここで、ステップST38の位置座標検索処理について、図9に示した例についてさらに具体的に述べる。図示のように、ステップST33で入力された番号情報が“06”であり、ステップST35で入力された文字列情報が“オオサカシキタク”である場合、検索手段81は位置座標情報記憶手段6からデータを読み出し、図2(b)に示した“06”と一致する第1領域特定情報レコードを同図(a)に示した第1領域特定情報テーブル内から検索する。“06”に一致する第1領域特定情報レコードを取得したならば、対応する第2領域特定情報テーブルのアドレスによって、図2(a)に示した第2領域特定情報テーブルの並びの中から対応する第2領域特定情報テーブルを読み出し、図2(b)に示す“オオサカシキタク”に一致する第2領域特定情報レコードをその第2領域特定情報テーブル内から検索する。“オオサカシキタク”に一致する第2領域特定情報レコードを取得したならば、当該第2領域特定情報レコード内の位置座標情報を取得する。この位置座標情報の具体的内容は、電話市外局番“06”に対応する領域と“オオサカシキタク”に対応する領域の双方に含まれる地域の代表地点の経度および緯度の座標値である。」(6頁9欄段落【0031】、図2,7,9)の記載がある。すなわち、文字情報の検索を行っており、検索が検索手段により自動的に行われていることは自明といえる。
また、特開平6-162115号公報には、「図1は、システムの構成を示す図である。図1において、101は中央処理装置である。102はメニュー、入力装置から入力した文字、地図および建物名等を表示する表示装置である。103は、検索対象建物名等を入力する入力装置である。1は地図の図形情報、建物名、建物の住所等が格納されているデータベースである。2は、当該地区の駅名、区名、町名、代表的な建物名、橋名等の代表的な場所名が格納されているデータベースである。3は類語テーブル、4は漢字アドレステーブル、5は検索名義テーブル、6は建物名義マッチングワークテーブル、7は候補対象マッチング率設定表である。類語テーブル3から候補対象マッチング率設定表7までについては詳細を後述する。
以下、図1の処理概略を説明する。検索範囲特定データベース2の代表的場所名がメニュー形式で表示装置102に表示される。代表的場所名の中から検索対象建物に近いものを選択し、入力装置103から入力する。これにより、検索範囲が代表的場所名を中心とする半径500メートルが標準的に検索範囲となる。次に、入力装置103から検索対象となる建物名を通称等で入力する。中央処理装置101は、類語テーブル3を使い、通称等から具体的ないくつかの検索名義に変換する。次に、検索名義から地図データベース1の検索を検索範囲内において実行する。その際に、漢字アドレステーブル4、検索名義テーブル5、建物名義マッチングワークテーブル6を参照する。検索された地図データベース1の建物名義は、通常複数個となるが、検索名義を構成する文字と地図データベース1の建物名義を構成する文字の一致する割合いがある一定数以上であるものが候補対象となる。文字一致の割合いは、候補対象マッチング率設定表7によって設定される。候補対象となった建物名義は、表示装置102にメニュー形式で表示される。オペレータは、その中から対象とする建物名義の番号を入力装置103から入力する。その結果、指定された建物名義を中心とした地図が表示装置102に表示される。その場合、指定された建物名義は色分けで表示される。」(3頁3欄段落【0010】ないし【0011】、図1)との記載がある。すなわち、文字情報の検索を行っており、検索が中央処理装置により自動的に行われていることは自明といえる。

また、10850判決では、「本件発明1では表示部2aのテキストボックスWaに「ガソリンスタンド」と入力し、コンピュータ(中央処理部3と情報記憶部4)の内部で管理テーブル43を参照して場所P1(ガソリンスタンド)が抽出されるのに対して、引用発明では、本件発明1の管理テーブル43に相当するメモ情報の一覧が画面上に表示され(図5の左上の図)、ユーザが手動でガソリンスタンド(同図の(2)(判決原文では、○のなかに2)の行)を抽出する、という点のみである。
そして、上記相違点は、一連の手順のうちのある部分をコンピュータ内部の自動処理として行うか、画面表示を介した利用者の手作業として行うか、という相違にすぎず、設計事項の域を出ないといわざるを得ない。」(10850判決 第4 3(2)ウ(エ)参照)と判示されていることからして、検索を自動的に行うことは設計事項というべきものともいえる。
してみれば、この相違点は、適宜なし得る程度のことといえる。

(エ)そして、本願補正発明と刊行物発明との相違点を全体としてみても当業者が格別推考力を要した点は認められず、奏する効果も当業者が予測し得ない格別顕著なものということはできない。

(オ)以上のとおりであり、本願補正発明は刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(カ)なお、以下の理由によっても、本件補正発明は独立して特許を受けられないものといえる。
すなわち、本件明細書には、「文字情報(例えば宣伝広告、顧客データや取扱説明)」(段落【0001】)、及び、「利用者の各種データベースの情報を関連付けて付加したり修正したい場合、付加(修正)する手段」(段落【0007】)なる記載があるところ、このうち、「宣伝広告、取扱説明」(以下、「記載事項(ア)」という)、及び、「利用者の各種データベースの情報を関連付けて修正したい場合、修正する手段」(以下、「記載事項(イ)」という)については、本件出願の分割原出願とされている特願2004-174956号(平成16年6月14日出願)の分割原出願とされている特願2000-149535号(平成12年5月22日出願)の出願当初の明細書が補正されて挿入されたものであるところ、当該分割原出願(特願2000-149535号)の分割原出願とされている特願平11-318428号(平成11年11月9日出願、以下「出願A」という)の出願当初明細書には上記記載事項(ア)及び(イ)は記載されていない。してみると、上記分割原出願(特願2000-149535号)は、適法に分割されたものといえないから、本件特許出願の出願日は平成12年5月22日であって、それをさらに遡及することはできない。すると、平成12年5月22日時点において既に公知であるところの、特開平8-194830号公報(平成8年(1996年)7月30日公開、特願平7-19863号(上記出願Aの分割原出願)の特許公開公報)に記載された発明と同一、あるいは、それから当業者が容易に推考し得たものといえるから、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号あるいは第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(10)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に適合するものといえず、あるいは、特許法第29条第1項第3号あるいは第2項の規定により平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものといえるから、いずれにしても、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年2月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成18年4月4日付けで手続補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりの発明(以下、「本願発明」という)と認められる。
「地図、設計図、各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として、予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステムにおけるデータベース機能向上支援装置であって、
利用者が所有する既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを入力し、前記文字情報群内の所望の文字情報を、画面上に表示された前記図形の画像上にて利用者によって指定された当該対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして情報記憶部に登録する文字情報登録手段と、前記既存データベースから抽出した文字情報群を構成要素とするファイルを入力し、各文字情報を検索キーとして前記情報記憶部に登録された文字情報群を検索し、検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での各対象物の位置を求める画像位置検索手段と、前記画像位置検索手段により求めた当該対象物の位置を含む図形の画像を表示すると共に、前記登録された文字情報を前記当該対象物と関連付けて表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とするデータベース機能向上支援装置。」

(1)刊行物
原審拒絶理由で引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「2.(8)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「前記コンピュータシステムの外部に存在する既存データベース」を、「利用者が所有する既存データベース」とし、「入力」について「直接的に」との限定事項を、「検索」について「自動」との限定事項をそれぞれ省いたものである。
そして、10849判決において、「刊行物1発明においても,記憶回路4に記憶された施設のメモ情報のリストは,利用者が保有する情報(コンピュータ上のデータベースとして構成されているものに限らない。)から抽出して一定の秩序のもとに配列したものであるから,利用者が所有するデータベースとみることができる。したがって,刊行物1の記憶回路4に記憶された施設のメモ情報のリストは,本件発明1の既存データベースに相当する機能も有するものと認められる。」(10849判決、第4 4(3)参照)、「本件発明1において,「既存データベース」が他のアプリケーションシステム上で作成・保存されたデータベースを意味していると限定的に解釈したとしても,本件決定が認定した相違点は実質的な相違点であるとはいえない。したがって,本件決定の認定した相違点に係る本件発明1の構成は,当業者が容易に想到し得たものということができる。」(10849判決、第4 4(4)ア参照)と判示されているように、「利用者が所有する既存データベース」は、刊行物1に記載されているか、当業者が容易に想到し得たものといえる。
そうすると、他の点は、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当するものであるから、前記「2.(9)」で検討した点を合わせて考慮すれば、本願発明は、刊行物発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、刊行物発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-05 
結審通知日 2007-10-16 
審決日 2007-12-14 
出願番号 特願2005-253366(P2005-253366)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 561- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋爪 正樹  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 井上 健一
脇岡 剛
発明の名称 データベース機能向上支援装置  
代理人 安形 雄三  

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