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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1172066
審判番号 不服2005-7943  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-28 
確定日 2008-01-30 
事件の表示 特願2001-510538号「積層要素を有する噴射部を具備する針のない注射器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月25日国際公開、WO01/05453、平成15年 2月 4日国内公表、特表2003-504161号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年6月30日(パリ条約による優先権主張1999年7月16日、フランス国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年4月28日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「液体有効成分(7,70)を噴射するための針のない注射器であって、その下流側端部(2,20)の、少なくとも1つの噴射ノズル(50,50′,60′)を有する支持体(3,21)を備えた噴射部(1,10)と、液体有効成分(7,70)と、有効成分を噴射部を通って加圧し押出す推進装置(9)の作用のもとに移動される壁(8)とを具備している針のない注射器であり、前記支持体(3,21)が、それぞれが同じ数のオリフィスを有するプレート(51,61,…,91,51′,71′,91′,52,…,92)が積層された少なくとも1つのハウジング(4,40)を具備し、各プレートの前記オリフィスが積層体を貫通する少なくとも1つのノズル(50,50′,60′)を形成するよう整列されている針のない注射器において、プレートのオリフィスが、連続した展開する断面を有するノズルを作り出すよう簡単で異なる幾何学形状を有していることを特徴とする針のない注射器。」

【2】引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特表平8-509604号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「驚くべきことに、先行技術は、今や無傷の皮膚の中に投与量を制御して、軽薬剤含有粒子を発射する無針注射器手段によって非侵襲性の薬剤投入装置を提供して改良できる真価が認められている。
本発明の広範な特徴に従って無針注射器は、細長い管状ノズルと、最初に前記ノズルの上流側端に近接するノズルを通して流路を閉じる破裂可能の膜と、治療薬の粒子、特に前記膜の近傍に配置された粉末治療薬と、前記膜を裂開するための十分なガス圧力を膜の上流側に作用させるための付勢手段と、粒子が連行される超音速ガス流をノズルを通して生じさせるものとから成る。」(第7頁第17?24行)
(2)「圧力チャンバ25を収容する低部円筒筒部24は、上円筒部10の底部にねじ止めされる。ノズル26は円筒部24の低端部の中にねじ止めされる。ノズル26の上端部と環状リブ27の下側との間に安全かつ密閉され、円筒部24とともに一体に成形され、注入される粒子を含むカプセル28がある。このカプセルはそれぞれノズルとカプセルに凹みをつけて、Oリング29と30によってノズル26とリブ27にシールされる。
図8に示したように、カプセルは、室32の周囲に円錐台の内部円周を有し、注入される粒子を入れる環状リング31を含む。この室の先端は、比較的弱いMylar隔膜33によって、かつ底部では強いMylar隔膜34によって密閉される。」(第19頁末行?第20頁第9行)
(3)「ノズル26を通る流路は、末広部37にスロート36を通り案内する上部先細部35(流れの下流方向)を有する。この先細部はリング31の円錐台内部形状の連続である。」(第20頁第16?18行)
(4)「使用に際して円筒部10の貯蔵器11はスカート15上の供給導管を回転し、かつプランジャ16を押し下げることにより、圧力下でヘリウムのようなガスが充填され、この結果、前記貯蔵器は伸長部部18の周囲の上向流によって充填される。ボタン21が解除されるとき、プランジャ16は伸長部18の下側で作動する供給圧力によって貯蔵器11を密閉するために引き込まれる。
注射器の残りの部分は、・・・(中略)・・・円筒部10にねじ止めされる。
注入を完了するために、スペーサ側板38の広幅端は患者の皮膚に対して押圧され、かつタブ44を引くことにより初めにフォイル43を除去した後で、ボタン21が下げられる。貯蔵器11から解放されたガスが最終的にチャンバ25の中に入り、前記チャンバ内で隔膜33と34とを裂開させるために十分な圧力を作り、かつ患者の皮膚の中に移行される粒子とともにノズル26を通りガスが移動することを可能にする。」(第21頁第5?19行)
(5)「図5は、・・・(中略)・・・第1例の変形態を示す。本質的な違いは、円筒部24がより長いことであり、かつOリング57で円筒部24の内壁に密封されるピストン56を備えている。このピストンは、環状ショルダ58と係合することにより円筒部24に係留される。
この場合チャンバ25は、あらかじめ大気圧以上、たとえば2?4bar、または10barの高さまで可能で、ヘリウムのようなガスを充填することができる。
使用に際してはボタン21は円筒部24内で短い距離で下方にピストン56を押進するために押され、その後貯蔵器11から解放されたガスがピストン56の後から円筒部24に入り、かつ、ピストンとカプセル28との間の圧力がカプセル隔膜を裂開させるのに十分になるまで、チャンバ25内でピストンを下方に運動させるために押進する。」(第22頁第26行?第23頁第10行)
(6)図1および図3には、ノズル26とノズル26がねじ止めされた円筒部24は無針注射器全体の下方側の部分であることが図示されている。
(7)図5にはノズルは上方の狭い部分から下方に向かって連続的に広がる流路を有することが図示されている。

上記記載事項および図示事項を総合すると、引用例1には、
「治療薬の粒子を発射するための無針注射器であって、その低端部の中にノズル26がねじ止めされた円筒部24を備えた下方側の注射器部分と、治療薬の粒子と、治療薬の粒子を下方側の注射器部分を通って移動するのに十分な圧力となるように貯蔵器11から解放されたガスが後から円筒部24に入り押進させられるピストン56とを具備している無針注射器であり、ノズル26は上方の狭い部分から下方に向かって連続的に広がる流路を有する無針注射器。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

【3】対比
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、後者の「発射する」は、前者の「噴射する」に相当しており、以下同様に、「無針注射器」は「針のない注射器」に、「低端部」は「下流側端部」に、「ノズル26がねじ止めされた」は「少なくとも1つの噴射ノズルを有する」に、「円筒部24」は「支持体」に、「下方側の注射器部分」は「噴射部」に、「下方側の注射器部分を通って移動するのに十分な圧力となるように貯蔵器11から解放されたガスが後から円筒部24に入り押進させられるピストン56」は「噴射部を通って加圧し押出す推進装置の作用のもとに移動される壁」に、それぞれ相当している。
また、後者の「治療薬の粒子」と前者の「液体有効成分」とは「有効成分」である点で共通している。
また、後者の「ノズル26は上方の狭い部分から下方に向かって連続的に広がる流路を有する」ということは、ノズル26の断面は、上方の狭い部分から下方に向かって連続した展開する断面を有するといえ、前者の「プレートのオリフィスが、連続した展開する断面を有するノズルを作り出すよう簡単で異なる幾何学形状を有している」とは「噴射ノズルが、連続した展開する断面を有するノズルを作り出すような幾何学形状を有している」点で共通している。

したがって、両者は、
「有効成分を噴射するための針のない注射器であって、その下流側端部の、少なくとも1つの噴射ノズルを有する支持体を備えた噴射部と、有効成分と、有効成分を噴射部を通って加圧し押出す推進装置の作用のもとに移動される壁とを具備している針のない注射器であり、噴射ノズルが、連続した展開する断面を有するノズルを作り出すような幾何学形状を有している針のない注射器」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点(A):噴射される有効成分が、本願発明では、液体有効成分であるのに対して、引用発明では、治療薬の粒子である点。
相違点(B):噴射ノズルが、本願発明では、支持体が、それぞれが同じ数のオリフィスを有するプレートが積層された少なくとも1つのハウジングを具備し、各プレートの前記オリフィスが積層体を貫通する少なくとも1つのノズルを形成するよう整列されており、プレートのオリフィスが、連続した展開する断面を有するノズルを作り出すよう簡単で異なる幾何学形状を有しているのに対して、引用発明では、そのような構成ではない点。

【4】判断
そこで、上記相違点について検討する。
(a)相違点(A)について
有効成分を噴射するための針のない注射器において、噴射する有効成分として液体有効成分を用いることは、米国特許第3788315号明細書(「liquid medication」参照)、米国特許第3802430号明細書(「liquid medicament 15」参照)、特公昭29-7444号公報(「皮下注射液」あるいは「薬液」参照)にも記載されているように周知の事項であり、これを引用発明の有効成分に代えて採用し、上記相違点(A)に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(b)相違点(B)について
それぞれが同じ数のオリフィスを有するプレート等を積層してオリフィスが積層体を貫通する少なくとも1つのノズルを形成するように整列させることは、特開平6-312147号公報、実願昭59-179343号(実開昭61-95451号)のマイクロフィルムにも記載されているように周知の事項であり、これを引用発明に適用して上記相違点(B)に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、本願発明の効果も、引用発明および上記周知の事項から当業者であれば予測できる範囲のものであって、格別なものとはいえない。

【5】むすび
したがって、本願発明は、引用発明および上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-28 
結審通知日 2007-09-04 
審決日 2007-09-18 
出願番号 特願2001-510538(P2001-510538)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 川本 真裕
蓮井 雅之
発明の名称 積層要素を有する噴射部を具備する針のない注射器  
代理人 鶴田 準一  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 樋口 外治  

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