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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1172120
審判番号 不服2006-14509  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-06 
確定日 2008-02-07 
事件の表示 平成 9年特許願第363175号「給水用防鼠タイプフレキシブルホース」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月29日出願公開、特開平11-173468〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年12月14日の出願であって、平成18年5月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月6日に拒絶査定に対する審判が請求されると共に、同年8月7日付で手続補正書が提出されたものである。

2.平成18年8月7日付手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「2層以上よりなるフレキシブルホースであって、最外層を鼠、その他小動物忌避剤入り熱可塑性エラストマー層とし、最内層をポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン及びフッ素樹脂のうちのいずれかとしたことを特徴とする給水用防鼠タイプフレキシブルホース。」と補正された。
なお、上記手続補正書の特許請求の範囲の請求項1には「2層以上よりなるフレキシルホース」と記載されているが、これは「2層以上よりなるフレキシブルホース」の誤りであることが明らかであるので、補正の内容を上記のように認定した。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である最内層の「熱可塑性樹脂」を「ポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン及びフッ素樹脂のうちのいずれか」に限定すると共に、「防鼠タイプフレキシブルホース」の用途を、「給水用」と限定するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-58466号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ネズミ類による咬害を防ぐ防鼠加工されたガス用ゴム管に関する。」

・「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課題を解決すべく種々検討を行った結果、ゴム管材料、好ましくは複合ゴム管タイプの外層樹脂に、カプサイシン類を有効成分としたマイクロカプセル剤を添加することにより、かかる目的を達成し得るとの知見を得、本発明を完成するに至った。」

・「【0009】カプサイシン類はトウガラシの辛味成分として知られ、この辛味がネズミの味覚を刺激して忌避性を示す。カプサイシン類は耐熱性が高く、高温の加工工程でも分解が少ない。有効成分をマイクロカプセル化することにより加工工程での分解・消失を低下することが出来る。また有効成分は強い辛味刺激を有し、直接樹脂に混練する場合には作業時に強い刺激性が問題となるが、マイクロカプセル化によりこの刺激性を軽減することが出来る。更に、カプサイシン類をマイクロカプセルにした場合、辛味および刺激性が抑制され、取り扱い易くなったにもかかわらずネズミ類に対する咬害防止効果は抑制されずに逆に高まることが確認された。これはネズミ類が対象物を齧った時にカプセル膜が破壊され、カプセル内の高濃度のカプサイシン類が強烈な辛味となって刺激し、より効果的に働いたと推察される。外層樹脂中に混練する有効成分量は0.01重量%以上でも防鼠加工をしていない場合と較べると忌避効力を示すが実用的な効力を期待するには0.1重量%以上が好ましい。上限は主として経済性のため2%とするのが好ましい。」

・「【0014】本発明のガス用ゴム管は、例えば図1で示されるように内層1,それを取り囲む接着層(ゴム)2、更に、接着剤3を介して接着層2を取り囲む外層樹脂4からなるが、これに限定されるものではない。このように、好ましくは、本発明では、カプサイシン類は、外層樹脂に添加される。外層樹脂としては、ガス用ゴム管の外層に用いられる任意のものを意味するが、代表的には、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。その中でもポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーは、難燃性、耐候性、耐ガス性、耐屈曲性等ガス用ゴム管として必要な特性をバランス良く有している上、成形温度が比較的低いため好適に使用される。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「内層1、接着層2及び外層樹脂4よりなるゴム管であって、外層樹脂4をカプサイシン類を有効成分としたマイクロカプセル剤が添加されたポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の層とし、内層1をゴム管材料製とした防鼠加工されたガス用ゴム管。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者の「内層1、接着層2、及び外層樹脂4」が前者の「2層以上」に相当し、以下同様に、「ゴム管」が「フレキシブルホース」に、「外層樹脂4」が「最外層」に、「カプサイシン類を有効成分としたマイクロカプセル剤が添加された」が「鼠、その他小動物忌避剤入り」に、「ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の層」が「熱可塑性エラストマー層」に、それぞれ相当している。
また、後者の「防鼠加工されたガス用ゴム管」と前者の「給水用防鼠タイプフレキシブルホース」とは、「流体用防鼠タイプフレキシブルホース」との概念で共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「2層以上よりなるフレキシブルホースであって、最外層を鼠、その他小動物忌避剤入り熱可塑性エラストマー層とした流体用防鼠タイプフレキシブルホース。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明では、「最内層をポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン及びフッ素樹脂のうちのいずれか」としたのに対し、引用発明は、「内層1(「最内層」に相当)をゴム管材料製」としたにすぎない点。
[相違点2]
「防鼠タイプフレキシブルホース」の用途に関し、本願補正発明は「給水用」であるのに対し、引用発明は「ガス用」である点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
ガス用の管に限らず、水用の管であっても鼠の咬害があるため、防鼠という課題は水用の管の分野においても良く知られた課題であるといえる(例えば、実願昭54-18275号(実開昭55-119645号)のマイクロフィルム、実願昭61-102922号(実開昭63-9367号)のマイクロフィルム等参照。)。
また、給水用の管の内層として、ポリエチレンやフッ素系樹脂を用いることは周知技術である(例えば、実願平3-66941号(実開平5-12879号)のCD-ROM、特開平9-126364号公報等参照。)。
そうすると、防鼠という課題の範囲内で、引用発明の防鼠タイプフレキシブルホースを給水用の管として用いることは、当業者であれば適宜試みる程度のことであり、その際、最内層にポリエチレンやフッ素系樹脂を用いることにより、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから、平成18年改正前特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成18年4月13日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載によれば、以下のとおりのものと認められる。
「2層以上よりなるフレキシブルホースであって、最外層を鼠、その他小動物忌避剤入り熱可塑性エラストマー層とし、最内層を熱可塑性樹脂としたことを特徴とする防鼠タイプフレキシブルホース。」
なお、上記手続補正書の特許請求の範囲の請求項1には「2層以上よりなるフレキシルホース」と記載されているが、これは「2層以上よりなるフレキシブルホース」の誤りであることが明らかであるので、本願発明を上記のように認定した。

(1)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.(1)」で検討した本願補正発明から最内層の「熱可塑性樹脂」について「ポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン及びフッ素樹脂のうちのいずれか」との限定を省くと共に、「防鼠タイプフレキシブルホース」について「給水用」との用途限定を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに該事項を特定したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-29 
結審通知日 2007-12-04 
審決日 2007-12-17 
出願番号 特願平9-363175
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 田良島 潔
本庄 亮太郎
発明の名称 給水用防鼠タイプフレキシブルホース  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 西元 勝一  

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