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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D03D
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D03D
管理番号 1172191
審判番号 不服2001-17460  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-01 
確定日 2008-02-06 
事件の表示 平成 4年特許願第 62845号「スマートな外板列織物ファイバ光学系リボンおよびその配列、並びにその包装」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 2月 1日出願公開、特開平 6- 25940〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成4年3月19日(パリ条約による優先権主張1991年3月19日、アメリカ合衆国)に出願され、その願書に添付した明細書又は図面については、平成12年7月24日付け及び平成13年5月7日付けで手続補正がなされ、本件出願は、平成13年6月25日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたもので、上記明細書又は図面についての平成13年10月31日付けで手続補正がなされ、その後、平成17年1月17日付け拒絶理由通知書が発送され、これに対し、上記明細書又は図面についての平成17年7月25日付けで手続補正がなされたものの、該手続補正は、平成19年2月9日付けで補正の却下の決定がなされ、該決定は確定したものである。

2.拒絶理由の内容
平成17年1月17日付け拒絶理由通知書によって通知された拒絶理由には、概要、以下の拒絶理由a及びbが含まれていると認める。

拒絶理由a;本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である実願昭61-152817号(実開昭63-60484号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

拒絶理由b;本件出願は、明細書又は図面の記載が不備のため、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。
そして、拒絶理由bに関して、上記拒絶理由通知書には、下記の記載が認められる。

「(1)・・・(審決注;「・・・」は省略を示す。以下、同様。)。
(2)請求項11?20に記載されている「光電子包装構造体」については、発明の詳細な説明にいわゆる包装材料であって光電子に適用されるようなものについて記載されてもいないし、何を意味したものであるのかが明りょうでない。
(3)・・・。」

ここに「(2)」として示された指摘を、以下、「記載不備2」という。

3.当審の判断

3-1.拒絶理由aについて

3-1-1.本件の発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成13年10月31日付け手続補正後の、願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件明細書等」という。)によれば、その請求項1に記載のとおりのものであって、該請求項の記載は、下記のとおりのものと認める。

「経糸方向に位置決めされた複数の第1ストランドと、
緯糸方向に位置決めされた複数の第2ストランドとを備え、第2ストランドは第1ストランドと共に織られており、
さし込まれて織り込まれた複数の光学繊維を備え、該光学繊維は第1ストランドにより構成されたチャンネルの中に延びるようにひずみなく位置決めされていることを特徴とする織物。」

3-1-2.引用例の発明
引用例には、以下の記載a及びbが認められる。

記載a;「第1の経糸である光ファイバーと第2の経糸である化学繊維とを交互に配列せしめた経糸に対し、ポリエステル繊維を緯糸に用いて交織するに際し、前記光ファイバーは屈曲させることなく平織状となした光ファイバーを用いた織物。」(明細書第1頁の実用新案登録請求の範囲)
記載b;「第1図は、この考案に係る光ファイバーを用いた織物の一実施例を示す断面図であり、1は、第1の経糸として用いた芯材がポリメチルメタクリレート、鞘材が含フッソ系樹脂からなる外径1000μmのプラスチック系光ファイバー、2は、第2の経糸として用いたポリエステル繊維からなる450デニールの経糸、3は、ポリエステル繊維の中間配向未延伸糸(複屈折率Δn=35×10^(-3))からなる太さ300デニールの緯糸であり、緯織密度25本/吋の平織組織で製織されている。
該織物を温度70℃の熱湯に浸漬したところ、熱収縮し、第1の経糸である光ファイバー1が屈曲しないで相互に密接した光透過性の良い光ファイバーを用いた織物が得られた。」(明細書5頁11行?6頁5行)及び第1図

そして、記載aによれば、引用例には、「第1の経糸である光ファイバーと第2の経糸である化学繊維とを交互に配列せしめた経糸に対し、ポリエステル繊維を緯糸に用いて交織するに際し、前記光ファイバーは屈曲させることなく平織状となした光ファイバーを用いた織物」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
3-1-3.対比判断
引用発明において、交互に配列された第1の経糸や第2の経糸、更には、これらと交織された緯糸が、複数、備えられているものであることは普通に理解できるものであり、また、第1の経糸である光ファイバーは、屈曲させることなく交織されていることから、ひずみなく位置決めされているものといえる。
また、引用発明において、第1の経糸である光ファイバーは、第2の経糸と交互に配列されているものであるから、該光ファイバーは、第2の経糸により構成された通路、即ち、チャンネルの中に延びるように位置決めされているものといえ、このことは、引用発明を説明する記載であることが明らかな記載bに、第2の経糸2間に形成されている通路、即ち、チャンネルの中に延びるようにプラスチック系光ファイバー1が位置決めされていることが記載されていることに符合するものである。
そこで、本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「光ファイバー」、「第2の経糸」及び「緯糸」は、本件発明の「光学繊維」、「第1ストランド」及び「第2ストランド」に相当し、両者に相違する点は見当たらない。
してみると、本件発明は、引用発明であるといえる。

3-1-4.まとめ
本件発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、拒絶理由aは、妥当である。

3-2.拒絶理由bについて

3-2-1.特許請求の範囲の記載
本件明細書等の特許請求の範囲の請求項11?20は、以下のとおりに記載されていると認める。

「【請求項11】 経糸方向に位置決めされた複数の第1ストランドと、
緯糸方向に位置決めされた複数の第2ストランドとを、第1部分および第2部分の両方に備え、第2ストランドは第1ストランドと共に織られており、
折り込まれた複数の光学繊維を第1部分のみに備え、光学繊維は第1ストランドにより構成されたチャンネルの中に延びるようにひずみなく位置決めされていることを特徴とする光電子包装構造体。
【請求項12】 第2部分に取付けられた少なくとも1つの光電子部品を更に備えており、光学繊維は少なくとも1つの光電子備品に接続するように第1部分から延びていることを特徴とする請求項11に記載の光電子包装構造体。
【請求項13】 第1ストランドの相隣なる対が構造体のチャンネルを構成し、
各チャンネルに少なくとも1本の光学繊維が位置決めされていることを特徴とする請求項12に記載の光電子包装構造体。
【請求項14】 各チャンネルに一対の光学繊維が位置決めされていることを特徴とする請求項13に記載の光電子包装構造体。
【請求項15】 織物が上面および下面を有しており、更にストランドおよび光学繊維を適所に固定するために上面および下面の両面にカプセル化材料の被覆を備えていることを特徴とする請求項12に記載の光電子包装構造体。
【請求項16】 カプセル化材料が剛性組織を構成することを特徴とする請求項15に記載の光電子包装構造体。
【請求項17】 カプセル化材料がエポキシよりなることを特徴とする請求項16に記載の光電子包装構造体。
【請求項18】 カプセル化材料が可撓性組織を構成することを特徴とする請求項17に記載の光電子包装構造体。
【請求項19】 カプセル化材料がゴム含有セメントよりなることを特徴とする請求項18に記載の光電子包装構造体。
【請求項20】 第1および第2ストランドの少なくとも一方がファイバガラスグラファイト、およびシリコンカーバイドの群から選択された材料よりなることを特徴とする請求項19に記載の光電子包装構造体。」

3-2-2.記載不備2について
特許請求の範囲の請求項11?20には、先に「3-2-1」で認定した、これら請求項の記載によれば、光電子包装構造体なる記載が認められるが、光電子包装構造体なるもの技術的内容が、本件明細書等において不明であるから、同範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した請求項に区分してあることに適合しているとはいえないし、また、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることに適合しているともいえない。
以下に、詳述する。

1)光電子包装構造体とは、その記載からして、一応、光電子を包装する構造体と解せる。
そして、請求項11?20に記載の光電子包装構造体なるものは、大凡、複数の第1ストランドと複数の第2ストランドとによって織られたものにおいて、光学繊維が第1ストランドにより構成されたチャンネルの中に位置決めされているもので、要するに、織物構造物であることを、その構成として有するものであるが、織物構造物が、光電子、即ち、素粒子の1種である光電子を包装する旨の記載は、技術常識からして、意味を成していない。
してみると、請求項11?20の記載は不明確であって、これら請求項は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しているとはいえない。

2)また、発明の詳細な説明には、光電子包装構造体について、以下の記載が認められる。

「本発明の他の実施例では、光電子包装構造体は2つの部分を有している。両部分において、複数の第1ストランドが経糸方向に位置決めされており、複数の第2ストランドが第1ストランドと織り合わされて緯糸方向に位置決めされている。しかしながら、構造体の第1部分のみにおいて、複数の光学繊維がひずみを持たず且つ第1ストランドにより構成されたチャンネルの中に延びるように構造体に織り込まれている。光学繊維は構造体の第1部分から延びており、構造体の第2部分に取付けられた部品、および/または元の織り組織の平面内または外の他の構造体に繋がっている。」(段落【0011】)

そこで、この記載を見ると、ここに記載の光電子包装構造体なるものが、如何なる態様で、光電子を包装しているかについては、明らかにされておらず、本件明細書等の他の記載を見ても、織物構造物であることを、その構成として有するものが、光電子を包装しているとの態様を具体的に示す記載は見当たらない。
してみると、光電子包装構造体なる記載に関し、請求項11?20の記載は、発明の詳細な説明を見ても、不明確であるから、これら請求項は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しているとはいえない。
また、先に「1)」で述べたように、光電子包装構造体とは、一応、光電子を包装する構造体と解せるが、そのように解せたとしても、請求項11?20に記載の光電子包装構造体については、発明の詳細な説明に実質的には記載がないのであって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることに適合しているともいえない。

3-2-3.まとめ
記載不備2には理由があり、本件出願は、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていないものであって、拒絶理由bは、妥当である。

4.むすび
拒絶理由a及びbは、妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-05 
結審通知日 2007-09-10 
審決日 2007-09-21 
出願番号 特願平4-62845
審決分類 P 1 8・ 534- WZ (D03D)
P 1 8・ 113- WZ (D03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 真々田 忠博渕野 留香  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 石井 淑久
鴨野 研一
発明の名称 スマートな外板列織物ファイバ光学系リボンおよびその配列、並びにその包装  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 今城 俊夫  
代理人 小川 信夫  
代理人 村社 厚夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  
代理人 竹内 英人  

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