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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09D |
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管理番号 | 1172289 |
審判番号 | 不服2004-22227 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-10-28 |
確定日 | 2008-02-07 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第224381号「乗務員運用計画支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月20日出願公開、特開平 7- 77936〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成5年9月9日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、平成19年10月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面からみて、本願の特許請求の範囲請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりの次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 交通機関における各列車等の各運行に各乗務員を割り付ける割付業務を支援する乗務員運用計画支援装置において、 各運行および乗務員に課される各種条件を必ず満たさなければならない条件および満たした方がよい条件に分けて記憶する記憶部と、 前記記憶部から各種条件を読み出して、前記満たさなければならない各種条件を満足する運行を選定し、選定した運行を前記満たした方がよい条件に対応した各種評価関数で評価して前記各種条件を満足する運行を選択し、割り付け候補として提示する候補選定部と、 ある乗務員に割り付け済の運行と交換可能条件を満たす他の乗務員に割り付け済の運行を検索して、検索結果を提示する検索部と、 前記検索結果の中から選択されたものと前記ある乗務員に割り付け済の運行とを交換する調整部とを備えた乗務員運用計画支援装置。 【請求項2】 割付業務における割り付け対象としている乗務員または全乗務員について、割り付けの際の評価項目となるデータを提示する条件提示部を備えたことを特徴とする請求項1記載の乗務員運用計画支援装置。 【請求項3】 各運行および乗務員に課されている各種条件が変更されると、変更された条件の影響を受ける割り付け済データを、変更された前記各種条件に合わせて変更するデータ変更部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗務員運用計画支援装置。 【請求項4】 運行ダイヤが変更されると、変更された運行ダイヤの影響を受ける割り付け済データを、変更された前記運行ダイヤに合わせて変更するデータ変更部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の乗務員運用計画支援装置。 【請求項5】 各乗務員の負荷を表示する負荷表示部を備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の乗務員運用計画支援装置。 【請求項6】 前記検索部が検索した前記検索結果のそれぞれについて、前記ある乗務員に割り付け済の運行と交換した場合の前記ある乗務員の乗務系統を作成者により入力された調整目的に適合するかどうかを評価し、前記検索結果のそれぞれを前記調整目的に適合するものかどうかが分かるように表示することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の乗務員運用計画支援装置。」 以下、本願請求項1に係る発明を「本願発明」という。 第2 当審における拒絶理由の骨子 当審における平成19年8月22日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由は次のとおりである。 「1)本件出願の請求項1?8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記1?5の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、平成5年改正前特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない。 記 1.特開平5-150985号公報 2.特開平5-113979号公報 3.特開平5-158947号公報 4.特開平2-32475号公報 5.特開平1-298466号公報 」 第3 当審の判断 1.引用刊行物の記載事項 当審における拒絶理由で通知した引用刊行物1には、図面と共に下記の記載がある。 段落【0001】「【産業上の利用分野】本発明は、要員スケジュール、列車、バス、航空機ダイヤ等のスケジューリングシステムにおける問題解決方法に関し、特にユーザの意向を反映して、複雑な問題を短時間で解決できるように推論過程を含む提案画面を並列に表示する問題解決方法に関する。」 段落【0004】「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の問題解決方法は、解決案が複数存在する問題を解決する計算機システムにおいて、同一問題に対する複数の解決案を記憶する解決案記憶テーブル、そのテーブルに記憶された複数の解決案を複数のタスクに振り分けるための解決案実行ケーステーブル、および複数の解決案による提案の評価値を記憶する評価テーブルを備え、複数の解決案を基に推論を並列に実行して、同一問題に対する複数の提案を推論の途中状況とともに並列表示し、その際、各提案についてシステムが計算した評価値も表示し、また、ユーザが選択した一つの解決案について画面上で対話的に修正を行い、その間に代替案を並列に推論して代替案を表示したり、一部対話修正した後、再びシステムに自動推論させたりすることに特徴がある。また、複数の表示画面から選択された画面を先頭に拡大表示したり、対話修正時に発生したエラー内容とともに代替案を表示したり、推論に用いる制約条件を変更して得た代替案を表示したり、解決案記憶テーブルの探索順序や方向を変更して得た代替案を表示したり、同一案は重複して表示しないようにすることに特徴がある。」 段落【0006】「【実施例】以下、本発明の一実施例を図面により説明する。本実施例の問題解決システムは、CPU等の処理装置と、CRT、キーボード等の入出力装置と、磁気ディスクや光ディスク等の記憶装置とを備える。また、記憶装置には、複数の解決案を記憶するための解決案記憶テーブル、複数の解決案を2つのタスクが実行する際の振り分けを記憶するための解決案実行ケーステーブル、および各々の解決案を用いた場合の推論結果の評価値を記憶するための評価テーブル等を記憶する。・・・。また、評価テーブルには、図6のように、各解決案を実行した結果および評価値が記憶されており、図6において、61は推論実行の結果(OK/NG)、62はその評価値である。この評価値の計算方法は、例えば、乗務員運用割り付けの際に必要な制約条件に、それぞれの重要度に応じた重みを付け、発生した制約条件違反の数を掛けた和で求める。」 段落【0007】「次に、本実施例における乗務員運用スケジュール作成の処理手順について述べる。・・・。図7において、71は乗務員運用計画表を示し、縦軸は乗務員番号、横軸は時間である。また、各乗務員番号に対応した乗務員の勤務時間、および運用計画を乗務員番号の横に表示する。そして、各乗務員の運用計画は、乗務員が列車に勤務する時間を実線で示し、実線と実線との間は休憩時間である。」 段落【0008】「列車ダイヤ作成においては、例えば、端末駅での折り返し時間が、最低10分以上といった余裕の多い条件と、最低5分以上といった余裕の少い条件で、列車ダイヤを作成し、もし、最低10分以上の余裕を持たせて、ダイヤが作成不可能となった場合、タスク間でエラーメッセージを送ることにより、即座に、最低5分以上という条件での代替案に切り替えるというようにすることもできる。」 2.引用刊行物1記載の発明の認定 前記段落【0001】に記載されているように、当該刊行物1に記載される発明は、要員スケジュールシステム、列車、バス、航空機ダイヤ等のスケジューリングシステムにおける問題解決方法に係り、前記段落【0004】に記載されているように、当該刊行物1に記載される問題解決方法に係る発明は、解決案が複数存在する問題を解決する計算機システムにおいて、同一問題に対する複数の解決案を記憶する解決案記憶テーブル、そのテーブルに記憶された複数の解決案を複数のタスクに振り分けるための解決案実行ケーステーブル、および複数の解決案による提案の評価値を記憶する評価テーブルを備え、複数の解決案を基に推論を並列に実行して、同一問題に対する複数の提案を推論の途中状況とともに並列表示し、その際、各提案についてシステムが計算した評価値も表示し、また、ユーザが選択した一つの解決案について画面上で対話的に修正を行い、その間に代替案を並列に推論して代替案を表示したり、一部対話修正した後、再びシステムに自動推論させたりするものである。 そして、前記段落【0006】に記載されているように、当該刊行物1記載の実施例に係る問題解決システムは、CPU等の処理装置と、CRT、キーボード等の入出力装置と、磁気ディスクや光ディスク等の記憶装置とを備え、記憶装置には、複数の解決案を記憶するための解決案記憶テーブル、複数の解決案を2つのタスクが実行する際の振り分けを記憶するための解決案実行ケーステーブル、および各々の解決案を用いた場合の推論結果の評価値を記憶するための評価テーブル等が記憶されており、評価値は、例えば、乗務員運用割り付けの際に必要な制約条件に、それぞれの重要度に応じた重みを付け、発生した制約条件違反の数を掛けた和を計算で求めることとされる。 また、段落【0007】或いは【0008】に記載されているように、当該問題解決システムでは、図7に示されるような乗務員運用計画表を示して、各乗務員の勤務時間および休憩時間を表示するように構成されており、端末駅での折り返し時間を、最低10分以上といった余裕の多い条件と、最低5分以上といった余裕の少い条件で、列車ダイヤを作成し、もし、最低10分以上の余裕を持たせて、ダイヤが作成不可能となった場合、タスク間でエラーメッセージを送ることにより、即座に、最低5分以上という条件での代替案に切り替えるというようなことも可能とすることの示唆もされている。 以上のとおりであって、当該刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「列車、バス、航空機ダイヤ等の乗務員スケジューリングに係る問題を解決する計算機システムであって、 CPU等の処理装置と、CRT、キーボード等の入出力装置と、磁気ディスクや光ディスク等の記憶装置とを備え、 記憶装置には、複数の解決案を記憶するための解決案記憶テーブル、複数の解決案を2つのタスクが実行する際の振り分けを記憶するための解決案実行ケーステーブル、および各々の解決案を用いた場合の推論結果の評価値を記憶するための評価テーブル等が記憶されており、 評価値は、例えば、乗務員運用割り付けの際に必要な制約条件に、それぞれの重要度に応じた重みを付け、発生した制約条件違反の数を掛けた和を計算で求めるものであって、 当該計算機システムは、複数の解決案を基に推論を並列に実行して、同一問題に対する複数の提案を推論の途中状況とともに並列表示し、その際、各提案についてシステムが計算した評価値も表示し、また、ユーザが選択した一つの解決案について画面上で対話的に修正を行い、その間に代替案を並列に推論して代替案を表示したり、一部対話修正した後、再び自動推論する計算機システム。」 (以下、「引用発明」という。) 3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定 引用発明は「列車、バス、航空機ダイヤ等の乗務員スケジューリングに係る問題を解決する計算機システム」であって、各乗務員のスケジュールを割り付ける提案(列車ダイヤに割り付けることから「運行」と同定し得る。)を自動推論して提示するものであって、一般にエキスパートシステムと称されるものである。この点、本願発明の「交通機関における各列車等の各運行に各乗務員を割り付ける割付業務を支援する乗務員運用計画支援装置」も同様のものであって、両者は相当関係にあるといえる。 また、引用発明の「記憶装置」には、「複数の解決案を記憶するための解決案記憶テーブル」或いは「複数の解決案を2つのタスクが実行する際の振り分けを記憶するための解決案実行ケーステーブル」として乗務員のスケジュールを割り付けるための各種条件が記憶されていることから、本願発明の「各運行および乗務員に課される各種条件を記憶する記憶部」にひとまず相当する。 さらに、引用発明のシステムでは、CPU等の処理装置により、乗務員運用割り付けの際に必要な制約条件に、それぞれの重要度に応じた重みを付け、発生した制約条件違反の数を掛けた和を計算で求めた評価値を計算して、複数の解決案を基に推論を並列して実行して、同一問題に対する複数の提案を推論の途中状況とともに並列表示し、その際、各提案についてシステムが計算した評価値も表示し、ユーザが選択した一つの解決案について画面上で対話的に修正を行い、その間に代替案を並列に推論して代替案を表示したり、一部対話修正した後、再び自動推論するものであり、各乗務員に係る提案(運行)を割付候補として提示していることからして、本願発明における、「前記記憶部から各種条件を読み出して、各種条件を満足する運行を選定し、選定した運行を前記条件に対応した各種評価関数で評価して前記各種条件を満足する運行を選択し、割り付け候補として提示する候補選定部」を実質的に備えているといえる。 よって、本願発明と引用発明とは、以下のごとくに一致点を有するものの、以下の相違点を有する。 <一致点> 交通機関における各列車等の各運行に各乗務員を割り付ける割付業務を支援する乗務員運用計画支援装置において、 各運行および乗務員に課される各種条件を記憶する記憶部と、 前記記憶部から各種条件を読み出して、前記各種条件を満足する運行を選定し、選定した運行を前記条件に対応した各種評価関数で評価して前記各種条件を満足する運行を選択し、割り付け候補として提示する候補選定部とを備えた乗務員運用計画支援装置。 <相違点1> 本願発明では、各運行および乗務員に課される各種条件に、「必ず満たさなければならない条件」と「満たした方がよい条件」とを区別しており、これらを分けて記憶装置に記憶しており、前記記憶部から各種条件を読み出した際に、前記満たさなければならない各種条件を満足する運行を選定し、選定した運行を前記満たした方がよい条件に対応した各種評価関数で評価して前記各種条件を満足する運行を選択すると特定されているのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。 <相違点2> 本願発明では、「ある乗務員に割り付け済の運行と交換可能条件を満たす他の乗務員に割り付け済の運行を検索して、検索結果を提示する検索部」と、「前記検索結果の中から選択されたものと前記ある乗務員に割り付け済の運行とを交換する調整部」とを備えると特定されているのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。 4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断 (1)<相違点1>について 刊行物1には、運行が満たすべき条件として満たなければならない条件と満たした方がよい条件について峻別して、満たした方がよい条件の評価関数で評価をすることの明記はないものの、前記引用刊行物1の段落【0008】には、列車の折り返し時間について余裕が少ないものの「最低5分以上」とするように、満たすべき時間があることが窺える。 また、当審で引用した刊行物2の段落【0002】にあるように、交通機関(ここでは路線バスが例とされている。)における種々の業務(ジョブ)を割り付けるに際しては、通常、労働条件等の割当て規則に従ってそれぞれ割当て決定することが行なわれており、また、このような労働条件等は必ず厳守しなければならない項目(同段落【0022】)であるが、他方、「目安」とするやや制約としての度合いの低い項目も割付に際して併せて用いられること(同段落【0028】、【0029】)が記載されている。 よって、乗務員の勤務時間、休憩時間について、運行を割付けるに際して満たすべき条件と満たした方が良い条件が存在しており、これらには幅があることは周知の事項であって、そのような場合に、割り付けるべき運行として複数の提案が有り得ることは当業者にとっては自明なことである。 また、このような満たさなければならない条件(絶対条件、制約条件)により候補となる提案を選別しつつ、優先度等をも加味した評価関数により、絶対条件、制約条件以外の各種条件を異ならせた候補となる提案の評価値を算出して、各提案の優劣を対比し、評価値の高いものを選択する手法は、引用刊行物3にも記載されているように、各種技術分野において一般に行われている手法である。 してみれば、相違点1に係るごとくに、各運行および乗務員に課される各種条件に、「必ず満たさなければならない条件」と「満たした方がよい条件」とを区別し、それらを分けて記憶すること、また、これらの条件に基づいて、各種評価関数で評価して前記各種条件を満足する運行を選択することは、当業者であれば容易に想到し得るものでしかない。 (2)<相違点2>について 刊行物1に記載される計算システムは、前記のように、交通機関の各運行に各乗務員を割り付ける割付業務を支援する装置において、各種条件に基づいて運行を複数提案し、それぞれの運行について評価関数による評価値が示されるものである。 そして、当該計算システムにおいては、「ある乗務員に割り付け済の運行と交換可能条件を満たす他の乗務員に割り付け済の運行を検索して、検索結果を提示する検索部」と、「前記検索結果の中から選択されたものと前記ある乗務員に割り付け済の運行とを交換する調整部」とを備えることの明記はない。 しかしながら、前記で検討したように、当該計算システムでは、まず、乗務員運用割り付けの際に必要な制約条件に、それぞれの重要度に応じた重みを付け、発生した制約条件違反の数を掛けた和を計算で求めた評価値を計算して、複数の解決案を基に推論を並列して実行して、同一問題に対する複数の提案を推論の途中状況とともに並列表示し、その際、各提案についてシステムが計算した評価値も表示されていることからして、ここでいう提示される複数の提案は、「ある乗務員」に対して割付可能な提案であって、いずれも割付可能なものである以上は、実質的に交換可能なものともいえる。 なるほど、刊行物1記載の計算システムには、前記「検索部」或いは「調整部」の特定はないが、当審で提示した刊行物5には、刊行物1記載の計算システムと同様に、ワークステーションのようなマンマシン対話型の信号処理装置を用いて、業務と、その作業を行う作業者(業務員)の割付を、簡易に行う「業務管理のための情報処理方法」において、「ある作業者に割付けられている複数業務単位からなる業務を他の作業者に割付けたり、解除する場合、又は他の作業者の業務と交換する場合」の業務割付けに係る記載(2頁左下欄3行?3頁左上欄3行)があり、また、実施例において、割付済みの業務を対象とする業務員個々について画面に表示し、ユーザが交換しようとする業務を想定表示し、交換が指示された場合には交換可能か否かをシステムが各作業者の制約条件等によりチェックし、交換可能であった場合には、業務の情報を更新して、改めて画面に表示するように構成されていること(4頁左上欄7行?5頁左上欄9行)が明記されている。 してみるに、相違点2に係る構成のごとくの「検索部」或いは「調整部」を備えることは、当該刊行物5の記載を参照すれば、当業者ならば必要に応じて適宜になし得た程度のことでしかない。 なお、平成19年10月25日付け意見書において、請求人は、 「引用例5には、審判長殿が書かれているように「割付済みの乗務員を交換する点」が記載されています。そのため、補正前の請求項5の内容を請求項1に盛り込むだけでは、進歩性が十分ではないと判断し、補正前の請求項7も請求項1に盛り込んでいます。」 と、単に補正前の請求項5の内容を請求項1に盛り込むだけでは、進歩性が十分ではないことを認めるものの、補正前の請求項7に係る構成を併せて備えることで、本願請求項1に係る発明には進歩性があると主張する。 そして、請求人は、更に、 「「割付済みの乗務員を交換する」ためには、交換可能条件を満たす他の乗務員に割り付け済の運行を見つけ出す必要がありますが、作成者が手作業で見つけ出すのでは非常に労力がかかります。そのため、本願発明の請求項1では、「ある乗務員に割り付け済の運行と交換可能条件を満たす他の乗務員に割り付け済の運行を検索して、検索結果を提示する検索部と、前記検索結果の中から選択されたものと前記ある乗務員に割り付け済の運行とを交換する調整部」という構成の要部を備えています。この構成の要部は、引用例1?5のいずれにも開示されておらず、示唆する記述も無いです。」 とも主張している。 しかしながら、刊行物5に記載される「業務管理のための情報処理方法」に係る計算システムにおいては、その実施例として以下のような記載がある。 第1図のディスプレイ103の上段に、業務表211を示されており、ここに業務ID毎に業務群202が示され、各作業者へ分割割付可能な業務206を識別可能に示されており、他方、下段には、業務運用表202が示されており、各作業者ID毎に、割付けられた業務204を表示される(3頁右上欄19行?左下欄11行)。 割付けを行うユーザ(オペレータ)が、特定の業務209を選択した場合には、どの作業者の業務かを探し出し、上段の業務表211の対応する業務207が表示され、当該業務を割付け可能な作業者S1に対して割付を想定した表示が行われ(3頁左下欄12行?右下欄7行)、前記ユーザが業務表211の前記業務207または業務209を選択すると、207か209のいずれを選択したかで若干異なるものの、割付可能な作業者に業務を割付直して、画面を表示し直す(3頁右下欄7行?4頁左上欄6行)。 したがって、相違点2に係る構成のごとくに「検索部」或いは「調整部」を備えるとの明記はないものの、指定された業務について割付け済みの作業者があるか否かを検索すること、割付け済みの作業者と業務を交換することが明らかである。 そして、これら割付け済みの作業者の検索或いは業務の交換を行うことは、計算システムを構成する処理装置が行っていることは技術常識であり、それぞれの機能を「検索部」或いは「調整部」と称し得ることも、技術常識に属することである。 してみれば、前記請求人の主張は、当該刊行物5に文言としてこれら「検索部」或いは「調整部」の記載がないことをいうに過ぎないものであって、採用することはできない。 (3)本願発明の進歩性の判断 相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、いずれも当業者にとって想到容易であり、これら相違点に係る構成を採用したことによる格別な作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物1乃至3及び5に記載された事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-03 |
結審通知日 | 2007-12-04 |
審決日 | 2007-12-20 |
出願番号 | 特願平5-224381 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G09D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 史郎、櫻井 茂樹、赤木 啓二 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
尾崎 俊彦 菅藤 政明 |
発明の名称 | 乗務員運用計画支援装置 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 中鶴 一隆 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 高橋 省吾 |