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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24C
管理番号 1172293
審判番号 不服2004-26246  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-24 
確定日 2008-02-07 
事件の表示 特願2000-277151「調理支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月27日出願公開、特開2002- 89845〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年9月12日の出願であって、平成16年11月15日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同月24日)、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成17年1月24日に手続補正がなされたが、これは当審において平成18年2月6日付けの補正の却下の決定により却下された。そして、当審により平成18年2月6日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年4月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされた。さらに、当審により平成18年10月5日付けで拒絶の理由(記載不備について)が通知され、これに対して、同年12月8日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は、平成18年12月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】調理プログラムにしたがって調理手順を提示する調理支援装置と、
電気的な調理手段を備えた複数の調理機器と、
前記調理支援装置と前記複数の調理機器との間で通信を行うための通信手段と、
前記調理支援装置により提示された調理手順にしたがって前記複数の調理機器を制御する制御手段と、
使用者が前記複数の調理機器を操作するための操作手段と、
前記複数の調理機器の動作状態を表示する表示手段とを具備し、
前記制御手段は、前記複数の調理機器のそれぞれについて前記調理プログラムの調理手順で使用するタイミングでその運転プログラムを送信し且つ前記表示手段にそれら複数の調理機器をそれぞれ使用するタイミングである旨を表示させると共に音声により報知し、前記操作手段による調理開始の操作入力を受け付けるように制御することを特徴とする調理支援システム。」

3.引用例
(1)当審での平成18年2月6日付けの拒絶の理由に引用した特開平11-14065号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
・「【請求項4】 調理対象物に処理を施す処理手段、該処理手段の処理を制御する制御手段、および通信手段を備える本体と、
料理に関する情報を記憶する記憶手段、料理に関する情報を表示する表示手段、前記記憶手段の記憶および前記表示手段の表示を管理する管理手段、使用者によって操作され前記管理手段に操作内容を伝える操作手段、ならびに通信手段を備え、前記本体から分離して設けられ前記本体と通信する端末部とから成ること特徴とする調理装置。
【請求項5】 前記本体が備える通信手段および前記端末部が備える通信手段は、双方向通信を行う無線通信装置であることを特徴とする請求項4に記載の調理装置。
【請求項6】 前記無線通信装置は赤外線通信装置であることを特徴とする請求項5に記載の調理装置。
【請求項7】 前記本体が備える通信手段は着脱自在であり、前記本体からの脱離時にはケーブルによって前記本体と接続されることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の調理装置。
【請求項8】 前記記憶手段は料理に関する情報として、複数の料理について、前記処理手段の処理の前後にわたる調理方法を記憶し、
前記管理手段は、前記操作手段の操作によって指定された料理の調理方法を前記記憶手段から読み出して、前記操作手段の操作に応じて1ステップごとに調理方法を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項4または請求項7に記載の調理装置。
【請求項9】 前記調理方法には使用する調理器具とその使用方法が含まれることを特徴とする請求項8に記載の調理装置。
【請求項10】 前記記憶手段は料理に関する情報として、複数の料理について、前記処理手段の動作を規定するプログラムを記憶し、
前記管理手段は、前記操作手段の操作によって指定された料理のプログラムを前記記憶手段から読み出して、読み出したプログラムを前記操作手段の操作に応じて前記2つの通信手段を介して前記制御手段に伝送し、
前記制御手段は伝送されたプログラムに従って前記処理手段の処理を制御することを特徴とする請求項4または請求項7に記載の調理装置。」(請求項4ないし10)
・「情報管理装置2には、プログラムに従って動作する1または2以上の調理機器3が無線で接続される。情報管理装置2は、記憶しているプログラムをこれらの調理機器3に与えて、その動作を料理に適するように制御する。また、情報管理装置2は、使用者の利用に供するために、記憶している情報を表示する。」(段落【0042】)
・「情報管理装置2には、液晶表示装置(LCD)31とポインティングパッド32を重ねて成るタッチパネル33、ポインティングパッド32の入力座標を認識する座標認識部34、トラックボール35、タッチパネル33およびトラックボール35の操作の軌跡から文字を認識する文字認識部36、マイクロフォン37、マイクロフォン37から入力される音声を認識する音声認識部38、スピーカー39、スピーカー39から出力する音声を合成する音声合成部40、および調理機器3と赤外線で通信するためのIrDA41が設けられている。」(段落【0058】)
・「調理機器3は、自身の処理の進行状況および温度等の調理対象物の状況を、赤外線によって情報管理装置2に送信する。これを受信したIrDA41は制御部21に伝送し、制御装置21は調理機器3の処理の進行状況や調理対象物の状況をLCD31にグラフとして表示させる。プログラムに記された全処理が終了したとき、調理機器3はその旨を情報管理装置2に伝え、制御部21はLCD31の表示およびスピーカー39からの音声出力によって、処理が完了したことを使用者に報知する。」(段落【0064】)
・「情報管理装置2に無線接続される調理機器3には、電子レンジ、炊飯器、電磁調理器等、様々な種類がある。」(段落【0070】)
・「上記のようにヘッダーに調理機器の種類を明記することで、各調理機器3は自身に宛てられたプログラムであるか否かを判別することが可能になり、他の種類の調理機器のプログラムを受信したときに、それを無視することができる。これにより、1つの料理情報に2種類以上の調理機器のプログラムを含ませることが可能になる。」(段落【0076】)
・「電子レンジ5は、また、マイクロコンピュータより成り全体を制御する制御部71、制御部71のOSプログラムおよび一部の動作プログラムを記憶したROM72、電子レンジ5の処理能力に関する情報を記したフラッシュメモリ73、情報管理装置2と赤外線によって通信するためのIrDA74、翻訳プログラムを記憶したROM75、制御部71が一時的な記憶に使用するRAM76、および使用者によって操作される操作部77を備えている。操作部77は選択キー78と調理開始スイッチ79より成り、これらは電子レンジ5の前面に設けられている。」(段落【0079】)
・「処理の進行状況や調理対象物の状況を知らせる指示がプログラムに記されているときは、これに応じて、処理開始からの経過時間、全処理完了までの残り時間、進行中の処理内容、庫内温度、調理対象物の表面温度、色センサー60で検出した色の変化に基づく調理対象物の表面の焦げ具合等を、情報管理装置2に送信する。情報管理装置2はこれらを文字やグラフでLCD31に表示する。使用者は、電子レンジ5の傍らにいなくても、情報管理装置2の表示を見て、温まり具合や焦げ目のでき具合を知ることができる。
電子レンジ5は、通常、キッチンの一定位置に設置される。一方、情報管理装置2は使用者が持ち運んで、任意の場所で使用することができる。キッチンでは、情報管理装置2は使用者が作業を長時間行う場所、例えば調理台の隅に載置して使用される。電子レンジ5のIrDA74は、キッチンのレイアウト、電子レンジ5の設置位置および情報管理装置2の使用位置を考慮して配置しておく。IrDA74をキッチンの壁面や天井に取り付ければ、例えば、キッチンがL字型であったり電子レンジ5と調理台の間に冷蔵庫等が存在したりする場合でも、電子レンジ5と情報管理装置2の赤外線による通信を確実に行うことができる。電子レンジと5とIrDA74はケーブル69によって有線接続されているから、電子レンジ5の向きは通信に全く影響しない。
使用者は、近くに配置した情報管理装置2の表示を見ながら、また音声による説明を聞きながら、調理の各ステップの作業を進めることができる。電子レンジ5を使用するステップでは、用意した材料を調理庫55に入れて、プログラムを電子レンジ5に送信し、調理開始スイッチ79を操作して加熱を開始する。プログラムが修正されたときは、情報管理装置2の表示によりそれを知り、再修正することもできる。使用し慣れたプログラムであれば、用意した材料を調理庫55に入れる前に、プログラムを電子レンジ5に送信してもよい。
電子レンジ5が処理を進めている間、使用者は調理台を離れることなく作業を行うことが可能である。その間、情報管理装置2の表示で電子レンジ5の処理の進行状況を知ることができ、また、処理の完了を表示および音声によって知ることができる。IrDA74の配設位置によっては、情報管理装置2を持って隣の部屋に移動し、そこで電子レンジ5の処理の進行状況を知ることも可能になる。
情報管理装置2は、電子レンジ5だけでなく、他の調理機器3と組み合わせて使用することも可能である。すなわち、炊飯器や電磁調理器等にプログラムを送信して動作を制御し、その調理機器から進行状況を知らされて表示することができる。」(段落【0094】ないし段落【0098】)

上記摘示事項及び図面の記載によれば、引用例1には次の発明が記載されている。(以下、「引用例1発明」という。)

「料理のプログラムにしたがって調理のステップを提示する情報管理装置2と、
電子レンジ、炊飯器及び電磁調理器等の複数の調理機器3と、
前記情報管理装置2と前記複数の調理機器3との間で通信を行うための通信手段と、
前記情報管理装置2により提示された調理のステップにしたがって前記複数の調理機器を制御する制御部21,71と、
使用者が前記複数の調理機器を操作するための操作部77と、
前記複数の調理機器3の処理の進行状況や調理対象物の状況を表示する表示手段(液晶表示装置31)とを具備し、
複数の調理機器のうち少なくとも電子レンジについては、使用者が、情報管理装置2の表示を見ながら、また音声による説明を聞きながら、調理の各ステップの作業を進めることができ、電子レンジ5を使用するステップでは、用意した材料を調理庫55に入れて、プログラムを電子レンジ5に送信し、調理開始スイッチ79を操作して加熱を開始するように、前記制御部21,71が制御することを特徴とする料理支援システム。」

(2)同じく、特開平9-160609号公報には、(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
・「127、130は電源を必要とする、例えば、電気炊飯器、電子レンジ等の調理機器(以下、電気機器と略す))、129、132は、それらの電気機器を制御するためのコントロール回路(以下、電気機器コントローラと略す)、128、131は、電気機器127、130と電気機器コントローラ129、132間において、CPU101からの制御命令と電気機器127、130からの情報を双方向に伝送するデータバスである。」(段落【0030】)
・「使用者201は入出力装置203に対して、スイッチ装置204、ペン入力装置205、タッチパネル206、マイクによる音声入力装置207のどれか一つ又は複数を利用して機器の操作命令を入力する。使用者201の命令に従って、調理支援装置本体202は各調理機器209に対して制御命令を発する。又、使用者201は、それと同期して、例えば、電子レンジに食材を入れる、ガスレンジに鍋を載せる等の作業を行なう。各調理機器209は制御命令に応じた処理を行い、その処理情報を調理支援装置本体202に伝送する。調理支援装置本体202は入出力装置203を介して、モニタ206、音声出力装置208のどちらか一つ又は複数を利用して使用者201に、情報を呈示する。
各調理機器209を操作する際に、使用者201は、入出力装置203を通じて全ての操作を行なう。このことによって、機能の異なる調理機器を統一的な操作方法で管理、操作することが可能となる。
但し、各調理機器209本体に各々の機器用の操作盤を設け、本体操作盤への操作が入出力装置203への操作に優先して動作するような構成にしても良い。」(段落【0039】?【0041】)
・「図3を用いて、使用者201が用いるモニタ206上の、統一的操作パネル表示の例について説明する。ここでは、タッチパネル、又はペン入力を前提とした画面例を示している。
図上側に、電子レンジを対象とした場合の操作パネルの表示例を示した。301は制御対象のアイコン表示である。この表示によって、どの機器を制御対象としているのかを明示する。302はメインスイッチ、303は温度調節、時間調節等の操作つまみ、304は各種機能のスイッチである。305はタイマ表示部、306は各種情報の表示部である。」(段落【0042】、【0043】)
・「図5を用いて、本実施例に係る調理支援装置が、各調理機器を連動させて制御する手順について説明する。
最初に、入力装置を用いて料理名を入力する。記憶装置から料理手順データを読み込み、必要な手順数を得る。調理開始が入力された後、1手順毎に調理手順を読み込み、出力装置に出力する。それと共に、その手順において、調理機器の制御が必要ならば、対象機器の状態を確かめた上で、対象機器の制御を行なう。その手順終了が入力された後、次の手順があれば、再び、調理手順の読み込みから動作を反復する。次の手順がなければ動作を終了する。」(段落【0051】、【0052】)
・「図6を用いて、本実施例に係る調理支援装置の情報処理に用いるデータベースの形式を簡単に例示する。
本実施例の調理支援装置は3種類のデータベースを有する。
料理データベースは、料理の名称P、その料理を作る時に必要な材料A、B、Cとその数量a0、b0、c0を記録している。料理手順データベースは、料理データベースに記録されている料理Pについて、その材料を調理する手順を記録している。調理手順情報は、手順1、2、3、4に従って使用者が或る材料A、B、Cに対して要求される動作と、その際の各調理機器の制御情報と所要時間p、q、r、sからなる。2種類のデータベースはメディアドライブ122に記憶されており必要に応じて、CPU101によってRAM125上に読み出され、処理の対象となる。」(段落【0053】?【0055】)
・「図7のフローチャートを用いて、本実施例に係る調理支援装置によって各調理機器を連動させることで、或る調理を行なう際の各機器の制御例を、簡単に説明する。ここでは、図2(審決注:「図6」の誤記)のデータベース例に示した料理Pを調理する際の手順を例とする。…(中略)…。
次に、使用者201が入力装置を介して、調理を開始することを入力する。それに対して、CPU101は、料理Pの料理手順データベースから調理手順1を取り出し、出力装置に呈示する。手順1では、使用者201の材料Aに対する動作のみが必要とされているので、その動作終了後、使用者201は手順1の動作終了を入力する。
それに対して、CPU101は、料理Pの調理手順2を取り出し、出力装置に呈示する。それと共に、材料Aに対する調理機器1の制御を開始し、タイマ121をセットする。ここでは調理の所要時間qを設定する。その間、使用者201は材料Bに対する動作を行なう。調理機器の所要時間q経過後、タイマ割り込みによって、手順2終了の入力が促され、使用者201の材料Bに対する動作終了後、手順2の動作終了を入力する。
それに対して、CPU101は、以下同様にして、手順の表示、各調理機器の制御を行い、最終的には、使用者201の、手順4終了の入力によって調理支援装置による調理機器の制御が終了する。」(段落【0057】?【0061】)
・図5には、各調理手順で調理機器を制御する場合にはそのタイミングで「対象機器へ制御データ転送」する点が記載されている。また、図7には、調理手順を表示し調理機器1を制御し、さらに次の調理手順を表示し調理機器2を制御する点が記載されている。

上記摘示事項及び図面の記載によれば、引用例2には次の発明が記載されている。(以下、「引用例2発明」という。)

「料理Pの料理手順データベースから調理手順を呈示する調理支援装置と、
電気炊飯器、電子レンジ等の電気的な調理手段を備えた調理器を含む複数の調理機器209と、
前記調理支援装置により呈示された調理手順にしたがって前記複数の調理機器を制御するCPU101及び各機器のコントローラ129、132、134、137と
使用者201が各調理機器を操作するための入出力装置203と
前記複数の調理機器の処理情報を表示するモニタ206とを具備し、
前記CPU及び各機器コントローラは、前記複数の調理機器の調理機器1及び調理機器2のそれぞれについて料理Pの料理手順データベースの調理手順で使用するタイミングでその制御データを転送し且つ前記モニタにそれらのうちどれを制御対象としているのか表示させると共に音声出力装置208で音声を出力し、前記入出力装置の操作により各調理機器を操作することを特徴とする調理支援装置を用いたシステム。」

4.対比・判断
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「調理のプログラム」は、本願発明の「調理プログラム」に相当し、以下同様に、「調理のステップ」は「調理手順」に、「情報管理装置2」は「調理支援装置」に、「電子レンジ、炊飯器及び電磁調理器等の複数の調理機器3」は「電気的な調理手段を備えた複数の調理機器」に、「制御部21」及び「制御部71」は「制御手段」に、「操作部77」は「操作手段」に、「表示手段(液晶表示装置(LCD))31」は「表示手段」、「プログラム」は「運転プログラム」に、「料理支援システム」は「調理支援システム」に相当する。
また、引用例1発明の「電子レンジ5を使用するステップでは、用意した材料を調理庫55に入れて、プログラムを電子レンジ5に送信し、調理開始スイッチ79を操作して加熱を開始する」は、本願発明の「前記調理機器を使用するタイミングでその運転プログラムを送信し且つ前記操作手段による調理開始の操作入力を受け付けるように制御すること」に相当するものである。
さらに、引用例1発明の「使用者が、情報管理装置2の表示を見ながら、また音声による説明を聞きながら、調理の各ステップの作業を進めることができ」は、使用者が、このような表示を見たり音声の説明を聞けば、調理機器を使用するタイミングであることは当然知ることであるから、本願発明の「前記表示手段に調理機器を使用するタイミングである旨を表示させると共に音声により報知し」に相当するものである。
そして、制御手段が、調理機器の前記調理プログラムの調理手順で使用するタイミングでその運転プログラムを送信し且つ前記表示手段にその調理機器を使用するタイミングである旨を表示させると共に音声により報知し、前記操作手段による調理開始の操作入力を受け付けるように制御することについて、引用例1発明も、複数の調理機器のうち少なくとも1つの調理機器(電子レンジ)について行うものである点では本願発明と共通している。
よって、両者は、次の[一致点]で一致し、[相違点]で相違するものと認められる。

[一致点]
調理プログラムにしたがって調理手順を提示する調理支援装置と、
電気的な調理手段を備えた複数の調理機器と、
前記調理支援装置と前記複数の調理機器との間で通信を行うための通信手段と、
前記調理支援装置により提示された調理手順にしたがって前記複数の調理機器を制御する制御手段と、
使用者が前記複数の調理機器を操作するための操作手段と、
前記複数の調理機器の動作状態を表示する表示手段とを具備し、
前記制御手段は、前記複数の調理機器のうち少なくとも1つの調理機器について前記調理プログラムの調理手順で使用するタイミングでその運転プログラムを送信し且つ前記表示手段にその調理機器を使用するタイミングである旨を表示させると共に音声により報知し、前記操作手段による調理開始の操作入力を受け付けるように制御することを特徴とする調理支援システム。

[相違点]
制御手段が、調理機器の前記調理プログラムの調理手順で使用するタイミングでその運転プログラムを送信し且つ前記表示手段にその調理機器を使用するタイミングである旨を表示させると共に音声により報知し、前記操作手段による調理開始の操作入力を受け付けるように制御することについて、本願発明が、「複数の調理機器のそれぞれ」について行うのに対し、引用例1発明は、複数の調理機器のうちの1つの調理機器(電子レンジ)については行うものの、他の調理機器については明確でない点で相違する。

(4)判断
引用例2発明は、調理支援装置を用いて、調理プログラムの料理手順にしたがって複数の調理機器を制御する調理支援システムという本願発明及び引用例1発明と同一の技術分野に属するものである。
そこで、本願発明と引用例2発明とを、対比すると、引用例2発明の「料理Pの料理手順データベース」は、本願発明の「調理プログラム」に相当し、以下同様に、「呈示」は「提示」に、「CPU101及び各機器のコントローラ129、132、134、137」は「制御手段」に、「入出力装置203」は「操作手段」に、「処理情報」は「動作状態」に、「モニタ206」は「表示手段」に、「調理支援装置を用いたシステム」は「調理支援システム」に相当する。
また、引用例2発明の「制御データ」と本願発明の「運転プログラム」は、ともに「制御データ」といえる。
さらに、引用例2発明の「それらのうちどれを制御対象としているのか表示させると共に音声出力装置208で音声を出力し、」は、本願発明の「表示手段に複数の調理機器をそれぞれ使用するタイミングである旨を表示させると共に音声により報知し」に相当し、引用例2発明の「前記入出力装置の操作により各調理機器を操作する」は、本願発明の「前記操作手段による調理開始の操作入力を受け付けるように制御する」に相当する。

よって、引用例2発明は、
「調理プログラムにしたがって調理手順を提示する調理支援装置と、
電気的な調理手段を備えた調理器を含む複数の調理機器と、
前記調理支援装置により提示された調理手順にしたがって前記複数の調理機器を制御する制御手段と、
使用者が前記複数の調理機器を操作するための操作手段と、
前記複数の調理機器の動作状態を表示する表示手段とを具備し、
前記制御手段は、前記複数の調理機器のそれぞれについて前記調理プログラムの調理手順で使用するタイミングでその制御データを送信し且つ前記表示手段にそれら複数の調理機器をそれぞれ使用するタイミングである旨を表示させると共に音声により報知し、前記操作手段による調理開始の操作入力を受け付けるように制御することを特徴とする調理支援システム。」ということができる。

そして、引用例1発明も引用例2発明も、ともに、調理支援装置を用いて、調理プログラムの料理手順にしたがって複数の調理機器を制御する調理支援システムという同一の技術分野に属するものであるから、引用例1発明において、引用例2発明のように、前記制御手段を、前記複数の調理機器のそれぞれについて前記調理プログラムの調理手順で使用するタイミングでその制御データを送信し且つ前記表示手段にそれら複数の調理機器をそれぞれ使用するタイミングである旨を表示させると共に音声により報知するようにすることは当業者が容易に想到し得たことであり、その引用例2発明の「制御データ」を「運転プログラム」とすることは単なる設計事項であって、格別な事項ではない。
してみれば、引用例1発明に引用例2発明を適用して、本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1発明及び引用例2発明から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、審判請求人は、平成18年4月10日付けの意見書において、「引例1のものでは、使用者側の操作に応じてプログラムが電子レンジ5に送信されることになっており、いわば電子レンジ5を使用するタイミングは使用者が手動的に決めているものであります。これに対して、本願のものは、調理支援装置側からその使用タイミングを自動的に指示するものであります。
このことは、調理を実施する上において、全く異なる意味を持っています。例えば、ある調理手順が示されている状態で、使用者によって個人差があるために一つの調理手順を実施する時間が長くなったり短くなったりすることがあります。このような場合に、本願の請求項1の発明では、調理手順の実施に要する時間の長さに関わらず次の調理手順やスタンバイ処理があることを指示することができるので、煮物や炒め物などのタイミングが非常に重要な要素となる調理においては慣れない者でも的確なタイミングで指示を受けることができ、失敗が少なくなります。しかし、調理手順が次に移行することを使用者が自ら操作によって進める引例1のものでは、自分でタイミングを決めることになり、慣れないものではタイミングを失してしまうことになりかねません。
このような観点から他の引例2?4(「引例3」が審決の「引用例2」)を見てみますと、いずれのものにおいても、調理手順は示されるものの、そのタイミングを決めるのは、やはり使用者でありますから、いわば自分でタイミングの指示を出すことしかできません。したがって、複雑な調理手順を有するメニューなどでは的確な指示を得ることができないことになり、本願の請求項1の発明で得られるような効果を得ることができないものであります。」と主張しているが、この点はタイムテーブルが有する効果であるところ、タイムテーブルの点は本願発明を特定するための事項ではなく、結局、上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではないので採用できない。
ちなみに、本願発明がタイムテーブルを有するものとしても、複数の調理機器をタイムテーブルで時間タイミングと順序により、各作業ステップ毎に映像や音声や文字によるガイダンスにより、時間管理を行いながら調理者へ作業通知を行う装置自体は、公知の技術である(当審での平成18年2月6日付けの拒絶の理由に引用した特開平2-212901号公報を参照)。

したがって、本願発明は、引用例1発明及び引用例2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用例1発明及び引用例2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-28 
結審通知日 2007-12-04 
審決日 2007-12-20 
出願番号 特願2000-277151(P2000-277151)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 哲生  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 長浜 義憲
今井 義男
発明の名称 調理支援システム  
代理人 佐藤 強  

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