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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1172301 |
審判番号 | 不服2005-6699 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-14 |
確定日 | 2008-02-07 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第291450号「光ガイド部材の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月29日出願公開、特開平10-143915〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続きの経緯・本願発明 本願は、平成8年11月1日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成16年12月9日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認める。そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「光源から照射された光の入射方向に対して傾斜した複数の基板を有し、光源からの光を媒体に導くとともに媒体から反射してきた光を所定の位置に導く光ガイド部材の製造方法であって、前記複数の基板のうち基板面に平行に形成された第1の光学素子群を備えた基板を包含する第1の基板群を前記第1の光学素子群を挟み込むように接合して第1の基板ブロックを形成し、前記複数の基板のうち基板面に非平行に形成された第2の光学素子群を備えた第2の基板群を前記第2の光学素子群を挟み込むように接合して第2の基板ブロックを形成し、その後前記第1の基板ブロックと前記第2の基板ブロックを接合して第3の基板ブロックを形成し、その後前記第3の基板ブロックの主平面部を所定の基準面に対して略45°の角度を有する平面に取り付けた後、所定の基準面に対して略垂直方向と略平行方向に切断することを特徴とする光ガイド部材の製造方法。」 2 引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-221796号公報(平成8年8月30日公開。以下、「引用例」という。)には、光ピックアップ及びその製造方法について、以下の記載がある(下線は、当審で付した。)。 ア.「【0012】また実装機能素子をフォトリソグラフィー技術、成膜技術、エッチング技術を駆使してガラス部材基板上に実装し、実装された各ガラス部材を接合し集合体を形成し、これら集合体を更に複数形成し、それら集合体を接合して集合構成体を形成し接合面に対して傾斜して切断することにより、平面ブロック体を形成し、それらを最終切断することで従来の機能を有しかつ小型軽量の光素子及び光ピックアップが形成でるとともに工数が低減でき生産性の向上が図れる。」 イ.「【0014】図1において基板101上にサブマウント102を介して水平にマウントされた半導体レーザチップ103から水平に放出されたレーザ光は、平行な複数の斜面を有する光ガイド部材104の面104cから光ガイド部材104に入射し、光ガイド部材104の第2面105bに形成されかつ入射する光の拡散角に対して射出する光の拡散角を変換する(以下NAを変換すると呼ぶ)機能を有する反射型のNA変換ホログラム106に到達する。NA変換ホログラム106によってNAを変換されかつ反射した光は第1面105aに形成された反射型の回折格子107によって0次回折光(以下メインビームと呼ぶ)と±1次回折光(以下サイドビームと呼ぶ)とに分けられる。回折格子107によって発生するメインビーム及びサイドビームは第1の偏光選択性のあるビームスプリッター膜108(以下単に第1偏光ビームスプリッター膜と呼ぶ)に入射する。第1偏光ビームスプリッター膜108に入射する光のうち第1偏光ビームスプリッター膜108を透過する光は半導体レーザチップ103からの射出光のモニター光として利用される。また、第1偏光ビームスプリッター膜108を反射するメインビーム及びサイドビームは、光ガイド部材104の第1面104aを透過、対物レンズ109に入射し、対物レンズ109の集光作用によって光ディスク盤110の情報記録面111に結像される。この時、情報記録面111上において2つのサイドビームの結像スポット112及び114はメインビームの結像スポット113を中心としてほぼ対称な位置に結像される。情報記録面111に対してメインビーム及びサイドビームの結像スポット113及び112、114により情報の記録または再生信号及びトラッキング、フォーカシングいわゆるサーボ信号の読みだしを行う。」 ウ.「【0016】光ディスク盤110の情報記録面111によって反射されたメインビーム及びサイドビームの戻り光は対物レンズ109、光ガイド部材104の第1面104aを再び通過し、再び光ガイド部材の第2面105bに形成された第1偏光ビームスプリッター膜108に入射する。第1偏光ビームスプリッター膜108は入射面に対して平行な振動成分を有する光(以下単にP偏光成分と呼ぶ)に対してほぼ100%の透過率を有し、垂直な振動成分(以下単にS偏光成分と呼ぶ)に対しては一定の反射率を有する。 【0017】光ディスク盤110からの戻り光のうち第1偏光ビームスプリッター膜108から透過する光は光ガイド部材104の第1面105aに平行な第3面105c上に形成された第2の偏光選択性のあるビームスプリッター膜116(以下単に第2偏光ビームスプリッター膜と呼ぶ)に入射する。第2偏光ビームスプリッター膜116は第1偏光ビームスプリッター膜108と同様にP偏光成分に対してほぼ100%の透過率を有し、S偏光成分に対しては一定の反射率を有する。 【0018】ここで第2偏光ビームスプリッター膜116に入射した光束の内、透過光117に関して説明する。透過光117は第3面105c上に積層された偏光面変換基板118に入射する。 【0019】図3は本発明における偏光面変換基板118の斜視図を示す。偏光面変換基板118は第1のその他の斜面118a(以下単に第1他斜面と呼ぶ)とその第1他斜面118aに平行な第2のその他の斜面118b(以下単に第2他斜面と呼ぶ)を有し、第1他斜面118aには反射膜126が、第2他斜面118bには偏光分離膜121が夫々形成されている。透過光117は第2他斜面118b上に形成された偏光分離膜121に入射する。第2他斜面118bは透過光117の偏光面117aと入射面128とのなす角が略45°(2n+1)、(nは整数)になるように形成されている。その結果透過光117のP偏光成分117PとS偏光成分117Sは略1:1の強度比を有するようになる。入射面128と平行な偏光成分を有するP偏光成分117Pは偏光分離膜121によってほぼ100%透過し、一方、入射面128に垂直な偏光成分を有するS偏光成分117Sは第2他斜面118b上の偏光分離膜121によって略100%反射し第1他斜面118a面上に入射し、反射膜126によって反射させられ受光素子へ導かれる。」 エ.「【0046】本実施例1の偏光面変換基板118の製造方法に関し図9から図10を用いて説明する。まず、図9は第1光ガイド部材201の第2面201b上に反射膜207を形成し、第2光ガイド部材202の第2面202b上に偏光分離膜121を形成し、第1光ガイド部材201の第2面201bと第2光ガイド部材202の第1面202a面を接着剤203を介して接合した偏光面変換基板集合ブロック200(以下単に変換集合ブロックと呼ぶ)を複数形成し、変換集合ブロック200の第1光ガイド部材201の第1面201aと他の変換集合ブロック200の第2光ガイド部材202の第2面202bを接着剤203を介しθ1傾けて接合し、これを複数接合して偏光面変換基板複合ブロック205(以下単に変換複合ブロックと呼ぶ)を形成した外観図である。 【0047】図10は変換複合ブロック205を偏光面変換基板厚118dと切り出し後のラッピング量118eを加えた厚み118cの厚みで偏光面変換基板平面ブロック206(以下単に変換平面ブロックと呼ぶ)を切り出した外観図である。変換平面ブロック206は第1、第2光ガイド部材201、202の基板サイズLによって複数枚の変換平面ブロック206を作製することができる。」 オ.「【0049】本実施例の光ガイド部材104は3枚の平行平板基板及び変換平面ブロック206の4枚を接着層を介して張り合わせ、構成する集合ブロックと前記集合ブロックを接着層を介して張り合わせ、構成した複合ブロックを各集合ブロックの接合面に対して斜めに切断し、切り出した平面ブロックからバーブロックを形成し各実施例の光ガイド部材104を切り出し形成するものである。 【0050】本実施例の光ガイド部材104形成において集合ブロックを形成する3枚の基板及び変換平面ブロック206の製造法に関して図11?図18を用いて説明する。図11は本発明の第1実施例における光ピックアップ素子の実装素子及びその構成を示したものである。」 カ.「【0068】図18は本発明における集合ブロック形成前の各基板の側面図である。前述の光学機能素子形成方法により、第1集合ブロックを構成する第1基板241の第1面105aに反射型の回折格子107、第1デプスマーカー246a及び第1張り合わせ位置決めマーカー244a、第1基板241の第2面105bに反射型のNA変換ホログラム106、第1偏光ビームスプリッター膜108、第2張り合わせ位置決めマーカー244bを形成し、第2基板242の第1面105bに反射膜122、反射型の非点収差発生ホログラム124、第3張り合わせ位置決めマーカー244c、第2基板242の第2面105bに第2偏光ビームスプリッター膜116、反射膜125、第4張り合わせ位置決めマーカー244d、第2デプスマーカー246b、を形成し、第3基板243第1面105d上に張り合わせ第5張り合わせ位置決めマーカー244e、第1カッティングマーカー245a、第2カッティングマーカー245b、第3基板243第2面105aに第6張り合わせ位置決めマーカー244fを形成し、偏光面変換基板118の第1面105cに第7張り合わせ位置決めマーカー244g、偏光面変換基板118の第2面105dに第8張り合わせ位置決めマーカー244hを形成する。 【0069】ここで集合ブロックの形成方法に関して図19を用いて説明する。第1基板241と第2基板242を第2張り合わせ位置決めマーカー244bと第3張り合わせ位置決めマーカー244cを用いて張り合わせ位置を決め接合する。同様に第4張り合わせ位置決めマーカー244dと第5張り合わせ位置決めマーカー244eを用いて第1基板241と接合された第2基板242と偏光面変換基板118を張り合わせ、さらに第6張り合わせ位置決めマーカー244fと第1基板241、第2基板242に接合された偏光面変換基板118と第3基板243を張り合わせ、第1集合ブロックを形成する。【0070】次に集合構成体の形成方法に関して図20、及び図17を用いて説明する。図20(a)はこの第1集合ブロックを複数用意し(ここではn個とする)第1張り合わせ位置決めマーカー244aと他の集合ブロックの第6張り合わせ位置決めマーカー244fをもって2つの集合ブロックを張り合わせる場合の外観図である。これをn個の集合ブロックに対して接合する。これにより集合ブロック第1基板241第1面105a上の光学機能素子は他の集合ブロック第3基板243に鋏み込む様に接合される。このうち最外集合ブロック(n番目の集合ブロック)に第3基板243を第1張り合わせ位置決めマーカー244aと第3基板243の第6張り合わせ位置決めマーカー244fをもって張り合わせ集合構成体を形成する。図20(b)は集合構成体の側面図である。」 キ.「【0074】次に平面ブロックの形成方法に関して図20と図21を用いて説明する。図20(a)は集合ブロックと他方の集合ブロックを図17中A、Bにより算出されるずらし分Lだけずらして張り合わせ形成する外観図である。同様に集合ブロックの厚みdもA、Bにより決定された値である。図20(b)はn個の集合ブロックを接合した集合構成体の外観図である。傾斜角θは本発明光ガイド部材の入射光中心軸の張り合わせ面への入射角でありここでは略45°である。張り合わせ面に対し傾斜角θだけ傾斜させた方向をX’として図中X’-Y’面を含む様に平面ブロックは切り出される。図21(c)は切り出された平面ブロックの外観図である。図21(a)は切り出された平面ブロックの正面図、図21(b)はその側面図である。これによってX’方向に各集合ブロック中に実装された各光学機能素子が配置され、切り出された平面ブロック中に本発明光ガイド部材が複数配置される。図21(c)、(d)は図21(a)、(b)の拡大図である。平面ブロックの第1面285aには切り出された時点で第2デプスマーカー246bが表層に現われている。第2デプスマーカー246bは反射型の非点収差発生ホログラム124の平面ブロック第1面285aまでの距離を制御するものでデプスマーカー値DL1が所定の値となるよう、加工を進め第1面285aの加工を終了する。続いて第1面285aを基準面として本発明光ガイド部材の素子高さhとなるように第2面285bの加工を完了する。加工完了後第1面285a、第2面285bに設計中心波長λ0に対する反射防止膜286を形成する。反射防止膜材料としては誘電帯材料を用いる。ここでは後工程の加工研削に膜が損傷しないようにハードコーティング材のTiO2/SiO2で形成した。反射防止膜形成には真空成膜装置をもって成膜する。 【0075】続いて平面ブロックよりバーブロック形成の工程を図22を用いて説明する。図22(a)は平面ブロックの正面図である。図22(b),(c)は切り出されたバーブロックの正面図、と側面図である。バーブロックの第1面288aには切り出された時点で第1デプスマーカー246aが表層に現われている。第1デプスマーカー246aは反射型のNA変換ホログラム106のバーブロック第1面288aまでの距離を制御するものでデプスマーカー246値DL2が所定の値となるよう、加工を進め第1面288aの加工を終了する。続いて第1面288aを基準面として本発明光ガイド部材の素子長さLとなるように第2面288bの加工を完了する。 【0076】加工完了後第1面288aに設計中心波長λ0に対する反射防止膜289を形成する。 【0077】反射防止膜289材料としては誘電帯材料を用いる。ここでは後工程の加工研削に膜が損傷しないようにハードコーティング材のTiO2/SiO2で形成した。反射防止膜289形成には真空成膜装置をもって成膜する。 【0078】最後にカッティングマーカー245をもってカッティングし、本発明光ガイド部材104を形成する。図22(d)にカッティングされたチップ外観を示す。」 上記ア乃至キの記載及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「半導体レーザチップからのレーザ光が入射される平行な複数の斜面を有し、光ディスク盤の情報記録面に光を導き、光ディスク盤の情報記録面によって反射された光を受光素子に導く光ガイド部材の製造方法であって、 第1基板の第1面に反射型回折格子、及び第1張り合わせ位置決めマーカー、第1基板の第2面に反射型NA変換ホログラム、第1偏光ビームスプリッター膜、第2張り合わせ位置決めマーカーを形成し、 第2基板の第1面に反射膜、反射型の非点収差発生ホログラム、第3張り合わせ位置決めマーカー、第2基板の第2面に第2偏光ビームスプリッター膜、反射膜、第4張り合わせ位置決めマーカーを形成し、 第3基板第1面上に第5張り合わせ位置決めマーカー、第1カッティングマーカー、第2カッティングマーカー、第3基板第2面に第6張り合わせ位置決めマーカーを形成し、 偏光面変換基板を、第1光ガイド部材に反射膜を形成し、第2光ガイド部材上に偏光分離膜を形成し、第1光ガイド部材と第2光ガイド部材を接合した変換集合ブロックを複数形成し、変換集合ブロックを傾けて接合して変換複合ブロックを形成し、変換複合ブロックから平面に切り出して形成した後、該偏光面変換基板の第1面に第7張り合わせ位置決めマーカー、偏光面変換基板の第2面に第8張り合わせ位置決めマーカーを形成し、 第1基板と第2基板を張り合わせ、 第1基板と第2基板を貼り合わせたものの第2基板側に偏光面変換基板を張り合わせ、 さらに第1基板、第2基板及び偏光面変換基板を貼り合わせたものの偏光面変換基板側に第3基板を張り合わせて、3枚の基板及び偏光面変換基板の集合ブロックを形成し、 集合ブロックを複数用意して、集合ブロックの第1基板と、他の集合ブロックの第3基板を複数接合し、最外集合ブロックの第1基板に第3基板を張り合わせた集合構成体を形成し、 集合構成体の張り合わせ面に対し45°傾斜させた方向に平面ブロックを切り出し、 平面ブロックからバーブロックを形成し、 バーブロックから光ガイド部材をカッティングする、 光ガイド部材の製造方法。」 3 対比 次に、本願発明と引用発明とを対比する。 両者は「光ガイド部材の製造方法」に関する発明である点で一致する。 引用発明の「半導体レーザチップ」及び「光ディスク盤」は、それぞれ本願発明の「光源」及び「媒体」に相当し、したがって、引用発明の「半導体レーザチップからのレーザ光が入射される平行な複数の斜面を有し、光ディスク盤の情報記録面に光を導き、光ディスク盤の情報記録面によって反射された光を受光素子に導く光ガイド部材」は、本願発明の「光源から照射された光の入射方向に対して傾斜した複数の基板を有し、光源からの光を媒体に導くとともに媒体から反射してきた光を所定の位置に導く光ガイド部材」に相当する。 引用発明によって第1基板と第2基板とを貼り合わせると、「第1基板」の第2面に形成された「反射型のNA変換ホログラム」「第1偏光ビームスプリッター膜」と、「第2基板」の第1面に形成された「反射膜」「反射型の非点収差発生ホログラム」は、「第1基板」と「第2基板」とに挟まれるから、引用発明の「第1基板と第2基板を張り合わせ」は、本願発明の「複数の基板のうち基板面に平行に形成された第1の光学素子群を備えた基板を包含する第1の基板群を第1の光学素子群を挟み込むように接合し」に相当する。 引用発明において、「反射膜」と「偏向分離膜」は、「偏光面変換基板」の基板面に非平行に形成されているから、本願発明の「基板面に非平行に形成された第2の光学素子群」に相当する。第1光ガイド部材と第2光ガイド部材は、それぞれが基板といえるもので、前記「第2の光学素子群を挟み込むように接合」する基板群であるから、引用発明の「偏光面変換基板を、第1光ガイド部材に反射膜を形成し、第2光ガイド部材上に偏光分離膜を形成し、第1光ガイド部材と第2光ガイド部材を接合した変換集合ブロックを複数形成し、変換集合ブロックを傾けて接合して変換複合ブロックを形成し、変換複合ブロックから平面に切り出して形成」することは、本願発明の「複数の基板のうち基板面に非平行に形成された第2の光学素子群を備えた第2の基板群を前記第2の光学素子群を挟み込むように接合し」に相当する。 引用発明において、「さらに第1基板、第2基板及び偏光面変換基板を貼り合わせたものの偏光面変換基板側に第3基板を張り合わせて、3枚の基板及び変換面変換基板の集合ブロックを形成し、集合ブロックを複数用意して、集合ブロックの第1基板と、他の集合ブロックの第3基板を複数接合し、最外集合ブロックの第1基板に第3基板を張り合わせた集合構成体を形成し、」についてであるが、前記集合構成体には、「第1の光学素子群を備えた基板を包含する第1の基板群」、「第2の光学素子群を備えた第2の基板群」、偏光面変換基板に接合された第3基板、及び第1基板に接合された第3基板を包含する構造体で、本願発明における「第3の基板ブロック」を構成する基板群が全て含まれることとなるものである(それ故、集合構成体を切り出すことで本願発明の光ガイド部材に相当する光ガイド部材が得られるものである。)から、本願発明の「その後」「第3の基板ブロックを形成し」に相当する工程が含まれることが明らかである。 さらに、引用発明において、集合構成体の張り合わせ面に対し45°傾斜させた方向に平面ブロックを切り出し、平面ブロックからバーブロックを形成して、バーブロックから光ガイド部材をカッティング」して「光ガイド部材」を製造している点は、本願発明の「光ガイド部材の製造方法」において、「第3の基板ブロックの主平面部に対して略45°の角度を有する」「方向に切断する」ことに相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「光源から照射された光の入射方向に対して傾斜した複数の基板を有し、光源からの光を媒体に導くとともに媒体から反射してきた光を所定の位置に導く光ガイド部材の製造方法であって、 前記複数の基板のうち基板面に平行に形成された第1の光学素子群を備えた基板を包含する第1の基板群を前記第1の光学素子群を挟み込むように接合し、 前記複数の基板のうち基板面に非平行に形成された第2の光学素子群を備えた第2の基板群を前記第2の光学素子群を挟み込むように接合し、 その後第3の基板ブロックを形成し、その後前記第3の基板ブロックの主平面部に対して略45°の角度を有する方向に切断する光ガイド部材の製造方法。」 <相違点> (相違点1) 本願発明は、「第1の基板ブロックを形成し」、「第2の基板ブロックを形成し」、「その後第1の基板ブロックと第2の基板ブロックを接合して第3の基板ブロックを形成し」ているのに対し、引用発明では、第1、第2の各基板ブロックを形成し、当該両ブロックを接合することについて言及がない点。 (相違点2) 本願発明では、「その後第3の基板ブロックの主平面部を所定の基準面に対して略45°の角度を有する平面に取り付けた後、所定の基準面に対して略垂直方向と略平行方向に」切断すると特定しているのに対して、引用例では、集合構成体を、主平面部に対して略45°の角度を有する方向に切断するのに際して、このように特定していない点。 4 当審の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1)について 本願発明と引用発明とで、最終的に製造される光ガイド部材の構成に特段の相違がないのであるから、相違点1は、要するに、前記光ガイド部材を構成する基板の接合順序が相違することに帰着する。 ここで、複数の部材を接合するに際しては、光学部材に限らず、接合の順序を決める必要があることは自明であり、かつその順序は、コスト、効率、精度等工業的な生産において普通に考慮すべき事項を適宜勘案して決められることにすぎない。 また、一般に、製造現場においては、物品の種類を問わず、一端から順々に造っていくよりは、いくつかのブロックに分けて製造した後に、各ブロックを組み合わせることで、各ブロックの製造を別々に並行的に行うことを可能とするとともに、それぞれのブロックに適したやり方で製造することが、普通に行われている。 引用発明は、複数の集合ブロックから集合構成体を形成することで、工程の低減及び生産性の向上を図るものであるが、最外ブロック一単位の形成手順は引用発明の工程の一部であるから適宜採用しうる事項にすぎない。 これらの事項を考慮すると、引用発明において、第1基板と第2基板を張り合わせたとき、次に当該貼り合わせたものの第2基板側に偏光面変換基板を張り合わせる手順に代えて、最外ブロックの形成手順を適用して第1基板側に第3基板を貼り合わせて第1基板ブロックに相当する光学ブロックを形成しておき、別途、偏光面変換基板に第3基板を張り合わせて第2基板ブロックに相当する光学ブロックを形成することは、光学ガイド部材の製造において、単に複数の部分に分けて並行して作成する程度のことにすぎず、その後、前記両光学ブロックを貼り合わせるのは、光学ガイド部材を複数の部分に分割して製造する以上当然後続する工程にすぎないから、第2基板と偏光面変換基板とで接合して、本願発明の第3の基板ブロックに相当するブロックとすることは、当業者が容易に想到しうるものである。 (相違点2)について 部材を切り出す際に、傾斜治具を用いることは常套手段(例.特開平5-84701号公報、特開平6-90843号公報等。)であるから、引用発明においても、各基板の面に対して45°の角度を有する方向に切断する際に、第3の基板ブロックの主平面部を所定の基準面に対して略45°の角度を有する平面に取り付けた後、所定の基準面に対して略垂直方向と略平行方向に切断することは、前記常套手段を参酌して当業者が容易に想到しうるものである。 以上のことからすると、前記相違点は、格別なものではなく、また、前記相違点を総合的に検討しても本願発明の奏する効果は、当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づき、技術常識及び周知技術も考慮することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-14 |
結審通知日 | 2007-11-20 |
審決日 | 2007-12-17 |
出願番号 | 特願平8-291450 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田良島 潔 |
特許庁審判長 |
山田 洋一 |
特許庁審判官 |
樫本 剛 江畠 博 |
発明の名称 | 光ガイド部材の製造方法 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 永野 大介 |