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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1172327 |
審判番号 | 不服2005-21317 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-11-04 |
確定日 | 2008-02-07 |
事件の表示 | 特願2000-119003「電子部品実装用装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 2日出願公開、特開2001-308595〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年4月20日の出願であって、平成17年9月7日付けで手続補正がされたが、同年9月29日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年11月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年11月28日付けで手続補正がされたものである。 第2 平成17年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年11月28日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。 [理由] 1.手続補正の内容 本件手続補正は、本件手続補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するための事項である「タクトタイム」について、「前記タクトタイムは電子部品実装ラインの他装置による外乱要素を包含したタクトタイムである」と限定する補正事項を含むものである。 上記補正事項は、タクトタイムの具体的な内容を限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件手続補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。 2.本願補正発明1 本願補正発明1は、本件手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「電子部品を基板に実装して実装基板を製作する電子部品実装工程において使用される電子部品実装用装置であって、生産対象基板の予定生産枚数を設定する予定生産量設定手段と、基板検出センサによって検出された基板検出信号をカウントすることにより既生産の基板枚数を検出する既生産量検出手段と、基板検出センサによって検出される基板検出タイミング間のインターバルを計測することにより当該時点における生産のタクトタイムを実測するタクトタイム実測手段と、予定生産枚数から既生産の基板枚数を減じて求められる残生産枚数と前記実測されたタクトタイムとに基づいて生産終了予定時刻を予測する終了時刻予測手段と、予測された生産終了予定時刻と、既生産枚数とこの既生産枚数を設定枚数で除して得られる終了率と、基板検出センサの検出インターバルに基づいて検出されたサイクルタイムとを表示する表示手段とを備え、前記タクトタイムは電子部品実装ラインの他装置による外乱要素を包含したタクトタイムであることを特徴とする電子部品実装用装置。」 3.引用例及び引用例の主な記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-29697号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 1a「本発明は、電子回路基板に部品を装着する装置に関する。」(【0001】) 1b「上記部品装着装置11は、他の機器と共に電子回路基板組立ラインを構成する。」(【0011】) 1c「次に部品装着装置11の動作について説明する。まず入出力装置41から生産予定枚数デ-タ、生産予定時間デ-タを入力する。これらのデ-タはデ-タ記憶部42に格納される。・・・ステップ3では生産実績枚数デ-タを1からカウントアップする。生産実績枚数デ-タもデ-タ記憶部42に格納されて行く。・・・まずステップ4で生産予定枚数デ-タ、生産予定時間デ-タ、生産開始日時デ-タ、生産実績枚数デ-タが取得され、ステップ5で生産開始日時から現在までの経過時間を計算する。ステップ6では現在までに生産を終えているべき枚数である基準生産枚数と終了予測日時を計算する。計算結果は表示装置45に表示される。」(【0012】) 1d「ちなみに、・・・終了予測日時を求める計算式は下記の通りである。 ・・・ 終了予測日時=(A-D)×(B/D)+現在の日時 …(b) A:生産予定枚数 B:生産開始日時から現在までの経過時間 ・・・ D:生産実績枚数」(【0013】?【0014】) 4.当審の判断 (1)引用発明 引用例1には、「他の機器と共に電子回路基板組立ラインを構成する」「電子回路基板に部品を装着する装置」(摘示1a、1b)に関して記載されている。そして、その部品装着装置の動作について、「入出力装置41から生産予定枚数デ-タ・・・を入力する。これらのデ-タはデ-タ記憶部42に格納される。」(摘示1c)と記載されているから、上記装置は、電子回路基板の生産予定枚数を設定する生産予定枚数設定手段を備えているといえる。 また、「ステップ3では生産実績枚数デ-タを1からカウントアップする。生産実績枚数デ-タもデ-タ記憶部42に格納されて行く。」(摘示1c)との記載によれば、上記装置は、生産実績枚数を検出する生産実績枚数検出手段を備えているといえる。 また、「まずステップ4で生産予定枚数デ-タ、・・・生産開始日時デ-タ、生産実績枚数デ-タが取得され、ステップ5で生産開始日時から現在までの経過時間を計算する。ステップ6では現在までに生産を終えているべき枚数である基準生産枚数と終了予測日時を計算する。計算結果は表示装置45に表示される。」(摘示1c)との記載及び摘示1dの記載によれば、上記装置は、生産予定枚数から生産実績枚数を減じて求められる枚数と、生産開始日時から現在までの経過時間を生産実績枚数で除したものとに基づいて終了予測日時を計算により求める終了予測日時計算手段と、計算により求められた終了予測日時を表示する表示手段を備えているといえる。 以上の記載及び認定事項を本願補正発明1の記載ぶりに即して整理すると、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「他の機器と共に電子回路基板組立ラインを構成する電子回路基板に部品を装着する装置であって、電子回路基板の生産予定枚数を設定する生産予定枚数設定手段と、生産実績枚数を検出する生産実績枚数検出手段と、生産予定枚数から生産実績枚数を減じて求められる枚数と、生産開始日時から現在までの経過時間を生産実績枚数で除したものとに基づいて終了予測日時を計算により求める終了予測日時計算手段と、計算により求められた終了予測日時を表示する表示手段とを備えた電子回路基板に部品を装着する装置。」(以下、「引用発明」という。) (2)本願補正発明1と引用発明との対比 本願補正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「他の機器と共に電子回路基板組立ラインを構成する電子回路基板に部品を装着する装置」、「電子回路基板」、「生産実績枚数」、「生産予定枚数から生産実績枚数を減じて求められる枚数」、「終了予測日時」は、それぞれ、本願補正発明1における「電子部品を基板に実装して実装基板を製作する電子部品実装工程において使用される電子部品実装用装置」、「生産対象基板」、「既生産の基板枚数」、「予定生産枚数から既生産の基板枚数を減じて求められる残生産枚数」、「終了時刻」に相当する。 また、引用発明における「終了予測日時を計算により求める」ことは、すなわち、終了予測日時を予測することであるから、本願補正発明1における「生産終了予定時刻を予測する」ことに相当するといえる。 また、引用発明における「生産開始日時から現在までの経過時間を生産実績枚数で除したもの」が、生産開始から現在までの平均の生産のタクトタイムを意味するものであることは明らかである(必要であれば、特開平3-154752号公報の第4頁左上欄第1?7行参照)から、本願補正発明1と引用発明とは、 「電子部品を基板に実装して実装基板を製作する電子部品実装工程において使用される電子部品実装用装置であって、生産対象基板の予定生産枚数を設定する予定生産量設定手段と、既生産の基板枚数を検出する既生産量検出手段と、予定生産枚数から既生産の基板枚数を減じて求められる残生産枚数とタクトタイムとに基づいて生産終了予定時刻を予測する終了時刻予測手段と、予測された生産終了予定時刻を表示する表示手段とを備えた電子部品実装用装置。」 の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 相違点イ 既生産の基板枚数を検出するにあたり、本願補正発明1では、「基板検出センサによって検出された基板検出信号をカウントすることにより」行うのに対して、引用発明では、基板検出センサによって検出された基板検出信号をカウントすることにより行うのか否か不明である点。 相違点ロ 本願補正発明1は、「基板検出センサによって検出される基板検出タイミング間のインターバルを計測することにより当該時点における生産のタクトタイムを実測するタクトタイム実測手段」を備えるものであり、また、生産終了予定時刻を予測するにあたり、このタクトタイム実測手段により「実測された」「電子部品実装ラインの他装置による外乱要素を包含した」タクトタイムに基づいて予測するものであるのに対して、引用発明は、このようなタクトタイム実測手段を備えるものではなく、また、生産終了予定時刻を予測するにあたり、生産開始日時から現在までの経過時間を生産実績枚数で除したもの、すなわち、生産開始から現在までの平均の生産のタクトタイムに基づいて予測するものである点。 相違点ハ 本願補正発明1では、表示手段に、さらに「既生産枚数とこの既生産枚数を設定枚数で除して得られる終了率と、基板検出センサの検出インターバルに基づいて検出されたサイクルタイム」を表示させるのに対して、引用発明では、表示手段に、さらに上記終了率及びサイクルタイムを表示させるか否か不明である点。 (3)相違点についての判断 (3-1)相違点イについて 既生産の基板枚数を検出するにあたり、基板検出センサによって検出された基板検出信号をカウントすることにより行うことは周知技術である(必要であれば、特開平8-185204号公報の第6頁右欄第18?21行等参照。)から、引用発明において、上記周知技術を適用して、既生産の基板枚数を検出するにあたり、「基板検出センサによって検出された基板検出信号をカウントすることにより」行うことは、当業者が容易に想到することである。また、それによる効果も格別顕著なものとはいえない。 (3-2)相違点ロについて 現在の生産状況を時々刻々に把握することは、当業者が常に念頭に置いている技術的課題である(特開平6-29697号公報(引用例1)の【0002】、【0018】等参照。)。 一方、タクトタイムを求めるにあたり、基板検出センサによって検出される検出タイミング間のインターバルを計測することにより、その時点における生産のタクトタイムを実測することは周知技術である(必要であれば、特開平8-185204号公報の第5頁右欄第13?21行等参照。)が、この実測されたタクトタイムが「電子部品実装ラインの他装置による外乱要素を包含した」その時点におけるタクトタイムであることは明らかである。 そうすると、より的確に現在の生産状況を時々刻々に把握するために、引用発明において、過去の実績である、生産開始から現在までの平均の生産のタクトタイムに代えて、その時点におけるタクトタイムを、上記周知技術による実測手段を用いて実測することは、当業者が容易に想到することである。すなわち、引用発明において、「基板検出センサによって検出される基板検出タイミング間のインターバルを計測することにより当該時点における生産のタクトタイムを実測するタクトタイム実測手段」を備えさせるとともに、生産終了予定時刻を予測するにあたり、このタクトタイム実測手段により「実測された」「電子部品実装ラインの他装置による外乱要素を包含した」タクトタイムに基づいて予測することは、当業者が容易に想到することである。また、それによる効果も格別顕著なものとはいえない。 (3-3)相違点ハについて 表示手段に、「既生産枚数とこの既生産枚数を設定枚数で除して得られる終了率」や「基板検出センサの検出インターバルに基づいて検出されたサイクルタイム」を表示させることは周知技術である(必要であれば、登録実用新案第3014566号公報の【0014】、特開平6-169200号公報等参照。)から、引用発明において、上記周知技術を適用して、表示手段に、さらに「既生産枚数とこの既生産枚数を設定枚数で除して得られる終了率と、基板検出センサの検出インターバルに基づいて検出されたサイクルタイム」を表示させることは、当業者が容易に想到することである。また、それによる効果も格別顕著なものとはいえない。 (4)小括 したがって、本願補正発明1は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明 平成17年11月28日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の発明は、平成17年9月7日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「電子部品を基板に実装して実装基板を製作する電子部品実装工程において使用される電子部品実装用装置であって、生産対象基板の予定生産枚数を設定する予定生産量設定手段と、基板検出センサによって検出された基板検出信号をカウントすることにより既生産の基板枚数を検出する既生産量検出手段と、基板検出センサによって検出される基板検出タイミング間のインターバルを計測することにより当該時点における生産のタクトタイムを実測するタクトタイム実測手段と、予定生産枚数から既生産の基板枚数を減じて求められる残生産枚数と前記実測されたタクトタイムとに基づいて生産終了予定時刻を予測する終了時刻予測手段と、予測された生産終了予定時刻と、既生産枚数とこの既生産枚数を設定枚数で除して得られる終了率と、基板検出センサの検出インターバルに基づいて検出されたサイクルタイムとを表示する表示手段とを備えたことを特徴とする電子部品実装用装置。」(以下、「本願発明1」という。) 第4 原査定の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開平3-154752号公報 2.特開平6-29697号公報 3.特開平9-223896号公報 第5 引用例及び引用例の主な記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-29697号公報(前出の引用例1と同じ。)の主な記載事項は、上記「第2 3.」に記載したとおりである。 第6 当審の判断 1.引用発明 引用例1には、上記「第2 4.(1)」に記載したとおり、以下の引用発明が記載されていると認められる。 「他の機器と共に電子回路基板組立ラインを構成する電子回路基板に部品を装着する装置であって、電子回路基板の生産予定枚数を設定する生産予定枚数設定手段と、生産実績枚数を検出する生産実績枚数検出手段と、生産予定枚数から生産実績枚数を減じて求められる枚数と、生産開始日時から現在までの経過時間を生産実績枚数で除したものとに基づいて終了予測日時を計算により求める終了予測日時計算手段と、計算により求められた終了予測日時を表示する表示手段とを備えた電子回路基板に部品を装着する装置。」 2.本願発明1と引用発明との対比、判断 本願発明1は、上記「第2」で検討した本願補正発明1から「前記タクトタイムは電子部品実装ラインの他装置による外乱要素を包含したタクトタイムである」という限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明1の発明を特定するための事項を全て含み、さらに他の発明を特定するための事項を付加したものに相当する本願補正発明1が、上記「第2」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-30 |
結審通知日 | 2007-12-04 |
審決日 | 2007-12-18 |
出願番号 | 特願2000-119003(P2000-119003) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔、永安 真 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
井上 猛 坂本 薫昭 |
発明の名称 | 電子部品実装用装置 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 永野 大介 |