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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F15B
管理番号 1173107
審判番号 不服2006-4860  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-16 
確定日 2008-02-15 
事件の表示 平成 8年特許願第340378号「流体圧シリンダ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月23日出願公開、特開平10-169612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成8年12月6日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月26日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「シリンダチューブの端部内面にエンドカバーの外周面が嵌合され、エンドカバーの中央孔にピストンロッドが摺動自在に挿通され、シリンダチューブ端部に形成された配管ポートが第1連通路を介してエンドカバーの中央孔に連通され、エンドカバーの中央孔とロッド側室とを連通するバイパス流路の流れがクッションバルブによって調節される流体圧シリンダにおいて、前記第1連通路と前記クッションバルブのクッションバルブ挿入穴とを、軸線方向に接近又は一致しかつシリンダ中心線に関して所定角度ずらして配置することによりエンドカバーの軸線方向性を短縮化し、エンドカバーの外周面には該外周面を一周し、第1連通路とクッションバルブ挿入穴とを区画し、軸線方向に所定の幅を持たせシリンダ中心線に垂直な平面に含まれない1本の空間曲線ガスケット溝が第1連通路とクッションバルブ挿入穴との間に形成され、前記空間曲線ガスケット溝に1本の空間曲線ガスケットが装着されたことを特徴とする流体圧シリンダ。」

2.引用例
(1)これに対して、当審における、平成19年8月23日付けで通知した拒絶の理由に引用した米国特許第3418888号明細書(以下、「引用例1」という。)には、第1欄ないし第4欄の記載事項及びFIG.1ないしFIG.3の図示内容を総合すると、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「シリンダチューブ(11)の端部内面にエンドカバー(23)の外周面が嵌合され、エンドカバー(23)の中央孔(29)にピストンロッド(21,30)が摺動自在に挿通され、シリンダチューブ端部に形成された配管ポート(18)が連通路(32)を介してエンドカバー(23)の中央孔(29)に連通され、エンドカバーの中央孔(29)とロッド側室(22)とを連通するバイパス流路(37,38)の流れがクッションバルブ(40)によって調節される流体圧シリンダ(10)において、前記連通路(32)と前記クッションバルブ(40)のクッションバルブ挿入穴(39)とを、軸線方向で一致しかつシリンダ中心線に関して概ね120度ずらして配置し、エンドカバー(23)の外周面には該外周面を一周し、連通路(32)及びクッションバルブ挿入穴(39)とロッド側室(22)とを区画し、シリンダ中心線に垂直な平面に含まれる1本の環状ガスケット溝が連通路(32)及びクッションバルブ挿入穴(39)とロッド側室(22)との間に形成され、前記環状ガスケット溝に1本の環状ガスケット(27)が装着された流体圧シリンダ(10)。」

(2)同じく、引用した実願平1-48393号(実開平2-138285号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、「流路切換弁」と題して、図面と共に次の事項が記載されている。

・「第1図及び第2図において、1は合成樹脂製等の筒状弁本体で、その周面の上下対称位置に一対の流出入口3,4と一対の流出口5,6を所定の間隔をおいて一体形成し、該弁本体の両端に原水流入口2を有する入水蓋18と後述の閉子を軸承する軸受蓋19を固定する。A,Bは該弁本体1内に同一軸線を保って回転自由に密嵌する合成樹脂製等の円筒型閉子で、一方の閉子Aは軸方向の両端を開口7,8としかつ周面の前記流出入口3,4に対応する位置に一対の弁口9,10を形成し、かつ又弁室内部に斜めに区分壁11を設けて一端の開口7と弁口9、他端の開口8と弁口10を連通する流路a,a’に区分し、」(明細書8頁4行?9頁1行)

・「21は閉子、弁本体の接合面に備えるシール材」(同書10頁4行)

・また、第1図及び第2図には、弁口9と弁口10とが、軸線方向に一致しかつ円筒型閉子Aの軸線に関して180度ずらして配置され、円筒型閉子Aの外周面には該外周面を一周し、弁口9と弁口10とを区画し、軸線方向に所定の幅を持たせ円筒型閉子Aの軸線に垂直な平面に含まれない1本の空間曲線状のシール溝が弁口9と弁口10との間に形成され、前記空間曲線状のシール溝に1本の空間曲線状のシール材21が装着された構成が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「筒状弁本体1の内面に円筒型閉子Aの外周面が嵌合され、筒状弁本体1に形成された流出入口3が弁口9を介して円筒型閉子Aの一端の開口7に連通され、筒状弁本体1に形成された流出入口4が弁口10を介して円筒型閉子Aの他方の開口8に連通され、前記弁口9と弁口10とが、軸線方向に一致しかつ円筒型閉子Aの軸線に関して180度ずらして配置され、円筒型閉子Aの外周面には該外周面を一周し、弁口9と弁口10とを区画し、軸線方向に所定の幅を持たせ円筒型閉子Aの軸線に垂直な平面に含まれない1本の空間曲線状のシール溝が弁口9と弁口10との間に形成され、前記空間曲線状のシール溝に1本の空間曲線状のシール材21が装着された流路切換弁。」

3.対比
本願発明と引用発明1を対比すると、後者における「連通路」が前者における「第1連通路」に相当している。
また、後者の「連通路とクッションバルブのクッションバルブ挿入穴とを、軸線方向で一致しかつシリンダ中心線に関して概ね120度ずらして配置し」た構成と前者の「第1連通路とクッションバルブのクッションバルブ挿入穴とを、軸線方向に接近又は一致しかつシリンダ中心線に関して所定角度ずらして配置することによりエンドカバーの軸線方向性を短縮化し」た構成とは、「第1連通路とクッションバルブのクッションバルブ挿入穴とを、軸線方向に接近又は一致しかつシリンダ中心線に関して所定角度ずらして配置し」た構成との概念で共通し、後者の「連通路及びクッションバルブ挿入穴とロッド側室とを区画し」た構成と前者の「第1連通路とクッションバルブ挿入穴とを区画し」た構成とは、「所定の各領域を区画し」た構成との概念で共通し、後者の「シリンダ中心線に垂直な平面に含まれる1本の環状ガスケット溝が連通路及びクッションバルブ挿入穴とロッド側室との間に形成され、前記環状ガスケット溝に1本の環状ガスケットが装着された」構成と前者の「軸線方向に所定の幅を持たせシリンダ中心線に垂直な平面に含まれない1本の空間曲線ガスケット溝が第1連通路とクッションバルブ挿入穴との間に形成され、前記空間曲線ガスケット溝に1本の空間曲線ガスケットが装着された」構成とは、「1本のガスケット溝が所定の各領域の間に形成され、前記ガスケット溝に1本のガスケットが装着された」との概念で共通している。

したがって、両者は、
「シリンダチューブの端部内面にエンドカバーの外周面が嵌合され、エンドカバーの中央孔にピストンロッドが摺動自在に挿通され、シリンダチューブ端部に形成された配管ポートが第1連通路を介してエンドカバーの中央孔に連通され、エンドカバーの中央孔とロッド側室とを連通するバイパス流路の流れがクッションバルブによって調節される流体圧シリンダにおいて、前記第1連通路と前記クッションバルブのクッションバルブ挿入穴とを、軸線方向に接近又は一致しかつシリンダ中心線に関して所定角度ずらして配置し、エンドカバーの外周面には該外周面を一周し、所定の各領域を区画し、1本のガスケット溝が所定の各領域の間に形成され、前記ガスケット溝に1本のガスケットが装着された流体圧シリンダ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
第1連通路とクッションバルブのクッションバルブ挿入穴とを、軸線方向に接近又は一致しかつシリンダ中心線に関して所定角度ずらして配置した構成に関し、本願発明が、このように配置「することによりエンドカバーの軸線方向性を短縮化」した構成であるのに対し、引用発明1は、かかる構成が明確にされていない点。
[相違点2]
ガスケット溝の区画対象及び形成箇所を規定する「所定の各領域」に関し、本願発明が、「第1連通路とクッションバルブ挿入穴」としているのに対し、引用発明1は、「連通路(第1連通路)及びクッションバルブ挿入穴とロッド側室」である点。
[相違点3]
ガスケット溝の形状に関し、本願発明が、「軸線方向に所定の幅を持たせシリンダ中心線に垂直な平面に含まれない」1本の「空間曲線」ガスケット溝としているのに対し、引用発明1は、「シリンダ中心線に垂直な平面に含まれる」1本の「環状」ガスケット溝である点。
[相違点4]
ガスケットに関し、本願発明が、「空間曲線」ガスケットとしているのに対し、引用発明1は、単なる「環状」ガスケットである点。

4.判断
以下、上記相違点について検討する。

・相違点1について
本願発明において、「エンドカバーの軸線方向性を短縮化」するとの技術的な意味は、特許請求の範囲の記載からは必ずしも一義的に解釈することができないため、本願明細書の発明の詳細な説明の項を参酌するに、段落【0014】には、「第1連通路(配管ポート)とクッションバルブ挿入穴(クッションバルブ調節穴)を軸線方向に接近又は一致させて配置することができ、エンドカバーの軸線方向の寸法を短縮化することができる。」と記載されている。
かかる記載によれば、本願発明における「エンドカバーの軸線方向性を短縮化」するとは、「エンドカバーの軸線方向の寸法を短縮化」するとの意味であると解される。
そうであれば、引用発明1も、第1連通路とクッションバルブのクッションバルブ挿入穴とを、軸線方向に一致させて配置する構成を備えているものである以上、本願発明と同様に、エンドカバーの軸線方向の寸法を短縮化する構成になっているものと解される。
そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点とはいえない。

・相違点2ないし4について
本願明細書には、図3の従来例について、段落【0005】に「エンドカバー12の外周面には、シリンダチューブ11の中心線X-Xに対して垂直な3つの平面上に、第1環状ガスケット溝33、第2環状ガスケット溝34及び第3環状ガスケット溝35がそれぞれ形成されている。・・・第2環状ガスケット溝34は軸線方向に関して第1連通路24及びクッションバルブ挿入穴26の間に位置し、・・・ている。第1環状ガスケット溝33、第2環状ガスケット溝34及び第3環状ガスケット溝35には、第1環状ガスケット33a、第2環状ガスケット34a及び第3環状ガスケット35aがそれぞれ装着されている。なお、図3にはガスケットの符号は省略され付されていない。・・・第2環状ガスケット34aによって配管ポート23・第1連通路24とクッションバルブ調節穴25・クッションバルブ挿入穴26との間が密封され、」と記載されている。
かかる記載によれば、エンドカバーの外周面を一周するガスケットにより、第1連通路とクッションバルブ挿入穴との間を密封するという課題自体は、流体圧シリンダにおける周知の課題であるといえる。
一方、引用発明2は、流路切換弁において、一対の弁口が軸線方向に一致しかつ中心線(軸線)に関して所定角度(180度)ずらして配置され、円筒型閉子の外周面には該外周面を一周し、一対の弁口を区画し、軸線方向に所定の幅を持たせ中心線に垂直な平面に含まれない1本の空間曲線ガスケット溝(空間曲線状のシール溝)を一対の弁口の間に形成し、前記空間曲線ガスケット溝に1本の空間曲線ガスケット(空間曲線状のシール材)を装着した構成を有するものであるから、かかる構成により、一対の弁口間を空間曲線ガスケットで密封できることは明らかである。
引用発明1と引用発明2とは、流体制御装置という同一の技術分野に属するものであるから、引用発明1において、エンドカバーの外周面を一周するガスケットにより、第1連通路とクッションバルブ挿入穴との間を密封するという周知の課題の下に、エンドカバーの外周面を一周するガスケットとして引用発明2の空間曲線ガスケットの構成を採用することにより、相違点2ないし4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明の全体構成により奏される効果は、引用発明1及び2から予測し得る範囲内のものにすぎない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-20 
結審通知日 2007-11-27 
審決日 2007-12-10 
出願番号 特願平8-340378
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F15B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 谷口 耕之助
本庄 亮太郎
発明の名称 流体圧シリンダ  
代理人 林 宏  
代理人 堀 宏太郎  
代理人 吉迫 大祐  
代理人 林 直生樹  
代理人 後藤 正彦  

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