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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1173182
審判番号 不服2004-12441  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-17 
確定日 2008-02-14 
事件の表示 特願2000- 21089「自動取引装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月10日出願公開、特開2001-216446〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年1月31日の出願であって、平成16年5月10日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成19年8月20日付で当審による拒絶理由が通知され、同年10月22日付で手続補正がされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年10月22日付の手続補正により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】 宝くじ購入用のキー、自動キー及びテンキーを有する入力手段と、表示手段と、前記入力手段の宝くじ購入用のキーが選択されると、所定のカードの挿入及び暗証番号の入力を前記表示手段を通して指示し、前記カードの挿入及び暗証番号の入力を検知したときは前記カードに記録された情報と前記暗証番号とを上位装置に転送する情報転送手段と、上位装置から前記カードの有効を示す情報が入ってきたときに、数字選択式宝くじの種類を前記表示手段に表示し、前記入力手段によって何れか一つの数字選択式宝くじが選択されたときはそれを前記記憶手段に保持する宝くじ設定手段とを有する自動取引装置において、
記憶手段と、
選択された数字選択式宝くじの抽選数字の入力を前記表示手段を通して指示し、テンキーが押下されたときは、その操作に基づく数字を抽選数字とし、選択された数字選択式宝くじに応じて自動キーが繰り返し押下されたときは、その都度、予め設けられた乱数発生部を起動して乱数を発生させ、所定のタイミングで各乱数を取り込んで抽選数字とし、また、テンキーあるいは自動キーの押下が組み合わされたときは、その各キーの操作の都度選択された数字あるいは発生された乱数を取り込んだ数字を数字選択式宝くじの抽選数字として、前記記憶手段に保持する抽選数字設定手段と、
抽選数字の設定が終了したときに数字選択式宝くじの購入数及び抽選回数の入力を前記表示手段を通して指示し、テンキーにより購入数及び抽選回数が入力されたときはそれらを前記記憶手段に保持すると共に、その購入数及び抽選回数に基づいて購入金額を算出し、かつ、その結果を前記記憶手段に保持されている少なくとも数字選択式宝くじの種類、抽選数字、購入数、抽選回数を含む各情報と共に上位装置に転送する宝くじ取引設定手段と
を備えたことを特徴とする自動取引装置。」

3.当審の拒絶の理由の概要
当審が通知した、平成19年8月20日付拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
『この出願の請求項1に係る発明は、その出願前において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない

[引用例一覧]
引用例1:特開平8-202785号公報
引用例2:特開昭57-111795号公報 』

4.請求人の意見
平成19年10月22日付意見書における請求人の意見の概要は以下のとおりである。

『本願発明は、抽選数字の設定が終了したときに数字選択式宝くじの購入数及び抽選回数の入力を表示手段を通して指示し、テンキーにより購入数及び抽選回数が入力されたときは…、その購入数及び抽選回数に基づいて購入金額を算出する宝くじ取引設定手段を備えているのに対し、引用例1に記載の発明は、そのような手段を備えておりません。引用例1には、発行した明細票に複数の抽選日が印刷されておりますが、それがいかなる手段によって選択されたものであるのか一切記載されておらず、また、抽選日の回数を指定するための構成も何ら言及されておりません。
引用例2に記載の発明は、連番キー、一任キー(乱数発生)、バラ券キー(乱数発生)のうち何れかのキーを押すことによってくじ番号が選択される構成であるのに対し、本願発明は、テンキーによる直接入力、自動キーによる自動入力(乱数)の他に、テンキーと自動キーの組み合わせによる抽選数字の選択ができる構成となっており、3つのキーの中から1つのキーを押してくじ番号を選択するようにした引用例2から容易になされるものではありません。
また、引用例1は、数字選択式の宝くじでありますが、乱数によって数字選択式宝くじの抽選数字を発生させる構成は記載されておらず、引用例2は数字選択式でない宝くじにおいて、乱数によってくじ番号の1桁ごとの数字を決定する構成が記載されております。しかし、引用例2は、数字選択式でない宝くじの番号を選択するためのものであり、その目的は連番、バラ券の販売量の偏りをなくすことにあります。これに対して数字選択式の宝くじの抽選番号は性質上販売の偏りを考慮することはあり得ず目的が矛盾します。このため、引用例1と引用例2とを組み合わせることは困難と考えます。
従って、本願発明は、引用例1、2に開示されていない構成を備えており、その構成に起因した有利な効果が得られておりますので、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に該当しません。』

5.引用例
(1)引用例1
先の拒絶理由で引用した、特開平8-202785号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(イ)『【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銀行、信用金庫、クレジット会社、企業等におけるATM(現金自動預け払い機)、CD(現金自動支払い機)等の端末装置により、例えば宝くじ、競輪、競馬等における券類(くじ券、投票券等)を保護預かりにより販売及び管理する券類販売総合管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば宝くじ(普通くじ、数字選択式くじ)、サッカーくじ等における「くじ」券は、銀行窓口、特定の販売店等により原則的に現物販売となっている。』(段落【0001】?【0002】)

(ロ)『【0010】
【実施例】以下、図面を参照して本発明を「くじ」券の販売管理に適用した場合について説明する。図1は、本発明の一実施例に係る券類販売総合管理システムを数字選択くじ(ナンバーズ宝くじ)販売管理に適用した場合の概略構成例を示したものである。
【0011】図1において、1はATM(現金自動預け払い機)、CD(現金自動支払い機)等の端末装置で、例えば銀行、信用金庫、クレジット会社等の金融機関の本支店、あるいは企業等に設置される。上記各端末装置1は、それぞれ通信回線を介して各系列の金融機関3の事務センターであるホストコンピュータ4に接続されている。上記端末装置1は、通常の現金自動預け払い機能と共に、「くじ」券の保護預りによる販売機能を有している。即ち、端末装置1は、入力指示に基づいて「くじ」券の販売処理を行なった場合に、その「くじ」券を保護預かりとすると共に、「くじ」券の番号、枚数等の詳細を記載した利用明細票2を発行する。この利用明細票2は、通常の現金自動預け払いの時に発行されるものを利用する。なお、上記端末装置1における「くじ」券購入操作は、通常、キーボードあるいはタッチパネル等を用いて行なうが、その他、OCR(光学式文字読取装置)/OMR(光学式マーク読取装置)等のマークシートによる購入、ICカード、音声入力の併用も可能である。』(段落【0010】?【0011】)

(ハ)『【0015】次に上記実施例の動作を説明する。図2は、「くじ」券購入方法の概略を示したものである。「くじ」券の購入希望者は、口座を保有している近くの銀行等に出向き、そこに設けられているATM等の端末装置1を操作して「くじ」券、この例では数字選択くじ(ナンバーズ宝くじ)を購入する。例えば端末装置1の画面に表示されている操作ガイドに従って「くじ券販売」の項目を選択し、キャッシュカードを挿入して暗証番号を挿入した後、表示ガイドに従って数字選択くじの種類、タイプ、ナンバー、枚数等を画面入力すると、端末装置1は、キャッシュカード及び暗証番号により本人確認及び残高確認を行ない、本人の預金口座、例えば普通預金口座から購入代金を自動的に引き落とすと共に、購入くじ券を保護預りとし、例えば図3に示すような利用明細票2を発行する。
【0016】この利用明細票2には、例えば「取扱い店番号」、「取引内容」、「銀行番号」、「支店番号」、「口座番号」、「取扱日」、「取引金額」、「取引後残高」等と共に、「くじ」購入明細が記載される。「くじ」購入明細としては、「数字選択くじの種類」、「抽選日」、「タイプ」、「組合せ数字」、「枚数」等が示される。
【0017】「数字選択くじの種類」には、「ナンバーズ4(フォー)」と「ナンバーズ3(スリー)」があり、その券額面は例えば200円である。「ナンバーズ4(フォー)」は、4つの数字を任意に選択し、その順列及び組合せによって当落を判定するものである。「ナンバーズ3(スリー)」は、3つの数字を任意に選択し、順列及び組合せによって当落を判定するものである。』(段落【0015】?【0017】)

(ニ)『【0028】図6において、端末装置1は、通常は取引き内容を示す各種項目を表示しており、「くじ」券の購入希望者により「くじ券販売」の項目が指定された後、キャッシュカードが挿入されて暗証番号がキー入力されると(ステップA1)、キャッシュカードに書き込まれている店番号、口座番号と共に暗証番号を金融機関3のホストコンピュータ4へ転送する。ホストコンピュータ4は、顧客マスター21を参照して店番号、預金口座番号、暗証番号をチェックし(ステップB1)、その結果を端末装置1へ返送する。端末装置1は、ホストコンピュータ4からのデータによって確認の正否を判断し(ステップA2)、確認を取れなかった場合にはチェック内容に応じて例えば暗証番号の再入力等をガイド表示する。
【0029】また、確認が取れた場合には、画面誘導により「くじ」購入オペレーションを行ない(ステップA3)、「くじ」購入枚数、金額の決定(ステップA4)、「保護預り手数料の算出(ステップA5)、引落金額の確定(ステップA6)、等の処理を行なう。即ち、内容確認画面により購入者の承認を得て購入金額を確定し、その確定金額をホストコンピュータ4へ送信する。
【0030】ホストコンピュータ4は、残高マスター22により、引落金額以上の現在残高があるか否かをチェックし(ステップB2)、そのチェック結果を端末装置1へ返送する。端末装置1は、ホストコンピュータ4からのチェック結果により残高状態を判断し(ステップA7)、残高が足りなければその旨を画面に表示して、上記ステップA3に示した画面誘導による「くじ」購入オペレーションを再度実行する。また、残高が充分であった場合には、「くじ」購入明細データを作成し(ステップA8)、引落明細データ及び「くじ」購入明細データをホストコンピュータ4へ送出すると共に、購入受付・保護預りの確認票、即ち上記図3に示した利用明細票2を発行する(ステップA9,A10)。この場合、利用明細票2の裏面には、例えば保護預りに関する約款等を記載する。』(段落【0028】?【0030】)

(ホ)引用例1の図3には「利用明細票」の一例として、購入したくじの購入明細として数字選択式くじの種類を示す「ナンバーズ4」という情報、5回分の抽選日の日程情報、購入枚数情報、手数料情報、及び購入したくじの番号情報が印字されていることが記載されている。

なお、上記摘記事項(ハ)には、「表示ガイドに従って数字選択くじの種類、タイプ、ナンバー、枚数等を画面入力する」とあり、「数字選択くじの種類、タイプ、ナンバー、枚数」以外に入力される情報が明記されていないが、上記摘記事項(ホ)には、くじの購入明細として、前記の各情報以外に「5回分の抽選日の日程情報」が明細票に印字されていることから、画面入力される情報は、複数の「抽選日」に関する情報が入力されるていることは自明である。
また、引用例1には記憶手段についての明記はないが、前記の情報を入力し、ホストコンピュータに送信している以上、それらを記憶する記憶手段を有していることも自明である。

したがって、上記摘記事項(イ)ないし(ホ)によれば、引用例1には、
「数字選択式くじの購入のためのキーを有するキーボードあるいはタッチパネル等の入力手段と、前記入力手段の操作によりくじ券販売の項目が指定されて、キャッシュカードの挿入と暗証番号のキー入力がされたときは前記キャッシュカードに書き込まれた店番号、口座番号と前記暗証番号をホストコンピュータに転送する転送手段と、前記ホストコンピュータから前記店番号、口座番号及び暗証番号の確認が取れたとの情報が入ってきたときに、数字選択式くじの種類を入力するための画面を表示手段に表示し、前記入力手段によっていずれか一つの数字選択式くじが選択されたときは、それを記憶手段に記憶する数字選択式くじ設定手段とを有するATMにおいて、
記憶手段と、
選択された数字選択式くじのナンバーの入力を前記表示手段に表示された表示ガイドを通して指示し、前記入力手段の入力に基づくナンバーを前記記憶手段に記憶する数字選択式くじのナンバー設定手段と、
数字選択式くじの購入枚数及び複数回分の抽選日の入力を前記表示手段に表示された表示ガイドを通して指示し、前記操作手段により購入枚数及び複数回分の抽選日の入力が入力されたときはそれらを前記記憶手段に記憶し、購入金額を計算し、かつ、その結果を前記記憶手段に記憶している数字選択式くじの種類、ナンバー、購入枚数、複数回分の抽選日を含む各情報とともにホストコンピュータに転送する数字選択式くじの取引設定手段と
を備えたことを特徴とするATM。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されている。

引用例2には、下記の事項が記載されている。
(ヘ)『客がくじを買う場合、入金口8に所定の金を投入すると表示部9に金額が表示され、表示部6に「連番キー、一任キー、バラ券キーのいずれかを押して下さい」等の文字が表示される。例えば連番キー10を押すと、番号表示部11の例えば1,000桁目のアスタリスクが点滅され、メモリ部4の連番情報エリア23の桁対応売切情報エリア12に起動信号が送出される。(中略)ここにおいて1,000桁台のくじ番号に売り切れがあるか否かが判別され、売切情報がCPU3に送出され、売切れのない数即ち入力可能数のテンキー13が点滅される一方、表示部6に「点灯しているテンキーを1つ押して下さい」の文字が表示される。点灯されているテンキー13の中から客が任意の数のキーを1つ押すと、表示部11の1,000桁目に選択された数字が表示されて100桁目のアスタが点滅される一方、桁対応売切情報エリア12では100桁台のくじ番号に売切れがあるか否かが判別され、入力可能数のテンキーが点灯される。
以下同様にして全桁選択されると表示部11にくじ番号が表示される一方、選択された番号から10番後の番号までの連番の10枚1セットの券及びつり銭が発券口14からとり出される。
(中略)
なお、入力可能として点灯されたテンキー13をある桁についてだけ発売装置に一任する場合、アスタキー16を押す。これによりランダム数発生部17が作動して任意の数がとり出され、CPU3を介して桁対応売切情報エリア12に供給されて該数が売切れているか否かをチェックされ、売切れている場合に、ランダム数発生部17にて数が1づつ加算され、同様にエリア12にてチェックされる。』(第2頁右上欄第4行目?同頁右下欄第15行目)

(2)対比
そこで、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用例1発明とを対比する。

(a)引用例1発明の「数字選択式くじ」、「キャッシュカード」、「キャッシュカードに書き込まれた店番号、口座番号」、「ホストコンピュータ」、「前記店番号、口座番号及び暗証番号の確認が取れたとの情報」、「ATM」、「ナンバー」、「購入枚数」は、それぞれ、本願発明の「数字選択式宝くじ」、「カード」、「カードに記録された情報」、「上位装置」、「前記カードの有効を示す情報」、「自動取引装置」、「抽選数字」、「購入数」に相当する。
(b)引用例1発明の「数字選択式くじの購入のためのキーを含むキーボードあるいはタッチパネル等の入力手段」は、本願発明の「宝くじ購入用のキー、自動キー及びテンキーを有する入力手段」と、「宝くじ購入用のキーを有する入力手段」である点で共通する。
(c)引用例1発明の『入力手段の操作により「くじ券販売」の項目が指定』とは、引用例1発明の宝くじ購入用のキーが押下されることにより行われることは明らかであり、引用例1発明の『入力手段の操作により「くじ券販売」の項目が指定』は、本願発明の「前記入力手段の宝くじ購入用のキーが選択」に相当する。
(d)引用例1発明の「複数回分の抽選日」は、それぞれの抽選日に、数字選択式くじの抽選が行われることを示すものであり、抽選日の数は抽選回数を表すものであるところから、引用例1発明の「複数回分の抽選日」は、本願発明の「抽選回数」に相当する。
(e)引用例1発明の「購入金額を計算」が、どのように行われているかは明記されていないが、数字選択式くじの購入代金はくじの券額面と抽選日の数と購入枚数との積にもとづいて定まるものであり、引用例1発明においても購入金額の計算にあたり、そのような計算が行われていることは自明であるから、引用例1発明の「購入金額を計算」は、本願発明の「その購入数及び抽選回数に基づいて購入金額を算出」に相当する。

してみれば、本願発明と引用例1発明とは、
「宝くじ購入用のキーを有する入力手段と、表示手段と、前記入力手段の宝くじ購入用のキーが選択され、所定のカードの挿入及び暗証番号の入力を検知したときは、前記カードに記録された情報と前記暗証番号とを上位装置に転送する情報転送手段と、上位装置から前記カードの有効を示す情報が入ってきたときに、数字選択式宝くじの種類を入力するための画面を前期表示手段に表示し、前記入力手段によって何れか一つの数字選択式宝くじが選択されたときはそれを前記記憶手段に保持する宝くじ設定手段とを有する自動取引装置において、
記憶手段と、
選択された数字選択式宝くじの抽選数字の入力を前期表示手段を通して指示し、入力手段の操作に基づく数字を抽選数字として、前記記憶手段に保持する抽選数字設定手段と、
数字選択式宝くじの購入回数及び抽選回数の入力を前期表示手段を通して指示し、入力手段の操作により、購入数及び抽選回数が入力されたときはそれらを前記記憶手段に保すると共に、その購入数及び抽選回数に基づいて購入金額を算出し、かつ、その結果を前記記憶手段に保持されている少なくとも数字選択式宝くじの種類、抽選数字、抽選回数を含む各情報と共に上位装置に転送する宝くじ取引設定手段と
を備えたことを特徴とする自動取引装置」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明の入力手段が「テンキー」および「自動キー」を備えているものであるのに対して、引用例1発明では数字を入力するための何らかのキーを有していることは明らかなものの、具体的な構成については明記されていない点。

[相違点2]
本願発明が、「前記入力手段の宝くじ購入用のキーが選択されると、所定のカードの挿入及び暗証番号の入力を前記表示手段を通して指示」するものであるのに対して、引用例1発明では、「くじ券販売の項目が指定」された後に、「所定のカードの挿入及び暗証番号の入力を前記表示手段を通して指示」することについては明記されていない点。

[相違点3]
本願発明では、抽選数字設定手段が「テンキーが押下されたときは、その操作に基づく数字を抽選数字とし、選択された数字選択式宝くじに応じて自動キーが繰り返し押下されたときは、その都度、予め設けられた乱数発生部を起動して乱数を発生させ、所定のタイミングで各乱数を取り込んで抽選数字とし、また、テンキーあるいは自動キーの押下が組み合わされたときは、その各キーの操作の都度選択された数字あるいは発生された乱数を取り込んだ数字を数字選択式宝くじの抽選数字」とする構成を有し、これにより抽選数字について、すべての1単位ごとにユーザーによる指定あるいは乱数による指定を選択できるものであるのに対して、引用例1発明では、抽選数字をどのように入力するかについては明記されていない点。

[相違点4]
本願発明では、「抽選数字の設定が終了した後」に、購入数と抽選回数の入力を行うものであるのに対して、引用例1発明では入力の順序については明記されていない点。

(3)当審の判断

(3-1)[相違点1]及び[相違点3]について
引用例2の上記摘記事項(ヘ)には、「客がくじを買う場合」に用いられる「発売装置」において、「くじ番号」の数字の入力手段に関し、「発売装置に一任する」との事項が記載されており、当該事項は客が数字を考えて入力するという操作上の負担を軽減することを目的とした事項であることは明らかであり、その記載内容についてさらに検討すると、引用例2の上記摘記事項(ヘ)には、「くじ番号」の数字の入力手段に関し、『例えば連番キー10を押すと、番号表示部11の例えば1,000桁目のアスタリスクが点滅され、(中略)売切れのない数即ち入力可能数のテンキー13が点滅される一方、表示部6に「点灯しているテンキーを1つ押して下さい」の文字が表示される。点灯されているテンキー13の中から客が任意の数のキーを1つ押すと、表示部11の1,000桁目に選択された数字が表示されて100桁目のアスタが点滅される一方、桁対応売切情報エリア12では100桁台のくじ番号に売切れがあるか否かが判別され、入力可能数のテンキーが点灯される。
以下同様にして全桁選択されると表示部11にくじ番号が表示される』、「入力可能として点灯されたテンキー13をある桁についてだけ発売装置に一任する場合、アスタキー16を押す。これによりランダム数発生部17が作動して任意の数がとり出され、CPU3を介して桁対応売切情報エリア12に供給されて該数が売切れているか否かをチェックされ、売切れている場合に、ランダム数発生部17にて数が1づつ加算され、同様にエリア12にてチェックされる。」とあることから、引用例2の「くじ番号」の数字の入力手段としては、「テンキー」と、アスタキーという「ランダム数発生のためのキー」を設け、くじ番号を「テンキー」の操作に基づく数字とする第1の入力方法、くじ番号の各桁の数字を「ランダム数発生のためのキー」の操作によりランダム数発生部が発生した乱数を取り込んでくじ番号とする第2の入力方法、「テンキー」と「ランダム数発生のためのキー」の押下の組み合わせにより、その各キーの操作の都度選択された数字あるいは発生した乱数に基づく数字をくじ番号とする第3の入力方法を備えた構成が引用例2に記載されているといえる。
また、前記第1ないし第3の入力方法は、それぞれ本願発明の「テンキーが押下されたときは、その操作に基づく数字を抽選数字」とする構成、「選択された数字選択式宝くじに応じて自動キーが繰り返し押下されたときは、その都度、予め設けられた乱数発生部を起動して乱数を発生させ、所定のタイミングで各乱数を取り込んで抽選数字」とする構成、及び「テンキーあるいは自動キーの押下が組み合わされたときは、その各キーの操作の都度選択された数字あるいは発生された乱数を取り込んだ数字を数字選択式宝くじの抽選数字」とする構成に対応している。
してみると、引用例2も、引用例1発明と同様にくじの購入を目的とするものであり、一般に、情報処理装置の入力にあたって利用者の操作上の負担を軽減することは周知の技術課題であるところ、引用例1発明において上記の入力手段を採用し、入力部に「テンキー」と「ランダム数発生のためのキー」を設け、くじ番号を「テンキー」の操作に基づく数字とする第1の入力方法、くじ番号の各桁の数字を「ランダム数発生のためのキー」の操作によりランダム数発生部が発生した乱数を取り込んでくじ番号とする第2の入力方法、「テンキー」と「ランダム数発生のためのキー」の押下の組み合わせにより、その各キーの操作の都度選択された数字あるいは発生した乱数に基づく数字をくじ番号とする第3の入力方法を備えた構成とすることも当業者が容易に想到し得た事項である。
なお、引用例2の入力手段においては、各桁の入力前に売切れの番号の判定を行い、その番号が選択されないようにする処理が行われているが、これは、引用例2で販売しているくじの種類が、予め印刷されたくじであることに起因するものであり、引用例2記載の技術思想を引用例1発明に採用するにあたって、売切れに関する上記の処理を不要とすることは、販売するくじの種類に応じて適宜設定すべき事項に過ぎない。
したがって、相違点1及び3に係る本願発明の構成は引用例1発明、引用例2に記載された事項及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

(3-2)[相違点2]について
銀行のATMにおける取引情報の入力にあたっては、ひとつの操作を行なった後に、次に行なう操作のガイダンスを行なうことは、本願出願当時、既に周知の事項であって、引用例1発明においても、当該構成を採用して、「くじ券販売」の項目が指定された後に、キャッシュカードの挿入と暗証番号のキー入力を指示するガイダンスを行うようにすることも当業者であれば容易に想到し得たものである。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成は引用例1発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

(3-3)[相違点4]について
引用例1発明において、数字選択式くじを購入するために入力する情報である「ナンバー」、「購入枚数」及び「複数回分の抽選日」を、どのような順序で入力するかは、適宜設定すべき事項であり、「ナンバー」の入力後に「購入枚数」及び「複数回分の抽選日」を入力するようにすることも当業者であれば容易になし得た事項である。
したがって、相違点4に係る本願発明の構成は引用例1発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

以上判断したとおり、本願発明における上記相違点1ないし4に係る構成は、いずれも当業者が容易に想到し得たものであり、また、各相違点を総合しても本願発明は当業者が想到することが困難なものとはいえない。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された事項、及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された事項、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、「引用例2は、数字選択式でない宝くじの番号を選択するためのものであり、その目的は連番、バラ券の販売量の偏りをなくすことにあります。これに対して数字選択式の宝くじの抽選番号は性質上販売の偏りを考慮することはあり得ず目的が矛盾します。このため、引用例1と引用例2とを組み合わせることは困難と考えます。」との請求人の主張について検討すると、当審において、引用例2に記載された事項として認定したのは、上記(3-1)で述べたとおり、「客が数字を考えて入力するという操作上の負担を軽減すること」を目的とした「くじ番号」の数字の入力手段である。また、引用例2も、引用例1発明と同様にくじの購入を目的とするものであり、一般に、情報処理装置の入力にあたって利用者の操作上の負担を軽減することは周知の技術課題であるところ、引用例1発明に引用例2に記載された前記事項を組み合わせることに格別の困難性は認められないから、請求人の主張を採用することはできない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された事項、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-08 
結審通知日 2007-11-13 
審決日 2007-12-25 
出願番号 特願2000-21089(P2000-21089)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 博文  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 久保田 昌晴
田川 泰宏
発明の名称 自動取引装置  
代理人 佐々木 宗治  
代理人 大村 昇  
代理人 木村 三朗  
代理人 小林 久夫  

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