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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1173186
審判番号 不服2004-15309  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-22 
確定日 2008-02-14 
事件の表示 特願2003-163564「情報記録方法、情報記録装置及び情報記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月 6日出願公開、特開2005- 4800〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成15年6月9日に出願されたもので、平成16年5月10日付けで手続補正がなされたが平成16年6月16日付けで拒絶査定された。これに対して、平成16年7月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成16年8月23日付けで手続補正がなされたものである。


II.平成16年8月23日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年8月23日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.手続補正の内容
平成16年8月23日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲についてするものであって、そのうち特許請求の範囲については、請求項1乃至13について、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 パルス状の光を情報記録媒体に照射することにより、記録マークの時間的長さがnT(T:基本クロック周期、nは3以上の自然数)により、マーク変調方式を用いて情報を前記情報記録媒体に対して記録する情報記録方法において、
時間的長さnTの記録マークを記録する際、i番目の記録パワーがPw(n,i)のm個(ただし、i,mは1≦i≦m,m≦nなる自然数)の記録パルスとパワーPbのk個(ただし、Pb<Pw(n,i),kはk≦mなる自然数)のバイアスパルスとによるパルス状の光を照射し、
かつ、これらの記録パルス中の第1の記録パルスを当該記録するデータの開始エッジから時間的にTd(n,1)だけ遅延させて照射し、
かつ、記録マークの時間的長さnTがjT(jは2以上の自然数であるn,m,kによらない定数,m(n+j)=m(n)+1,k(n+j)=k(n)+1)増加する毎に、前記記録パルスの数と前記バイアスパルスの数とを各々1個ずつ増加させる条件下に、情報を記録するためのマーク長変調に必要な全てのnに対してTd(n,1)=Td(n+j,1)とする記録ストラテジを用いるようにしたことを特徴とする情報記録方法。
【請求項2】 記録パルスの個数mがm≧2の場合において、i番目の記録パルスと(i-1)番目の記録パルスとの立上り周期をTd(n,i)とするとき、第1の記録パルスのパルス幅Tmp(n,1)を
Td(n,2)≦Tmp(n,1)
としたことを特徴とする請求項1記載の情報記録方法。
【請求項3】 Tmp(n,1)≦Tmp(n,2)としたことを特徴とする請求項2記載の情報記録方法。
【請求項4】 記録パルスの個数mがm≧2の場合において、i番目の記録パルスと(i-1)番目の記録パルスとの立上り周期をTd(n,i)とするとき、最終の立上り周期Td(n,m)、最終直前の記録パルスのパルス幅Tmp(n,m-1)を
Td(n,m)≦Tmp(n,m-1)
としたことを特徴とする請求項1ないし3の何れか一記載の情報記録方法。
【請求項5】 記録パルスの個数mがm≧2の場合において、i番目の記録パルスと(i-1)番目の記録パルスとの立上り周期をTd(n,i)とするとき、最終の記録パルスのパルス幅Tmp(n,m)、最終直前の記録パルスのパルス幅Tmp(n,m-1)を
Tmp(n,m)≧Tmp(n,m-1)
としたことを特徴とする請求項1ないし4の何れか一記載の情報記録方法。
【請求項6】 記録パルス及びバイアスパルス以外のタイミングでは、パワーPe(ただし、Pw(n,i)>Pe>Pb)のイレースレベル光を前記情報記録媒体に照射し、
m番目の記録パルスの立上りからイレースレベルの立上りまでの周期をTlp(n)とするとき、
Tlp(n)≦Tmp(n,m)、かつ、
Pe≦Pw(n,m)≦1.2Pe
としたことを特徴とする請求項1ないし5の何れか一記載の情報記録方法。
【請求項7】 パルス状の光を情報記録媒体に照射することにより、記録マークの時間的長さがnT(T:基本クロック周期、nは3以上の自然数)により、マーク変調方式を用いて情報を前記情報記録媒体に対して記録する情報記録装置において、
前記情報記録媒体に対して照射する光ビームを発するレーザ光源と、
このレーザ光源を発光させる光源駆動手段と、
前記レーザ光源が発する光ビームの発光波形に関する記録ストラテジが設定されて前記光源駆動手段を制御する発光波形制御手段と、
前記情報記録媒体とこの情報記録媒体に照射される前記光ビームとを相対的に移動させる相対移動制御手段と、
を備え、
前記発光波形制御手段は、時間的長さnTの記録マークを記録する際、i番目の記録パワーがPw(n,i)のm個(ただし、i,mは1≦i≦m,m≦nなる自然数)の記録パルスとパワーPbのk個(ただし、Pb<Pw(n,i),kはk≦mなる自然数)のバイアスパルスとによるパルス状の光を照射し、かつ、これらの記録パルス中の第1の記録パルスを当該記録するデータの開始エッジから時間的にTd(n,1)だけ遅延させて照射し、かつ、記録マークの時間的長さnTがjT(jは2以上の自然数であるn,m,kによらない定数,m(n+j)=m(n)+1,k(n+j)=k(n)+1)増加する毎に、前記記録パルスの数と前記バイアスパルスの数とを各々1個ずつ増加させる条件下に、情報を記録するためのマーク長変調に必要な全てのnに対してTd(n,1)=Td(n+j,1)とする記録ストラテジを用いるようにしたことを特徴とする情報記録装置。
【請求項8】
前記発光波形制御手段は、記録ストラテジを、記録パルスの個数mがm≧2の場合において、i番目の記録パルスと(i-1)番目の記録パルスとの立上り周期をTd(n,i)とするとき、第1の記録パルスのパルス幅Tmp(n,1)を
Td(n,2)≦Tmp(n,1)
としたことを特徴とする請求項7記載の情報記録装置。
【請求項9】 前記発光波形制御手段は、記録ストラテジを、Tmp(n,1)≦Tmp(n,2)とすることを特徴とする請求項8記載の情報記録装置。
【請求項10】 前記発光波形制御手段は、記録ストラテジを、記録パルスの個数mがm≧2の場合において、i番目の記録パルスと(i-1)番目の記録パルスとの立上り周期をTd(n,i)とするとき、最終の立上り周期Td(n,m)、最終直前の記録パルスのパルス幅Tmp(n,m-1)を
Td(n,m)≦Tmp(n,m-1)
としたことを特徴とする請求項7ないし9の何れか一記載の情報記録装置。
【請求項11】 前記発光波形制御手段は、記録ストラテジを、記録パルスの個数mがm≧2の場合において、i番目の記録パルスと(i-1)番目の記録パルスとの立上り周期をTd(n,i)とするとき、最終の記録パルスのパルス幅Tmp(n,m)、最終直前の記録パルスのパルス幅Tmp(n,m-1)を Tmp(n,m)≧Tmp(n,m-1)
としたことを特徴とする請求項7ないし10の何れか一記載の情報記録装置。
【請求項12】 前記発光波形制御手段は、記録ストラテジを、記録パルス及びバイアスパルス以外のタイミングでは、パワーPe(ただし、Pw(n,i)>Pe>Pb)のイレースレベル光を前記情報記録媒体に照射し、m番目の記録パルスの立上りからイレースレベルの立上りまでの周期をTlp(n)とするとき、
Tlp(n)≦Tmp(n,m)、かつ、
Pe≦Pw(n,m)≦1.2Pe
としたことを特徴とする請求項7ないし11の何れか一記載の情報記録装置。
【請求項13】 パルス状の光が照射されることにより、記録マークの時間的長さがnT(T:基本クロック周期、nは3以上の自然数)により、マーク変調方式を用いて情報が記録される情報記録媒体において、
時間的長さnTの記録マークを記録する際、i番目の記録パワーがPw(n,i)のm個(ただし、i,mは1≦i≦m,m≦nなる自然数)の記録パルスとパワーPbのk個(ただし、Pb<Pw(n,i),kはk≦mなる自然数)のバイアスパルスとによるパルス状の光を照射し、かつ、これらの記録パルス中の第1の記録パルスを当該記録するデータの開始エッジから時間的にTd(n,1)だけ遅延させて照射し、かつ、記録マークの時間的長さnTがjT(jは2以上の自然数であるn,m,kによらない定数,m(n+j)=m(n)+1,k(n+j)=k(n)+1)増加する毎に、前記記録パルスの数と前記バイアスパルスの数とを各々1個ずつ増加させる条件下に、情報を記録するためのマーク長変調に必要な全てのnに対してTd(n,1)=Td(n+j,1)とする記録ストラテジが用いられる記録条件のとき、
n/jの余りに対するTd(n,1)の値がプリフォーマットされていることを特徴とする情報記録媒体。」

と、補正前の請求項1,7,13に係る情報記録方法/情報記録装置/記録媒体の各発明について、それぞれ、「記録マークの時間的長さがnT(T:基本クロック周期、nは3以上の自然数)で表される情報を前記情報記録媒体に対して記録する情報記録方法/情報記録装置/記録媒体において」としていた上記「で表される」に換えて、「により、マーク変調方式を用いて」とするものであり、加えて「前記記録パルスの数と前記バイアスパルスの数とを各々1個ずつ増加させる条件下に、Td(n,1)=Td(n+j,1)とする」としていた「条件下に、」と「Td(n,1)=Td(n+j,1)とする」の間に「情報を記録するためのマーク長変調に必要な全てのnに対して」との下線部構成要件を付加するものである。

2.本件補正の目的
上記本件補正の内容は、補正前の請求項1,7,13に係る各発明の要件を具体的に限定しようとするものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
次に、本件補正の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)について、検討する。
(1)補正後発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、上記1.の【請求項1】に記載されたとおりのものである。

(2)刊行物及びその記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、特開2001-331936号公報(平成13年11月30日出願公開、以下「刊行物」という。)である。
-刊行物の記載-
刊行物には、「本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、高密度記録や高速記録に適した短いクロック周期でのマーク長記録においても、良好な記録が行えるような光記録方法とそれに適した光記録媒体を提供することにある。」(【0026】)としてなされた光記録方法に関する発明について、以下の記載がある。
(i)「【特許請求の範囲】
【請求項1】記録媒体に光を照射することによってマーク長変調された情報を複数の記録マーク長により記録するにあたり、一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(Tは基準クロック周期であって25ns以下である。nは2以上の自然数である。)、記録マークの時間的長さnTを、
【数1】
η_(1)T、α_(1)T、β_(1)T、α_(2)T、β_(2)T、・・・、α_(i)T、β_(i)T、・・・、α_(m)T、β_(m)T、η_(2)T
(mはパルス分割数である。Σ_(i)(α_(i) +β_(i) )+η_(1)+η_(2)=nである。α_(i)(1≦i≦m)は0より大きい実数であり、β_(i)(1≦i≦m-1)は0より大きい実数であり、β_(m)は0以上の実数である。η_(1)及びη_(2)はそれぞれ-2以上2以下の実数である。)の順に分割し、
α_(i)T(1≦i≦m)の時間内においては記録パワーPw_(i)の記録光を照射し、
β_(i)T(1≦i≦m-1)の時間内においては、Pb_(i)<Pw_(i)かつPb_(i)<Pw_(i+1)なるバイアスパワーPb_(i)の記録光を照射し、
少なくとも一つの記録マークの時間的長さについては上記パルス分割数mを2以上とし、かつ、全ての記録マークの時間的長さについてn/m≧1.25を満たすことを特徴とする光記録方法。
【請求項2】?【請求項6】・・・(省略)・・・。
【請求項7】nの異なる少なくとも2つの記録マークについて、同一のパルス分割数mを用い、前記少なくとも2つの記録マークにおいて、α_(i)(1≦i≦m)、β_(i)(1≦i≦m-1)、η_(1)、η_(2)、Pw_(i)(1≦i≦m)及びPb_(i )(1≦i≦m-1)の少なくとも1つが相互に異なる請求項1乃至6のいずれかに記載の光記録方法。
【請求項8】マーク長がnT=2LT(ただし、Lは2以上の整数)で表される場合、マークを分割数m=L個の区間に分割し、記録パルス区間α_(i)T及びオフパルス区間β_(i)Tにおけるα_(i)及びβ_(i)(これらはLの値に応じて変化し得る)を下記のように定め、
【数2】・・・(省略)・・・
マーク長がnT=(2L+1)Tで表される場合、マークを分割数m=L個の区間に分割し、記録パルス区間α_(i)’T及びオフパルス区間β_(i)’Tにおけるα_(i)’及びβ_(i)’(これらはLの値に応じて変化し得る)を下記のように定め、
【数3】・・・(省略)・・・
することを特徴とする請求項7に記載の光記録方法。
【数4】・・・(省略)・・・
【請求項9】?【請求項32】・・・(省略)・・・。」

(ii)「【0043】本発明において、α_(i)、β_(i)、η_(1)、η_(2)、Pw、Pb等の分割パルスに関するパラメータは、マーク長やiに応じて適宜変化させることができる。また、本発明においては、・・・(省略)・・・。」

(iii)「【0048】特定の一つの記録マークの時間的長さに対して、iに応じてPb_(i)及び/又はPw_(i)として異なる2以上の値を用いてもよい。特に、先頭の記録パルス区間α_(1)T及び最後尾の記録パルス区間α_(m)Tにおける記録パワーPw_(1)及びPw_(m)を、中間の記録パルス区間α_(i)T(2≦i≦m-1)における記録パワーPw_(i)と異なる値とすることで、マークの始端部・終端部のマーク形状を正確に制御することができる。ただし、中間の記録パルス区間α_(i)T(2≦i≦m-1)における記録パワーPw_(i )は、できるだけ全て同じパワー値にするのが、分割パルス回路の設定が簡便となり好ましい。オフパルス区間β_(i)T(1≦i≦m-1)におけるバイアスパワーPb_(i)についても同様に、特に理由がない限りできるだけ全て同じパワー値にするのが好ましい。また異なるnを有する少なくとも2つの記録マークの間で、同じiに対して異なるPw_(i)及び/又はPb_(i)の値としてもよい。」

(iv)「【0053】いずれの媒体を使用した場合でも、記録パワーPwは記録層になんらかの光学的変化を誘起するに必要な温度まで記録層を昇温し、場合によってはその温度を保持するに必要なレーザー光パワーである。一方、バイアスパワーPbは少なくとも記録パワーPwより低いパワーである。通常は、記録パワーPw及び消去パワーPeよりも低く、記録層になんら物理的変化を誘発しないような低いパワーである。
【0054】以上説明したような熱蓄積の問題は、相変化型、光磁気型、ライトワンス型光記録媒体など広くマーク長変調記録を行う光ディスクに共通である。しかし中でも、オーバーライト可能な相変化媒体は記録層の昇温と冷却速度という2つの温度パラメータを正確に制御することでマーク記録とマーク消去を同時に行うため、オフパルスによる記録層の冷却機能は他のライトワンス媒体や光磁気媒体よりもいっそう重要な意味を持つ。従って、本発明は相変化型の記録媒体に対して特に有効である。
【0055】本発明のパルス分割による記録方法においては、パルス記録マークの時間的長さnTのnの異なる少なくとも2つの記録マークについて、同一のパルス分割数mを用いてよい。通常は、3Tマークと4Tマークなど隣合う時間的長さをもつnTマークに対してmを同一にする。mを同一にしたうえで、α_(i)(1≦i≦m)、β_(i)(1≦i≦m)、η_(1)、η_(2)、Pw_(i)(1≦i≦m)及びPb_(i)(1≦i≦m)の少なくとも1つを相互に異ならせることによって同じ分割数であっても異なるマーク時間長のマークを形成し分けることができる。」

(v)「【0074】パルス発生方法2は、nTマークのnのとり得る値が奇数であるか偶数であるかにわけて考える点に特徴がある。即ち、nが偶数、つまりマーク長がnT=2LT(ただし、Lは2以上の整数)のマークの記録に際しては、分割数m=L個の区間に分割し、記録パルス区間α_(i)T及びオフパルス区間β_(i)Tにおけるα_(i)及びβ_(i)を下記のように定める。
【0075】
【数13】・・・(省略)・・・
一方、nが奇数、つまりマーク長がnT=(2L+1)Tのマークの記録に際しては、分割数m=L個の区間に分割し、記録パルス区間α_(i)’T及びオフパルス区間β_(i)’Tにおけるα_(i)’及びβ_(i)’を下記のように定める。
【0076】
【数14】・・・(省略)・・・
そして、バルス発生方法2においては、さらに下記式を満足させる。
【0077】
【数15】
α_(1)+β_(1)+α_(m)+β_(m)+Δ=α_(1)’+β_(1)’+α_(m)’+β_(m)’
(ここで、Δ=0.8?1.2である)
なお、上記パルス発生方法2では、α_(i)、β_(i)、α_(i)’、β_(i)’、δ_(1)、δ_(2)、δ_(1)’及びδ_(2)’は、いずれもLの値に応じて変化していてもよい。パルス発生方法2においては、n=2L及びn=(2L+1)の記録マークの形成に際しては、同じ分割数L個の記録パルスに分割して記録を行う。つまり、nが順に2,3,4,5,6,7,8,9、・・・・の場合、それぞれ、分割数mを順に1,1,2,2、3,3,4,4,・・・とする。具体的には、EFM変調信号では、n=3、4,5,6,7,8,9,10,11に対して、分割数mを順にm=1,2,2,3,3,4,4,5,5とする。また、EFM+信号では、n=14が加わるが、その場合には分割数mは7とする。(1,7)RLL-NRZI変調では、n=2の場合があるが、この場合分割数mは1とする。」

(vi)「【0104】このようなゲートの優先関係は、ゲートのオン/オフを論理的な0,1レベルに対応させて、各ゲート制御の論理信号の和演算を行うことによって達成される。なお、図12及び13においては、簡略化のため、最前端の記録パルスα_(1)T、α_(1)’Tの立ち上がりは、nTマークの前端、すなわち、記録すべきnTマークの前端に対して同時である場合を示した。もしも遅延を有する場合は、すべてのLのとり得る値に対して、記録パワーのパルスα_(1)T及びα_(1)’Tの立ち上がりが同一の遅延時間T_(d1)を有するようにするのが、マーク間長を所望の長さに保つ上で好ましい。
(分割記録パルス発生方法3)以下の方法は、基準クロック周期Tを分周して得られる、周期2Tのクロック信号をベースとする分割記録パルス発生方法のもう一つの例であり、やはり分割記録パルス発生方法1より規則正しいルールに基づいて、論理回路の設計が可能となる方法である。
【0105】具体的には、パルス発生方法2と同様に、nTマークのnのとり得る値が奇数であるか偶数であるかに分けて考える。分割記録パルス発生方法2においては、分割数が同じ偶数長マークと奇数長マークのマーク長差1Tの補正を、先頭及び最後尾の記録パルス周期に分散して割り当てたが、パルス発生方法3においては、マーク長1Tの補正を中間分割記録パルス群のオフパルス長β_(i)T(2≦i≦m-1)の調整にて行う。
【0106】即ち、nが偶数、つまりマーク長がnT=2LT(ただし、Lは2以上の整数)のマークの記録に際して、分割数m=L個の区間に分割し、記録パルス区間α_(i)T及びオフパルス区間β_(i)Tにおけるα_(i)及びβ_(i)を下記のように定める。
【0107】
【数18】・・・(省略)・・・
一方、nが奇数、つまりマーク長がnT=(2L+1)Tのマークの記録に際して、分割数m=L個の区間に分割し、記録パルス区間α’_(i)T及びオフパルス区間β’_(i)Tにおけるα’_(i)及びβ’_(i)を下記のように定める。」

(vii)「【0110】T_(d1)及びT_(d1)’は、マーク長変調された元信号におけるnTマークの始端から、先頭の記録パルスα_(1)Tが立ち上がるまでの先行もしくは遅延時間であり、通常-2以上2以下の実数である。T_(d1)及びT_(d1)’が正の値ならば、遅延を意味する。T_(d1)及びT_(d1)’は、Lによらずほぼ一定とするのが好ましい。α_(i)、β_(i)、α_(i)’、及びβ_(i)’は、それぞれ通常0以上2以下の実数であり、好ましくはそれぞれ0.5以上1.5以下である。
【0111】・・・(前略)・・・。パルス発生方法3においては、Lが等しいn=2LT及びn=(2L+1)Tに対応する2つのマークに対しては、等しい分割数Lの記録パルスに分割して記録を行う。つまり、n=2,3,4,5,6,7,8,9、・・・・、に対して、それぞれ、記録パルスの数を1,1,2,2、3,3,4,4,5,5、・・・とする。例えば、EFM変調信号では、n=3、4,5,6,7,8,9,10,11に対して、分割数mを順に1,2,2,3,3,4,4,5,5とする。EFM+信号では、これにn=14が加わるが、その場合には分割数mを7とする。(1,7)RLL-NRZI変調では、n=2の場合もm=1とする。」

(Viii)「【0113】パルス発生方法3においては、記録パルスの周期はいずれのマーク長でも2Tをベースとする。α_(i)とβ_(i)のデューティー比は、各マーク長ごと或いはiごとにそれぞれ最適化できるが、記録パルス発生回路の簡便化のために以下のような制限を設けておくことがより好ましい。まず、マーク前端に関しては、α_(1)、β_(1)、α_(1)’及びβ_(1)’は、3以上のLに対して、Lによらずそれぞれ一定とするのが好ましい。より好ましくは、α_(1)’=0.8α_(1)?1.2α_(1)、及びβ_(1)’=β_(1)+約0.5とする。さらに好ましくは、β_(1)’=β_(1)+0.5、α_(1)=α_(1)’、且つβ_(1)=β_(1)’とする。マーク前端の位置はほぼ先頭の記録光の立ち上がりで決まる。つまり、α_(1)T=α_(1)’Tの立ち上がり位置を、マーク長nTの始端に対して、一定の遅延時間Td1としておけば、実際のマークの前端の位置はほぼ一義的に決まる。一方、マーク前端のジッタは、α_(1)Tがα_(1)’Tとほぼ同じとしても、β_(1)Tがある程度(実際上0.5T)以上の長さであれば、β_(1)’のみβ_(1)’=β_(1)+0.5程度とすれば,nによらず良好な値が得られる。」
(2-9)「【0211】
・・・(中略)・・・
実施例4
・・・(中略)・・・
【0212】【0213】・・・(省略)・・・。
【0214】まず、記録時の線速をDVDの4.8倍速に相当する16.8m/s(クロック周波数125.93MHz、クロック周期7.9nsec)として、図25に示すような簡単な波形で14T区間を分割して中間分割記録パルスについて検討した。マーク間は14Tとした。記録パワーPw=15mW、消去パワーPe=5mW,バイアスパワーPb=0.5mWで一定とした。記録パワー照射区間をTw,バイアスパワー照射区間をTbとし、Tw+Tb=1Tとして、14周期のPwとPbを照射した場合(図25(a))と、Tw+Tb=2Tとして、7周期のPwとPbを照射した場合(図25(b))の2つの場合につき、再生信号の記録マーク部分の変調度のTwのTに対する比(Tw/T)依存性を評価した。2T周期のTw/Tが1.0の場合で、ほぼ歪みのない方形波に近い信号が得られ、変調度も最大となった。・・・(省略)・・・。
【0215】・・・(省略)・・・。
【0216】さらに、前記分割記録パルス発生方法3に基づいて、周期2Tをベースとしたパルス分割方法を3T?11T及び14Tマーク長からなるEFM+変調信号記録を線速14m/s及び16.8m/s(DVD線速3.5m/sの4倍速及び4.8倍速)に対して行なった。・・・(中略)・・・。具体的なパルス分割方法は図26に示す通りである。nが偶数、つまりマーク長がnT=2LT(ただし、Lは2以上の整数)の場合、マークの記録に際して、マークをm=L個の区間に分割し、記録パルス区間α_(i)T及びオフパルス区間β_(i)Tにおけるα_(i)及びβ_(i)を、
【0217】
【数27】T_(d1)+α_(1)=2(T_(d1)=0.95)
β_(i-1)+α_(i)=2 (2≦i≦m-1)
とし、一方、nが奇数、つまりマーク長がnT=(2L+1)Tの場合、マークの記録に際して、マークをm=L個の区間に分割し、記録パルス区間α_(i)T及びオフパルス区間β_(i)Tにおけるα_(i)及びβ_(i)を、
【0218】
【数28】T_(d1)’+α_(1)’=2.05(T_(d1)’=1)
β_(1)’+α_(2)’=2.45
β_(i-1)’ +α_(i)’=2 (3≦i≦m-1)
β_(m-1)’+α_(m)’=2.45
とした。この場合、L=2ではβ_(1)’+α_(2)’=2.9とし、α_(m)=1、α_(m)’=α_(m)+0.2=1.2とした。
【0219】・・・(中略)・・・。さらに3Tの場合は、T_(d1)=1.15、α1=1.2、β1=0.8でちょうど3Tマーク長を得た。なお、図25では、記録パルス区間と、オフパルス区間を、それぞれ矩形波の上底及び下底として示している。具体的な区間長は、数字で記載されており、上底及び下底の長さ自体は、区間長に対応して表記されているわけではない。
【0220】・・・(省略)・・・。
【0221】さらに、同様のディスクに対して、前記分割記録パルス発生方法3に基づいた図28に示すパルス分割方法を用いてEFM+変調信号記録をDVD2倍速に相当する線速7m/s、クロック周波数52.5MHz(クロック周期19.1nsec)で記録を行なった。4倍速及び4.8倍速記録と同様にバイアスパワーを一定Pb=0.5mWとし、消去パワーPeを4.5mWとしたうえで、記録パワーPwiもiによらず一定とし9回オーバーライト後のエッジ・ツー・クロックジッタと変調度の記録パワー依存性を測定した。図27(a)及び(b)に示すように、記録パワー13.0mWでエッジ・ツー・クロックジッタは8%未満、変調度は57%以上を実現している。Rtopは約18%であった。記録パワー13.0mWでオーバーライト依存性を測定したところ、図27(c)に示すように、10000回後でもエッジ・ツー・クロックジッタは11%以下であった。このときRtop及び変調度はオーバーライトによってほとんど変化しなかった。
【0222】以上より、分割記録パルス発生方法3に基づいたパルス分割方法を用いることによって、DVD線速の2倍速から4.8倍速という広い範囲での記録が可能であることが分かる。従って、この方法を用いることによって、例えば、DVDのデータエリアである半径約24mmから約58mmの半径範囲において、回転角速度を一定とした記録が可能となる。」

以上の摘示記載で、特に、実施例4及び【図25】?【図28】を参照して、実施例4では、分割記録パルス発生方法2又は3を使用することを前提としていること、【図28】は、nTマークの始端(前端)から、先頭記録パルスが立ち上がるまでの遅延時間T_(d1)について、nが3を含む奇数の時、T_(d1)=1.05Tと、nが4以上の偶数の時、T_(d1)=1.0Tと、されていることに着目して整理すると、刊行物には、結局、以下の発明が記載されているものと認める。
「相変化型、光磁気型、ライトワンス型光記録媒体などの記録媒体に光を照射することによってマーク長変調された情報を複数の記録マーク長により記録するにあたり、一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(Tは基準クロック周期であって、nは2以上の自然数である。)、
n=2L及びn=(2L+1)(ただし、Lは2以上の整数)として、nが異なる少なくとも2つの記録マークについて、同一のパルス分割数m個(m=L、ただし、n=3のときは、m=1)を用いて、例えば、EFM変調信号では、
n=3、4,5,6,7,8,9,10,11に対して、
パルス分割数mを順に、
m=1,2,2,3,3,4,4,5,5
(EFM+信号では、n=14が加わるが、その場合にはパルス分割数mは7とする。)
となるように、記録マークの時間的長さnTを、α_(1)T、β_(1)T、α_(2)T、β_(2)T、・・・、α_(i)T、β_(i)T、・・・、α_(m)T、β_(m)T
(α_(i)(1≦i≦m)は0より大きい実数であり、β_(i)(1≦i≦m-1)は0より大きい実数であり、β_(m)は0以上の実数である。)
の順に分割し、
nの異なる少なくとも2つの記録マークにおいて、α_(i)(1≦i≦m)、β_(i)(1≦i≦m-1)、Pw_(i)(1≦i≦m)及びPb_(i)(1≦i≦m-1)の少なくとも1つが相互に異なるようにし、
記録すべきマーク長の始端(前端)から、先頭記録パルスα_(1)が立ち上がるまで、例えば、nが3以上の奇数の時、いずれもT_(d1)=1.05T、nが4以上の偶数の時、いずれもT_(d1)=1.0Tの遅延時間T_(d1)を設けて、
α_(i)Tの時間内においては、記録パワーPw_(i)の記録光を照射し、
β_(i)Tの時間内においては、Pb_(i)<Pw_(i)かつPb_(i)<Pw_(i+1)なるバイアスパワーPb_(i)の光を記録媒体に照射して、記録を行う光記録方法。」

(3)対比・判断
〔対比〕
補正後発明と刊行物記載の発明とを対比する。
(a)両発明とも、パルス状の光を情報記録媒体に照射して、所定時間長さのマークを記録するマーク長変調方式を用いた情報記録方法に関する点で共通する。
(b)刊行物記載の発明におけるパルス分割法で、例示されたEFM変調信号では、時間的な長さnTのnに対する分割数mの関係が
n=3、4,5,6,7,8,9,10,11に対して、
分割数mを順に
m=1,2,2,3,3,4,4,5,5とする
とされている。
刊行物記載の発明で、「(nは2以上の自然数である)」とされてはいるが、例示されたEFM変調信号では、nは3以上の自然数であり、T即ち、「基準クロック周期」が、補正後発明の基本クロック周期に相当することは明らかであるから、刊行物記載の発明における記録マークの時間的な長さnTは、補正後発明におけるnTと差異はない。
(c)両発明の記録及びバイアスのための各パワーについて検討する。
刊行物記載の発明において、記録パワーPw_(i)(1≦i≦m)は、分割数mに分割されたパルスのi番目の記録パルスのパワーを意味しており、nの異なる少なくとも2つの記録マークにおいて異なるようにされていることから、補正後発明におけるPw(n,i)とは、表記上異なるものの、実質的な差異はない。
(d)刊行物記載の発明におけるバイアスパワーPb_(i)も、Pb_(i)<Pw_(i)かつPb_(i)<Pw_(i+1)とされており、結局、Pb<Pw(n,i)とされた、補正後発明におけるパワーPbのバイアスパワーに相当していることは明らかである。
(e)刊行物記載の発明で、パルス分割数mは、記録パワーPw_(i)及びバイアスパワーPb_(i)のパルスの個数でもある。
EFM変調信号の例では、mは、1以上の自然数であり、n=2L及びn=(2L+1)(ただし、Lは2以上の整数)、m=Lでもあるから、m≦nであることはあきらかであり、補正後発明における記録パワーPwの記録パルスの個数m、パワーPbの光を照射するバイアスパルスkの両者に相当することは明らかである。
なお、刊行物記載の発明では、記録パワーPwの記録パルスの個数とバイアスパワーのパルスの個数とがいずれもmであって、補正後発明におけるk≦mのうち、k=mの場合に相当していることは明らかである。
(f)刊行物記載の発明において、nとmの関係について、「n=2L及びn=(2L+1)(ただし、Lは2以上の整数)として、nが異なる少なくとも2つの記録マークについて、同一のパルス分割数m個(m=L、ただし、n=3のときは、m=1)」を用いるとされており、具体的に例示された、EFM変調信号でみると、
n=3、4,5,6,7,8,9,10,11に対して、
m=1,2,2,3,3,4,4,5,5
とされている。
この例では、nが「2」増加する毎に、即ち、記録マーク長nTが2T増加する毎に、記録パルスの数とバイアスパワーのパルス(バイアスパルス)の数mが共に「1」増加している。
(g)刊行物記載の発明におけるn、即ちnTの増加数と記録パルス及びバイアスパワーのパルス(バイアスパルス)の数の増加の関係が、補正後発明における増加の関係と一致していることは明らかであり、刊行物記載の発明における記録マーク長nTの増加量2Tの「2」が、補正後発明における増加数「j(jは2以上の自然数である)」に相当すること、又、この「2」がn,m,kによらない定数であることも明らかである。
(h)刊行物記載の発明で「記録すべきマーク長の始端(前端)から、先頭記録パルスα1が立ち上がるまで、例えば、nが3以上の奇数の時、いずれもTd1=1.05T、nが4以上の偶数の時、いずれもTd1=1.0Tの遅延時間Td1を設けて」とされた遅延時間Td1は、nによって異なっており、表記上異なるものの、補正後発明の第1の記録パルスの遅延時間Td(n,1)に相当することは明らかである。
また、nの奇数のときと偶数のときの遅延時間の関係をみると、いずれも、nが2増加すると、同じ遅延時間となっている。
nの増加数「2」が補正後発明における増加数「j」に相当することは前記したとおりであり、結局、刊行物記載の発明においても、
Td(n,1)=Td(n+j,1)が、成立することも明らかである。
また、刊行物記載の発明において、nが2以上の自然数、n=2L及びn=(2L+1)(ただし、Lは2以上の整数)とされ、nが奇数及び偶数の自然数のいずれにも対応しており、したがって、情報を記録するためのマーク長変調に必要な全てのnを含むことは自明である。

結局、両発明の[一致点]及び[相違点]は、以下のとおりである。
[一致点]
「パルス状の光を情報記録媒体に照射することにより、記録マークの時間的長さがnT(T:基本クロック周期、nは3以上の自然数)により、マーク変調方式を用いて情報を前記情報記録媒体に対して記録する情報記録方法において、
時間的長さnTの記録マークを記録する際、i番目の記録パワーがPw(n,i)のm個(ただし、i,mは1≦i≦m,m≦nなる自然数)の記録パルスとパワーPbのk個(ただし、Pb<Pw(n,i),kはk≦mなる自然数)のバイアスパルスとによるパルス状の光を照射し、
かつ、これらの記録パルス中の第1の記録パルスを当該記録するデータの開始エッジから時間的にTd(n,1)だけ遅延させて照射し、
かつ、記録マークの時間的長さnTがjT(jは2以上の自然数であるn,m,kによらない定数)増加する毎に、前記記録パルスの数と前記バイアスパルスの数とを各々1個ずつ増加させる条件下に、
情報を記録するためのマーク長変調に必要な全てのnに対してTd(n,1)=Td(n+j,1)とする記録ストラテジを用いるようにしたことを特徴とする情報記録方法。」の点。

[相違点]
数値n,m,k,j間相互の関係について、補正後発明では、更に、m(n+j)=m(n)+1,k(n+j)=k(n)+1なる関係式で表しているのに対して、刊行物記載の発明では、このような関係式の規定がない点。

〔判断〕
以下、相違点について検討する。
刊行物記載の発明における記録マークの時間的な長さnT、分割数m、nTの増加量2Tの増加数「2」が、それぞれ、補正後発明におけるnT,m(k)、jに相当すること、刊行物記載の発明の場合は、m=kであることは前記したとおりである。
m(n+j)=m(n)+1及びk(n+j)=k(n)+1なる関係式は、
数「n」が数「j」増加したとき、数「m」と数「k」が、いずれも、増加前のmとkに対して、「1」増加するというものである。
即ち、記録マークの時間的長さnTが、jT増加して(n+j)Tとなったとき、記録パルスの数、バイアスパルスの数がいずれも、「1」増加するという関係を数式で表現したものであることは明らかである。
補正後発明における条件「かつ、記録マークの時間的長さnTがjT(jは2以上の自然数であるn,m,kによらない定数)増加する毎に、前記記録パルスの数と前記バイアスパルスの数とを各々1個ずつ増加させる」と、同じ意味内容であって、刊行物記載の発明もこの点で一致していることは前記したとおりである。
とすると、相違点における関係式は、補正後発明における増加の条件を数式で、しかも、冗長的に表現・規定したものに相当し、このような表現・規定を採用することに、格別な技術的困難性は認められない。
結局、相違点における補正後発明における関係式についての要件は、当業者が、格別の発明力を要すことなく、適宜に採用し得る範囲内のことと認める。

以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであり、特許法第29条第2項の規定より、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

-補足-
審判請求人は、請求の理由で、(c)引用例の説明及び本願発明と引用例との対比の欄で、平成16年8月23日付け手続補正で補正された請求項1の記載を、特に補正個所(「記録マークの時間的長さがnT(T:基本クロック周期、nは3以上の自然数)により、マーク変調方式を用いて情報を前記情報記録媒体に対して記録する情報記録方法において、・・・」、「・・・させる条件下に、情報を記録するためのマーク長変調に必要な全てのnに対してTd(n,1)=Td(n+j,1)とする・・・」)にアンダーラインを付して、全文引用した後、「差異は明確になったものと思量する。」旨主張しているので、検討する。
「差異は明確になったものと思量する。」とは、原審における審査官の「本願請求項1には、「jは2以上の自然数である」との記載があるのみであり、偶数と奇数の場合分けに相当するj=2の場合も、本願発明の技術的範囲に含まれているのは明白であるから、出願人の上記(1)の点の主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではない。」との認定に応答するものである。
刊行物記載の発明がマーク長変調方式を用いていることは、記録マークの時間的長さをnTとし、nを2以上の自然数、Tを基準クロック周期とし、n=3、4,5,6,7,8,9,10,11としたEFM変調信号を例示している点から明らかである。
また、刊行物記載の発明においても、情報を記録するためのマーク長変調に必要な全てのnを含むことが自明であることも上記したとおりである。
補正後の請求項1の記載をみても、補正後発明が、情報記録方法として、刊行物記載の発明を含んでいることは明らかであり、請求人の主張は採用できない。

そして、上記相違点についての判断を総合しても補正後発明の奏する効果は引用例から当業者が十分に予測可能であって、格別なものとは言えない。

4.補正についての結び
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明について
1.本願発明
平成16年8月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1乃至13に係る各発明は、平成16年5月10日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面からみて、特許請求の範囲請求項1乃至13に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】パルス状の光を情報記録媒体に照射することにより、記録マークの時間的長さがnT(T:基本クロック周期、nは3以上の自然数)で表される情報を前記情報記録媒体に対して記録する情報記録方法において、
時間的長さnTの記録マークを記録する際、i番目の記録パワーがPw(n,i)のm個(ただし、i,mは1≦i≦m,m≦nなる自然数)の記録パルスとパワーPbのk個(ただし、Pb<Pw(n,i),kはk≦mなる自然数)のバイアスパルスとによるパルス状の光を照射し、
かつ、これらの記録パルス中の第1の記録パルスを当該記録するデータの開始エッジから時間的にTd(n,1)だけ遅延させて照射し、
かつ、記録マークの時間的長さnTがjT(jは2以上の自然数であるn,m,kによらない定数,m(n+j)=m(n)+1,k(n+j)=k(n)+1)増加する毎に、前記記録パルスの数と前記バイアスパルスの数とを各々1個ずつ増加させる条件下に、
Td(n,1)=Td(n+j,1)とする記録ストラテジを用いるようにしたことを特徴とする情報記録方法。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物及びその記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、特開2001-331936号公報(以下「刊行物」という。)であって、その記載は、上記「II.[理由]3 .(2)-刊行物の記載-」のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記II.で検討した補正後発明から、変調方式について、「パルス状の光を情報記録媒体に照射することにより、記録マークの時間的長さがnT(T:基本クロック周期、nは3以上の自然数)により、マーク変調方式を用いて情報を前記情報記録媒体に対して記録する」、nについて、「情報を記録するためのマーク長変調に必要な全てのnに対してTd(n,1)=Td(n+j,1)とする」としていた構成から、上記下線部の構成要件を省いて、それぞれ、「パルス状の光を情報記録媒体に照射することにより、記録マークの時間的長さがnT(T:基本クロック周期、nは3以上の自然数)で表される情報を前記情報記録媒体に対して記録する」、「Td(n,1)=Td(n+j,1)とする」とした上位概念の構成にあたるものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後発明が、上記「II.〔理由〕3.(3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明も、同様の理由により刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-22 
結審通知日 2007-11-27 
審決日 2007-12-17 
出願番号 特願2003-163564(P2003-163564)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ゆずりは 広行岩井 健二  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 山田 洋一
小松 正
発明の名称 情報記録方法、情報記録装置及び情報記録媒体  
代理人 伊東 忠彦  
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