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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1173196
審判番号 不服2004-25549  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-15 
確定日 2008-02-14 
事件の表示 特願2002-553790「広告配信管理システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月14日国際公開、WO02/91262〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年8月8日(優先権主張:平成13年5月2日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成16年7月6日付けの拒絶理由通知に対して同年9月9日付けで手続補正がなされたが、同年11月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成17年1月13日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年1月13日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年1月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正の内容
平成17年1月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。
「【請求項1】 視聴者毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理システムであって、
視聴者に広告を配信する広告配信サーバと、
前記広告配信サーバから優先順位に基づいて視聴者に配信される広告を管理する広告配信管理手段と、
前記広告配信サーバから配信される広告の広告デジタルデータを記憶する広告データベースとを備え、
前記広告配信管理手段は、
前記配信される広告に関連する事項を確認する広告確認手段と、
前記広告データベースに記憶されている前記広告デジタルデータを変更/更新する広告デジタルデータ変更/更新手段と
を含み、
前記広告確認手段は、前記配信する広告に関連する事項に対する許諾確認係数を算出し、当該算出した許諾確認係数に基づき、該配信する広告に関して予め登録された広告放映許諾情報及び該配信する広告の配信のときに決定される特定の条件を確認することにより、該配信する広告の配信可否を決定し、かつ優先順位的に配信準備に入るべき広告の業種、商品または広告主が、挿入される番組または現在アクセスしている配信事業者の規制に適合するかどうかを確認し、或いは優先順位的に配信準備に入るべき広告が挿入される番組または番組タイプが、該広告の広告主による挿入拒絶番組または挿入拒絶番組タイプであるかどうかを確認することを特徴とする広告配信管理システム。
【請求項2】 前記広告確認手段は、
前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタルデータが、現在アクセスしている前記広告配信手段に存在しているかどうかを確認することを特徴とする請求項1に記載の広告配信管理システム。
【請求項3】 前記広告確認手段は、
前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタルデータが、現在アクセスしている前記広告配信手段に異なるフォームで複数存在している場合に、どのデータが配信されるべきかを判断することを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項4】 前記広告確認手段は、
前記広告配信管理手段から放映許諾情報を呼出し、当該呼出した放映許諾情報に基づき、前記優先順位的に配信準備に入るべき広告が、現在アクセスしている配信システムによる配信形態、配信期限、配信地域、配信対象、配信サービス、配信時間帯、配信対象者年齢の少なくとも一つ又は二つ以上について、放映許諾を受けている範囲内かどうかを確認することを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項5】 前記広告確認手段は、
前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタル・データの放映秒数が、挿入予定の広告枠時間内に挿入可能であるかどうかを確認することを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項6】 前記広告デジタルデータ変更/更新手段は、請求項1?請求項5に記載の確認時に、前記広告デジタルデータを変更/更新する必要があると判断された場合には、該広告デジタルデータを変更/更新することを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項7】 前記広告デジタルデータ変更/更新手段は、前記広告確認手段による配信時点における確認/判断の結果に応じて、配信不可及び配信可能の場合にそれぞれ所定の係数を割り当て、全ての係数を広告に重み付けすることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項8】 視聴者毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理方法であって、
視聴者に広告を配信する段階と、
優先順位に基づいて視聴者に配信される広告を管理する段階と、
前記配信される広告の広告デジタルデータを広告データベースに記憶する段階とを具備し、
前記広告を管理する段階は、前記配信される広告に関連する事項を確認する段階と、前記広告データベースに記憶されている前記広告デジタルデータを変更/更新する段階とを含み、
前記確認する段階は、前記配信する広告に関連する事項に対する許諾確認係数を算出する段階と、前記算出した許諾確認係数に基づき、該配信する広告に関して予め登録された広告放映許諾情報及び該配信する広告の配信のときに決定される特定の条件を確認することにより、該配信する広告の配信可否を決定し、かつ優先順位的に配信準備に入るべき広告の業種、商品または広告主が、挿入される番組または現在アクセスしている配信事業者の規制に適合するかどうかを確認し、或いは前記優先順位的に配信準備に入るべき前記広告が挿入される番組または番組タイプが、該広告の広告主による挿入拒絶番組または挿入拒絶番組タイプであるかどうかを確認する段階とを具備することを特徴とする広告配信管理方法。
【請求項9】 前記確認する段階は、前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタルデータが、現在アクセスしている配信サーバに存在しているかどうかを確認する段階を更に具備することを特徴とする請求項8に記載の広告配信管理方法。
【請求項10】 前記確認する段階は、前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタルデータが、現在アクセスしている配信サーバに異なるフォームで複数存在している場合に、どのデータが配信されるべきかを判断する段階を更に具備することを特徴とする請求項8または9のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項11】 前記確認する段階は、放映許諾情報を呼出し、当該呼出した放映許諾情報に基づき、前記優先順位的に配信準備に入るべき広告が、現在アクセスしている配信システムによる配信形態、配信期限、配信地域、配信対象、配信サービス、配信時間帯、配信対象者年齢の少なくとも一つ又は二つ以上について、放映許諾を受けている範囲内かどうかを確認する段階を更に具備することを特徴とする請求項8?10のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項12】 前記確認する段階は、前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタル・データの放映秒数が、挿入予定の広告枠時間内に挿入可能であるかどうかを確認する段階を更に具備することを特徴とする請求項8?11のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項13】 前記変更/更新する段階は、請求項8?請求項12に記載の確認時に、前記広告デジタルデータを変更/更新する必要があると判断された場合には、該広告デジタルデータを変更/更新することを特徴とする請求項8?12のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項14】 前記変更/更新する段階は、前記確認する段階による配信時点における確認/判断の結果に応じて、配信不可及び配信可能の場合にそれぞれ所定の係数を割り当て、全ての係数を広告に重み付けすることを特徴とする請求項8?13のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項15】 顧客に広告を配信する広告配信サーバと、前記広告配信サーバから優先順位に基づいて顧客に配信される広告を管理する広告配信管理手段と、前記広告配信サーバから配信される広告の広告デジタルデータを記憶する広告データベースとを備え、顧客毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理システムであって、
顧客に対する広告の順位決定係数を決定する広告配信順位管理手段と、
前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する広告許諾管理手段と、
前記顧客に対する前記広告を配信する広告配信手段とを備え、
前記広告配信手段は、前記広告配信順位管理手段で決定された前記順位決定係数及び前記広告許諾管理手段で決定された前記許諾確認係数に基づき広告配信スケジュールを決定し、当該決定した広告配信スケジュールに基づき前記顧客に対して広告及び当該広告に関連する事項の配信を行うことを特徴とする広告配信管理システム。
【請求項16】 顧客毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理方法であって、
顧客に対する広告の順位決定係数を決定する段階と、
前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する段階と、
前記決定された順位決定係数及び許諾確認係数に基づき広告配信スケジュールを決定する段階と、
前記決定した広告配信スケジュールに基づき前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の配信を行う段階と
を具備することを特徴とする広告配信管理方法。
【請求項17】 顧客に広告を配信する広告配信サーバと、前記広告配信サーバから優先順位に基づいて顧客に配信される広告を管理する広告配信管理手段と、前記広告配信サーバから配信される広告の広告デジタルデータを記憶する広告データベースとを備え、顧客毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理システムであって、
広告枠に指定広告が存在するかどうかを検出する指定広告検出手段と、
前記指定広告検出手段の検出結果により前記広告枠に一つ以上の指定広告が存在する場合に該指定広告の優先順位を決定する指定広告優先順位決定手段と、
前記指定広告検出手段の検出結果により前記広告枠に指定広告が存在しない場合にスポット広告の優先順位を決定するスポット広告優先順位決定手段と、
前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する広告許諾管理手段と
を備え、
前記指定広告優先順位決定手段により決定された優先順位又は前記スポット広告優先順位決定手段により決定された優先順位及び前記広告許諾管理手段により決定された許諾確認係数に基づき前記顧客に対して広告及び当該広告に関連する事項の配信を行うことを特徴とする広告配信管理システム。」

2-2.本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正の前の特許請求の範囲は、平成16年9月9日付け手続補正書によって補正された、次のとおりのものである。
「【請求項1】 視聴者毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理システムであって、
視聴者に広告を配信する広告配信サーバと、
前記広告配信サーバから優先順位に基づいて視聴者に配信される広告を管理する広告配信管理手段と、
前記広告配信サーバから配信される広告の広告デジタルデータを記憶する広告データベースとを備え、
前記広告配信管理手段は、
前記配信される広告に関連する事項を確認する広告確認手段と、
前記広告データベースに記憶されている前記広告デジタルデータを変更/更新する広告デジタルデータ変更/更新手段と
を含み、
前記広告確認手段は、前記配信する広告に関連する事項に対する許諾確認係数を算出し、当該算出した許諾確認係数に基づき、該配信する広告に関して予め登録された広告放映許諾情報及び該配信する広告の配信のときに決定される特定の条件を確認することにより、該配信する広告の配信可否を決定することを特徴とする広告配信管理システム。
【請求項2】 前記広告確認手段は、
優先順位的に配信準備に入るべき広告の業種、商品または広告主が、挿入される番組または現在アクセスしている配信事業者の規制に適合するかどうかを確認することを特徴とする請求項1に記載の広告配信管理システム。
【請求項3】 前記広告確認手段は、
優先順位的に配信準備に入るべき広告が挿入される番組または番組タイプが、該広告の広告主による挿入拒絶番組、または挿入拒絶番組タイプであるかどうかを確認することを特徴とする請求項1に記載の広告配信管理システム。
【請求項4】 前記広告確認手段は、
前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタルデータが、現在アクセスしている前記広告配信手段に存在しているかどうかを確認することを特徴とする請求項1または2に記載の広告配信管理システム。
【請求項5】 前記広告確認手段は、
前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタルデータが、現在アクセスしている前記広告配信手段に異なるフォームで複数存在している場合に、どのデータが配信されるべきかを判断することを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項6】 前記広告確認手段は、
前記優先順位的に配信準備に入るべき広告が、現在アクセスしている配信システムによる配信形態、配信期限、配信地域、配信対象、配信サービス、配信時間帯、配信対象者年齢の少なくとも一つ又は二つ以上について、放映許諾を受けている範囲内かどうかを確認することを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項7】 前記広告確認手段は、
前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタル・データの放映秒数が、挿入予定の広告枠時間内に挿入可能であるかどうかを確認することを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項8】 前記広告デジタルデータ変更/更新手段は、請求項2?請求項7に記載の確認時に、前記広告デジタルデータを変更/更新する必要があると判断された場合には、該広告デジタルデータを変更/更新することを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項9】 前記広告デジタルデータ変更/更新手段は、前記広告確認手段による配信時点における確認/判断の結果に応じて、配信不可及び配信可能の場合にそれぞれ所定の係数を割り当て、全ての係数を広告に重み付けすることを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の広告配信管理システム。
【請求項10】 視聴者毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理方法であって、
視聴者に広告を配信する段階と、
優先順位に基づいて視聴者に配信される広告を管理する段階と、
前記配信される広告の広告デジタルデータを広告データベースに記憶する段階とを具備し、
前記広告を管理する段階は、前記配信される広告に関連する事項を確認する段階と、前記広告データベースに記憶されている前記広告デジタルデータを変更/更新する段階とを含み、
前記確認する段階は、前記配信する広告に関連する事項に対する許諾確認係数を算出する段階と、前記算出した許諾確認係数に基づき、該配信する広告に関して予め登録された広告放映許諾情報及び該配信する広告の配信のときに決定される特定の条件を確認することにより、該配信する広告の配信可否を決定する段階とを具備することを特徴とする広告配信管理方法。
【請求項11】 前記確認する段階は、
優先順位的に配信準備に入るべき広告の業種、商品または広告主が、挿入される番組または現在アクセスしている配信事業者の規制に適合するかどうかを確認する段階を更に具備することを特徴とする請求項10に記載の広告配信管理方法。
【請求項12】 前記確認する段階は、
前記優先順位的に配信準備に入るべき前記広告が挿入される番組または番組タイプが、該広告の広告主による挿入拒絶番組、または挿入拒絶番組タイプであるかどうかを確認する段階を更に具備することを特徴とする請求項10または11に記載の広告配信管理方法。
【請求項13】 前記確認する段階は、前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタルデータが、現在アクセスしている配信サーバに存在しているかどうかを確認する段階を更に具備することを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項14】 前記確認する段階は、前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタルデータが、現在アクセスしている配信サーバに異なるフォームで複数存在している場合に、どのデータが配信されるべきかを判断する段階を更に具備することを特徴とする請求項10?13のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項15】 前記確認する段階は、前記優先順位的に配信準備に入るべき広告が、現在アクセスしている配信システムによる配信形態、配信期限、配信地域、配信対象、配信サービス、配信時間帯、配信対象者年齢の少なくとも一つ又は二つ以上について、放映許諾を受けている範囲内かどうかを確認する段階を更に具備することを特徴とする請求項10?14のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項16】 前記確認する段階は、前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタル・データの放映秒数が、挿入予定の広告枠時間内に挿入可能であるかどうかを確認する段階を更に具備することを特徴とする請求項10?15のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項17】 前記変更/更新する段階は、請求項10?請求項16に記載の確認時に、前記広告デジタルデータを変更/更新する必要があると判断された場合には、該広告デジタルデータを変更/更新することを特徴とする請求項10?16のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項18】 前記変更/更新する段階は、前記確認する段階による配信時点における確認/判断の結果に応じて、配信不可及び配信可能の場合にそれぞれ所定の係数を割り当て、全ての係数を広告に重み付けすることを特徴とする請求項10?17のいずれか一項に記載の広告配信管理方法。
【請求項19】 顧客に広告を配信する広告配信サーバと、前記広告配信サーバから優先順位に基づいて顧客に配信される広告を管理する広告配信管理手段と、前記広告配信サーバから配信される広告の広告デジタルデータを記憶する広告データベースとを備え、顧客毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理システムであって、
顧客に対する広告の順位決定係数を決定する広告配信順位管理手段と、
前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する広告許諾管理手段と、
前記顧客に対する前記広告を配信する広告配信手段とを備え、
前記広告配信手段は、前記広告配信順位管理手段で決定された前記順位決定係数及び前記広告許諾管理手段で決定された前記許諾確認係数に基づき広告配信スケジュールを決定し、当該決定した広告配信スケジュールに基づき前記顧客に対して広告及び当該広告に関連する事項の配信を行うことを特徴とする広告配信管理システム。
【請求項20】 顧客毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理方法であって、
顧客に対する広告の順位決定係数を決定する段階と、
前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する段階と、
前記決定された順位決定係数及び許諾確認係数に基づき広告配信スケジュールを決定する段階と、
前記決定した広告配信スケジュールに基づき前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の配信を行う段階と
を具備することを特徴とする広告配信管理方法。
【請求項21】 顧客に広告を配信する広告配信サーバと、前記広告配信サーバから優先順位に基づいて顧客に配信される広告を管理する広告配信管理手段と、前記広告配信サーバから配信される広告の広告デジタルデータを記憶する広告データベースとを備え、顧客毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理システムであって、
広告枠に指定広告が存在するかどうかを検出する指定広告検出手段と、
前記指定広告検出手段の検出結果により前記広告枠に一つ以上の指定広告が存在する場合に該指定広告の優先順位を決定する指定広告優先順位決定手段と、
前記指定広告検出手段の検出結果により前記広告枠に指定広告が存在しない場合にスポット広告の優先順位を決定するスポット広告優先順位決定手段と、
前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する広告許諾管理手段と
を備え、
前記指定広告優先順位決定手段により決定された優先順位又は前記スポット広告優先順位決定手段により決定された優先順位及び前記広告許諾管理手段により決定された許諾確認係数に基づき前記顧客に対して広告及び当該広告に関連する事項の配信を行うことを特徴とする広告配信管理システム。」

2-3.本件補正の適否について
審判請求人は、審判請求の理由において、本件補正後の各請求項が本件補正前のどの請求項に対応しているのかを説明していないが、補正後の請求項1-7,15,17に記載された「広告配信管理システム」は補正前の請求項1-9,19,21のいずれかの「広告配信管理システム」に対応し、また、補正後の請求項8-14,16に記載された「広告配信管理方法」は補正前の請求項10-18,20のいずれかの「広告配信管理方法」に対応することは明らかである。

2-3-1.本件補正後の請求項1について
そして、それぞれの請求項の内容について検討すると、本件補正では、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項1を引用する請求項2を独立請求項形式の記載に改め、また、補正前の請求項1を引用する請求項3を独立請求項形式の記載に改めた上で、補正前の請求項2,3に記載されていた発明特定事項を択一的な選択肢とした発明を、補正後の請求項1に記載したということができる。
つまり、本件補正後の請求項1に記載の広告配信管理システムは、補正前の請求項2または3のいずれか一項に記載の広告配信管理システムであるということができる。
したがって、補正後の請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当するといえる。

2-3-2.本件補正後の請求項2について
本件補正後の請求項1において選択肢として記載された発明特定事項の前者を採用した場合の発明は、前記「2-3-1.」にて述べたように、補正前の請求項2に対応しているといえるから、補正後の請求項1を引用する請求項2は、補正前の請求項2を引用する請求項4に対応しているということができる。
一方、本件補正後の請求項1において該選択肢の後者を採用した場合の発明は、前述したとおり、補正前の請求項3に対応しているものであるが、補正前の請求項4は補正前の請求項3を引用していないのだから、このような場合では、補正後の請求項1を引用する請求項2が、補正前の請求項4に対応しているということはできず、また、補正前のその余の請求項に対応するということもできない。
そうすると、このような場合では、請求項2に係る本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当するとはいえないから、引き続き、特許法第17条の2第4項第2号ないし同項第4号に掲げられた事項のいずれかを目的とするものに該当するかどうか、以下、更に検討する。
すると、補正後の請求項2に係る本件補正は、広告配信管理システムが備える広告配信管理手段が含む「広告確認手段」が「確認」する処理として、補正前の請求項3に記載された「優先順位的に配信準備に入るべき広告が挿入される番組または番組タイプが、該広告の広告主による挿入拒絶番組または挿入拒絶番組タイプであるかどうか」に、「前記優先順位的に配信準備に入るべき広告の前記広告デジタルデータが、現在アクセスしている前記広告配信手段に存在しているかどうか」を加えようとするものであるといえる。
しかしながら、この補正は、広告確認手段により行われる処理として、概念的に同位レベルの新たな処理を要件に加えたものであって、この補正により、補正後の前記広告確認手段は、補正前の請求項3において有する作用とは別の作用をも有することとなるから、発明特定事項が概念的に下位のものになったということはできない。
したがって、本件補正後の請求項2は、補正前の請求項3に係る発明特定事項を限定したものではなく、また、補正前のその余の請求項に係る発明特定事項を限定したものでないことは明らかであるから、補正後の請求項2に係る補正の目的が、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項にあたるということはできない。
また、補正後の請求項2に係る本件補正の目的が、特許法第17条の2第4項第3号及び第4号にそれぞれ掲げる、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれにもあたらないことも明らかである。

2-3-3.本件補正後の請求項3について
本件補正後の請求項3が請求項1を引用した場合では、補正後の請求項1が、補正前の請求項2または請求項3のいずれか一項に対応していることからみて、補正後の請求項3は、補正前の請求項1?3のいずれか一項を引用する請求項5に対応しているということができる。
一方、本件補正後の請求項3が請求項2を引用した場合では、補正後の請求項2について前記「2-3-2.」で指摘した理由と同様の理由にあたるものであって、それに加えて、補正前の請求項5は補正前の請求項4を引用していないことからもみて、このような場合では、本件補正後の請求項3が、補正前の請求項5に対応しているということはできず、補正前のその余の請求項に対応するということもできない。
したがって、本件補正後の請求項3は、補正前の請求項5に係る発明特定事項を限定したものではなく、また、補正前のその余の請求項に係る発明特定事項を限定したものでないことは明らかであるから、補正後の請求項3に係る補正の目的が、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項にあたるということはできない。
また、補正後の請求項3に係る本件補正の目的が、特許法第17条の2第4項第3号及び第4号にそれぞれ掲げる、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれにもあたらないことも明らかである。

2-4.補正却下の決定についてのまとめ
以上のとおり、補正後の請求項2,3に係る本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定された要件に違反するものであるので、こうした補正を含む本件補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年1月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項20に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年9月9日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項20に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「顧客毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理方法であって、
顧客に対する広告の順位決定係数を決定する段階と、
前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する段階と、
前記決定された順位決定係数及び許諾確認係数に基づき広告配信スケジュールを決定する段階と、
前記決定した広告配信スケジュールに基づき前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の配信を行う段階と
を具備することを特徴とする広告配信管理方法。」

4.原査定の拒絶の理由
原審の平成16年7月6日付けの拒絶理由通知の記載からみて、原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

「<理由A>
この出願の請求項1から21に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平09-251296号公報
2.特開平07-212631号公報
3.特開2000-124867号公報
4.特開平10-124430号公報
5.特開平11-017633号公報
6.特開平11-205259号公報
7.特開平09-051522号公報

<理由B> (略)

<理由C>
この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

本願の各請求項における記載は、各機能手段が果たすべき業務の内容を単に機能的に特定するに留まり、、その処理を果たすために、ソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウェア資源をどのように用いて具体的に実現されているのか特定するものとはいえないため、自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められない。」

5.当審の判断
5-1.原査定の拒絶の理由Cについて
本願発明の構成を便宜上分説すると、本願発明は、顧客毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理方法であって、
(ア)顧客に対する広告の順位決定係数を決定する段階と、
(イ)前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する段階と、
(ウ)前記決定された順位決定係数及び許諾確認係数に基づき広告配信スケジュールを決定する段階と、
(エ)前記決定した広告配信スケジュールに基づき前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の配信を行う段階と
を具備することを特徴とする方法の発明であると解されるが、本願発明の方法では、該方法としての手順を構成する各段階(ア)ないし(エ)を実行する主体は特定されていない。
つまり、本願発明では、人間が主体となって前記手順を実行する場合と、コンピュータが主体となって前記手順を実行する場合とがあるので、以下、それぞれの場合について検討する。

5-1-1.主体が人間である場合について
前記手順の主体が人間であると解した場合では、本願発明は、前記人間が業務として行う決定行為及びその決定結果に基づいた配信業務を行うために人為的に取り決められた業務の手順を特定した方法となるので、全体として自然法則を利用していないものである。
したがって、本願発明の手順の主体が人間であると解した場合では、本願発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しない。

5-1-2.主体がコンピュータである場合について
前記手順の主体がコンピュータであると解した場合では、前記手順は前記コンピュータの動作によって実現されるということができるから、本願発明は、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところの、いわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明であるということができる。
そして、こうしたコンピュータ・ソフトウェア関連発明である本願発明が、特許法第2条第1項で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、発明はそもそもが一定の技術的課題の解決手段になっていなければならないことから、請求項20に記載された事項に基づいて把握された発明において、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていること、つまり、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されていることが必要である。
そこで、本願発明を構成する上記(ア)ないし(エ)の事項それぞれについて、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているかを、以下に詳細に検討する。

すると、前記(ア)に記載された「顧客に対する広告の順位決定係数を決定する段階と、」という事項では、「顧客に対する広告の順位決定係数」を「決定」する処理を行うべきコンピュータがどのような演算内容の計算を行うことにより前記「順位決定係数」という結果を得るのかが具体的に特定されていないから、該決定する処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(ア)の記載から把握することができない。

また、前記(イ)に記載された「前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する段階と、」という事項では、「顧客に対する広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数」を「決定」する処理を行うべきコンピュータがどのような演算内容の計算を行うことにより前記「許諾確認係数」という結果を得るのかが具体的に特定されていないから、該決定する処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(イ)の記載から把握することができない。

また、前記(ウ)に記載された「前記決定された順位決定係数及び許諾確認係数に基づき広告配信スケジュールを決定する段階と、」という事項では、前記(ア)に係る「順位決定係数」及び前記(イ)に係る「許諾確認係数」に基づき「広告配信スケジュール」を「決定」する処理を行うべきコンピュータが前記「順位決定係数」及び前記「許諾確認係数」の両者を使ってどのような演算内容の計算を行うことにより前記「広告配信スケジュール」という結果を得るのかが具体的に特定されていないから、該決定する処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(ウ)の記載から把握することができない。

また、前記(エ)に記載された「前記決定した広告配信スケジュールに基づき前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の配信を行う段階と」という事項では、前記(ウ)に係る「広告配信スケジュール」に基づき「顧客に対する広告及び当該広告に関連する事項」の「配信」を行うべきコンピュータが前記「広告配信スケジュール」に従ってどのような内容の処理を行うのかが具体的に特定されていないから、該配信する処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(エ)の記載から把握することができない。

以上のことを踏まえ、本願発明の構成を全体として検討するために、請求項20の記載を全体としてみても、請求項20に記載された事項としては、実行すべき処理が抽象的に示されているにすぎず、該処理が具体的に特定されていないため、コンピュータの全体の処理が、どのような情報処理によりコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、請求項20に記載された事項に基づいて把握できないから、該全体の処理が具体的に実現されているとはいえない。
したがって、本願発明において、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているということはできないから、本願発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しない。

5-1-3.原査定の拒絶の理由Cについてのまとめ
以上のとおり、本願発明の方法の手順を実行する主体が人間である場合とコンピュータである場合のいずれと解したとしても、本願発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。

5-2.原査定の拒絶の理由Aについて
なお、本件出願は、前記「5-1.」にて述べた理由により拒絶すべきものであるが、仮に、本願発明を特許法上の「発明」とした上で、以下、原査定の拒絶の理由Aについても、検討を行うことにする。

5-2-1.引用例に記載された事項について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-251296号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の(a)ないし(c)の事項が記載されている。
(a)「【0037】(2)サービス提供処理の詳細
次に、図10に示す機能ブロック図を参照し、店舗側におけるサービス提供処理P4の詳細について説明する。以下では、[1]客イメージテーブル作成、[2]スケジュールテーブル作成、[3]メニュー構成テーブル作成、[4]サービス提供、[5]終電情報提供(サービス提供の1つ)、および[6]サービス履歴記録の各処理に分けて説明する。
【0038】[1]客イメージテーブル作成
サービス提供処理P4の前処理として、まずホストコンピュータ1から転送された個人情報に基づき、客イメージテーブルを作成する。すなわち、顧客の年齢、性別、職業、趣味等の属性データに基づき当該顧客の総合的なイメージを示す属性コードを生成し、これを客イメージテーブルにID番号と対応づけてセットする。
【0039】[2]スケジュールテーブル作成
そして、上記属性コードと個人情報に含まれるサービス履歴情報から、当該顧客に対する各CMプログラムの適合度を数値情報によって表現し、放映すべきスポットCMの順序付けを行う。例えば、その顧客が20代の男性でマリンスポーツを趣味としていれば、マリンスポーツの道具やマリンリゾート等に関するCM情報は関連が深いことから高い数値を割り当て、女性用化粧品等のCM情報は関連が薄いことから低い数値を割り当てる。これによって各CMプログラムに対応するCMコードが数値の高い順に序列化され、スポットCMのスケジュールテーブルが作成される。」(第37?39段落。なお、丸数字は括弧書き数字に代えて表した。)
(b)「【0042】[4]サービス提供
こうして、スポットCMは、スケジュールテーブルの内容に従ってカラオケ演奏の合間に適宜放映される(以下略)」(第42段落。なお、丸数字は半角括弧書き数字に代えて表した。)
(c)「【0049】(4)また、上記実施形態においては、スケジュールテーブルやメニュー構成テーブルを作成する場合に、CMデータや情報選択メニューを序列化したが、単に序列化するだけでなく、その顧客に関連の低いものについてはサービスの対象から除外するようにしてもよい。例えば、その顧客に関連の低いCMを放映しないとか、あるいはメニュー自体を表示しないといった情報の選択処理を組み合わせてもよい。」(第49段落)

前記(a)の第38段落には、顧客についての各種属性データに基づいて「属性コード」を「生成」する処理を行うことが記載されており、前記(b)の第39段落には、前記「属性コード」に基づいて、顧客に応じて放映すべきスポットCMの順序を表した「スケジュールテーブル」を「作成」する処理を行うことが記載されている。
そして、前記(b)には、前記「スケジュールテーブル」の内容に従ってスポットCMを放映する処理を行うことが記載されている。

してみれば、引用例1には、
「顧客に応じた順序でCMを放映する方法であって、
顧客の属性コードを生成する段階と、
前記生成された属性コードに基づきスケジュールテーブルの内容を作成する段階と、
前記作成したスケジュールテーブルの内容に従ってCMを放映する段階と、
を具備することを特徴とする方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-17633号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の(d)及び(e)の事項が記載されている。
(d)「【0034】ターゲットIDは、各受信端末のICカード部に登録されている視聴者属性情報と同様に規定されている。すなわち、広告に関する商品、サービスを提供したい消費者あるいは購買層の範囲を特定するために、ターゲットIDが使用される。具体的には、性別、年齢、地域、趣味等の情報をターゲットIDが有する。(以下略)」(第34段落)
(e)「【0056】保存されている受信済みの広告情報のターゲットIDとICカード部66に予め記録されている視聴者属性(性別、年齢、地域等)とを照合し、両者が一致する広告情報を記憶装置71から選択的に読み出す(ステップS3)。そして、抽出した広告情報データをOSDコントロール部70に供給し、画面中に広告アイコンを表示する。例えば図5の最上段に示すように、番組表示中の画面80の一部に、広告アイコン81が表示される(ステップS4)。」(第56段落)

5-2-2.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「CM」は本願発明の「広告」に相当する。
また、引用発明の「顧客の属性コード」と本願発明の「顧客に対する広告の順位決定係数」とは、「顧客に係るデータ」である点で共通している。
また、引用発明の「生成」及び「作成」は、本願発明の「決定」に相当しているといえる。
また、引用発明の「放映」は、データがディスプレイ等の再生装置に送り込まれることを含む意味であるといえるから、本願発明でいう「配信」に相当するものである。
また、引用発明の「スケジュールテーブルの内容」は、本願発明の「広告配信スケジュール」に相当する。
そして、引用発明の「方法」は、放映されるCMの順序が顧客に応じて異なる態様となるよう管理するための方法であるから、本願発明の「広告配信管理方法」とは、以下の点で相違しているものの、「広告配信管理方法」である点では共通するということができる。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「顧客毎に優先順位に応じた広告を配信する広告配信管理方法であって、
顧客に係るデータを決定する段階と、
前記決定されたデータに基づき広告配信スケジュールを決定する段階と、
前記決定した広告配信スケジュールに基づき前記顧客に対する前記広告の配信を行う段階と
を具備することを特徴とする広告配信管理方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]顧客に係るデータが、本願発明では「顧客に対する広告の順位決定係数」であるのに対して、引用発明では「顧客の属性コード」であって、前記「顧客に対する広告の順位決定係数」ではない点。

[相違点2]配信対象の情報が、本願発明では、広告「及び当該広告に関連する事項」であるのに対して、引用発明では、広告を対象としているが、前記「当該広告に関連する事項」を対象としていない点。

[相違点3]本願発明では「前記顧客に対する前記広告及び当該広告に関連する事項の許諾確認係数を決定する段階」を更に具備しており、前記順位決定係数「及び許諾確認係数」に基づいて前記広告配信スケジュールを決定しているのに対して、引用発明では、そのような段階を具備しておらず、そのような係数を用いてスケジュールを決定するものでない点。

5-2-3.当審の判断
以下、各相違点について判断する。
[相違点1について]
広告の配信スケジュールを規定するためにどのようなデータを利用するかは、当業者の必要に応じて任意に決定しうる設計的事項にすぎないものであり、引用発明の「顧客の属性コード」も、その顧客に向けて配信すべき広告の配信スケジュールを決める際に利用されているデータであることからみて、引用発明において、前記「顧客の属性コード」に代えて、「顧客に対する広告の順位決定係数」を採用した構成にすることは、当業者にとって格別の技術的困難性を要することではないといえる。
そうすると、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明に基づいて、当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

[相違点2について]
顧客に対してどのような情報を与えるかは、その目的に応じて任意に決定しうる設計的事項にすぎないところ、引用発明において、広告に加えて、該広告に関連する事項も扱うような構成にすることは、当業者にとって格別の技術的困難性を要することではないといえる。
そうすると、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明に基づいて、当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

[相違点3について]
引用例2の前記(d)及び(e)には、視聴者の地域等の照合により、視聴者が広告のターゲットとなっている場合は広告情報の読み出し及び表示を許可し、そうでない場合は該読み出し及び表示を許可しないように制御することが記載されている。
そして、許可、非許可を制御するのに何らかの数値(例えば「1」、「0」)を用いることは一般的に行われている事項であることからみて、前記引用例2には、顧客に対して広告を与えることを許諾するか否かを示す数値を決定し、前記決定した数値に基づき広告を前記顧客に与えるか否かを制御する技術が開示されているといえる。
一方、前記(c)の記載からみて、引用例1には、スケジュールテーブルを作成する場合に、単に序列化する処理だけでなく、サービスの対象から除外する処理も組み合わせる思想が開示されているといえる。
してみれば、引用発明において、顧客に対する許諾に係る係数を求める段階を更に具備させた上で、顧客に係る優先順位に応じた広告の序列化の処理に加え、前記許諾に係る係数に基づく除外の処理も組み合わせることにより、配信スケジュールを決めるような構成にすることは、当業者にとって格別の技術的困難性を要することではないといえる。
そうすると、相違点3に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用例1,2に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

5-2-4.原査定の拒絶の理由Aについてのまとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例1,2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、この出願の請求項20に係る発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。
そして、仮に請求項20に係る発明を特許法上の「発明」として認めたとしても、この出願の請求項20に係る発明は、引用例1に記載された発明及び引用例1,2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-05 
結審通知日 2007-12-10 
審決日 2007-12-28 
出願番号 特願2002-553790(P2002-553790)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 博文  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 坂庭 剛史
森次 顕
発明の名称 広告配信管理システム及び方法  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 小川 信夫  
代理人 今城 俊夫  
代理人 中村 稔  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 箱田 篤  
代理人 村社 厚夫  

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