• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1173198
審判番号 不服2005-191  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-05 
確定日 2008-02-14 
事件の表示 特願2001-160338「キャラクタ育成システム、そのシステムに用いられるキャラクタ育成装置、キャラクタ育成情報提供装置、キャラクタ受信端末装置、それらの装置に用いられるプログラム、それらのプログラムが記録された記録媒体、および、キャラクタ育成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 3日出願公開、特開2002-346216〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成13年5月29日の出願であって、平成16年11月29日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成17年1月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成17年1月26日付で手続補正がなされたものである。


2.平成17年1月26日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成17年1月26日付の手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正の内容

平成17年1月26日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の明細書の特許請求の範囲の請求項1についての、
「電子データ化された仮想のキャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成システムであって、
前記キャラクタの育成者の端末操作によらず自動的に前記キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報を電気情報通信手段を介して提供可能な複数のキャラクタ育成情報提供装置と、
該複数のキャラクタ育成情報提供装置のそれぞれから前記電気情報通信手段を介して提供された前記キャラクタ育成情報に基づいて前記キャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成装置と、
該キャラクタ育成装置において育成されている前記キャラクタを電気情報通信手段を介して受信可能なキャラクタ受信端末装置とを備えることを特徴とする、キャラクタ育成システム。」
の記載を、
「電子データ化された仮想のキャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成システムであって、
前記キャラクタの育成者の端末操作によらず自動的に前記キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報をインターネットを介して提供可能な複数のキャラクタ育成情報提供装置と、
該複数のキャラクタ育成情報提供装置のそれぞれから前記インターネットを介して提供された前記キャラクタ育成情報に基づいて前記キャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成装置と、
該キャラクタ育成装置において育成されている前記キャラクタを電気情報通信手段を介して受信可能なキャラクタ受信端末装置とを備えることを特徴とする、キャラクタ育成システム。」
と補正するものを含むものである。

(2)本件補正についての検討

本件補正により、本件補正前の請求項1に記載の「前記キャラクタの育成者の端末操作によらず自動的に前記キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報を電気情報通信手段を介して提供可能な複数のキャラクタ育成情報提供装置」における「電気通信手段」を「インターネット」と限定し、本件補正前の請求項1に記載の「該複数のキャラクタ育成情報提供装置のそれぞれから前記電気情報通信手段を介して提供された前記キャラクタ育成情報に基づいて前記キャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成装置」における「前記電気情報通信手段」を「前記インターネット」と限定し、本件補正後の請求項1の記載としている。

そうすると、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定し、本件補正後の請求項1の記載とする補正を含むものである。

したがって、当該補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

(3)本件補正後の本願発明

本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。
「電子データ化された仮想のキャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成システムであって、
前記キャラクタの育成者の端末操作によらず自動的に前記キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報をインターネットを介して提供可能な複数のキャラクタ育成情報提供装置と、
該複数のキャラクタ育成情報提供装置のそれぞれから前記インターネットを介して提供された前記キャラクタ育成情報に基づいて前記キャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成装置と、
該キャラクタ育成装置において育成されている前記キャラクタを電気情報通信手段を介して受信可能なキャラクタ受信端末装置とを備えることを特徴とする、キャラクタ育成システム。」

(4)引用例

これに対して、原査定の拒絶理由に引用され、本願特許出願前に頒布された刊行物である、特開平6-295390号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面の図示とともに次の事項が記載されている。

(a)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,商取引に伴う販売促進用サービスとして顧客端末または店舗端末を介して発行されるサービスポイントの点数管理システムに関するものである。」

(b)「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の点数管理システムは,上記課題を解決するため,例えば図1に示すような以下の手段を持つ。
【0012】顧客認識手段4は,データ入力手段から入力されたサービス提供を希望する顧客のID信号により顧客を認識する手段である。データ入力手段2は,処理装置1に組み込まれ,あるいは公衆回線等通信回線を介して接続された端末3,例えば顧客端末あるいは店舗内に配置された店舗端末である。点数通知手段5は,通信回線の空きを使用するかまたは商取引やサービス提供に先立って,該当する顧客の累積点数および目標点数等の点数情報を第1次情報としてデータ入力手段2へ送出し,サービス内容記憶手段6から読み出した顧客の希望する分野のサービス情報をデータ入力手段2へ送出する手段である。点数集計手段7は,顧客の商取引状態に応じて顧客の累積点数を加算または減算する条件監視手段8により累積点数を定期的に更新し,また顧客の点数を顧客の選択により予め設定された団体へ加算する一括集計や,他グループ店舗へ所定の変換レートで変換を行う手段である。点数発行手段9は,コンピュータを使用して様々な点数付与率を設定する点数付与率管理手段10を持ち,これにより商取引に応じて予め定められた点数付与率を乗じて算出された点数を発行する手段である。
【0013】
【作用】本発明の点数管理システムおよび装置では,処理装置あるいは公衆回線等を利用して接続された顧客端末または店舗端末から入力された顧客のID信号により,来店購入および通信販売いずれの顧客をも認識し,担当者が顧客と直に接することなく点数の通知,発行,集計からサービスの提供まで行い,点数付与率の変更が随時可能となり,電話やパソコンを利用した通信販売等を含め商取引形態の実情に則したサービスの提供も負担を増大させずに対応することが可能となる。
【0014】また,顧客端末または店舗内端末または店舗内で送出されている点数およびサービス情報を受信するビデオカート等で,端末操作の第一段階または商品購入等の精算以前にその顧客の累積点数や希望するサービスの目標点数とそれに対する不足点数等の情報を通知し,それによって点数サービスに対する顧客の関心を高め,また顧客が商品を選択する時点でその商品の獲得点数を即時に通知して購買意欲を増進させることが可能となる。」

(c)「【0015】
【実施例】以下,本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1に示す構成例において,1はCPUおよびメモリを備えた処理装置であって,店舗または事業グループのセンタまたはVANセンタ等に設置されるもの,2はデータ入力手段,3は顧客端末または店舗端末,4は顧客認識手段,5は点数通知手段,6はサービス内容記憶手段,7は点数集計手段,8は条件監視手段,9は点数発行手段,10は点数付与率管理手段を表す。またデータ入力手段2は,処理装置1側に一体に組み込まれて店舗内に設置されてもよく,また実施例にあるように公衆回線等通信回線を介して接続された端末3(顧客端末または店舗端末)側に設けられてもよい。
【0016】以下は,データ入力手段2が通信回線を介して接続された顧客端末または店舗端末である端末3に配されている場合を用いて説明する。また,以下の説明における処理装置1の処理機能の一部を端末3内で代行することも可能である。
【0017】顧客認識手段4は,顧客端末または店舗端末である端末3においてキー入力または顧客認定のための特徴情報の入力から顧客ID番号を受信して顧客を特定する。
【0018】点数通知手段5は,顧客認識手段4で特定した顧客の累積点数情報を商取引に先立って最初に送出し,さらに顧客の点数情報に対応して予め用意されたサービスリストが格納されたサービス内容記憶手段6から,顧客の端末操作により選択した範囲でサービス情報を読み出し,その情報を端末3へ送出する。
【0019】点数集計手段7は,点数発行手段9で発行した点数を集計し,予め定められた条件で変換する条件監視手段8で演算し,その結果を顧客の点数情報とし,点数通知手段5へ送出する。
【0020】点数発行手段9は,商取引の条件に応じて点数付与率を変化させ記憶する点数付与率管理手段10により,端末3から受信した点数を演算し,顧客認識手段4で認識した顧客に対し算出した点数情報を点数集計手段7へ送出する。
【0021】図2は,本発明の実施例の全体システム説明図である。図2において,顧客端末30aは,マルチメディア端末31a,メモリ32a,モデム33aからなり,例えば公衆回線24を利用し通信制御装置26を経由して,顧客認識手段4と点数通知手段5と点数集計手段7と点数発行手段9と顧客データベース等の各種参照データベース12を備えた処理装置1に接続される。他の顧客端末30bも同様にマルチメディア端末31b,メモリ32b,モデム33bなどからなる。顧客端末を,パソコン通信端末またはテレビ電話等により構成することもできる。
【0022】処理装置1は店舗内に設置されるか,また複数の店舗を有する大規模な構成の場合にはその計算センタや事務処理センタに設置される。来店購入者用の店舗端末35も1台または複数台が処理装置1に接続され,店舗端末35または顧客端末30a,30bから顧客ID信号(番号)が入力されると(図2),処理装置1は顧客認識手段4で顧客を認識し,その顧客の累積点数等の点数情報が存在すれば点数通知手段5によりその点数情報を送出する(図2)。そして,購入情報が入力されると点数発行手段9で算出した点数情報を点数集計手段7へ送出し,点数集計手段7においてその点数を集計し,更新された点数情報を点数通知手段5に送出する。点数通知手段5は店舗端末35または顧客端末30a,30bへその点数情報を送出して表示する。
【0023】顧客端末30a,30bには,通信販売のオンライン購入,目標案内,点数発行,点数照会等の各機能が処理装置1により提供され,来店購入に対しては,店舗端末35を介して目標案内,点数発行,点数照会等の各機能が提供される。」

(d)「【0054】続いて,顧客とその点数の管理および顧客に対するサービスの提供を実現する処理機能およびその機能実現手段を各処理機能ごとに説明する。
1.点数を管理する機能
点数管理として,点数の発行,集計,通知があげられる。
1.1. 点数を発行する機能
図8は点数発行手段の全体概要図である。図8において,処理装置1としてホスト計算機または店舗コンピュータまたはPOSレジスタが使用される。処理装置1内に購入条件テーブル14を備え,管理者端末11から複数の購入条件を随時,任意に設定することができるようになっている。購入条件には,各々点数付与率および被点数算出情報が対応づけられている。店舗端末35または顧客端末30から商品購入情報を受信すると,予め記憶されている商品購入情報ログ13を参照し,受信情報を加工/抽出処理して,所定フォーマットの商品購入情報15を作成する。商品購入情報15には,端末ID,購入年月日,購入時刻,顧客ID,購入した各商品ごとの商品コード,数量,金額,および購入した合計数量,合計金額情報等が含まれる。そして,この商品購入情報15をもとに,購入条件テーブル14および各種参照データベース12を参照して,今回の購入が購入条件テーブル14の条件を満たすかどうかを判定する。条件を満たしていれば,今回購入点数を算出して点数集計手段7へ送出する。」

(e)「【0077】図23は累積点数更新処理説明図である。図23において,点数集計手段7は,点数発行手段9で発行された今回購入点数を顧客データベース12bに記憶されたその顧客の累積点数に加算し,最新購入年月日を更新する。また,条件監視手段8により,予め設定された累積点数更新条件テーブル16を参照して,定期的に顧客の購入行動を判定し,顧客の累積点数の演算と更新を行う。この条件監視手段8における定期累積点数更新処理は,例えば月次または半期または年次などの所定の期間ごとに起動される。」

(f)「【0082】・・・(略)・・・
1.2.4. 累積点数を変換する機能
点数集計手段7は,顧客または事業者の要望により,同一グループの共通センタ等を経由して各店舗間で顧客の累積点数を移動させたり,他グループまたは異種店舗間で予め定めたレートで顧客の累積点数を変換したりする。これにより,複数種類の点数サービスを共通化させることなどができ,顧客に対するサービス性を向上させることができる。
1.3. 点数を通知する機能
点数通知について前述の図1を用いて説明する。図1において,点数通知手段5は,点数集計手段7で集計した顧客の累積点数や希望サービスに対する目標点数,不足点数等を含む点数情報およびサービス内容記憶手段6に記憶されたサービス情報を端末3へ送出する。マルチメディア端末等の顧客端末および専用店舗端末,銀行等共用端末,店内ビデオカートPOSレジスタ端末,バーコードスキャナ付端末等の店舗端末で通知する以外にも,電話による音声サービスやファクシミリで通知する,パソコン通信画面やテレビ電話のような双方向テレビ画面で表示する,CATVの特定チャンネルを常時参照可能状態にする,電子カタログ(CD-ROM)の定期発行やICカードで提供する,公衆回線の空き状態を利用して顧客端末に情報を送出するといった手段があげられる。」

(g)「【0093】図28は,パソコン通信を利用する顧客がその点数範囲で受けることのできるサービスを検索する例を示す。顧客端末30は公衆回線24を介して処理装置1に接続される。顧客は画面の操作案内に従い,顧客IDを入力し,レジャーまたは物品といった希望するジャンルを選択し,現在の累積点数と参照したそれぞれのサービスに必要な点数とそのサービス授受後の残点数等の点数情報を得る。選択により現在の累積点数と交換可能なサービスを受ける手続に進むことができる。処理装置1は,顧客端末30から受信した顧客IDを判定し,顧客データベース12aからその顧客の累積点数を検索し,顧客端末30へ送出し,次に累積点数をキーに点数別サービスデータ12gから該当するサービス情報を検索抽出して顧客端末30へ送出する。
【0094】顧客は自宅のパーソナルコンピュータで一目で自分の累積点数を参照することができ,しかもその点数が可能なサービスを見ることができる。図29は,パソコン通信を利用する顧客が自分の嗜好によって目標物を検索する例で,特に目標物の案内をジャンルで選択する例を示している。顧客端末30は,図28と同様に接続される。顧客は画面の操作案内に従い,顧客IDを入力すると,累積点数が表示されるとともに,ジャンルのメニューが表示される。顧客が希望するジャンルを選択すると,処理装置1は,分野別サービスデータ12hから該当するサービス情報を検索抽出して顧客端末30へ送出する。顧客端末30の画面には,選択されたジャンルのサービス内容と,そのサービスに必要な点数と,顧客の累積点数からサービスに必要な点数を引いた目標までの点数が一覧表示される。
【0095】図30は,パソコン通信を利用する顧客が自分の嗜好によって目標物を検索する例で,特に目標物を直接エントリ画面で指定させ,処理装置1におけるエキスパートシステムにより案内する例を示している。顧客端末30は,図28と同様に接続される。顧客は画面の操作案内に従い,顧客IDを入力し,希望する目標物を50字以内で,例えば熱海への一泊二日の旅行であれば,「熱海に一泊二日の旅行」と入力する。これにより,処理装置1のエキスパートシステムは,サービスデータベース12iを検索し,食事等の希望するオプションを問い合わせ,目標物の授受に必要な点数(不足点数)などを通知する。
・・・(略)・・・
【0096】図31は電話による音声サービスによる点数情報通知例を示す図である。図31において,処理装置1は,顧客データベース12bにおける顧客情報レコード17の通知日指定をキーに一定間隔で通知対象となる顧客を検索抽出し,公衆回線24を介して顧客の電話へサービス案内等のメッセージや点数情報を音声にて通知する。
【0097】パーソナルコンピュータ等を顧客端末として利用している場合,アクセス時の初期画面に最初にその顧客の累積点数を表示することにより,点数を顧客がいつも点数を意識するようにし,目標達成意欲を増進させることができる。さらに,例えば図32に示すように目標と現在点数とをグラフ表示することにより,目標到達状況を可視化して目標達成意欲の増進が図ることができる。
【0098】図32(a)は,現在の累積点数を帯状に表示し,希望する目標物への到達点数を目盛りとして表示した例である。この帯状グラフを点数サービスおよびソフトサービス処理中ずっと画面上に表示することも可能である。これによりサービス提供中またはサービス交換処理後には累積点数の減算状態をすぐに知ることができる。
【0099】図32(b)は,選択された目標点数を全画面面積に対応させてグラフ表示した例であり,全画面の目標達成度100%に対する現在の累積点数の比率面積を色反転表示している。これにより,一目で目標に対する現在の点数状況がわかり,累積点数の比率面積が増加するにつれて,目標到達までの意欲がさらに増すことになる。
【0100】図32(c)は,目標を景品のイメージイラストで表示した例であり,完全表示の目標達成度100%に対する累積点数の比率面積を色反転表示している。また,図32(d)に示すように,目標をイメージイラストで表示するときに,完全表示の目標達成度100%に対する累積点数の比率面積で段階表示するようにしてもよい。目標達成度が100%に近づくにつれ,目標物の形状等が明確化されるようにすることにより,目標到達までの期待を膨らませることができる。
【0101】図32(b)?(d)の画面において,目標物が切り換えられた場合には,新しい目標物に応じた目標達成度を示す画面に瞬時に切り換える。
1.3.2. 累積点数を提示する機能
顧客端末30で累積点数を提示する手段として,電話で音声サービスをする,パソコン通信画面で表示する,ファクシミリで通知する,テレビ電話画面などの双方向テレビ画面で表示する,CATVの特定チャネルで表示する,アクセスの最初の画面で現在点数を表示する,グラフで目標と累積点数を表示する,顧客端末メモリで累積点数を保持する,回線空き状態のときに顧客端末メモリを書き換える,端末画面で定期的に現在点数を表示するといった手段を採用することができる。」

(h)「【0109】以上説明したように,本発明は次のような種々の態様で実施することが可能である。
(1) 商取引に応じて点数を発行する点数発行手段と,発行された点数を演算して累積点数を集計する点数集計手段と,顧客に対して点数情報を通知する点数通知手段と,顧客端末または店舗端末からのキー入力または顧客認定のための特徴情報の入力から顧客ID番号を受信して顧客を特定する顧客認識手段とを設け,点数通知手段により,顧客認識手段により特定された顧客に対して,商取引きに先立って最初に累積点数情報を送出するように構成する。
・・・(略)・・・
【0111】(4) 上記(1) の構成において,点数発行手段は,購入条件により点数付与率を変化させる。
・・・(略)・・・
【0113】(8) 上記購入条件は,特定地域内店舗を対象に設定される。
・・・(略)・・・
【0118】(19)上記(1) の構成において,点数通知手段は,累積点数を画像および/または音声で顧客に通知する。
(20)点数通知手段による通知情報は,通信回線を介して顧客端末のパソコン通信画面上に表示される。
【0119】・・・(略)・・・
(22)点数通知手段は,目標点数に対する累積点数をグラフ表示する。
【0120】(23)点数通知手段は,全画面面積を目標点数とする一方,累積点数を目標点数に比例した面積分だけ色反転表示する。
(24)点数通知手段は,顧客が希望する対象物を目標点数として画面に表示するとともに,累積点数を目標点数に比例した面積分だけ色反転表示する。
【0121】(25)点数通知手段は,顧客が希望する対象物を目標点数として画面上にエリアを設定するとともに,累積点数に応じて目標点数に比例した面積分だけ対象物を画面表示する。
・・・(略)・・・
【0129】・・・(略)・・・
(41)点数集計手段は,ひとつの店舗グループが管理する点数を,顧客の要望に応じて他の店舗グループが管理する点数に,所定のレートで変換する手段を持つ。」

上記記載事項(a)、(b)及び(c)並びに図1の記載から、引用例1には、点数管理システムが記載され、前記点数管理システムが、店舗端末35と、処理装置1と、顧客端末30と、を備える点が読み取れる。

上記記載事項(b)及び(g)並びに図1の記載から、引用例1の記載の処理装置1と店舗端末35や顧客端末30とが公衆回線等通信回線を介して接続している点が読み取れる。

上記記載事項(c)、(f)及び(h)から、引用例1の点数管理システムは、1つの処理装置1に対して、複数の店舗端末35を備えることが可能な点が読み取れる。

上記記載事項(d)から、引用例1に記載の処理装置1が店舗端末35から商品購入情報を受信する点が読み取れ、上述のように、店舗端末35と処理装置1とは、公衆回線等通信回線を介して接続しており、また、引用例1の点数管理システムは、上述のように複数の店舗端末35を備えているので、上記記載事項等から、引用例1に記載の点数管理システムが、商品購入情報を公衆回線等通信回線を介して送信する複数の店舗端末35を備える点が読み取れる。

上記記載事項(d)から、処理装置1において、点数発行手段9が、店舗端末53から商品購入情報を受信すると、前記商品購入情報をもとに、今回購入点数を算出して、点数集計手段7へ送出する点が読み取れる。
また、上記記載事項(e)から、処理装置1において、点数集計手段7は、点数発行手段で発行された今回購入点数を、顧客データベース12bに記憶されたその顧客の累積点数に加算する点が読み取れる。
また、上述のように、店舗端末35と処理装置1とは、公衆回線等通信回線を介して接続されており、また、上記記載事項(f)及び(h)の記載からみて、処理装置1が備える点数集計手段7は、同一の店舗グループに属する複数の店舗の顧客の点数を共通して管理する点が読み取れるので、上記記載事項等から、引用例1に記載の点数管理システムが、複数の店舗端末53のそれぞれから公衆回線等通信回線を介して送信された商品購入情報に基づいて顧客の今回購入点数をその顧客の累積点数に加算する点数集計手段7を備える処理装置1を備える点が読み取れる。

上記記載事項(g)から、顧客は、処理装置1に記憶されている累積点数を公衆回線等通信回線を介して顧客端末30に送出している点が読み取れるので、上記記載事項から、引用例1に記載の点数管理システムが、顧客の累積点数を公衆回線等通信回線を介して受信する顧客端末30を備える点が読み取れる。

したがって、引用例1の上記記載事項及び図面の記載によれば、引用例1には、
「点数管理システムであって、
商品購入情報を公衆回線等通信回線を介して送信する複数の店舗端末35と、
複数の店舗端末35のそれぞれから公衆回線等通信回線を介して送信された商品購入情報に基づいて顧客の今回購入点数をその顧客の累積点数に加算する点数集計手段7を備える処理装置1と、
前記顧客の累積点数を公衆回線等通信回線を介して受信する顧客端末30と、
を備えた点数管理システム。」
の発明(以下、「引用例1発明」という。)の記載が認められる。


原査定の拒絶理由に引用され、本願特許出願前に頒布された刊行物である、特開平11-282984号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面の図示とともに次の事項が記載されている。

(i)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば、クレジットカードや電子マネーなどとして用いられるICカードから、各種取引データやサービスのためのポイント数などを選択的に読出して表示するICカード用携帯端末装置に関する。」

(j)「【0015】本発明によれば、たとえば、受入れたICカードからそれに記憶されているポイント数データを読出し、この読出したポイント数データの値に応じて特定のキャラクタ(パターンデータ)を表示することにより、たとえば、ICカードに記憶されているポイント数に応じて、キャラクタを育成するシュミレーションゲームなどの娯楽性を提供することができる。」

(k)「【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るICカード用携帯端末装置が適用されるクレジットシステムの構成を概略的に示している。すなわち、たとえば、クレジット取引で所望の商品購入を行なうと、店員が商店に設置されたICカードリーダライタ31によって、商品購入者が所持するICカード8内のメモリに、そのクレジット取引の取引データとともに、使用代金に応じたサービスのためのポイント数データ(可変値データ)を記憶(登録)する。この場合、ポイント数データは、必ずしも取引データとともに同時に登録する必要はなく、取引データを記憶した後の任意時に登録してもよい。
【0019】なお、ICカードリーダライタ31は、たとえば、クレジット会社のホストコンピュータ32に通信回線を介して接続されている。さて、このように取引データおよびポイント数データが記憶されたICカード8を、商品購入者が所持するICカード用携帯端末装置1に挿入し、所定の操作を行なうことにとより、ICカード8からポイント数データが読出され、そのポイント数データの値に応じてキャラクタなどが表示されるようになっている。」

(l)「【0020】図2は、図1で示したICカード用携帯端末装置1の外観を概略的に示すものである。すなわち、ICカード用携帯端末装置1は、たとえば、いわゆるポケットベルのような形状に形成されていて、その表面には、各種データを表示する表示手段としての液晶表示部2、アップ方向の選択キー3aおよびダウン方向の選択キー3b、エンターキー(確定キー)4、次の表示画面に進むときなどに押下するエグジットキー5などが設けられている。
・・・(略)・・・
【0023】・・・(略)・・・図4は、ICカード用携帯端末装置1の構成を概略的に示すものである。すなわち、全体的な制御を司る制御部11は、たとえば、CPUなどを主体に構成されている。制御部11には、制御プログラムなどを記憶するROM(リード・オンリ・メモリ)12、ワークメモリに使用する記憶手段としてのRAM(ランダム・アクセス・メモリ)13、前記表示部2を駆動制御する表示駆動回路14、ICカード駆動用電圧変換回路15、および、前記選択キー3a,3b、エンターキー4、エグジットキー5などの各種キー16がそれぞれ接続されている。
・・・(略)・・・
【0025】図5は、ROM12に格納されている第1のテーブルデータを示している。この第1のテーブルデータは、ポイント数データとこれに対応するキャラクタ(パターン)とを対応させてテーブルデータとしてROM12に格納されている。
【0026】図6は、ROM12に格納されている第2のテーブルデータを示している。この第2のテーブルデータは、キャラクタ(パターン)とこれに対応するビットイメージデータとを対応させてテーブルデータとしてROM12に格納されている。」

(m)「【0027】図7は、ICカード8の構成を概略的に示すものである。すなわち、ICカード8は、前記コンタクト部9、および、ICチップ21から構成されている。ICチップ21は、制御素子としてのCPU22、CPU22の制御プログラムを記憶するROM23、ワークメモリとしてのRAM24、および、データ記憶用の不揮発性メモリとしてのEEPROM25などから構成されている。
【0028】次に、上記のような構成において、図8に示すフローチャートを参照しつつ、ICカード8に対してポイント数データを記憶(登録)する処理動作について説明する。まず、ICカード8をICカードリーダライタ31に挿入セットすると(S1)、挿入されたICカード8は活性化され(S2)、ICカード8のEEPROM25から前回までのポイント数データが読出され、RAM24に一時格納される(S3)。
【0029】次に、ICカードリーダライタ31のキーボード(図示しない)から、今回のポイント数データを入力することにより(S4)、この入力されたポイント数データがRAM24内の前回までのポイント数データに加算される(S5)。そして、この加算結果が新たなポイント数データとしてICカード8のEEPROM25に記憶され(S6)、ICカード8は非活性化され(S7)、ICカード8は排出される(S8)。」

(n)「【0032】次に、図9に示すフローチャートを参照しつつ、ICカード8からデータを読出す処理動作について説明する。ICカード8のデータを読出す場合、図2に示すように、ICカード8をカード挿入部から挿入し、規定の位置にセットする(S11)。
【0033】こうして、ICカード8を規定の位置に挿入セットすると、内部に設けられた機械的な電源スイッチ(図示しない)がオン状態となるようになっていて(S12)、これにより、本ICカード用携帯端末装置1は電源オン状態となる。
【0034】電源オン状態になると、制御部11は、表示部2に読出データ選択用のメニュー画面を表示する(S13)。利用者は、このメニュー画面において読出データを選択する(S14)。この場合、ポイント数データの読出しを選択する。なお、取引データの読出しを選択した場合、取引データの読出し処理に進む。
【0035】こうして読出データが選択されると、制御部11は、ICカード8を活性化し(S15)、ICカード8のEEPROM25からポイント数データを読出し、RAM24に一時格納される(S16)。このとき、読出されるポイント数データには、図10に示すように、そのポイント数データの表示方法(ポイント数データをそのまま表示するか、ポイント数データを特定のキャラクタに変換して表示するか)を識別するための識別情報が付加されている。この識別情報は、クレジット会社とカード所有者との間であらかじめ決定されるもので、たとえば、ポイント数データを特定のキャラクタに変換して表示する場合は特定のコードとし、ポイント数データをそのまま表示する場合は上記特定のコード以外のコードに設定される。
【0036】こうしてポイント数データが読出されると、制御部11は、そのポイント数データに付加されている識別情報を参照することにより、識別情報が特定のコードか否かをチェックし(S17)、特定のコードであれば、図5に示した第1のテーブルデータを参照することにより、ICカード8から読出したポイント数データを対応する特定のキャラクタに変換する(S18)。
【0037】次に、制御部11は、図6に示した第2のテーブルデータを参照することにより、ステップS18で変換した特定のキャラクタを対応するビットイメージデータに変換し(S19)、ICカード8を非活性化する(S20)。
【0038】次に、制御部11は、ステップS18で変換した特定のキャラクタのビットイメージデータを表示部2に表示する(S21)。その表示例を図11(a)および(b)に示す。そして、ICカード8がICカード用携帯端末装置1から引き抜かれると(S22)、電源スイッチがオフ状態となり、本ICカード用携帯端末装置1は電源オフ状態となる(S23)。電源スイッチがオフ状態になり、電源が遮断されることにより、表示部2は消灯状態となる。
【0039】なお、ステップS17において、識別情報が特定のコード以外のコードであれば、ステップS18,S19をジャンプしてステップS20に進み、上記同様な動作を繰り返す。すなわち、識別情報が特定のコード以外のコードの場合、ICカード8から読出したポイント数データをそのままダイレクトに表示するものである。その表示例を図11(c)に示す。
【0040】以上説明したように上記実施の形態によれば、受入れたICカードからそれに記憶されているポイント数データを読出し、この読出したポイント数データの値に応じて特定のキャラクタ(パターンデータ)を表示することにより、たとえば、ICカードに記憶されているポイント数に応じて、キャラクタを育成するシュミレーションゲームなどの娯楽性を提供することができる。」

(5)対比

本願補正発明と引用例1発明とを対比する。

引用例1発明の「店舗管理システム」と、本願補正発明の「電子データ化された仮想のキャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成システム」及び「キャラクタ育成システム」とはともに、「システム」の点で一致する。

本願補正発明の「キャラクタの育成に関する育成情報」は、具体的には、本件特許出願の願書に最初に添付した明細書または図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0057】から【0059】の記載からみて、購入、施設利用、旅行等のような、ユーザの行動に関する情報であり、また、引用例1発明の「顧客」は、前記「ユーザ」に相当するものであり、引用例1発明の「商品購入」も、ユーザの行動に関する情報に該当するといえるので、引用例1発明の「商品購入情報」と、本願補正発明の「キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報」とはともに、「ユーザの行動に関する情報」の点で一致する。

引用例1発明の「公衆回線等通信回線」と、本願補正発明の「インターネット」とはともに、「電気情報通信手段」の点で一致する。

引用例1発明の「送信する」は、本願補正発明の「提供可能な」に相当する。

引用例1発明の「店舗端末35」は、「商品購入情報」を送信するものであり、「店舗端末35」は「情報提供装置」と呼べるものなので、引用例1発明の「店舗端末35」と、本願補正発明の「キャラクタ育成情報提供装置」とはともに、「情報提供装置」の点で一致する。

引用例1発明の「顧客の累積点数」と、本願補正発明の「キャラクタ」とはともに、「ユーザが獲得した価値情報を示すもの」という点では一致するものであり、また、引用例1発明の「顧客の今回購入点数をその顧客の累積点数に加算する点数集計手段7を備える」と、本願補正発明の「キャラクタの育成を行うための」とはともに、「ユーザが獲得した価値情報を示すものの更新を行う」の点で一致する。
したがって、引用例1発明の「顧客の今回購入点数をその顧客の累積点数に加算する点数集計手段7を備える処理装置1」と、本願補正発明の「キャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成装置」とはともに、「ユーザが獲得した価値情報を示すものの更新を行う装置」の点で一致する。

引用例1発明の「前記顧客の累積点数」と、本願補正発明の「該キャラクタ育成装置において育成されている前記キャラクタ」とはともに、「前記ユーザが獲得した価値情報を示すもの」の点で一致する。

引用例1発明の「公衆回線等通信回線」は、本願補正発明の「電気情報通信手段」に相当する。

引用例1発明の「受信する」は、本願補正発明の「受信可能な」に相当する。
引用例1発明の「顧客端末30」と、本願補正発明の「キャラクタ受信端末」とはともに、「受信端末」の点で一致する。

したがって、本願補正発明と引用例1発明の両者は、
「システムであって、
ユーザの行動に関する情報を電気情報通信手段を介して提供可能な複数の情報提供装置と、
該複数の情報提供装置のそれぞれから前記電気情報通信手段を介して提供された前記ユーザの行動に関する情報に基づいてユーザが獲得した価値情報を示すものの更新を行う装置と、
前記ユーザが獲得した価値情報を示すものを電気情報通信手段を介して受信可能な端末装置とを備える、
システム。」
の点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1:システムが、本願補正発明では、「電子データ化された仮想のキャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成システム」であるのに対して、引用例1発明では、「点数管理システム」である点。

相違点2:ユーザの行動に関する情報が、本願補正発明では、「キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報」であるのに対して、引用例1発明では、商品購入情報である点。

相違点3:情報提供装置が提供するユーザの行動に関する情報を、本願補正発明では、「前記キャラクタの育成者の端末操作によらず自動的に」提供するものであるのに対して、引用例1発明では、前記構成に関する限定がない点。

相違点4:情報提供装置がユーザの行動に関する情報を電気情報通信手段を介して提供する際の電気情報通信手段が、本願補正発明では、「インターネット」であるのに対して、引用例1発明では、「公衆回線等通信回線」である点。

相違点5:「該複数の情報提供装置のそれぞれから前記電気情報通信手段を介して提供され」る際の「電気情報通信手段」が、本願補正発明では、「インターネット」であるのに対して、引用例1発明では、「公衆回線等通信回線」である点。

相違点6:情報提供装置が、本願補正発明では、「キャラクタ育成情報提供装置」であるのに対して、引用例1発明では、「店舗端末35」である点。

相違点7:ユーザが獲得した価値情報を示すものが、本願補正発明では、「キャラクタ」であるのに対して、引用例1発明では、「顧客の累積点数」である点。

相違点8:ユーザの行動に関する情報に基づいてユーザが獲得した価値情報を示すものの更新を行う装置が、本願補正発明では、「前記キャラクタ育成情報に基づいて前記キャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成装置」であるのに対して、引用例1発明では、「商品購入情報に基づいて顧客の今回購入点数をその顧客の累積点数に加算する点数集計手段7を備える処理装置1」である点。

相違点9:端末装置において、「前記ユーザが獲得した価値情報を示すものを電気通信手段を介して受信する」際の「前記ユーザが獲得した価値情報を示すもの」が、本願補正発明では、「該キャラクタ育成装置において育成されている前記キャラクタ」であるのに対して、引用例1発明では、「前記顧客の累積点数」である点。

相違点10:端末装置が、本願補正発明では、「キャラクタ受信端末装置」であるのに対して、引用例1発明では、「顧客端末30」である点。

(6)判断

まず、検討の都合上、相違点1についての検討は最後に行い、相違点2についての検討から順に行う。

相違点2について
引用例2には、商店において、商品購入者がクレジット取引で所望の商品購入を行うと、使用代金に応じたサービスのためのポイント数データが記憶される前記商品購入者が所持するICカードから、それに記憶されているポイント数データを読出し、この読出したポイント数データの値に応じて特定のキャラクタを表示することにより、ICカードに記憶されているポイント数に応じて、キャラクタを育成するシュミレーションゲームなど娯楽性を提供することができるICカード用携帯端末装置の発明が記載されている。
そして、引用例2に記載された発明の、商品購入者は、ユーザと呼べるものであり、商品購入は、ユーザの行動に該当するといえるので、商品購入の際の「使用代金」は、「ユーザの行動に関する情報」に相当するものといえ、引用例2に記載された発明の「キャラクタ」は、「ユーザが獲得した価値情報を示すもの」に相当するものともいえる。
さらに、引用例2に記載された発明は、「使用代金」に応じて「キャラクタを育成する」ものなので、引用例2に記載された発明の「使用代金」は、本願補正発明の「キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報」に相当するといえる。
そして、引用例1発明と引用例2に記載された発明とはともに、ユーザの行動に関する情報に応じてユーザが獲得した価値情報を示すものを提供する発明で共通する。
よって、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、「ユーザの行動に関する情報」である引用例1発明の「商品購入情報」に換えて「キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報」とし、相違点2に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

相違点3について
引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、「ユーザの行動に関する情報」である引用例1発明の「商品購入情報」に換えて「キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報」とする点は、上記「相違点2について」で検討済みの事項である。
そして、「ユーザの行動に関する情報」である引用例1発明の「商品購入情報」も特に、「ユーザ」である引用例1発明の「顧客」が操作する「顧客端末30」の端末操作によらず自動的に「店舗端末35」から提供されるものである。
したがって、引用例1発明において、相違点3に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

相違点4について
本件特許出願前において、電気情報通信手段として、インターネットは周知慣用技術である。
よって、引用例1発明において、相違点4に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

相違点5について
相違点5に係る「前記電気情報通信手段」の記載は、相違点4に係る「電気情報通信手段」を受ける記載である。
そして、「電気情報通信手段」を「インターネット」と限定する点は、上記「相違点4について」で検討済みの事項である。
よって、引用例1発明において、相違点5に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

相違点6について
引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、「ユーザの行動に関する情報」である引用例1発明の「商品購入情報」に換えて「キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報」とする点は、上記「相違点2について」で検討済みの事項である。
そして、「キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報」を提供する「情報提供装置」である引用例1発明の「店舗端末35」は、「キャラクタ育成情報提供装置」と呼べるものである。
したがって、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用して、引用例1発明において、相違点6に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

相違点7について
引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用することが何ら格別ではないことは、上記「相違点2について」で検討済みの事項である。
そして、引用例2に記載された発明の「キャラクタ」は、「ユーザが獲得した価値情報を示すもの」に相当するといえる点は上記「相違点2について」で既に述べたとおりである。
したがって、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、「ユーザが獲得した価値情報を示すもの」である引用例1発明の「顧客の累積点数」に換えて「キャラクタ」とし、相違点7に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

相違点8について
引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、「ユーザの行動に関する情報」である引用例1発明の「商品購入情報」に換えて「キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報」とする点は、上記「相違点2について」で検討済みの事項である。
また、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、「ユーザが獲得した価値情報を示すもの」である引用例1発明の「顧客の累積点数」に換えて「キャラクタ」とする点は、上記「相違点7について」で検討済みの事項である。
そして、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、引用例1発明の「処理装置1」における「商品購入情報」及び「顧客の累積点数」に換えて、それぞれ「キャラクタの育成に関するキャラクタ情報」及び「キャラクタ」とすれば、「ユーザが獲得した価値情報を示すものの更新を行う」に対応する引用例1発明の「顧客の今回購入点数をその顧客の累積点数に加算する点数集計手段7を備える」は、「キャラクタの育成を行うための」といえるものである。
したがって、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用して、引用例1発明の「商品購入情報に基づいて顧客の今回購入点数をその顧客の累積点数に加算する点数集計手段7を備える処理装置1」に換えて、「前記キャラクタ育成情報に基づいて前記キャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成装置」とし、相違点8に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

相違点9について
引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、「ユーザが獲得した価値情報を示すもの」である引用例1発明の「顧客の累積点数」に換えて「キャラクタ」とする点は、上記「相違点7について」で検討済みの事項である。
そして、上記「キャラクタ」が上記「相違点8について」で言及の「キャラクタ育成装置」において育成されているのは当然のことである。
したがって、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、相違点9に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

相違点10について
引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、「ユーザが獲得した価値情報を示すもの」である引用例1発明の「顧客の累積点数」に換えて「キャラクタ」とする点は、上記「相違点7について」で検討済みの事項である。
そして、「キャラクタ」を受信する端末装置である引用例1発明の「顧客端末30」は、「キャラクタ受信端末装置」と呼べるものである。
したがって、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、相違点10に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

相違点1について
引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、システムを構成する「複数の情報提供装置」である引用例1発明の「複数の店舗端末35」、「前記ユーザの行動に関する情報に基づいてユーザが獲得した価値情報を示すものの更新を行う装置」である引用例1発明の「商品購入情報に基づいて顧客の今回購入点数をその顧客の累積点数に加算する点数集計手段7を備える処理装置1」及び「端末装置」である引用例1発明の「顧客端末30」に換えて、それぞれ「複数のキャラクタ育成情報提供装置」、「前記キャラクタ育成情報に基づいて前記キャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成装置」及び「キャラクタ受信端末装置」とすることは、上記「相違点6について」、「相違点8について」及び「相違点10について」で検討済みの事項である。
そして、「複数のキャラクタ育成情報提供装置」、「キャラクタ育成装置」及び「キャラクタ受信端末装置」を備えるシステムは、「キャラクタ育成システム」や「電子データ化された仮想のキャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成システム」と呼んで差し支えがないので、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用して、引用例1発明において、相違点1に係る発明特定事項を限定することは何ら格別ではない。

そして、本願補正発明の効果は、引用例1発明、引用例2に記載された発明及び周知慣用技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


(7)むすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するから、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


3.本願発明

平成17年1月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成16年3月2日付の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された次のとおりのものである。
「電子データ化された仮想のキャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成システムであって、
前記キャラクタの育成者の端末操作によらず自動的に前記キャラクタの育成に関するキャラクタ育成情報を電気情報通信手段を介して提供可能な複数のキャラクタ育成情報提供装置と、
該複数のキャラクタ育成情報提供装置のそれぞれから前記電気情報通信手段を介して提供された前記キャラクタ育成情報に基づいて前記キャラクタの育成を行なうためのキャラクタ育成装置と、
該キャラクタ育成装置において育成されている前記キャラクタを電気情報通信手段を介して受信可能なキャラクタ受信端末装置とを備えることを特徴とする、キャラクタ育成システム。」


4.引用例

原査定の拒絶理由に引用された引用例1及び引用例2に記載の記載事項等は、前記2.(4)に記載したとおりである。


5.対比・判断

本願発明は、本願補正発明の発明特定事項から、上記2.(2)で述べた限定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項及び相違点5に係る本願補正発明の発明特定事項を含む、一部の発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、前記2.(6)に記載したとおり、引用例1発明、引用例2に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明は、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項及び相違点5に係る本願補正発明の発明特定事項を含む限定事項が省かれているから、本願発明は、引用例1発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-10 
結審通知日 2007-12-11 
審決日 2007-12-26 
出願番号 特願2001-160338(P2001-160338)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 隆一赤木 啓二  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 森内 正明
安田 明央
発明の名称 キャラクタ育成システム、そのシステムに用いられるキャラクタ育成装置、キャラクタ育成情報提供装置、キャラクタ受信端末装置、それらの装置に用いられるプログラム、それらのプログラムが記録された記録媒体、および、キャラクタ育成方法  
代理人 野田 久登  
代理人 仲村 義平  
代理人 森田 俊雄  
代理人 酒井 將行  
代理人 深見 久郎  
代理人 堀井 豊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ