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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B41N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41N |
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管理番号 | 1173202 |
審判番号 | 不服2005-1876 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-03 |
確定日 | 2008-02-14 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 57665号「平版印刷版用アルミニウム支持体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月21日出願公開、特開平11-254847〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成10年3月10日に出願したものであって、平成16年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月3日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月7日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 第2.平成17年3月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年3月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】バー塗布装置を用いて、感光層を塗布してなる感光性平版印刷版の製造方法であって、長さ1.5mに切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0mm以下、歪み数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0mm以下である平版印刷版用アルミニウム支持体を用いることを特徴とする、上記製造方法。 【請求項2】 アルミニウム支持体に感光層を塗布した後、コイル状に巻き取る工程を含む感光性平版印刷版の製造方法であって、長さ1.5mに切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0mm以下、歪み数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0mm以下である平版印刷版用アルミニウム支持体を用いることを特徴とする、上記製造方法。 【請求項3】アルミニウムを鋳造し、冷間圧延を行った後、テンションレベラーで矯正することを含む平板印刷版用アルミニウム支持体の製造方法であって、前記テンションレベラー矯正の条件が、テンションレベラー後の板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内となるような条件であり、かつ得られたアルミニウム支持体が、長さ1.5mに切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0mm以下、歪み数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0mm以下であることを特徴とする、上記製造方法。 【請求項4】板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内である、長さ1.5mに切ったアルミニウム板を底盤の上において、切断した両端から0.25mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0mm以下、歪み数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0mm以下である平版印刷版用アルミニウム支持体。」 から、 「【請求項1】バー塗布装置を用いて、感光層を塗布してなる感光性平版印刷版の製造方法であって、板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内であり、かつ長さ1.5mに切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0mm以下、歪み数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0mm以下である平版印刷版用アルミニウム支持体を用いることを特徴とする、上記製造方法。 【請求項2】 アルミニウム支持体に感光層を塗布した後、コイル状に巻き取る工程を含む感光性平版印刷版の製造方法であって、板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内であり、かつ長さ1.5mに切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0mm以下、歪み数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0mm以下である平版印刷版用アルミニウム支持体を用いることを特徴とする、上記製造方法。」 と補正された。 補正後請求項1及び2は、それぞれ補正前請求項1及び2に対応することは明らかであって、上記補正は、補正前の請求項1及び2に記載した発明を特定するために必要な事項である「平版印刷版用アルミニウム支持体」について、「板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内であり」と限定したものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.明細書の記載要件について 補正後請求項1には、「板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内であり」との記載があるが、この記載によると、どのような条件で最大伸び率と最小伸び率を測定するのか、測定条件が全く記載されておらず、測定条件が異なれば、最大伸び率と最小伸び率の差が異なることは明らかであるから、最大伸び率と最小伸び率の差を特定しても平版印刷版用アルミニウム支持体を特定できない。 また、前記記載では、「板の幅方向に渡って測定した場合の板の長さ方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内であり」という意味とも、「板の長さ方向に渡って測定した場合の板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内であり」という意味とも受け取れ、いずれであるか特定できない。 よって、補正後の請求項1の記載は、発明を明確に記載したものとは到底いえず、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.進歩性について 上記のように、補正後の請求項1の記載は、明確とはいえないが、本願明細書段落【0015】の「テンションレベラーの条件は、テンションレベラー後の板の幅方向の伸び率の差が0.06%以内になるようにコントロールする。すなわち、アルミニウム圧延方向に対して垂直に平行線を2本引き、平行線の間隔Lを正確に測定する。板を幅方向に、20 mm 幅に分割して細い短冊状の板とし、それぞれの短冊状の板のLに対応する部分の実際の長さを測定し、この長さをlとする。各板の伸び率(100×(l-L)/L)(%)を計測し、最大の伸び率と最小の伸び率の差が0.06%以内になるようにコントロールする。」との記載によると、補正後の請求項1の「板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内」は、「テンションレベラーで矯正した後、板を一定の長さLで、幅方向に20 mm に分割して細い多数の短冊状の板とし、細い多数の短冊状の板とした後の一定の長さLに対応する実際の長さlの伸び率の差が0.06%以内」であることを意味しているものと解釈できるので、このように解して、以下検討する。 (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-202063号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 ア.【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、平面性に優れたオフセット印刷版支持体用アルミニウム条の製造方法に関する。 イ.【0002】 【従来の技術】一般に、オフセット印刷版の支持体には、厚さ0.2?0.4mm程度、幅800?1100mm程度のJISA1050、A1100、A3003等のアルミニウム或いはアルミニウム合金条(以下、単にアルミニウム条と称する)が広く用いられている。これらのアルミニウム条は、通常、上記合金組成の鋳塊を製造し、これに均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延、更に必要により調質焼鈍を順次行い、所定の板厚に仕上げた後、更に、テンションレベラー等の矯正装置を通し、所要の平面性を得てコイルに巻き取り表面処理業者に納入される。 ウ.【0004】オフセット印刷版の支持体には印刷版の最大可能印刷数を出来るだけ多く確保するため材料強度の向上、また製版工程中の各種処理における処理の反応性向上、加熱を伴う処理の短時間化の為の処理温度の高温化に耐える十分な耐熱性の賦与等の種々の特性が要求される。なかんずく、オフセット印刷版の支持体の平面性は、印刷物の画像、色調等の印刷品質及び印刷速度等の印刷能率に重大な影響を及ぼす。従って、支持体の平面性をより良好ならしめることは、印刷品質及び印刷能率の一層の向上のために、従来より大きな課題であった。オフセット印刷の多くは多色印刷であり、印刷画像も、より精緻であることが要求されるが、これに対応するためには、印刷の品質特性を満足するに足る適切な支持体の平面性の保証がなされていなければならない。また、印刷輪転機の高速化に伴い、版にかかる応力の負荷が大きくなるため、印刷初期に於ける平面性が十分でなければ更に版に発生する歪みが増大し、短時間の印刷で印刷品質が損なわれることになる。 エ.【0005】この様に平面性に対する要求が一層厳しいものになると同時に、オフセット印刷版の製造作業能率改善のためコイル掛け替え時間の節減、オフセット印刷版の製版工程諸条件の安定化等に対する要求からコイルの大きさも漸次大型化、即ちコイル外径の大径化の傾向を強くしてきた。平面性が優れたオフセット印刷用支持体(以下、単に支持体と称する)であるためには、材料製造業者で製造されたアルミニウム条の平面性が良好でなければならないことはいうまでもなく、加えて、材料製造業者から出荷され、表面処理業者に納入されるまで、良好な平面性が維持されなければならない。 上記刊行物は、オフセット印刷版支持体用アルミニウム条の製造方法に関するものであるが、前記オフセット印刷版支持体用アルミニウム条上に被支持層が形成され、オフセット印刷版が製造されることは技術常識であるから、オフセット印刷版の製造方法を認識でき、上記イ.の「テンションレベラー等の矯正装置を通し」との記載から、テンションレベラーを通したオフセット印刷版支持体用アルミニウム条を認識できる。よって、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。 「被支持層を形成してなるオフセット印刷版の製造方法であって、テンションレベラーを通したオフセット印刷版支持体用アルミニウム条を用いるオフセット印刷版の製造方法。」 (2)対比 刊行物記載の発明の「被支持層を形成してなる」と本願補正発明の「感光層を塗布してなる」は、「被支持層を形成してなる」ことを限度として一致し、刊行物記載の発明の「オフセット印刷版」と本願補正発明の「感光性平版印刷版」は、いずれも「印刷版」の点で共通し、刊行物記載の発明の「テンションレベラーを通したオフセット印刷版支持体用アルミニウム条」と本願補正発明の「板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内であり、かつ長さ1.5mに切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0mm以下、歪み数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0mm以下である平版印刷版用アルミニウム支持体」は、いずれも「印刷版用アルミニウム支持体」の点で共通するから、両者は、 「被支持層を形成してなる印刷版の製造方法であって、印刷版用アルミニウム支持体を用いる印刷版の製造方法。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願補正発明は、バー塗布装置を用いて、感光層を塗布してなる感光性平版印刷版であり、したがって、アルミニウム支持体が平版印刷版用であるのに対し、刊行物記載の発明は、本願補正発明のような特定を有していない点。 [相違点2]アルミニウム支持体に関し、本願補正発明は、板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内であり、かつ長さ1.5mに切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0mm以下、歪み数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0mm以下であるのに対し、刊行物記載の発明は、テンションレベラーを通したものの、本願補正発明のような特定を有していない点。 (3)判断 上記相違点1について検討する。 アルミニウム支持体にバー塗布装置を用いて、感光層を塗布し、感光性平版印刷版を製造することは、周知技術(例えば、特開平8-58257号公報段落【0020】、【0037】、特開平9-211843号公報段落【0023】、【0040】、特開平10-35130号公報段落【0025】、【0059】参照。)であって、刊行物記載の発明のアルミニウム条(本願発明の「アルミニウム支持体」に相当。)に被支持層を形成する際に前記周知技術を適用し、バー塗布装置を用いて、感光層を塗布してなる感光性平版印刷版を製造し、それに用いられるアルミニウム支持体を平版印刷版用アルミニウム支持体と称することは当業者が容易になし得る程度のことである。 上記相違点2について検討する。 本願補正発明の「最大伸び率と最小伸び率の差」及び「歪み」の数値限定に関して、本願明細書の発明の詳細な説明の項には以下の記載がされているのみである。 a.「本発明者らは鋭意検討した結果、特にアルミニウムコイルの端部の歪みが塗布性に影響することを見いだし、長さ1.5 m に切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25 mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0 mm以下、歪みの数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0 mm以下の平版印刷版用アルミニウム支持体を使用することにより、上記目的を達成することを見いだした。 上記アルミニウム支持体は、アルミニウム製造工程の冷間圧延工程終了後にかけるテンションレベラー工程において、テンションレベラー後の板の幅方向における伸び率の差が一定範囲内となるようにテンションレベラーの条件をコントロールすることにより得ることができる。」(段落【0004】) b.「本発明において、歪みの測定は、長さ1.5mに切ったアルミニウム板を定盤の上に置いて、切断した両端から0.25m ずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて行う。 通常、コイル状のアルミニウムには、コイルとして巻かれているためカールが存在する。図1に示すように長さ1.5mに切った板を定盤の上に置いて、切断した両端から0.25 mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いてカールを押さえ込み、内側の長さ1m について、板の端部及び板の内側の歪みを正確に測定可能な状態にした上で所定の範囲内の歪みにすることで、後工程においてカールを除去したときの歪み量を許容範囲に収めることが出来る。すなわち、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが、2.0 mm以下、歪みの数が5個以下、各歪みの高さの合計を4.0 mm以下にすることで、感光層の塗布性及び通板性に優れた平版印刷版用支持体を得ることが出来る。また、板の内側における歪みについても、各歪みの高さが2.0 mm以下、歪みの数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0 mm以下であることが望ましい。」(段落【0005】) c.「本発明のアルミニウム支持体を用いて平版印刷板を作ることにより、シート状に仕上がった平版印刷版を定盤の上に置いた時、板の1辺の端部における歪みの高さが2.0 mm以下、歪みの数が5個以下、歪み高さの合計が4.0 mm以下である平版印刷版を得ることができ、焼付け工程や現像工程を通る際の引っかかり等の搬送不良を回避できる。シート状の平版印刷版は200 mm×200 mmのものから、1500 mm ×2100 mm 程度の大きさである。 本発明が示す物性値を外れると、板の端部に歪みが発生し、平版印刷板の製造工程において塗布ムラが発生するとともに、平版印刷板として使用する際、搬送不良が生じやすい。」(段落【0008】) d.「以上の工程によって、所定の厚さ0.1 ?0.5mm に仕上げられたアルミニウム板は平面性を改善するために、ローラレベラー、テンションレベラー等の矯正装置によって、平面性が改善される。平面性の改善は、板をシート状にカットした後に行っても良いが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で、平面性改善を行うことが望ましい。テンションレベラーの条件は、テンションレベラー後の板の幅方向の伸び率の差が0.06%以内になるようにコントロールする。すなわち、アルミニウム圧延方向に対して垂直に平行線を2本引き、平行線の間隔Lを正確に測定する。板を幅方向に、20 mm 幅に分割して細い短冊状の板とし、それぞれの短冊状の板のLに対応する部分の実際の長さを測定し、この長さをlとする。各板の伸び率(100×(l-L)/L)(%)を計測し、最大の伸び率と最小の伸び率の差が0.06%以内になるようにコントロールする。このようなテンションレベラー工程により、長さ1.5 mに切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25 mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0 mm以下、歪みの数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0 mm以下の平版印刷版用アルミニウム支持体を得ることができる。」(段落【0015】) e.「【実施例】 以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。 実施例1?2及び比較例1 テンションレベラー後の板の伸び率の差が表1に示される数値となるようにテンシヨンレベラーの条件を変えて、板端部の歪みの度合いが異なるアルミニウムコイルを作成し、本発明の実施例及び比較例を作成した。その後連続的にアルミニウム表面に粗面化処理・ 陽極酸化処理・ 感光層塗布・ 乾燥処理を行い、平版印刷版用原反として再度コイル状に巻き取って2週間保管した。この際、図4に示される感光層塗布装置を用いて感光層の塗布を行い、塗布ムラの発生有無を評価した(○:塗布ムラなし、×:塗布ムラあり)。その後、巻き取った平版印刷版コイルを巻きだして、長さ700mm 幅1030mmのシート状に切断して、平版印刷版用支持体としての通板テストを図3に概略を示した装置を用いて行い、通板性を評価した(○:引っかかりなし、×:引っかかりあり)。」(段落【0030】) f.【表1】 上記a.、d.、e.の記載によると、本願補正発明の最大伸び率と最小伸び率の差を0.06%以内とするためにテンションレベラーの条件をコントロールすることが記載され、上記f.のテンションレベラー条件の項目に実施例1は「高」、実施例2は「中」、比較例1は「低」の記載があることから、テンションレベラーの条件を「高」或いは「中」とすればよいことが記載されている。 また、平成16年12月3日付け意見書第3頁第38?41行に「また、「伸び率の差」を一定の数値内に抑えるためのテンションレベラーの条件については、本件明細書の伸び率の測定方法に従い、用いるテンションレベラーによって条件を設定することは、当業者であれば過度な実験を行なわなくても実施可能でありますから、かかる条件が開示されていなくても当業者は本願発明を実施することができると考えます。」と記載されており、本願明細書の記載内容、上記意見書の記載、そして、本願発明の詳細な説明の項の記載が当業者が容易に実施し得る程度に記載されていることを前提とすれば、テンションレベラーの条件を「中」以上とすれば、本願補正発明の最大伸び率と最小伸び率の差を0.06%以内とすることができるといわざるを得ない。 一方、刊行物記載の発明は、テンションレベラーを通したアルミニウム条を用いており、アルミニウム条には被支持層を形成するのだから平滑なものが望まれるのは当然であって、テンションレベラーの条件を高く設定することは当業者が容易になし得る程度のことであり、テンションレベラーの条件を高く設定すれば、本願補正発明の最大伸び率と最小伸び率の差を0.06%以内とすることができる。 次に歪みについて検討すると、本願補正発明には、全く歪みを生じていない平滑なアルミニウム支持体が含まれており、刊行物記載の発明のアルミニウム条には被支持層を形成するのだから、歪みのない平滑なものが望まれるのは当然であって、全く歪みを生じていない平滑なアルミニウム支持体を採用することは当業者が容易になし得る程度のことである。 更に、上記a.、d.、e.、f.の記載によると、テンションレベラーの条件をコントロールし、本願補正発明の最大伸び率と最小伸び率の差を0.06%以内とすれば、本願補正発明のような数値範囲内に歪みを押さえることができるといわざるを得ず、テンションレベラーの条件を高く設定することは当業者が容易になし得る程度のことであるから、本願補正発明のような数値範囲内の歪みのアルミニウム支持体を用いることは当業者が容易になし得る程度のことである。 そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明について 平成17年3月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年12月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「バー塗布装置を用いて、感光層を塗布してなる感光性平版印刷版の製造方法であって、長さ1.5mに切ったアルミニウム板を定盤の上において、切断した両端から0.25mずつ入った位置に、板の全幅以上を覆うおもしを置いて、板のカールに起因する浮き上がりを抑制したとき、板圧延方向に対して平行な端部の片側における各歪みの高さが2.0mm以下、歪み数が5個以下、各歪みの高さの合計が4.0mm以下である平版印刷版用アルミニウム支持体を用いることを特徴とする、上記製造方法。」 1.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「第2.3.(1)」に記載したとおりである。 2.対比・判断 本願発明は、前記第2.で検討した本願補正発明から「平版印刷版用アルミニウム支持体」についての限定事項である「板の幅方向の最大伸び率と最小伸び率の差が0.06%以内であり」との構成を省いたものである。 そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.3.」に記載したとおり、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-04 |
結審通知日 | 2007-12-10 |
審決日 | 2007-12-21 |
出願番号 | 特願平10-57665 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41N)
P 1 8・ 575- Z (B41N) P 1 8・ 537- Z (B41N) P 1 8・ 121- Z (B41N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 裕美子、東 裕子 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
菅藤 政明 坂田 誠 |
発明の名称 | 平版印刷版用アルミニウム支持体 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 大塚 文昭 |