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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62D |
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管理番号 | 1173203 |
審判番号 | 不服2005-3367 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-24 |
確定日 | 2008-02-14 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 80187号「動力舵取装置用の油圧制御弁」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月14日出願公開、特開平 9-267760〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 出願の経緯・本願発明 本件出願は、平成8年4月2日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年12月22日の手続補正書により補正がなされた特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「舵輪に連なる入力軸と舵取り機構に連なる出力軸とを、これら両軸との連結部を両端に有するトーションバーを介して同軸上に連結し、これら両軸間に、舵輪に加わる操舵トルクの作用による前記トーションバーの捩れに応じた相対角変位を生ぜしめ、油圧源からの供給油圧を操舵補助用の油圧アクチュエータに給排する構成とした動力舵取装置用の油圧制御弁において、一側を周方向に拘束して前記トーションバーに外嵌してあり、他側に径方向への所定の弾性を有するばね部を備える外筒と、該ばね部の内側に突設され、前記連結部の間に位置して前記トーションバーの中途に設けられた係合部を外側から掴持する掴持手段と、前記係合部の外周に形成され、前記トーションバーに捩れが生じていない中立状態において前記掴持手段と係合する凹所とを具備することを特徴とする動力舵取装置用の油圧制御弁。」(以下、この発明を「本願発明」という。) 2. 引用刊行物 1:特公昭61-41787号公報 2:特開平5-310133号公報 (1) 当審における拒絶の理由に引用した、上記刊行物1には、発明の名称を「動力補助車輌ステアリングシステム」と題して、図面とともに、 「動力補助サーボモータへの加圧流体の供給を調整すべく、ねじり作動を行う2個の回転弁部材にトルクバーの両端が夫々連結されており、一端に加えられたステアリングトルクを他端に伝達する弾性トルクバーのねじれによりトルクが感知されるように構成されており、前記一方の回転弁部材の放射方向に形成された円筒孔に可動的に支承され、且つトルクバーの有効長を変更すべく流体圧に従って該一方の回転弁部材をトルクバーに相互係合するように前記トルクバーに設けた凹所に向って放射方向に移動される少なくとも1個のボールと、前記一方の回転弁部材とトルクバーとを相互係合せしめるべく前記ボールに作用する加圧流体を速度応答源から誘導する手段とから成り、トルクバーの回転により前記ボールに与えられた流体圧に抗して凹所に接触する前記ボールを放射方向外側に押圧するカム状効果を有する面を凹所に形成してなることを特徴とする動力補助車輌ステアリングシステム。」(公報の「特許請求の範囲」の欄の記載) との発明(以下「引用発明」という。)が開示されている。 (2) 同じく当審における拒絶の理由に引用した、上記刊行物2には、図面とともに、「トーションバーを介して連結した入力軸と出力軸の相対回転によりコントロールバルブが作動するようにしたパワーステアリング装置」(段落【0001】に記載)に関し、「中立状態のトーションバー13に予圧を与える予圧付与機構」であって、「外筒20の入力側端部を、トーションバー13の入力側端部とピン23を介して結合し、外筒20の他端には、膨出部20aが形成され、そこに球状係合子21とばね22が収納され、トーションバー13の出力側端部に設けられた係合溝13aに向けて球状係合子21を付勢したもの」(特に段落【0007】参照)が記載されている。 3. 本願発明と引用発明との対比 (1) 両発明の対応関係 ・引用発明においては、直接的には、「動力補助車輌ステアリングシステム」との発明が開示されているが、そのシステムの中には「回転弁部材」に関する発明も開示されているので、観点を変えれば、「動力補助車輌ステアリングシステム」の「回転弁部材」についての発明とみることもでき、引用発明の「動力補助車輌ステアリングシステム」は、本願発明の「動力舵取装置用の油圧制御弁」に相当するということができる。 ・引用発明の「一端」、「他端」とは、その機能ないし作用からみて、本願発明の「舵輪に連なる入力軸」、「舵取り機構に連なる出力軸」とに相当しているといえる。また、引用発明の「トルクバー」、「弾性トルクバー」は、本願発明の「トーションバー」に相当する。 ・引用発明の「動力補助サーボモータへの加圧流体の供給を調整すべく、ねじり作動を行う2個の回転弁部材にトルクバーの両端が夫々連結されており、一端に加えられたステアリングトルクを他端に伝達する弾性トルクバーのねじれによりトルクが感知されるように構成」されている点は、本願発明の「これら両軸間に、舵輪に加わる操舵トルクの作用によるトーションバーの捩れに応じた相対角変位を生ぜしめ、油圧源からの供給油圧を操舵補助用の油圧アクチュエータに給排する構成」に相当する。 (2) 両発明の一致点 「舵輪に連なる入力軸と舵取り機構に連なる出力軸とを、これら両軸との連結部を両端に有するトーションバーを介して同軸上に連結し、これら両軸間に、舵輪に加わる操舵トルクの作用による前記トーションバーの捩れに応じた相対角変位を生ぜしめ、油圧源からの供給油圧を操舵補助用の油圧アクチュエータに給排する構成とした動力舵取装置用の油圧制御弁」 (3) 両発明の相違点 トーションバーの中途部の係合に関し、本願発明が「一側を周方向に拘束してトーションバーに外嵌してあり、他側に径方向への所定の弾性を有するばね部を備える外筒と、該ばね部の内側に突設され、前記連結部の間に位置して前記トーションバーの中途に設けられた係合部を外側から掴持する掴持手段と、前記係合部の外周に形成され、前記トーションバーに捩れが生じていない中立状態において前記掴持手段と係合する凹所とを具備する」ものであるのに対して、引用発明は、「一方の回転弁部材の放射方向に形成された円筒孔に可動的に支承され、且つトルクバーの有効長を変更すべく流体圧に従って該一方の回転弁部材をトルクバーに相互係合するように前記トルクバーに設けた凹所に向って放射方向に移動される少なくとも1個のボールと、前記一方の回転弁部材とトルクバーとを相互係合せしめるべく前記ボールに作用する加圧流体を速度応答源から誘導する手段とから成り、トルクバーの回転により前記ボールに与えられた流体圧に抗して凹所に接触する前記ボールを放射方向外側に押圧するカム状効果を有する面を凹所に形成」したものである点。 4. 容易想到性の検討 (1) 刊行物2には、引用発明と同様のパワーステアリングに関する発明について、外筒20の一端が、トーションバー13の入力側端部に結合されており、その他端が、トーションバー13の出力側端部に設けられた係合溝13aに向けて付勢される球状係合子21を保持する構成としたものが記載されている。 ここで、刊行物2に記載の外筒20を含む球状係合子21等からなる構成は、直接的には、中立状態のトーションバーに予圧を与えるためのものであるが、操舵トルクが小である範囲において、外筒が遊嵌しているトーションバーの範囲を剛状態とするものでもあるから、この点において、引用発明の弾性トルクバーの中途部を固定する、一方の回転弁部材を含むボール等からなる構成と同様の機能を有するものといえる。 そうすると、引用発明における、この部分の構成に代えて、刊行物2記載のものを採用し、この場合、引用発明のものが弾性トルクバーの中途部を固定するであることから、この点をそのまま活かして、弾性トルクバーの中途部までを外筒で遊嵌し、その中途部にて弾性トルクバーと外筒とがボール等を介して係合するようにし、本願発明の相違点に係る構成とすることは当業者に容易である。 なお、刊行物2に記載の「外筒」は、それ自体にばね作用を有するものではなく、これとは別に付勢手段を有するが、このような筒形状のものであれば、そこにばね作用をもたせるようにすることは格別のことではなく、このような構成は設計的に採用できる事項である。 (2) 本願発明の作用効果も、刊行物1、2に記載された発明から当業者が予測できた範囲のものである。 したがって、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上、本願発明については、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-04 |
結審通知日 | 2007-12-11 |
審決日 | 2007-12-26 |
出願番号 | 特願平8-80187 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B62D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邉 洋 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
柴沼 雅樹 佐藤 正浩 |
発明の名称 | 動力舵取装置用の油圧制御弁 |
代理人 | 河野 登夫 |