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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1173222 |
審判番号 | 不服2005-15418 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-11 |
確定日 | 2008-02-14 |
事件の表示 | 平成10年特許願第359475号「印刷システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月27日出願公開、特開2000-177211〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成10年12月17日の出願であって、平成17年7月7日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年8月11日付けで本件審判請求がされるとともに、同年9月9日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成17年9月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容・補正目的 本件補正は特許請求の範囲を補正する内容を含むものであって、本件補正により特許請求の範囲は、 「【請求項1】印刷データを作成するホストと、該ホストに接続され、該ホストから送信されてくる上記印刷データを受信して印刷を行うプリンタとから構成される印刷システムにおいて、 上記ホストは、 作成した印刷データに他の印刷データと区別するための識別コードを付与して上記プリンタに送信するデータ送信手段と、 上記印刷データの送信とは別に、識別コードを含む印刷開始命令コマンドを送信するコマンド送信手段とを備え、 上記プリンタは、 上記ホストから送信された印刷データと識別コードとを受信し、上記印刷データと上記識別コードとを対応させて格納する記憶部と、 上記ホストから送信された識別コードを含む印刷開始命令コマンドを受信し、該識別コードに対応する印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行う制御部とを備えたことを特徴とする印刷システム。 【請求項2】上記記憶部は上記印刷データと上記識別コードとをそれぞれ別のエリアに格納し、上記印刷データの格納開始アドレスと格納終了アドレスを上記識別コード毎にそれぞれ格納しておく請求項1記載の印刷システム。 【請求項3】上記プリンタは、識別コードを入力するための操作部を備え、 上記プリンタの制御部は上記操作部から入力された識別コードに対応する印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行うことを特徴とする請求項1記載の印刷システム。 【請求項4】印刷データを作成する複数のホストと、該複数のホストに接続され、該複数のホストから送信されてくる上記印刷データを受信して印刷を行うプリンタとからなる印刷システムにおいて、 上記ホストは、 作成した印刷データに他の印刷データと区別するための識別コードを付与して上記プリンタに送信するデータ送信手段と、 上記プリンタは、 上記ホストから送信された印刷データと識別コードとを受信し、上記印刷データと上記識別コードとを対応させて別々に格納する記憶部と、 上記記憶部に識別コードが記憶されているか否かを監視する監視部と、 上記プリンタに印刷命令が入力されると該プリンタは入力された印刷命令に基づいて識別コードに対応する印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行う制御部とを備え、 上記プリンタの制御部は、上記監視部により上記記憶部に識別コードが記憶されていると判断すると、電源スイッチが電源の切断を指示する状態となっても電源を切断しないことを特徴とする印刷システム。 【請求項5】上記ホストのコマンド送信手段は、上記プリンタへ識別コード検出信号解除コマンドを送信する手段を備え、 上記プリンタはの制御部は、上記ホストから上記識別コード検出信号解除コマンドを受信した場合、該プリンタの電源切断を可能とすることを特徴とする請求項4記載の印刷システム。」 から、 「【請求項1】印刷データを作成するホストと、該ホストに接続され、該ホストから送信されてくる上記印刷データを受信して印刷を行うプリンタとから構成される印刷システムにおいて、 上記ホストは、 作成した印刷データに他の印刷データと区別するための識別コードを付与して上記プリンタに送信するデータ送信手段と、 上記印刷データの送信動作の後に、識別コードを含む印刷開始命令コマンドを送信するコマンド送信手段とを備え、 上記プリンタは、 上記ホストから送信された印刷データと識別コードとを受信し、上記印刷データと上記識別コードとを対応させて格納する記憶部と、 上記ホストから印刷データが送信された後に識別コードを含む印刷開始命令コマンドを受信し、該識別コードに対応して既に受信され上記記憶部に記憶されている印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行う制御部とを備えたことを特徴とする印刷システム。 【請求項2】上記記憶部は上記印刷データと上記識別コードとをそれぞれ別のエリアに格納し、上記印刷データの格納開始アドレスと格納終了アドレスを上記識別コード毎にそれぞれ格納しておく請求項1記載の印刷システム。 【請求項3】上記プリンタは、識別コードを入力するための操作部を備え、 上記プリンタの制御部は上記操作部から入力された識別コードに対応する印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行うことを特徴とする請求項1記載の印刷システム。 【請求項4】印刷データを作成する複数のホストと、該複数のホストに接続され、該複数のホストから送信されてくる上記印刷データを受信して印刷を行うプリンタとからなる印刷システムにおいて、 上記ホストは、 作成した印刷データに他の印刷データと区別するための識別コードを付与して上記プリンタに送信するデータ送信手段と、 上記プリンタへ識別コード検出信号解除コマンドを送信するコマンド送信手段とを備え、 上記プリンタは、 上記ホストから送信された印刷データと識別コードとを受信し、上記印刷データと上記 識別コードとを対応させて別々に格納する記憶部と、 上記記憶部に識別コードが記憶されているか否かを監視する監視部と、 上記プリンタに印刷命令が入力されると該プリンタは入力された印刷命令に基づいて識別コードに対応する印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行う制御部とを備え、 上記プリンタの制御部は、上記監視部により上記記憶部に識別コードが記憶されていると判断すると、電源スイッチが電源の切断を指示する状態となっても電源の切断をせず、上記識別コード検出信号解除コマンドを受信した場合には該プリンタの電源切断を可能とすることを特徴とする印刷システム。」 と補正された。 つまり、本件補正には、以下の補正事項が含まれていると認められる。 (a)本件補正前の請求項1の「上記印刷データの送信とは別に、識別コードを含む印刷開始命令コマンドを送信するコマンド送信手段」との記載を「上記印刷データの送信動作の後に、識別コードを含む印刷開始命令コマンドを送信するコマンド送信手段」とし、同じく本件補正前の請求項1の「上記ホストから送信された識別コードを含む印刷開始命令コマンドを受信し、該識別コードに対応する印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行う制御部」との記載を「上記ホストから印刷データが送信された後に識別コードを含む印刷開始命令コマンドを受信し、該識別コードに対応して既に受信され上記記憶部に記憶されている印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行う制御部」とする補正。 (b)本件補正前の請求項4を削除し、当該請求項4を引用する形式で記載されていた本件補正前の請求項5を独立形式の請求項として、本件補正後の請求項4に項番を繰り上げる補正。 補正事項(a)は、「識別コードを含む印刷開始命令コマンド」をコマンド送信手段が送信し、制御部が受信して印刷処理を行うタイミングを、印刷データがプリンタへ送信されるタイミングとは別であって、送信され記憶部に記憶された後のタイミングであることを明確にし限定したものと解される。 補正事項(a)は、本願の願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0009】?【0018】に記載の「第1の実施の形態」及び段落【0019】?【0024】に記載の「第2の実施の形態」を勘案すれば、当初明細書に記載された事項であると認められ、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。 また、補正事項(a)は、上記のように、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「コマンド送信手段」及び「制御部」を限定する補正であって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に記載された特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められる。 補正事項(b)は、本件補正前の請求項4を削除し、それに伴って、同請求項5を形式的に補正したものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号に記載された請求項の削除を目的としたものと認める。 以上のように、補正事項(a)による本件補正前請求項1の補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に記載された特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められることから、本件補正後の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすか)について、以下で検討する。 2.本件補正後の請求項1に記載された発明の独立特許要件の判断 A.本件補正後の請求項1に記載された発明 本件補正後の請求項1に記載された発明は、上記「1.補正内容・補正目的」において記載した、以下のとおりのものである。 「印刷データを作成するホストと、該ホストに接続され、該ホストから送信されてくる上記印刷データを受信して印刷を行うプリンタとから構成される印刷システムにおいて、 上記ホストは、 作成した印刷データに他の印刷データと区別するための識別コードを付与して上記プリンタに送信するデータ送信手段と、 上記印刷データの送信動作の後に、識別コードを含む印刷開始命令コマンドを送信するコマンド送信手段とを備え、 上記プリンタは、 上記ホストから送信された印刷データと識別コードとを受信し、上記印刷データと上記識別コードとを対応させて格納する記憶部と、 上記ホストから印刷データが送信された後に識別コードを含む印刷開始命令コマンドを受信し、該識別コードに対応して既に受信され上記記憶部に記憶されている印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行う制御部とを備えたことを特徴とする印刷システム。」(以下、「補正発明」という。) B.引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、平成4年9月7日に頒布された特開平4-251384号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 (ア)【要約】 「【目的】 蓄積された画像データファイルに正規の資格を持たない者のアクセスを禁止することにより、画像データファイルの安全を保護する手段を提供する。 【構成】 各画像データファイルに対応した暗証を入力する暗証入力手段1と、入力部から入力される入力データファイルとそれに対応するジョブパラメータと暗証コードを蓄積する蓄積手段11と、暗証入力手段1からユーザにより入力される暗証が蓄積手段内に入力される画像データファイルのいずれか一つの暗証コードに対応するかどうかを判定する暗証一致判定手段15と、暗証一致判定手段15の暗証一致判定で蓄積手段11内の該暗証に対応する蓄積データファイルをジョブパラメータに基づいて画像出力部17に出力制御する出力制御手段16とを画像処理部に備えた画像処理装置である。」 (イ)【特許請求の範囲】 「【請求項1】 入力部から入力される画像データを、同じく入力部から入力される画像処理装置の動作指示命令であるジョブパラメータに基づいて、画像処理部で画像処理して出力用画像データファイルを形成し、画像出力部から出力用画像データファイルを出力する画像処理装置において、各画像データファイルに対応した暗証を入力する暗証入力手段と、入力部から入力される画像データファイルとそれに対応するジョブパラメータと暗証コードを蓄積する蓄積手段と、暗証入力手段からユーザにより入力される暗証が蓄積手段内に入力される画像データファイルのいずれか一つの暗証コードに対応するかどうかを判定する暗証一致判定手段と、暗証一致判定手段の暗証一致判定で蓄積手段内の該暗証に対応する蓄積データファイルをジョブパラメータに基づいて画像出力部に出力制御する出力制御手段と、を画像処理部に備えたことを特徴とする画像処理装置。」 (ウ)【0001】?【0002】 「【産業上の利用分野】 本発明は、一時的に読み込んだ画像データを一時的に記憶して、蓄積する画像蓄積型画像処理装置に関するものである。 ・・・ 【従来の技術】 画像蓄積型電子写真複写装置は読み込み装置、蓄積装置、画像出力装置からなり、一旦デジタルラスタースキャナ等の読み込み装置から読み取った画像を画像ファイルとそのジョブパラメータ(画像処理装置の動作指示命令であり、例えば用紙サイズ/方向、ページ数、階調数、カラー、とじ代、写真モード等である。これを以後ジョブパラメータということがある。)をハードディスク等の蓄積装置内のメモリに蓄積し、順次読み出しながら印字出力することで、電子RDH(Recycle Document Handler)機能、逆順出力、サンプルコピー等多くの機能を享受することができる。このような装置では一旦サンプルコピーをとって内容を確認し必要に応じて修正後大量に出力したり、原稿が全て揃わない場合でもその後の処理を早めるためにすでに有る原稿は先に読み込み蓄積しておくなどのことが行われる。」 (エ)【0004】 「そこで本発明の目的は、蓄積された画像データファイルに正規の資格を持たない者のアクセスを禁止することにより、画像データファイルの安全を保護する手段を提供するものである。さらには保護の設定と解除を装置の特性を利用することにより、効率よく行う手段を提供するものである。」 (オ)【0009】 「【実施例】 以下、本発明の実施例を図面と共に説明する。図1は、電子写真複写機の全体構成概念図である。入力部1の原稿送り装置(ADF)2には、例えば、原稿(ドキュメント)の束であるバッチA、バッチB等のオリジナル原稿3が送られ、ディジタルラスタスキャナ装置からなる読み取り部(IIT)5を介して、画像処理部10の蓄積手段11内のハードディスクおよび描画メモリからなる画像データファイル蓄積手段12にオリジナル原稿3の画像データが読み込まれる。このとき、一枚以上の原稿3からなるバッチA、バッチBのそれぞれのフロントページにはジョブパラメータの一部(用紙サイズ/方向、ページ数、階調数、カラー、とじ代、写真モードおよび暗証入力を許可する暗証入力シーケンスを起動可能にする暗証モード、各暗証に対応した暗証コード、原稿の重要度に応じたセーブレベルコード等)を設定したジョブコントロールシート9が配置されている。これらのパラメータはRAMからなるジョブパラメータ記憶手段13内に記憶される。また、このジョブパラメータ記憶手段13内には画像データの生成時刻等も書き込まれる。したがって、バッチA、Bのそれぞれの原稿3について、それぞれのパラメータに従って画像データが読み取られていく。」 (カ)【0010】?【0011】 「また、このとき、ジョブコントロールシート9のない原稿3についてはこの原稿をADF2を介してIIT5(ディジタルラスタスキャナー)で読み取らせた後、本複写装置のコントロールパネル、キーボード、マウス等のユーザインタフェース(UI)6(図2)からジョブパラメータをセットしても良い。入力部1は本複写装置のユーザインタフェース(UI)6およびその他のネットワーク回線LAN、電話回線(図2)を介して本複写装置に接続されるパーソナルコンピュータ等の他の画像処理装置により構成される。 ・・・ こうして、読み取られた画像データは画像処理部10において、随意に編集され、画像データファイルとして一時的に画像データファイル蓄積手段12に蓄積された後、画像データファイルは画像出力部17に必要部数分出力される。」 (キ)【0014】 「ジョブコントロールシート9の暗証モードを指定すると暗証モードが起動され、蓄積画像データファイルのジョブパラメータとして各暗証に対応した暗証コードを含むジョブパラメータが蓄積画像データファイルとともに蓄積手段11に蓄積される。各暗証コードには、それに対応した暗証が予め設定されているので、各画像データファイルには暗証が付される。この暗証入力された蓄積データファイルを画像出力部17に出力するに際しては、暗証入力手段からユーザにより入力された暗証が暗証一致判定手段15でジョブコントロールシート9で指定した暗証コードに対応した暗証番号に一致していると判断されて、出力制御手段16により出力命令が出て可能となる。また、一致暗証の入力があるとジョブパラメータの設定変更が可能となり、新たなジョブパラメータに従って原稿を画像出力部17に出力することができる。ここで暗証一致判定手段15はCPU(図2)内の図示しないレジスタ、コンパレータ等を用いる暗証比較命令で構成され、出力制御手段16はCPU25から出力される画像出力命令である。」 (ク)【0015】 「図2は画像処理装置の画像処理部10の詳細な制御ブロック図を示す。ADF2に送られる原稿3とジョブコントロールシート9とはIIT5において読み取られる。そのとき、IIT5により後述する方法でジョブコントロールシート9のジョブパラメータデータと原稿3の画像データは前述のように区別され、別々のメモリ手段に蓄積される。すなわち、ジョブパラメータデータはRAM13に入力され、そのジョブパラメータに従って画像データは600kバイトの描画メモリ19に一旦展開される。ここで、ジョブパラメータデータはページ数、ページごとの分解能、階調数やカラーの有無等の画像データ構造、ページサイズないしはファストスキャンおよびスロウスキャン方向の有効ビット数あるいはバイト数、写真モードの設定有無、読み取り日時等はコード化された情報として画像データファイルと一緒にあるいは対となるよう関係づけられて前述のRAM13にメモリされている。」 (ケ)【0016】?【0018】 「こうして、ジョブパラメータでジョブ設定された画像データは600kバイトの描画メモリ19に展開される。そして圧縮伸長部18を介して、例えば100Mバイトのハードディスク20に蓄積される。 ・・・ 一般にハードデイスク20に格納された画像データファイルはジョブパラメータを基に、本複写装置のコントロールパネル(図示せず。)等から指示された処理プロセスすなわち、電子RDH、指示倍率の拡大縮小、コピー部数、両面/片面、ステープル、糊づけ等に従って印字出力するとジョブパラメータとともに消去される。 ・・・ これは、しかし前述のようにまず、小部数のサンプルコピーを取り、内容を確認してから多数の印字を行う等の場合には、再度原稿を入力する手間を避けるために印字しても消去を行わない。また、原稿の再入力が必要な場合にも、前記ハードディスク20に格納させた画像データファイルは消去しない。」 (コ)【0019】 「本システムでは、前述したようにネットワークインタフェース21、ファクシミリインタフェース22を起動させ、LANまたは電話回線を通じて画像データを取り込み、あるいは外部システムへ送出することもできる。このとき、LANにはパーソナルコンピュータ、ワークステーション、他の複写機等を接続することができる。」 (サ)【0025】?【0026】 「ジョブパラメータデータの記憶エリアには、各原稿データファイル名、ファイル生成時刻、ハードティスクでの当該原稿の画像データファイルのスタートアドレス、エンドアドレスが格納される。さらに、蓄積データファイルを画像出力部17に出力した後にも、これを消去せずに残しておくためのセーブフラグおよび暗証フラグ、暗証(番号)が格納される。これらの原稿データファイル名はコントロールパネル等から入力される。 ・・・ 本実施例ではジョブコントロールシート9にさらにセーブモード、暗証モード、暗証コードのマークエリアが設けられている。そのため、これらのマークエリアをマークするとマークされたセーブコードに対応したセーブレベルはRAM25の対応するパラメータエリアに格納される。また、このシステムは暗証フラグをセットして、暗証モードに入り暗証番号は暗証一致キーとしてRAM25の対応するパラメータエリアに格納される。ここで暗証番号としては予め入力してある暗証コードと暗証番号の間で対応させてあるテーブルによって定まる暗証番号として、たとえば6桁の数字が設定される。なお、暗証として数字を用いる暗証番号を例示したが、数字とは限らず、文字、図形等いかなる形式の暗証を用いてもよい。」 (シ)【0033】?【0035】 「入力部1から原稿3に基づく画像データと共にジョブコントロールシート9からセーブモード、暗証モード、暗証コードを読み込む。そして、必要ならサンプル出力を行い、印字内容、品質を確認しておく。こうして必要に応じて、例えば、大量印字を行うときなどハードディスク20内に蓄積された画像データファイルから各暗証コードに対応して所望のファイル名を本複写装置のCRT等の表示装置(図示せず)に呼び出して、そのファイル名に対応した暗証を入力する。その入力暗証が予め入力されている当該ファイル名の暗証と一致すると暗証フラグがクリアされ、画像出力部17で指定された処理プロセスに従って出力される。画像出力部17への出力後に画像データファイルは暗証コード、暗証番号、ジョブパラメータと共に蓄積手段12内から消去される。また暗証フラグをクリアしない場合には画像データファイルは蓄積手段12内からは消去しない。 ・・・ また、大量印字等のため所望のファイル名を呼び出すのではなく、いきなり暗証を入力して暗証の一致するファイルをサーチし、これを既に指示済みの処理プロセスに従って画像出力部17へ出力してもよい。 ・・・ また、ジョブコントロールシート9により暗証モードと暗証の設定を行うのではなく、画像データファイルと対応がつく範囲でコントロールパネルその他の入力部から上記暗証に関するデータを入力しても良い。」 (ス)【0036】?【0037】 「上記した本実施例の暗証入力の手順を図7、図8に示すフローチャートにより詳細に説明する。 まず、入力部1より読み込まれた画像データファイルはハードディスク20に蓄積される。そして、この画像データファイルは原則として画像出力部17へ出力されると消去されるものであるが、一回出力部17への出力があった後にも消去したくない場合はジョブコントロールシート9(図3)にはセーブモードが設定されている。そこで、セーブコードがあると次に暗証モードの設定がある否かを判断し、暗証モードの設定があると暗証コードを読み込む(ステップ6)。図3のジョブコントロールシート9の最下欄に記しているように暗証コードが「0」であると暗証コードの入力がないものと判断され(ステップ7)、UI6(図2)より暗証入力ができる(ステップ10)。また、暗証コードが「0」でないと、各暗証コードに対応した暗証番号を検索する(ステップ8)。そして暗証番号がないとUI6から暗証を入力できる。また、既に一致した暗証番号があるとRAM13内のジョブパラメータの暗証フラグをオンして暗証番号をRAM13に格納する(ステップ14)。こうして、暗証番号に対応してハードディスク20に蓄積された画像データファイルを画像出力部17に出力するに際して図8に示すフローチャートに従う。 ・・・ まず、出力指令があると、暗証コードを用いないで、いきなり一致暗証を入力するか画像ファイル名を呼び出し該画像ファイル名の暗証コードに対応した一致暗証を入力する(ステップ22)。暗証が一致するとそのジョブパラメータを本複写機のコントロールパネルの表示部(図示せず。)に表示し、必要に応じてUI6等を介してジョブパラメータを変更した後、出力を行う(ステップ28、29)。また、一致暗証がない場合には暗証番号を入れ直す(ステップ25)。」 (セ)【0038】 「上記実施例は複写機を例にして説明したが、本発明は複写機に限らずプリンタ等の画像処理装置にも適用可能である。」 (ソ)【図1】から、画像処理部10は、蓄積手段11、暗証一致判定手段15、出力制御手段16を備えていることが看取される。 上記(コ)で「本システムでは、前述したようにネットワークインタフェース21、ファクシミリインタフェース22を起動させ、LANまたは電話回線を通じて画像データを取り込み、あるいは外部システムへ送出することもできる。このとき、LANにはパーソナルコンピュータ、ワークステーション、他の複写機等を接続することができる。」と記載され、上記(カ)で「入力部1は本複写装置のユーザインタフェース(UI)6およびその他のネットワーク回線LAN、電話回線(図2)を介して本複写装置に接続されるパーソナルコンピュータ等の他の画像処理装置により構成される。」と記載されていることから、引用例の「入力部1」は、「LAN等を介して接続された画像データを作成するパーソナルコンピュータ等からなる入力部1」を包含するものと解される。 また、「入力部1」が上記の「LAN等を介して接続された画像データを作成するパーソナルコンピュータ等からなる入力部1」であるとした場合、引用例の実施例は別途本体側に入力部を備えた「電子写真複写機」(上記(オ)参照。)として記載されてはいるものの、そのうちの画像処理部10と画像出力部17とからなる部分は、LAN等を介して接続された外部の「入力部から入力される画像データを、同じく入力部から入力される画像処理装置の動作指示命令であるジョブパラメータに基づいて、画像処理部で画像処理して出力用画像データファイルを形成し、画像出力部から出力用画像データファイルを出力する」(上記(イ))ものとなることから、この画像処理部10及び画像出力部17からなる部分が印字出力するための構成部分であると解することができ、上記(セ)に「上記実施例は複写機を例にして説明したが、本発明は複写機に限らずプリンタ等の画像処理装置にも適用可能である。」と記載されていることをも考慮すれば、これら画像処理部10及び画像出力部17からなる部分を「プリンタ」と称することができる。 そして、これらのLAN等で接続された上記「入力部1」と上記「プリンタ」とを含む全体構成を「画像処理システム」と称することができる。 上記(オ)には、「入力部1」が、画像データとともに「暗証コード」を入力することが記載されており、上記(キ)には、「暗証コード」に対応した「暗証番号」(審決注:引用例においては、「暗証番号」と「暗証」という2つの記載があるものの、両者は同じ意味と解されるので、記載を摘記する以外では、「暗証番号」に統一して記載する。)が予め設定されており、蓄積手段において画像データが蓄積されるとともに、当該画像データには「暗証番号」が付されることが記載されている。 また、上記(イ)及び(キ)には、蓄積された画像データを印字出力する際には、暗証入力手段から、「暗証番号」を入力し、当該「暗証番号」に対応する画像データを印字出力することが記載されている。 ここで、上記「暗証コード」と上記「暗証番号」とは対応関係にあるものであり、上記(イ)や(キ)の記載からは、画像データに対応して入力するのは「暗証コード」であり、画像データを選択して印字出力する際に入力するのは「暗証番号」であるように解されるものの、上記(シ)には「例えば、大量印字を行うときなどハードディスク20内に蓄積された画像データファイルから各暗証コードに対応して所望のファイル名を本複写装置のCRT等の表示装置(図示せず)に呼び出して」と、印字出力するために画像データを呼び出す際にも「暗証コード」を用いることが記載されている一方で、「また、大量印字等のため所望のファイル名を呼び出すのではなく、いきなり暗証を入力して暗証の一致するファイルをサーチし、これを既に指示済みの処理プロセスに従って画像出力部17へ出力してもよい。」、「ジョブコントロールシート9により暗証モードと暗証の設定を行うのではなく、画像データファイルと対応がつく範囲でコントロールパネルその他の入力部から上記暗証に関するデータを入力しても良い。」と記載され、暗証番号だけで、画像データの入出力を行うことも記載されている。 つまり、画像データの入出力時には「暗証コード」または「暗証番号」を使用することは明らかであるが、そのどちらを使用するかといった使用形態には、様々なバリエーションがあると解される。 そこで、これら「暗証コード」及び「暗証番号」をまとめて、「暗証情報」と称することとする。 上記(ウ)の「本発明は、一時的に読み込んだ画像データを一時的に記憶して、蓄積する画像蓄積型画像処理装置に関するものである。」との記載、及び、上記(シ)の「大量印字を行うときなどハードディスク20内に蓄積された画像データファイルから各暗証コードに対応して所望のファイル名を本複写装置のCRT等の表示装置(図示せず)に呼び出して、そのファイル名に対応した暗証を入力する。」との記載等から、画像データを印字出力させるために上記「暗証情報」を入力するのは、画像データ及び暗証情報を入力して蓄積手段に蓄積した後であることは明らかである。 以上、上記(ア)?(ソ)の記載等を勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「画像データを作成するパーソナルコンピュータ等からなる入力部1と、該入力部1とLAN等を介して接続され、該入力部1から入力される画像データを取り込み印字出力するプリンタとから構成される画像処理システムにおいて、 上記入力部1は、 作成した画像データと共に暗証情報をプリンタに入力するものであり、 上記プリンタは、 上記入力部1から入力された画像データと画像データに付された暗証情報とを蓄積する蓄積手段と、 上記入力部1から画像データが入力された後に、暗証入力手段から入力された暗証情報に対応して既に入力され上記蓄積手段に蓄積されている画像データを上記蓄積手段から呼び出して印字出力制御を行う出力制御手段とを備えた画像処理システム。」 C.対比 引用発明の「画像データ」、「パーソナルコンピュータ等からなる入力部1」、「画像処理システム」、「蓄積手段」及び「出力制御手段」は、それぞれ、補正発明の「印刷データ」、「ホスト」、「印刷システム」、「記憶部」及び「制御部」に相当する。 引用発明の「暗証情報」は、「暗証コード」または「暗証番号」を示しており、いずれにしても蓄積された画像データファイルに正規の資格を持たない者のアクセスを禁止するものであって(上記(エ))、暗証情報を入力することにより、画像データを呼び出すものであることから、この「暗証情報」は、補正発明の「他の印刷データと区別するための識別コード」に相当するものと解される。 引用発明の入力部1は、「作成した画像データと共に暗証情報をプリンタに入力するもの」であって、LAN等を介して画像データ及び暗証情報をプリンタに送信しているものと解されるので、データ送信手段を備えていることは自明であるといえる。 したがって、補正発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。 <一致点>「印刷データを作成するホストと、該ホストに接続され、該ホストから送信されてくる上記印刷データを受信して印刷を行うプリンタとから構成される印刷システムにおいて、 上記ホストは、 作成した印刷データに他の印刷データと区別するための識別コードを付与して上記プリンタに送信するデータ送信手段を備え、 上記プリンタは、 上記ホストから送信された印刷データと識別コードとを受信し、上記印刷データと上記識別コードとを対応させて格納する記憶部と、 上記ホストから印刷データが送信された後に識別コードを受信し、該識別コードに対応して既に受信され上記記憶部に記憶されている印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行う制御部とを備えた印刷システム。」 <相違点>補正発明では、ホストは「識別コードを含む印刷開始命令コマンドを送信するコマンド送信手段」を備え、プリンタの制御部は、印刷を行う際に「識別コードを含む印刷開始命令コマンドを受信」するものとして特定されているのに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。 D.判断 まず、相違点に係る補正発明の発明特定事項のうち、ホストが「コマンド送信手段」を備えている点について検討する。 引用発明は、「暗証入力手段」から入力された暗証情報に対応して既に入力され上記蓄積手段に蓄積されている画像データを上記蓄積手段から呼び出して印字出力制御を行うものであって、当該「暗証入力手段」が補正発明の「コマンド送信手段」に機能的に対応している。 また、引用例の上記(ア)には、「暗証入力手段1」と記載され、上記(カ)に記載された「入力部1」と同じ符番が記載されている。 さらに、【図1】には、「入力部1」の中に、「その他の入力部(含暗証手動入力部)」との記載が看取される。 これらの記載からして、引用発明の「暗証入力手段」は、「入力部」に含まれるものと解される。 そして、上記(コ)、(カ)などの記載から、「入力部1」が、引用発明のようにネットワーク回線LAN等を介して接続されたパーソナルコンピュータ等により構成されるものであるとすると、上記「暗証入力手段」も、当該パーソナルコンピュータ等からなる入力部1、つまり、補正発明でいうところの「ホスト」が備えるものと解することができる。 また、本願の出願日前において、プリンタ等の印刷装置に対し、ホスト等の外部機器からアクセスして、特定の処理を実行させる際に、ホスト側からパスワード(暗証番号)のような特定の識別情報を入力することにより、当該特定の処理を実行できるようにすることは、周知技術であって(例えば、特開平10-269036号公報「ホストコンピュータ41側から印刷要求が発行されたか否かを判定する。・・・印刷要求に係るファイルに機密指定が設定されている場合は、パスワードの入力をWebブラウザ44に求める。パスワード入力要求に応じてユーザーがパスワードを入力すると、この入力されたパスワードとファイル管理テーブル37Cに記憶されたパスワードとが比較される・・・入力されたパスワードとファイル管理テーブル37Cに登録されたパスワードとが一致する場合は、ファイル管理テーブル37Cに記憶された格納アドレスに基づいて、記憶装置37から該当ファイルが読み出される・・・プリントエンジン34に転送される。これにより、プリントエンジン34は、印刷要求されたファイルの内容を印刷記録媒体上に印刷する」(段落【0084】?【0087】参照。)、特開平9-6551号公報「所定のインタフェース21を介して印刷装置(プリンタ1000)と情報処理装置(ホストコンピュータ3000)とが通信可能な印刷システムにおいて、プリンタ1000に登録する所定の情報を転送する転送手段(CPU1がプリンタコントローラ8を制御して転送する)と、前記転送手段から転送される前記情報に所定の識別情報を付加設定する設定手段(CPU1がキーボード9から入力に基づいて設定する)とを有する情報処理装置と、不揮発性メモリ22と、ホストコンピュータ3000から転送される情報を所定の識別情報とともに前記不揮発性メモリ22に登録する登録手段(CPU12がROM13に記憶されたプログラムに基づいて登録する)と、前記登録手段により前記不揮発性メモリ22に登録された情報に対する所定のデータ処理要求を登録された前記所定の識別情報とホストコンピュータ3000から入力される情報との照合結果に応じて制限する制限手段(CPU12がROM13に記憶されたプログラムに基づいて制限する)とを有し、CPU1がプリンタ1000に登録する所定の情報を転送する際に、該転送される前記情報に所定の識別情報を付加設定しておき、不揮発性メモリ22に登録された情報に対する所定のデータ処理要求を登録された前記所定の識別情報とホストコンピュータ3000から入力される情報との照合結果に応じてCPU12が制限して、予期しないデータ処理要求を実行してしまうことにより、不揮発性メモリ22に記憶された情報の改変,消失等の事態を回避することを可能とする。」(段落【0056】参照。)、特開平10-29358号公報「本実施の形態の画像形成動作を図9を参照にして説明する。ステップS12までは第1の実施の形態の図6のフローチャートのステップS12までと同様である。次に主制御部1は受信したデータにパスワードの指定があるかどうかをステップS15で判定する。パスワードの指定がある場合はステップS16に進み、主制御部1はユーザからヘッダ情報ファイルの出力指示を受け取った旨を受け取ったパスワードと共に情報管理部13に通知する。ステップS16で情報管理部13はパスワードが正しいかどうかを確認しその結果を主制御部1に送り返し、主制御部1はパスワードの有無と、パスワードが有った場合は情報管理部13の判定結果を受信データと共にヘッダ出力管理部9に送信する。・・・ヘッダ出力管理部9はパスワードが正しかった場合は、パスワードで指定されたヘッダフォーマット15に情報ファイル18のデータをマッピングしてプリンタ部2から出力させた後、ステップS14で資料情報に基づく画像形成文書の出力をプリンタ部2から行なわせる。」(段落【0024】?【0025】参照。))、引用発明において、プリンタに画像の印字出力をさせるため、暗証情報を入力する動作を、ホストに相当する「パーソナルコンピュータ等からなる入力部1」で行うことは、当業者が容易想到な事項である。 よって、相違点に係る補正発明の発明特定事項のうち、ホストが「コマンド送信手段」を備えている点は、引用発明、引用例の他の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 次に、相違点に係る補正発明の発明特定事項のうちの、ホストのコマンド送信手段が「識別コードを含む印刷開始命令コマンドを送信」し、プリンタの制御部が、「識別コードを含む印刷開始命令コマンドを受信」する点について検討する。 引用例では、上記(キ)において、「この暗証入力された蓄積データファイルを画像出力部17に出力するに際しては、暗証入力手段からユーザにより入力された暗証が暗証一致判定手段15でジョブコントロールシート9で指定した暗証コードに対応した暗証番号に一致していると判断されて、出力制御手段16により出力命令が出て可能となる。」と記載されており、画像処理部10内の出力制御手段16が印刷を開始するための「出力命令」を出しているように記載されているが、実際に印刷出力を開始するきっかけとなっているのは、ユーザによる入力部1(内にある、暗証入力手段)からの暗証情報の入力動作であると解される。 引用例においては、画像出力部17に印字出力を実行させる際に、入力部1から「印刷開始命令コマンド」を送信することは特に記載されておらず、入力部1内の暗証入力手段から暗証情報を入力し、それが一致する画像データについて、印字出力動作を開始することが記載されている(上記(シ))のみである。 しかし、プリンタの技術分野において、プリンタに対し、印字出力を要求して実行させる時に、「印刷開始命令コマンド」を送信することは、当業者にとって、技術常識に含まれるような事項であって、引用発明のように、内部に画像データを一旦蓄積するようにしたプリンタに対して、特定の画像データの印字出力を実行させる場合に、画像データを特定し、印字等の処理を許可するため暗証情報をそれ単独で送信するのではなく、「印刷開始命令コマンド」に含まれるようにして送信し、プリンタの制御部でその暗証情報を含ませた印刷開始命令コマンドを受信するように構成することは、当業者にとって想到容易な事項にすぎない。 よって、相違点に係る補正発明の発明特定事項のうち、ホストのコマンド送信手段が「識別コードを含む印刷開始命令コマンドを送信」し、プリンタの制御部が、「識別コードを含む印刷開始命令コマンドを受信」する点は、引用発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。 そして、相違点に係る補正発明の発明特定事項を採用することによる効果も、格別なものではなく、当業者が予測し得る程度のことである。 したがって、補正発明は、引用例及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 [補正の却下の決定のむすび] 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項1?5に係る発明は、平成16年12月17日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認めることができ、そのうち、請求項1の記載は次のとおりのものである。 「印刷データを作成するホストと、該ホストに接続され、該ホストから送信されてくる上記印刷データを受信して印刷を行うプリンタとから構成される印刷システムにおいて、 上記ホストは、 作成した印刷データに他の印刷データと区別するための識別コードを付与して上記プリンタに送信するデータ送信手段と、 上記印刷データの送信とは別に、識別コードを含む印刷開始命令コマンドを送信するコマンド送信手段とを備え、 上記プリンタは、 上記ホストから送信された印刷データと識別コードとを受信し、上記印刷データと上記識別コードとを対応させて格納する記憶部と、 上記ホストから送信された識別コードを含む印刷開始命令コマンドを受信し、該識別コードに対応する印刷データを上記記憶部から読み出して印刷を行う制御部とを備えたことを特徴とする印刷システム。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記「第2[理由]2.B.引用例」に記載したとおりである。 3.対比 本願発明は、上記「第2[理由]1.補正内容・補正目的」で検討したように、補正発明から補正事項(a)による限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加した補正発明が、「第2[理由]2.D.判断」に記載したとおり、引用例及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は補正却下されなければならず、本願発明は、引用例及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-05 |
結審通知日 | 2007-12-11 |
審決日 | 2007-12-26 |
出願番号 | 特願平10-359475 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 名取 乾治 |
特許庁審判長 |
番場 得造 |
特許庁審判官 |
尾崎 俊彦 菅藤 政明 |
発明の名称 | 印刷システム |
代理人 | 大西 健治 |
代理人 | 鈴木 弘一 |