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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1173238
審判番号 不服2005-21178  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-02 
確定日 2008-02-14 
事件の表示 特願2002-170432「アンテナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月15日出願公開、特開2004- 15740〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年6月11日の出願であって、平成17年9月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月2日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成17年8月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項3?7を請求項4?8に繰り下げ、新たに請求項3を追加し、請求項の数を7から8に増加するものである。

2.補正の適否
上記補正は、たとえ願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとしても、新たな請求項(請求項3)を追加する補正は、請求項の削除ではなく、また対応する補正前の請求項が存在しないのであるから、特許請求の範囲の減縮でもなく、誤記の訂正でもなく、明りょうでない記載の釈明でもない。
したがって、上記補正は特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していない。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していないから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成17年12月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成17年8月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
(本願発明)
「複数の円環パッチ群と接地導体を有するアンテナ装置において、
上記円環パッチ群の各々が同一の動作周波数で励振モードの異なる複数の円環パッチで構成され、上記複数の円環パッチ群がそれぞれ異なる動作周波数を有し、全ての円環パッチが上記接地導体上で同一軸上に重ねられたことを特徴とするアンテナ装置。」

2.引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された実願昭63-113374号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開平2-35514号参照、以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項イ?ハが記載されている。
イ.「導体地板上に設置された導体円環及び導体円板からなり4点の給電点を有する円環アンテナと、円環アンテナ上に設置された導体円板からなり4点の給電点を有する円形パツチアンテナにより構成され、各アンテナにおいて各給電点の給電位相を90°ずつずらすことにより円偏波を放射することを特徴とする二周波共用円環アンテナ。」(明細書1頁、実用新案登録請求の範囲第1項)
ロ.「本考案の円偏波二周波共用円環アンテナは、上部導体板、下部導体板、導体地板を一定間隔に平行に配置し、下層導体板と導体地板の間に導体円環を配置した二層構造で、上部導体板、下部導体板にそれぞれ円偏波放射用に位相給電された電力給電線を持つもので、それぞれの電力給電線が4本あるいはそれ以上の本数からなるものである。」(明細書8頁8?14行目)
ハ.「以下、図面により本考案の実施例を説明する。第7図(a),(b)には円偏波二周波共用円環アンテナの平面図及び中央断面図を示す。図において上層導体板1、下層導体板2、導体地板3は互いに平行に配置され、下層導体板2と導体地板3の間には導体円環11が電気的に接続されている。下層導体板2には中心からずれたところに穴4,4’,4’’,4’’’が空いている。円形導体板1,2は低損失誘電体基板を間隙7,8に設置することにより支持されている。上層導体板1、間隙7、下層導体板2、給電線9,9’,9’’,9’’’は上部円形パッチアンテナ21を構成する。また、下層導体板2、間隙8、導体円環11、導体地板3、給電線10,10’,10’’,10’’’は下部円環アンテナ23を構成する。同軸線路12,12’,12’’,12’’’から給電された電波は、給電線9,9’,9’’,9’’’により、上層導体板1に給電され、上部円形パッチアンテナ21を励振する。このとき9’,9’’,9’’’に励振位相を9よりも90°,180°,270°遅らせることにより、上部アンテナ21は上方に向かって左旋円偏波を放射する。一方、同軸線路13,13’,13’’,13’’’から給電された電波は、給電線10,10’,10’’,10’’’により、下層導体板2に給電され、下部円環アンテナ23を励振する。このとき、10’,10’’,10’’’の励振位相を10よりも90°,180°,270°遅らせることにより、下部アンテナ23は上方に向かって左旋円偏波を放射する。単一の円形パッチアンテナ、あるいは円環アンテナが持つ周波数帯域は数%程度であるが、上層導体板1の大きさで定まる上部円形パッチアンテナ21の共振周波数とと下層導体板2および導体円環11の大きさで定まる下部円環アンテナ23の共振周波数が異なるためにこれら二つの異なる周波数帯域で使用できる。」(明細書8頁16行目?10頁12行目)

上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「二周波共用円環アンテナ」は「円環アンテナ」と「円形パッチアンテナ」と「導体地板」で構成され、「円環アンテナ」の共振周波数と「円形パッチアンテナ」の共振周波数はそれぞれ異なっており、また第7図(a)及び(b)を参照すると前記「円環アンテナ」と「円形パッチアンテナ」と「導体地板」は「導体地板」上で同一軸上に重ねられている。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
(引用発明)
「円環アンテナと円形パッチアンテナと導体地板を有するアンテナ装置において、
上記円環アンテナと円形パッチアンテナの各々が単一のアンテナで構成され、上記円環アンテナと円形パッチアンテナがそれぞれ異なる動作周波数を有し、これらのアンテナが上記導体地板上で同一軸上に重ねられたアンテナ装置。」

B.同じく原審の拒絶理由に引用された特公平7-46762号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項イ?ロが記載されている。
イ.「高次モード励振用のマイクロストリップアンテナの上面に、主モード励振用のマイクロストリップアンテナを共軸上に密着装荷せしめて二層構造とし、高次モードと主モードとで異なる放射特性をもたせることを特徴とする円偏波マイクロストリップアンテナ。」(1頁1欄、請求項1)
ロ.「以上説明したように、本発明による円偏波アンテナは、高次モード励振用MSAの上面に主モード励振用MSAを共軸上に密着装荷せしめた二層構造を有しているので、MSAを個別にもしくは位相調整回路を介して同時に給電することによって、天頂領域から低仰角領域に渡る広範な覆域を一つの円偏波アンテナでカバーすることができる。」(2頁4欄19?24行目)

即ち、上記引用例2には「同一の動作周波数で励振モードの異なる複数のパッチ層からなる広範な覆域をカバーする指向性を備えた複合アンテナ」が開示されている。

C.例えば特開平6-334427号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項イが記載されており、例えば特開平6-6130号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項ロ?ハが記載されており、例えば特開平9-238022号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項ニが記載されている。
(周知例1)
イ.「所望の周波数で共振する励振モ-ドTM110の円形または円環の第1のマイクロストリップアンテナに複数の給電点を設け、
上記第1のマイクロストリップアンテナの円形または円環放射導体板の中心を同一として、共平面またはスタック構造に配置した、上記第1のマイクロストリップアンテナと同一周波数で共振する励振モ-ドTM210の円形または円環の第2のマイクロストリップアンテナに一つの給電点を設け、
上記第1のマイクロストリップアンテナの給電点の一つと、上記第2のマイクロストリップアンテナの一つの給電点に90゜の位相差を与えたものとに、同一に給電するようにしたことを特徴とするアンテナ装置。」(2頁1欄、請求項1)

(周知例2)
ロ.「【請求項1】接地面となる導体板の上に誘電体または空気層を介して係着された円環状のアンテナ素子を同一平面上において同心円状に配置したアンテナをひとつ以上用いて構成した放射部と、
上記各アンテナ素子の給電点に接続されていて対応するアンテナ素子を励振するための複数の移相器と、
送信電力を分配して上記各移相器に供給する電力分配器とを具備することを特徴とするアンテナ装置。」(2頁1欄、請求項1)
ハ.「【0031】図14は、第4の実施例を示すもので、これは同心円状にアンテナ素子を配列する際に、誘電率の異なる基板を積層することにより等価的な誘電率を変化させて各モードのアンテナを実現した例である。図14(a)の例においては、比誘電率がεr1,εr2,εr3である基板を厚さt1 ,t2 ,t3 で重ねあわせてあり、一番外側から内側にかけてのリングアンテナの等価比誘電率はそれぞれεr1,(t1 +t2 )/(t1 /εr1+t2 /εr2),(t1 +t2 +t3 )/(t1 /εr1+t2 /εr2+t3 /εr3)で与えられるため各基板の誘電率を独立に設定することができる。また、図14(b)の例においては、金属板上に異なる誘電率εr1,εr2,εr3有する基板上にリングアンテナの励振素子を実現し、それらを同心円状に配置した例である。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、平面上のマイクロストリップアレーアンテナにおいて斜方向に指向性を持たせることが可能であって、配列平面に対して垂直方向に主放射方向をもつアレーアンテナ構成に対して大きくビームを傾けることができるとともに、素子数を減らすことができるから、給電系の構成も簡単にすることができる。従って、アンテナ装置を従来のものより所要面積も少なく簡潔な構成で実現することができる利点がある。」(5頁7?8欄、段落30?32)

(周知例3)
ニ.「【0013】次に、本発明による平面アンテナの第4実施形態について説明する。図6は、本発明による平面アンテナの第4実施形態を示す構成図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のA-A′線における断面図である。この第4実施形態は、図6に示す様に、上述した第2実施形態における円形パッチアンテナの換りに第2の円環パッチアンテナを形成した構成となっている。すなわち、図6(b)に示す様に、第2の誘電体基板18に形成された第1の円環パッチアンテナのパッチ内径b″の内に第2の円環パッチアンテナ26が設けられている。そして、TM11モード励振円環パッチアンテナとTM21モード励振円環パッチアンテナを切り替えスイッチ部23を設けてダイバシティ機能を持たせている。上記切り替えは、通信機における人力信号の強弱、歪等により判断し、より状態の良い方へ切り替えることにより、特性の向上を計ることができる。」(4頁6欄?5頁7欄、段落13)

即ち、例えば上記周知例1、2に開示されているように「同一の動作周波数で励振モードの異なる複数の円環パッチで構成され、広範な覆域をカバーする指向性を備えた複合アンテナ」は周知である。
また、例えば上記周知例1、3に開示されているように「TMモードで励振する円板状パッチと円環状パッチは相互に置換可能な構造であること」も周知である。

3.対比・判断
本願発明と引用発明を対比するに、引用発明の「導体地板」と本願発明の「接地導体」の間に実質的な差異はなく、引用発明の「それぞれ異なる動作周波数を有」する「円環アンテナ」及び「円形パッチアンテナ」と本願発明の「それぞれ異なる動作周波数を有」する「複数の円環パッチ群」はいずれも「それぞれ異なる動作周波数を有」する「第1及び第2のアンテナ素子」である点で一致している。また、引用発明の「これらのアンテナ」と本願発明の「全ての円環パッチ」はそれぞれ前記引用発明の「円環アンテナと円形パッチアンテナ」と本願発明の「複数の円環パッチ群」を指す用語であるから、これらはいずれも「第1及び第2のアンテナ素子」である。
また、本願発明のアンテナ素子である上記「複数の円環パッチ群」は「各々が同一の動作周波数で励振モードの異なる複数の円環パッチで構成され」ているが、引用発明は「単一のアンテナ」である。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。
<一致点>
「第1及び第2のアンテナ素子と接地導体を有するアンテナ装置において、
上記第1及び第2のアンテナ素子がそれぞれ異なる動作周波数を有し、上記第1及び第2のアンテナ素子が上記接地導体上で同一軸上に重ねられたアンテナ装置。」

<相違点>
「第1及び第2のアンテナ素子」に関し、本願発明は「複数の円環パッチ群」であり、「上記円環パッチ群の各々が同一の動作周波数で励振モードの異なる複数の円環パッチで構成され」ているのに対し、引用発明は「円環アンテナと円形パッチアンテナ」であり、これらのアンテナは「単一のアンテナ」である点。

そこで、上記相違点について検討するに、上記引用例2には「同一の動作周波数で励振モードの異なる複数のパッチ層からなる広範な覆域をカバーする指向性を備えた複合アンテナ」が開示されているところ、例えば上記周知例1、3に開示されているように「TMモードで励振する円板状パッチと円環状パッチは相互に置換可能な構造」であり、また例えば上記周知例1、2に開示されているように、円板アンテナを円環アンテナに置換した「同一の動作周波数で励振モードの異なる複数の円環パッチで構成され、広範な覆域をカバーする指向性を備えた複合アンテナ」も周知である。そして、引用例2に開示された技術手段ないしはこれらの周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明のそれぞれが「単一のアンテナ」として構成された「円環アンテナと円形パッチアンテナ」の指向性を改善するために、当該引用発明のアンテナ素子を、前記技術手段ないしは周知技術に基づいて、本願発明のような「上記円環パッチ群の各々が同一の動作周波数で励振モードの異なる複数の円環パッチで構成され」る「複数の円環パッチ群」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に開示された技術手段ないしは周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-05 
結審通知日 2007-12-11 
審決日 2007-12-25 
出願番号 特願2002-170432(P2002-170432)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (H01Q)
P 1 8・ 572- Z (H01Q)
P 1 8・ 573- Z (H01Q)
P 1 8・ 574- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 阿部 弘
富澤 哲生
発明の名称 アンテナ装置  
代理人 田澤 英昭  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 英昭  
代理人 加藤 公延  
代理人 濱田 初音  
代理人 加藤 公延  

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