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審決分類 |
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1173357 |
審判番号 | 不服2004-11563 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-07 |
確定日 | 2008-02-20 |
事件の表示 | 特願2002- 36665「預託融資システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月29日出願公開、特開2003-242353〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年2月14日の出願であって、平成15年12月11日付けの拒絶理由通知に対して平成16年2月18日付けで手続補正がなされたが、同年4月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年2月18日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。ただし、前記手続補正書の請求項1に記載された「預託額算定手段」は、「預託金額算定手段」の誤記と認められるので、本願発明を、以下のとおり特定した。 「預託機関コンピュータと、複数の金融機関コンピュータと、調整機関コンピュータとを通信網で接続し、預託機関と複数の金融機関の各々との間の次年度預託の計画の作成を調整するとともに前記複数の金融機関の一部又は全部でシンジケート団を組成するための預託融資システムであって、 前記預託機関コンピュータは、該預託機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに、本年度預託に基づいて前記金融機関毎の次年度預託の金額と金利とを仮算定する預託金額算定手段を含み、 前記金融機関コンピュータは、該金融機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに、次年度預託に参加する意思を前記預託機関コンピュータに送信して参加登録を行う登録手段を含み、 調整機関コンピュータは、該調整機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに、前記金融機関の法定貸出上限をチェックするための法規制チェック手段と、前記金融機関についてのリスク量と期待市中貸出額とに基づいてバリューアットリスク(VAR)を算定し総預託額を算定するためのVAR算定手段と、前記金融機関毎の次年度預託額及び融資額を算定するための預託額融資額算定手段と、預託先として参加申込を行う方法を提示するための申込方法提示手段と、次年度預託先として入札させるための電子入札手段と、前記金融機関が前記シンジケート団を組成したとする場合に生じるべき前記金融機関の負担する信用リスクと前記預託機関が負担すべき預金許容リスクとのマッチングを行うためのリスク算定手段とを含み、 前記登録手段を使用して次年度預託に参加を予定する前記金融機関を決定し、 預託金額算定手段を使用して参加予定金融機関毎の預託額及び金利を仮算定し、 前記預託金額算定手段による仮算定に基づいて、前記法規制チェック手段及びVAR算定手段を使用して前記次年度預託の前記総預託額を仮算定し、 前記総預託額の仮算定に基づいて、預託額融資額算定手段を使用して、前記参加予定金融機関毎の預託額並びに融資額及びこれらの金利を仮算定し、 前記電子入札手段を使用して前記参加予定金融機関からの電子入札を求め、 前記リスク算定手段を使用して、前記預託額融資額算定手段による仮算定を修正して次年度の預託に参加する前記金融機関を決定することを特徴とする預託融資システム。」 3.原査定の拒絶の理由 原審の拒絶理由通知及び拒絶査定の記載からみて、原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。 『この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 記 請求項1?6に係る「預託融資システム」の備える各手段、及び請求項7?13に係る「預託融資プログラム」により各機関のコンピュータを機能させるとする各手段は、「預託融資」の業務処理の内容をコンピュータによって行うことを規定している、という程度に過ぎないものであって、コンピュータの備えるハードウエア資源としての手段であるとも、コンピュータのソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現された手段であるものとも認められないから、これらの各手段より構成される「預託融資システム」や、預託融資システムを動作させるための「預託融資プログラム」は、全体としても自然法則を利用した技術的思想の創作であることを要件とする特許法上の「発明」に該当しない。 また、請求項13?18に係る「預託融資方法」も各機関のコンピュータを用いた方法として規定されているものの、その各ステップは、「預託融資」の業務処理の内容をコンピュータによって行うことを規定している、という程度に過ぎず、コンピュータのソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されたものとして特定されていないから、これらの各ステップからなる「預託融資方法」は、全体としても自然法則を利用した技術的思想の創作であることを要件とする特許法上の「発明」に該当しない。 平成16年2月18日付の手続補正書により、各機関コンピュータに「・・機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに」等を追加する補正を行ったが、該補正は、単に各機関のコンピュータは、それぞれプログラムを作動させるという、技術的に当然の事項を追加的に記載したに過ぎず、当該記載を追加することによって、各機関コンピュータの備える各手段が、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現された手段として特定されたといえないことは明らかである。』 4.当審の判断 本願発明の構成を便宜上分説すれば、以下のとおりである。 (ア-1)預託機関コンピュータと、複数の金融機関コンピュータと、調整機関コンピュータとを通信網で接続し、 (ア-2)預託機関と複数の金融機関の各々との間の次年度預託の計画の作成を調整するとともに前記複数の金融機関の一部又は全部でシンジケート団を組成するための預託融資システムであって、 (イ)前記預託機関コンピュータは、該預託機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに、本年度預託に基づいて前記金融機関毎の次年度預託の金額と金利とを仮算定する預託金額算定手段を含み、 (ウ)前記金融機関コンピュータは、該金融機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに、次年度預託に参加する意思を前記預託機関コンピュータに送信して参加登録を行う登録手段を含み、 (エ-1)調整機関コンピュータは、該調整機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに、前記金融機関の法定貸出上限をチェックするための法規制チェック手段と、 (エ-2)前記金融機関についてのリスク量と期待市中貸出額とに基づいてバリューアットリスク(VAR)を算定し総預託額を算定するためのVAR算定手段と、 (エ-3)前記金融機関毎の次年度預託額及び融資額を算定するための預託額融資額算定手段と、 (エ-4)預託先として参加申込を行う方法を提示するための申込方法提示手段と、 (エ-5)次年度預託先として入札させるための電子入札手段と、 (エ-6)前記金融機関が前記シンジケート団を組成したとする場合に生じるべき前記金融機関の負担する信用リスクと前記預託機関が負担すべき預金許容リスクとのマッチングを行うためのリスク算定手段とを含み、 (オ)前記登録手段を使用して次年度預託に参加を予定する前記金融機関を決定し、 (カ)預託金額算定手段を使用して参加予定金融機関毎の預託額及び金利を仮算定し、 (キ)前記預託金額算定手段による仮算定に基づいて、前記法規制チェック手段及びVAR算定手段を使用して前記次年度預託の前記総預託額を仮算定し、 (ク)前記総預託額の仮算定に基づいて、預託額融資額算定手段を使用して、前記参加予定金融機関毎の預託額並びに融資額及びこれらの金利を仮算定し、 (ケ)前記電子入札手段を使用して前記参加予定金融機関からの電子入札を求め、 (コ)前記リスク算定手段を使用して、前記預託額融資額算定手段による仮算定を修正して次年度の預託に参加する前記金融機関を決定することを特徴とする預託融資システム。 以上の本願発明の構成によれば、本願発明は、システム{前記(ア-1)及び前記(ア-2)}がコンピュータの機能実現手段{前記(イ)ないし前記(エ-6)}を使用して行う処理{前記(オ)ないし前記(コ)}によって特定された物の発明であって、該コンピュータに搭載されたプログラムを作動させることにより、前記処理が行われるものであると把握できる。 したがって、本願発明は、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところの、いわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明である。 しかしながら、本願発明は、機器等に対する制御に係るものでも、対象の物理的性質又は具体的性質に基づくものでもないところ、これらにあたらないコンピュータ・ソフトウェア関連発明が、特許法第2条第1項で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、請求項に記載された事項に基づいて把握された請求項に係る発明において、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていること、つまり、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されていることが必要である。 そこで、本願発明を構成する上記(ア)ないし(コ)の事項それぞれについて、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているかを、以下に詳細に検討する。 すると、前記(ア-1)に記載された「預託機関コンピュータと、複数の金融機関コンピュータと、調整機関コンピュータとを通信網で接続し、」という事項は、「預託機関コンピュータ」と「複数の金融機関コンピュータ」と「調整機関コンピュータ」とが「通信網」で「接続」されているというシステム構成の概要を特定している。 けれども、この記載は、ソフトウェアによる情報処理を特定しているものではない。 また、前記(ア-2)に記載された「預託機関と複数の金融機関の各々との間の次年度預託の計画の作成を調整するとともに前記複数の金融機関の一部又は全部でシンジケート団を組成するための預託融資システムであって、」という事項は、「預託融資システム」とは、「預託機関と複数の金融機関の各々との間の次年度預託の計画の作成を調整する」とともに「前記複数の金融機関の一部又は全部でシンジケート団を組成する」ためのものであることを特定している。 けれども、この記載は、このシステムを用いて達成しようとする業務の概要を示したにすぎないものであって、預託融資システムにおいて作動するソフトウェアによる情報処理の具体的な内容を特定しているといえるものではない。 また、前記(イ)に記載された「前記預託機関コンピュータは、該預託機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに、本年度預託に基づいて前記金融機関毎の次年度預託の金額と金利とを仮算定する預託金額算定手段を含み、」という事項は、「預託金額算定手段」によって「預託機関コンピュータ」に、「本年度預託」に基づいて「金融機関毎の次年度預託の金額と金利」とを「仮算定」する処理が実現されることを特定している。 けれども、「本年度預託」を使って計算を行うことにより「金融機関毎」の「次年度預託の金額」及び「(次年度預託の)の金利」の両者を結果として得るという処理とは、どのような演算内容なのか、つまり、どのようなデータが入力され、そのデータに対してどのような演算を施すことによって、どのようなデータが出力されることを意味しているのかが、前記(イ)に記載された内容によって具体的に特定されているとはいえないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(イ)の記載から把握することができない。 また、前記(ウ)に記載された「前記金融機関コンピュータは、該金融機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに、次年度預託に参加する意思を前記預託機関コンピュータに送信して参加登録を行う登録手段を含み、」という事項は、「登録手段」によって「金融機関コンピュータ」に、「次年度預託に参加する意思」を「預託機関コンピュータに送信」して「参加登録を行う」処理が実現されることを特定している。 けれども、「次年度預託に参加する意思」を預託機関コンピュータに送信して「参加登録」を行うという処理とは、通常の情報送信を行う一般的な処理よりもその内容を更に特定しようとしているが、該一般的な処理以上に特定された処理として、どのような内容の処理を意味しているのかが、前記(ウ)に記載された内容によって具体的に特定されているとはいえないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(ウ)の記載から把握することができない。 また、前記(エ-1)に記載された「調整機関コンピュータは、該調整機関コンピュータに搭載されて作動されるプログラムに、前記金融機関の法定貸出上限をチェックするための法規制チェック手段と、」という事項は、「法規制チェック手段」によって「調整機関コンピュータ」に、「金融機関の法定貸出上限」を「チェック」する処理が実現されることを特定している。 けれども、「金融機関の法定貸出上限」を「チェック」するという処理とは、どのような内容の処理を意味しているのかが、前記(エ-1)に記載された内容によって具体的に特定されているとはいえないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(エ-1)の記載から把握することができない。 また、前記(エ-2)に記載された「前記金融機関についてのリスク量と期待市中貸出額とに基づいてバリューアットリスク(VAR)を算定し総預託額を算定するためのVAR算定手段と、」という事項は、「VAR算定手段」によって「調整機関コンピュータ」に、「金融機関についてのリスク量と期待市中貸出額」とに基づいて「バリューアットリスク(VAR)」を「算定」し「総預託額」を「算定」する処理が実現されることを特定している。 けれども、「金融機関についてのリスク量」及び「期待市中貸出額」の両者を使って計算を行うことにより「VAR」及び「総預託額」の両者を結果として得るという処理とは、どのような演算内容を意味しているのかが、前記(エ-2)に記載された内容によって具体的に特定されているとはいえないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(エ-2)の記載から把握することができない。 また、前記(エ-3)に記載された「前記金融機関毎の次年度預託額及び融資額を算定するための預託額融資額算定手段と、」という事項は、「預託額融資額算定手段」によって「調整機関コンピュータ」に、「金融機関毎の次年度預託額及び融資額」を「算定」する処理が実現されることを特定している。 けれども、計算を行うことにより「金融機関毎の次年度預託額」及び「(金融機関毎の)融資額」の両者を結果として得るという処理とは、どのようなデータが入力され、そのデータに対してどのような内容の演算を施すことによって、どのようなデータが出力されることを意味しているのかが、前記(エ-3)に記載された内容によって具体的に特定されているということはできないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(エ-3)の記載から把握することができない。 また、前記(エ-4)に記載された「預託先として参加申込を行う方法を提示するための申込方法提示手段と、」という事項は、「申込方法提示手段」によって「調整機関コンピュータ」に、「預託先として参加申込を行う方法」を「提示」する処理が実現されることを特定している。 けれども、「預託先として参加申込を行う方法」を「提示」するという処理とは、どのような内容の処理を意味しているのかが、前記(エ-4)に記載された内容によって具体的に特定されているということはできないため、その処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(エ-4)の記載から把握できない。 したがって、機能実現手段である申込方法提示手段による情報処理が具体的に実現されているとはいえない。 また、前記(エ-5)に記載された「次年度預託先として入札させるための電子入札手段と、」という事項は、「電子入札手段」によって「調整機関コンピュータ」に、「次年度預託先として」「入札させる」処理が実現されることを特定している。 けれども、「次年度預託先として」入札させるという処理とは、通常の電子入札を行う一般的な処理よりもその内容を更に特定しようとしているが、該一般的な処理以上に特定された処理として、どのような内容の処理を意味しているのかが、前記(エ-5)に記載された内容によって具体的に特定されているとはいえないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(エ-5)の記載から把握することができない。 また、前記(エ-6)に記載された「前記金融機関が前記シンジケート団を組成したとする場合に生じるべき前記金融機関の負担する信用リスクと前記預託機関が負担すべき預金許容リスクとのマッチングを行うためのリスク算定手段とを含み、」という事項は、「リスク算定手段」によって「調整機関コンピュータ」に、「金融機関がシンジケート団を組成したとする場合に生じるべき金融機関の負担する信用リスク」と「預託機関が負担すべき預金許容リスク」との「マッチング」を行う処理が実現されることを特定している。 けれども、前記「信用リスク」と前記「預金許容リスク」との「マッチング」を行うという処理とは、どのような内容の処理を意味しているのかが、前記(エ-6)に記載された内容によって具体的に特定されているということはできないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータ上に具体的に実現されているのかを、前記(エ-6)の記載から把握することができない。 また、前記(オ)に記載された「前記登録手段を使用して次年度預託に参加を予定する前記金融機関を決定し、」という事項は、「預託融資システム」が前記(ウ)に係る「登録手段」を使用して、「次年度預託に参加を予定する金融機関」を「決定」する処理を行うことを特定している。 けれども、「次年度預託に参加を予定する金融機関」を「決定」するという処理とは、どのような内容の処理を意味しているのかが、前記(オ)に記載された内容によって具体的に特定されているということはできず、また、登録手段に係る前記(ウ)に記載された事項を更に考慮したとしても、該決定する処理の具体的な内容を把握できないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータシステム上に具体的に実現されているのかを把握することができない。 したがって、前記(ウ)及び前記(オ)に係る以上の検討を踏まえると、機能実現手段である登録手段による情報処理が具体的に実現されているとはいえない。 また、前記(カ)に記載された「預託金額算定手段を使用して参加予定金融機関毎の預託額及び金利を仮算定し、」という事項は、「預託融資システム」が「預託金額算定手段」を使用して、「参加予定金融機関毎の預託額及び金利」を「仮算定」する処理を行うことを特定している。 けれども、計算を行うことにより「参加予定金融機関毎」の「預託額」及び「金利」の両者を結果として得るという処理とは、どのようなデータが入力され、そのデータに対してどのような内容の演算を施すことによって、どのようなデータが出力されることを意味しているのかが、前記(カ)に記載された内容によって具体的に特定されているということはできず、また、預託金額算定手段に係る前記(イ)に記載された事項を更に考慮したとしても、該仮算定する処理の具体的な内容を把握できないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータシステム上に具体的に実現されているのかを把握することができない。 したがって、前記(イ)及び前記(カ)に係る以上の検討を踏まえると、機能実現手段である預託金額算定手段による情報処理が具体的に実現されているとはいえない。 また、前記(キ)に記載された「前記預託金額算定手段による仮算定に基づいて、前記法規制チェック手段及びVAR算定手段を使用して前記次年度預託の前記総預託額を仮算定し、」という事項は、「預託融資システム」が前記(エ-1)に係る「法規制チェック手段」及び前記(エ-2)に係る「VAR算定手段」を使用して、前記(カ)に係る「預託金額算定手段による仮算定」に基づいて「次年度預託の総預託額」を「仮算定」する処理を行うことを特定している。 けれども、「参加予定金融機関毎」の「(次年度の)預託額」及び「(次年度の)金利」の両者を使って計算を行うことにより「次年度預託の総預託額」を結果として得るという処理とは、すべての「参加予定金融機関」の次年度の預託額それぞれの単なる総和を求めることに留まらず、「参加予定金融機関毎」の前記「(次年度の)金利」の値や前記「法規制チェック手段」及び前記「VAR算定手段」も更に使って計算を行うことを特定しようとしているが、該単なる総和を求めること以上に特定された処理として、どのような演算内容を意味しているのかが、前記(キ)に記載された内容によって具体的に特定されているということはできず、また、法規制チェック手段及びVAR算定手段に係る前記(エ-1)及び前記(エ-2)に記載された事項を更に考慮したとしても、該仮算定する処理の具体的な内容を把握できないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータシステム上に具体的に実現されているのかを把握することができない。 したがって、前記(エ-1)、前記(エ-2)及び前記(キ)に係る以上の検討を踏まえると、機能実現手段である法規制チェック手段及びVAR算定手段による情報処理が具体的に実現されているとはいえない。 また、前記(ク)に記載された「前記総預託額の仮算定に基づいて、預託額融資額算定手段を使用して、前記参加予定金融機関毎の預託額並びに融資額及びこれらの金利を仮算定し、」という事項は、「預託融資システム」が前記(エ-3)に係る「預託額融資額算定手段」を使用して、前記(キ)に係る「総預託額の仮算定」に基づいて、「参加予定金融機関毎の預託額並びに融資額及びこれらの金利」を「仮算定」する処理を行うことを特定している。 けれども、「(次年度預託の)総預託額」を使って計算を行うことにより、「参加予定金融機関毎」の「預託額」、「融資額」、「(預託額の)金利」及び「(融資額の)金利」を結果として得るという処理とは、どのような演算内容を意味しているのかが、前記(ク)に記載された内容によって具体的に特定されているということはできず、また、預託額融資額算定手段に係る前記(エ-3)に記載された事項を更に考慮したとしても、該仮算定する処理の具体的な内容を把握できないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータシステム上に具体的に実現されているのかを把握することができない。 したがって、前記(エ-3)及び前記(ク)に係る以上の検討を踏まえると、機能実現手段である預託額融資額算定手段による情報処理が具体的に実現されているとはいえない。 また、前記(ケ)に記載された「前記電子入札手段を使用して前記参加予定金融機関からの電子入札を求め、」という事項は、「預託融資システム」が前記(エ-5)に係る「電子入札手段」を使用して「参加予定金融機関からの電子入札を求め」る処理を行うことを特定している。 けれども、「参加予定金融機関」からの「電子入札」を「求め」るという処理とは、どのような内容の処理を意味しているのかが、前記(ケ)に記載された内容によって具体的に特定されているということはできず、また、電子入札手段に係る前記(エ-5)に記載された事項を更に考慮したとしても、該求める処理の具体的な内容を把握できないから、その処理がどのような情報処理としてコンピュータシステム上に具体的に実現されているのかを把握することができない。 したがって、前記(エ-5)及び前記(ケ)に係る以上の検討を踏まえると、機能実現手段である電子入札手段による情報処理が具体的に実現されているとはいえない。 また、前記(コ)に記載された「前記リスク算定手段を使用して、前記預託額融資額算定手段による仮算定を修正して次年度の預託に参加する前記金融機関を決定することを特徴とする預託融資システム。」という事項は、「預託融資システム」が前記(エ-6)に係る「リスク算定手段」を使用して、前記(ク)に係る「預託額融資額算定手段による仮算定」を「修正」して「次年度の預託に参加する金融機関」を「決定」する処理を行うことを特定している。 けれども、「参加予定金融機関毎」の「預託額」、「融資額」、「(預託額の)金利」及び「(融資額の)金利」を使って計算を行うことにより、これらを修正した結果を得るという処理とは、どのような演算内容を意味しているのかが、前記(コ)に記載された内容によって具体的に特定されているということはできず、また、「次年度の預託に参加する金融機関」を「決定」するという処理とは、どのような内容の処理を意味しているのかが、前記(コ)に記載された内容によって具体的に特定されているということもできない。 また、リスク算定手段に係る前記(エ-6)に記載された事項を更に考慮したとしても、該修正する処理及び該決定する処理の具体的な内容を把握することができないから、それらの処理がどのような情報処理としてコンピュータシステム上に具体的に実現されているのかを把握することができない。 したがって、前記(エ-6)及び前記(コ)に係る以上の検討を踏まえると、機能実現手段であるリスク算定手段による情報処理が具体的に実現されているとはいえない。 以上のことを踏まえ、本願発明の構成を全体として検討するために、請求項1の記載を全体としてみても、請求項1に記載された事項としては、預託機関、複数の金融機関、調整機関のそれぞれのコンピュータが担う機能が抽象的に示されているにすぎず、該機能が具体的に特定されていないため、預託融資システムの全体の処理が、どのような情報処理によりコンピュータシステム上に具体的に実現されているのかを、請求項に記載された事項に基づいて把握できないから、該全体の処理が具体的に実現されているとはいえない。 なお、仮に、前記登録手段が通常の情報送信を行うに留まる一般的な手段であり、かつ、前記電子入札手段が通常の電子入札を行うに留まる一般的な手段である、と把握したとしても、両手段における処理によって、預託融資のために具現化すべき全体の処理が使用目的に応じた具体的な内容として把握できるようになるものでもないのだから、このように仮定したとしても該全体の処理が具体的に実現されているといえるようになるものではない。 したがって、本願発明において、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているということはできないから、本願発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しない。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-03 |
結審通知日 | 2007-12-11 |
審決日 | 2007-12-28 |
出願番号 | 特願2002-36665(P2002-36665) |
審決分類 |
P
1
8・
1-
Z
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丹治 彰 |
特許庁審判長 |
小林 信雄 |
特許庁審判官 |
坂庭 剛史 山本 穂積 |
発明の名称 | 預託融資システム |
代理人 | 佐藤 卓也 |
代理人 | 小島 高城郎 |