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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B26D
管理番号 1173531
審判番号 不服2006-6312  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-05 
確定日 2008-02-18 
事件の表示 特願2003- 88390「ラップフィルム切断方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日出願公開、特開2004-291168〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成15年3月27日の出願であって、その請求項1に係る発明は、当審で提出された平成19年11月6日付けの手続補正書及び出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は、次のとおりである。(以下「本願発明」という。)
「シート状のラップフィルムを、その幅方向が芯の軸方向に沿い且つその長さ方向が芯の周方向に沿うように、該芯に巻回してなるラップフィルム構体に対して、そのラップフィルムの周囲における幅方向の任意位置に本体を装着し、該本体に取り付けられると共に駆動源を備えず且つ中心軸廻りに回転自在な回転刃からなる切断刃とラップフィルム構体とを相対回転させつつ、切断刃をラップフィルムに長さ方向に沿って押し付けていくことにより、ラップフィルムを任意の幅寸法に切断し且つ前記芯を切断しないことを特徴とするラップフィルム切断方法。」

2 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成19年9月6日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である昭和53年4月7日に頒布された特開昭53-37982号公報(以下「引用例」という。)には、以下の発明が記載されている。
(1)第2頁左下欄第6行-第9行
「本発明はロール状に巻いた障子紙、その他の紙類、布、樹脂フイルム等(以下単に障子紙等という。)を巻付方向に対し平行に切断し得る切断器具に関するものである。」
(2)第2頁右下欄第7行-第3頁左上欄第10行
「以下本発明を具体化した一実施態様を第1図?第3図について説明すれば、図面中R_(1)は固定リング全体を示し、1はある程度弾性を有するプラスチック,金属材料により略円筒状に一体形成した枠体であつて、その一部を軸心方向に切欠いて対向端部2a,2bを形成するとともに、右端縁を同枠体1の軸心方向と直交するガイド面3としている。そして、前記枠体1を圧縮することにより同枠体1の内径d_(1)を縮径可能である。・・・
4は前記枠体1の右端部外周に対し時計回り方向へいくほど同枠体1の軸心Oからの距離すなわち半径rが次第に大きくなるようにゆるやかな円弧状の傾斜をつけた被締着カム部であつて、その半径rが最も小さいところを底部s_(1)とし、同半径が最大となるところを頂部s_(2)とし、この実施態様では90度ごとに四箇所形成している。5は前記被締着カム部4の中央部に対し円周方向に刻設した係止溝であつて、その外径を前記枠体1の外径d_(2)とほゞ同じにしている。」
(3)第3頁左上欄第11行-左下欄第6行
「次に前記固定リングR_(1)の被締着カム部4に対し回動可能に取着され、前記枠体1をロール状に巻いた障子紙等の外周部に締着固定し得るようにした締着リングR_(2)について説明すれば、6はプラスチツク、金属材料により一体成型したリング本体であつて、その内径d_(4)を前記被締着カム部4の頂部s_(2)の外径d_(3)と同じか若干大きめにするとともに、左右両端面を同リング本体6の軸心方向と直交する一対のガイド面7としている。
8は前記リング本体6内周面左右両側に対し1個ずつ互に対応するように設けその組を90度ごとに四箇所に突出形成した円弧状の締着突部であつて、互に対向する突部8間の内径d_(5)を前記枠体1の外径d_(2)と同じか若干大きめにしている。従つて同締着突部8が前記固定リングR_(1)の被締着カム部4の底部s_(1)に位置する状態で、リング本体6を被締着カム部4に嵌合可能である。
9は前記リング本体6の内周面中央部において円周方向に突設した係止突条であつて、その内径d_(6)を前記固定リングR_(1)の係止溝5の外径(枠体1の外径)d_(2)と同じか若干大きめにしている。そして固定リングR_(1)の枠体1を圧縮して被締着カム部4の頂部s_(2)部の外径d_(3)を係止突条9の内径d_(6)よりも小さくした状態で、リング本体6を被締着カム部4外周部に嵌合し前記締着突部8を被締着カム部4の底部s_(1)にそれぞれ位置させて、前記枠体1の圧縮を解き係止溝5と係止突条9とを互に嵌合することにより、固定リングR_(1)に対し締着リングR_(2)を回動可能にかつ軸心方向への移動不能に取付けている。
10は前記リング本体6の外周面中央部に対し円周方向に刻設した係止溝である。」
(4)第3頁左下欄第7行-第4頁左上欄第1行
「次に前記締着リングR_(2)の外周部に対し、回転可能に嵌合されロール状の障子紙Aを巻付方向と平行に切断し得るようにした切断部材Cについて説明すれば、11はある程度弾性を有するプラスチツク、金属材料により略リング状に形成した可動リングであつて、その一部を軸心方向に切欠いて一対の対向端部12a,12bを形成するとともに、左右両端縁を軸心方向と直交する一対のガイド面13としている。そして同可動リング11を圧縮又は拡張することによりその内径d_(8)(前記締着リングR_(2)の外径d_(7)と同じか若干大きめである)を縮径又は拡径可能である。
14は前記可動リング11の内周面中央よりやや左寄りに対し、円周方向と同方向にかつ一体に突出形成した係止突条であつて、前記可動リング11を拡径した状態で前記締着リングR_(2)の外周部に嵌合し係止突条14を前記係止溝10に嵌合することにより、円周方向に回転可能にかつ離脱しないように取付られている。
15は前記可動リング11の外周部中央より右側に対し一体に形成した取付部、16は同取付部15に対し基端部を回動可能に軸17着した切断操作部材であつて、その挟着部18には切断刃19を挟着固定している。・・・20は前記挟着部18の左側を円弧状に切欠いて形成したストツパ部であつて、前記切断刃19が第2図二点鎖線で示すように可動リング11内側へ回動されたとき、その外周面に当接してそれ以上回動しないようにしている。」
(5)第4頁左上欄第2行-右上欄第3行
「次に本発明の作用及び効果について説明する。
さて、前記のように構成した切断器具を使用してロール状に巻いた障子紙等をその巻付方向と平行に切断するには、まずロール状の障子紙Aの外周部の任意の位置に対し、切断器具を嵌合する。そして、前記固定リングR_(1)の把手部1aを一方の手で障子紙Aに対し移動しないように把持し、他方の手で締着リングR_(2)を第2図時計回り方向へ回動すると、その締着突部8が被締着カム部4上を同方向に摺動され、同被締着カム部4が軸心方向へ押圧されて縮径され、従つて、固定リングR_(1)が締着リングR_(2)とゝもに、障子紙Aの外周部に締着固定される。・・・
次に前記切断部材Cを第2図時計回り方向へ回動しながら、切断操作部材16を軸17を中心に同図反時計回り方向へ傾動して障子紙Aに切断刃19を圧入すれば、障子紙Aをロール状のまま巻付方向と平行に切断することができる。」
(6)ここで、図面の第2図及び第3図を参照すると、ロール状の障子紙Aの外周部に固定リングR_(1)、締着リングR_(2)が取り付けられ、締着リングR_(2)の外周部に切断部材Cが回転可能に設けられていることが理解でき、また、第2図から、ロール状の障子紙Aは芯に巻回してあるものであることが見て取れる。また、摘記事項(1)から、ロール状の障子紙Aはロール状の樹脂フイルムでもよいことが理解できる。
以上(1)?(5)の記載、及び(6)の認定事項から、引用例には、「芯に巻回してなるロール状の樹脂フイルムに対して、そのロール状の樹脂フイルムの外周部の任意の位置に切断器具を嵌合し、固定リングR_(1)の把手部1aを一方の手でロール状の樹脂フイルムに対し移動しないように把持し、他方の手で締着リングR_(2)を時計回りに回動することにより、被締着カム部4を軸心方向へ押圧して縮径し、固定リングR_(1)を締着リングR_(2)とゝもにロール状の樹脂フイルムの外周部に締着固定し、該締着リングR_(2)の外周部に回転可能に嵌合された切断部材Cに設けられた切断刃19をロール状の樹脂フイルムの外周部に回動しながら、切断操作部材16を軸17を中心に傾動して切断刃19をロール状の樹脂フイルムに圧入することにより、ロール状の樹脂フイルムを巻付方向と平行に切断するロール状の樹脂フイルムの切断方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「締着リングR_(2)」は、本願発明の「本体」に相当する。
引用発明の「ロール状の樹脂フイルム」は、本願発明の「フィルム」に相当し、したがって、引用発明の「芯に巻回してなるロール状の樹脂フイルム」は、本願発明の「その幅方向が芯の軸方向に沿い且つその長さ方向が芯の周方向に沿うように、該芯に巻回してなるフィルム構体」に相当する。
引用発明の「ロール状の樹脂フイルムの外周部」は、本願発明の「フィルムの周囲」に相当する。
切断器具がロール状の樹脂フイルムの周方向に設けられていることから、引用発明の「任意の位置」は、「幅方向の任意の位置」であることは明らかである。
引用発明の「締着固定」は、「装着」とも言い得るものである。
引用発明の締着リングR_(2)は本願発明の本体に相当するから、引用発明の「締着リングR_(2)の外周部に回転可能に嵌合され」は、本願発明の「本体に取り付けられ」に相当する。
引用発明の「切断刃19をロール状の樹脂フイルムの外周部に回動しながら」は、本願発明の「切断刃とフィルム構体と相対回転させつつ」に相当することは明らかである。したがって、引用発明の「切断刃19をロール状の樹脂フイルムの外周部に回動しながら、切断刃19をロール状の樹脂フイルムに圧入する」ことは、本願発明の「切断刃とフィルム構体とを相対回転させつつ、切断刃をフィルムに長さ方向に沿って押し付けていく」ことに相当する。
引用発明の「巻付方向と平行に切断」することは、本願発明の「任意の幅寸法に切断」することに相当する。
以上の点から、両者は「フィルムを、その幅方向が芯の軸方向に沿い且つその長さ方向が芯の周方向に沿うように、該芯に巻回してなるフィルム構体に対して、そのフィルムの周囲における幅方向の任意位置に本体を装着し、該本体に取り付けられた切断刃とフィルム構体とを相対回転させつつ、切断刃をフィルムに長さ方向に沿って押し付けていくことにより、フィルムを任意の幅寸法に切断するフィルム切断方法。」で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
切断されるフィルムが、本願発明では、「シート状のラップフィルム」であるのに対し、引用発明では、単に「ロール状の樹脂フイルム」である点。
<相違点2>
切断刃の構造に関し、本願発明では、「駆動源を備えず且つ中心軸廻りに回転自在な回転刃」としているのに対し、引用発明の切断刃19はそのようなものではない点。
<相違点3>
切断に際し、本願発明では、「芯を切断しない」としているのに対し、引用発明では、芯を切断するかどうか不明な点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
(1)<相違点1>について
フィルムとして、シート状のラップフィルムは、食品を冷蔵庫などで保存する場合に用いられるロール状に巻回されたラップフィルムとして周知の事項であって、この周知のラップフィルムを引用発明の「ロール状の樹脂フイルムの切断方法」によって切断できないとする阻害要因は特に見当たらないことからすれば、引用発明の切断方法をシート状のラップフィルムの切断に適用することは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2)<相違点2>について
フィルムのようなシート状の材料を切断するに際して、駆動源を備えず且つ中心軸廻りに回転自在な回転刃を用いることは、例えば、実公昭39-20213号公報(同公報に記載された事項において、先鋭部8を有するローラー7参照。)、実公昭61-35428号公報(同公報に記載された事項において、円形刃物10参照。)、及び実願昭48-17567号(実開昭49-119883号)のマイクロフィルム(同公報に記載された事項において、回転刃13参照。)にそれぞれ記載されているように周知の事項であり、また、引用発明において、切断刃として引用発明に用いられている切断刃に代え、上記周知の事項である駆動源を備えず且つ中心軸廻りに回転自在な回転刃を用いても、そのことによる効果は、回転刃から予測し得る程度のものでしかないことからすれば、引用発明において、切断刃として、駆動源を備えず且つ中心軸廻りに回転自在な回転刃を用いることは、当業者が容易になし得たものである。
(3)<相違点3>について
芯に巻回されたフィルムを切断する場合、フィルムが切断されていれば芯が切断されているか否かには関係なく、幅寸法の小さいフィルムとして使用可能である。そして、引用例においても、上記摘記事項(4)において「20は前記挟着部18の左側を円弧状に切欠いて形成したストッパ部であつて、前記切断刃19が第2図二点鎖線で示すように可動リング11内側へ回動されたとき、その外周面に当接してそれ以上回動しないようにしている。」と記載され、そして、図面の第2図には、ストッパ部20が可動リング11内側へ回動されたとき、切断刃19の刃先が、ロール状の障子紙Aの芯の外周面に位置していることが見てとれることからすれば、第2図は、障子紙Aの芯を切断せずに、障子紙のみを切断していることを示しているものであると見ることもできる。
以上の点に鑑みれば、引用発明において、ロール状の樹脂フイルムの芯を切断せずに、樹脂フイルムのみを切断するようにすることは、当業者が容易になし得た程度のことに過ぎない。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明、及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-17 
結審通知日 2007-12-18 
審決日 2008-01-07 
出願番号 特願2003-88390(P2003-88390)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B26D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀川 一郎  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 福島 和幸
鈴木 孝幸
発明の名称 ラップフィルム切断方法  
代理人 熊野 剛  
代理人 江原 省吾  
代理人 城村 邦彦  
代理人 田中 秀佳  
代理人 白石 吉之  
代理人 山根 広昭  

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