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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1173541
審判番号 不服2004-4957  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-11 
確定日 2008-02-21 
事件の表示 特願2000-294542「駐車違反車両検出記録方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月12日出願公開、特開2002-109146〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年9月27日の出願であって、平成15年6月5日付けの拒絶理由通知に対して同年8月11日付けで手続補正がなされたが、平成16年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年4月12日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
2-1.補正の内容
平成16年4月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。
「【請求項1】
車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取る読取装置と、位置情報を取得する位置情報取得装置と、巡回記録レコードを格納する巡回記録データベースと、印刷装置と、警察官識別符号を入力する入力装置とを有し、データ処理を行う携帯情報端末により、駐車違反車両を検出し記録する駐車違反車両検出記録方法であって、
前記携帯情報端末が有する読取装置により駐車禁止場所に停められた車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取り、前記携帯情報端末が有する位置情報取得装置により当該車両の位置情報を取得して、読み取った車両情報および取得した位置情報に日時情報と前記携帯情報端末が有する入力装置により入力された警察官識別符号を付加して巡回記録レコードを作成する第1のステップと、
前記携帯情報端末が有する巡回記録データベースをアクセスして、前記作成した巡回記録レコード中の車両情報と同じ車両情報を含む巡回記録レコードを過去に記録された巡回記録データベースから検索する第2のステップと、
前記携帯情報端末により該当する巡回記録レコードが検索されない場合に前記作成した巡回記録レコードを新たに巡回記録データベースに書き込む第3のステップと、
前記携帯情報端末により該当する巡回記録レコードが検索された場合には検索された巡回記録レコードの位置情報および日時情報と作成した巡回記録レコード中の位置情報および日時情報とを比較し、2つの位置情報が所定誤差範囲であり、かつ2つの日時情報が所定時間経過している場合に駐車違反と判定して、巡回記録レコードの車両情報、位置情報および日時情報を出力する第4のステップと
の処理を実行することを特徴とする駐車違反車両検出記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の駐車違反車両検出記録方法において、
第4のステップは、更に前記携帯情報端末が有する印刷装置により巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反標章に印刷出力することを特徴とする駐車違反車両検出記録方法。
【請求項3】
車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取る読取装置と、位置情報を取得する位置情報取得装置と、巡回記録レコードを格納する巡回記録データベースと、印刷装置と、警察官識別符号を入力する入力装置とを有し、データ処理を行う携帯情報端末により、駐車違反車両を検出し記録する駐車違反車両検出記録方法であって、
前携帯情報端末が有する記読取装置により駐車禁止場所に停められた車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取り、前記携帯情報端末が有する位置情報取得装置により当該車両の位置情報を取得して、読み取った車両情報および取得した位置情報に日時情報と前記携帯情報端末が有する入力装置により入力された警察官識別符号を付加して巡回記録レコードとして巡回記録データベースに書き込む第1のステップと、
前記携帯情報端末が有する印刷装置により巡回記録データベースに書き込んだ巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反警告標章に印刷出力する第2のステップと、
の処理を実行することを特徴とする駐車違反車両検出記録方法。
【請求項4】
車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取る読取装置と、
位置情報を取得する位置情報取得装置と、
巡回記録レコードを格納する巡回記録データベースと、
警察官識別符号を入力する入力装置と、
前記読取装置により駐車禁止場所に停められた車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取り、前記位置情報取得装置により当該車両の位置情報を取得して、読み取った車両情報および位置情報に日時情報および前記入力装置により入力された警察官識別符号を付加して巡回記録レコードを作成し、前記巡回記録データベースに巡回記録レコードを記録するレコード記録手段と、
巡回記録データベースに格納した巡回記録レコード中の車両情報と同じ車両情報を検索する検索手段と、
前記検索手段により検索した巡回記録レコードの位置情報および日時情報と作成した巡回記録レコード中の位置情報および日時情報とを比較し、2つの位置情報が所定誤差範囲であり、かつ2つの日時情報が所定時間経過している場合に駐車違反と判定する判定手段と、
判定手段により駐車違反と判定された場合に巡回記録レコードを出力する出力手段
を備えることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯情報端末において、
前記出力手段は印刷装置を含み、巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反標章に印刷出力することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項6】
請求項4に記載の携帯情報端末において、
前記出力手段は印刷装置を含み、判定手段により駐車違反と判定されない場合には、巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反警告標章に印刷出力することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項7】
請求項4に記載の携帯情報端末において、更に、
警察センタとの間で巡回記録レコードを送受信する通信装置を備え、
通信装置を介して巡回記録レコードを警察センタの全巡回記録データベースに格納することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項8】
請求項4に記載の携帯情報端末において、更に、
警察センタとの間で巡回記録レコードを送受信する通信装置を備え、
巡回地区の巡回記録レコードを前記通信装置を介して警察センタの全巡回記録データベースから受信して巡回記録データベースに格納する
ことを特徴とする携帯情報端末。」

2-2.本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正の前の特許請求の範囲は、平成15年8月11日付け手続補正書によって補正された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取る読取装置と、位置情報を取得する位置情報取得装置と、巡回記録レコードを格納する巡回記録データベースと、印刷装置と、警察官識別符号を入力する入力装置と有し、データ処理を行う携帯情報端末により、駐車違反車両を検出し記録する駐車違反車両検出記録方法であって、
前記読取装置により駐車禁止場所に停められた車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取り、前記位置情報取得装置により当該車両の位置情報を取得して、読み取った車両情報および取得した位置情報に日時情報と前記入力装置により入力された警察官識別符号を付加して巡回記録レコードを作成する第1のステップと、
前記巡回記録データベースをアクセスして、前記作成した巡回記録レコード中の車両情報と同じ車両情報を含む巡回記録レコードを過去に記録された巡回記録データベースから検索する第2のステップと、
前記携帯情報端末が、該当する巡回記録レコードが検索されない場合に前記作成した巡回記録レコードを新たに巡回記録データベースに書き込む第3のステップと、
該当する巡回記録レコードが検索された場合には検索された巡回記録レコードの位置情報および日時情報と作成した巡回記録レコード中の位置情報および日時情報とを比較し、2つの位置情報が所定誤差範囲であり、かつ2つの日時情報が所定時間経過している場合に駐車違反と判定して、巡回記録レコードの車両情報、位置情報および日時情報を出力する第4のステップと
を前記携帯情報端末が実行することを特徴とする駐車違反車両検出記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の駐車違反車両検出記録方法において、
第4のステップは、巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反標章に印刷出力することを特徴とする駐車違反車両検出記録方法。
【請求項3】
車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取る読取装置と、位置情報を取得する位置情報取得装置と、巡回記録レコードを格納する巡回記録データベースと、印刷装置と、警察官識別符号を入力する入力装置を有し、データ処理を行う携帯情報端末により、駐車違反車両を検出し記録する駐車違反車両検出記録方法であって、
前記読取装置により駐車禁止場所に停められた車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取り、前記位置情報取得装置により当該車両の位置情報を取得して、読み取った車両情報および取得した位置情報に日時情報と前記入力装置により入力された警察官識別符号を付加して巡回記録レコードとして巡回記録データベースに書き込む第1のステップと、
巡回記録データベースに書き込んだ巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反警告標章に印刷出力する第2のステップと、
を前記携帯情報端末が実行することを特徴とする駐車違反車両検出記録方法。
【請求項4】
車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取る読取装置と、
位置情報を取得する位置情報取得装置と、
巡回記録レコードを格納する巡回記録データベースと、
警察官識別符号を入力する入力装置と、
前記読取装置により駐車禁止場所に停められた車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取り、前記位置情報取得装置により当該車両の位置情報を取得して、読み取った車両情報および位置情報に日時情報および前記入力装置により入力された警察官識別符号を付加して巡回記録レコードを作成し、前記巡回記録データベースに巡回記録レコードを記録するレコード記録手段と、
巡回記録データベースに格納した巡回記録レコード中の車両情報と同じ車両情報を検索する検索手段と、
前記検索手段により検索した巡回記録レコードの位置情報および日時情報と作成した巡回記録レコード中の位置情報および日時情報とを比較し、2つの位置情報が所定誤差範囲であり、かつ2つの日時情報が所定時間経過している場合に駐車違反と判定する判定手段と、
判定手段により駐車違反と判定された場合に巡回記録レコードを出力する出力手段
を備えることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯情報端末において、
前記出力手段は印刷装置を含み、巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反標章に印刷出力することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項6】
請求項4に記載の携帯情報端末において、
前記出力手段は印刷装置を含み、判定手段により駐車違反と判定されない場合には、巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反警告標章に印刷出力することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項7】
請求項4に記載の携帯情報端末において、更に、
警察センタとの間で巡回記録レコードを送受信する通信装置を備え、
通信装置を介して巡回記録レコードを警察センタの全巡回記録データベースに格納することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項8】
請求項4に記載の携帯情報端末において、更に、
警察センタとの間で巡回記録レコードを送受信する通信装置を備え、
巡回地区の巡回記録レコードを前記通信装置を介して警察センタの全巡回記録データベースから受信して巡回記録データベースに格納する
ことを特徴とする携帯情報端末。」

2-3.本件補正の適否について
上記補正は、補正前の請求項1ないし3について、各ステップの主体である読取装置、位置情報取得装置及び入力装置や、巡回記録データベースが、「携帯情報端末が有する」ものであることや、「前記携帯情報端末」や「前記携帯情報端末が有する印刷装置」「により」該ステップの処理が行われることを特定したといえるものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2-4.独立特許要件について
2-4-1.本願補正発明について
本願補正発明は、平成16年4月12日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載されたとおりのものである。ただし、前記手続補正書の請求項3に記載された「前携帯情報端末が有する記読取装置により」は、「前記携帯情報端末が有する読取装置により」の誤記と認められるので、本願補正発明を、以下のとおり特定した。

「車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取る読取装置と、位置情報を取得する位置情報取得装置と、巡回記録レコードを格納する巡回記録データベースと、印刷装置と、警察官識別符号を入力する入力装置とを有し、データ処理を行う携帯情報端末により、駐車違反車両を検出し記録する駐車違反車両検出記録方法であって、
前記携帯情報端末が有する読取装置により駐車禁止場所に停められた車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取り、前記携帯情報端末が有する位置情報取得装置により当該車両の位置情報を取得して、読み取った車両情報および取得した位置情報に日時情報と前記携帯情報端末が有する入力装置により入力された警察官識別符号を付加して巡回記録レコードとして巡回記録データベースに書き込む第1のステップと、
前記携帯情報端末が有する印刷装置により巡回記録データベースに書き込んだ巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反警告標章に印刷出力する第2のステップと、
の処理を実行することを特徴とする駐車違反車両検出記録方法。」

2-4-2.引用文献に記載された事項について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-97695号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の(a)ないし(c)の事項が記載されている。
(a)「【請求項1】 線状の光電気変換器に画像を結像するラインセンサカメラと、位置の情報を電気信号として発生する位置情報発生手段と、現在の時刻を電気信号として発生する時刻情報発生手段と、前記画像、前記位置、および前記時刻に関する三つの情報を取込み対応させてメモリ手段に記憶する制御回路とが一つの自動車に搭載されたことを特徴とする駐車車両の検出装置。
【請求項2】 前記制御回路は、対応させてメモリ手段に記憶した前記三つの情報を操作にしたがって読出す読出手段を含み、この読出手段の出力情報を写真および文字により一枚の紙面に印刷する印刷手段を備えた請求項1記載の駐車車両の検出装置。」(請求項1,2)
(b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】違法駐車がきわめて多数であるときには、警察官が手書きによりあるいは警察官の操作により記録を作成するのでは対応することができない。写真を利用する場合にも、その現像焼付の操作を伴う場合には、即時の取締りには必ずしも有効ではない。また、路上に出て行う違反車の特定は走行する車両に接近しての作業となるので危険な作業である。
【0005】本発明はこのような背景に行われたもので、駐車違反車両のナンバープレートを含む画像、位置情報および時刻情報を対応させて画像情報として記録することができる検出装置を提供することを目的とする。本発明は、安全な状態で、迅速かつ適確に駐車違反車両を特定することができる検出装置を提供することを目的とする。本発明は、駐車違反であることを示すステッカにその事実を示すすべての情報を現場で印刷し貼り付けることができる装置を提供することを目的とする。」(第4,5段落)
(c)「【0026】次に、このように構成された本発明第一実施例の動作について説明する。図3は本発明第一実施例の制御回路による撮影モードにおける動作の流れを示すフローチャートである。
【0027】まず、違法駐車を検出しようとする場所が選択され、その場所における検出起点が設定される。この検出起点には、例えば、図4に示すように、交差点などに設定された一時停止のための白線が利用される。
【0028】この設定された検出起点上に検出車両が移動し、操作入力装置14が撮影モード設定の操作入力を受けると、位置情報発生手段5が制御回路9に撮影モード設定信号を送出するとともに、地図情報18を取込み特定された場所の地図を表示手段19に表示する。
【0029】この地図上に検出起点がマークされ、操作入力装置14から移動距離の設定が入力されると、位置情報発生手段5が距離計17からの出力による移動距離の原点設定を行う。続いて、操作入力装置14から時刻設定の操作入力を受けると、時刻情報発生手段6がスタート時刻の設定を行う。
【0030】制御回路9は、位置情報発生手段5から撮影モード設定信号を受けると、第一の駆動手段15および第二の駆動手段16に駆動信号を送出し、第一のラインセンサカメラ3および第二のラインセンサカメラ4を駆動する。
【0031】検出車両が駐車車両12に沿って20?30km/hの速度で移動するにともなって、第一のラインセンサカメラ3および第二のラインセンサカメラ4はこの移動速度に対応して撮影した画像を第一の光電気変換器1および第二の光電気変換器2に結像する。
【0032】制御回路9は、まず第二の光電気変換器2の出力を取込み、この影像信号が駐車車両12の後部から前部まで撮影されたものであるか否かを判定し、そのすべてが撮影されたものであれば、その画像を第二のメモリ手段8に記憶する。
【0033】これとは別に、第一の光電気変換器1の出力を取込み、ナンバープレート13の始りが撮影されているか否かを判定し、始りであればナンバープレート13が終るまでの画像信号を続けて取込み、ナンバープレート13の終りになったときにスイープを停止する。取込んだ画像は斜めから撮影したものであるがラインセンサカメラを用いているので、読取りクロック信号を調節することにより正面から見た画像に復元できる。その画像からナンバープレート13の内容を解析し、その内容を第一のメモリ手段7に記憶する。
【0034】違法駐車の特定は同一地点を所定時間をおいて2回撮影することによって行われるので、その時間が経過した後に前述と同様の撮影操作が行われ、この2回の撮影の結果いずれもが同一の駐車車両であるときに違法駐車を示すステッカを印刷する。
【0035】このステッカの印刷は操作入力装置14に印刷モード設定の操作入力を受けたときに行われる。制御回路9は、この印刷モード設定信号を受けると、読出手段10が第一のメモリ手段7に記憶されたナンバープレート13の内容を示す画像と、第二のメモリ手段8に記憶された違法駐車状態を示す駐車車両全体の画像とを読出し、印刷手段11に送出するとともに、位置情報発生手段5から取込んだ位置情報、および時刻情報発生手段6から取込んだ時刻情報を印刷手段11に送出する。印刷手段11はこれらの情報をステッカに印刷する。図5はその一例を示したもので、日時、場所、ナンバープレート13の内容、ナンバープレート13の写真、駐車車両全体の写真が印刷され、告知事項欄には手書きにより告知内容が記入される。
【0036】このように本発明による装置は、検出車両を駐車車両12に沿って2回移動させ、操作入力を行うだけで証拠写真が印刷されたステッカをその現場で作成することができる。」(第26?36段落)

ここで、前記摘記事項(a)には、ラインセンサカメラと、位置の情報を発生する位置情報発生手段と、情報を記憶するメモリ手段と、印刷手段を有する検出装置が記載されており、また、前記摘記事項(c)によれば、前記検出装置は、操作入力装置も有しており、情報処理を行うものであるということができる。
また、前記摘記事項(b)及び(c)によれば、前記ラインセンサカメラは、駐車車両に取り付けられたナンバープレートからナンバープレートの画像を撮影するものであるということができる。
また、前記摘記事項(a)ないし(c)によれば、前記位置情報発生手段による当該車両の位置の情報を読み込み、撮影したナンバープレートの画像、位置、及び時刻情報それぞれを対応させて前記メモリ手段に記憶しているということができる。
また、前記摘記事項(a)には、メモリ手段から読み出した三つの情報を印刷することが記載されており、そして、前記摘記事項(c)によれば、日時、場所、ナンバープレートの内容等をステッカに印刷していることからみて、前記時刻情報とは日時情報であって、前記印刷手段により、メモリ手段に記憶した三つの情報のナンバープレートの画像及び日時情報を、印刷しているということができる。
そして、前記摘記事項(b)及び(c)によれば、前記摘記事項(c)に記載された動作とは、前記検出装置により駐車違反車両を特定し記録する方法を記載したものであるということができる。

してみれば、引用例1には、
「駐車車両に取り付けられたナンバープレートからナンバープレートの画像を撮影するラインセンサカメラと、位置の情報を発生する位置情報発生手段と、情報を記憶するメモリ手段と、印刷手段と、操作入力装置とを有し、情報処理を行う検出装置により、駐車違反車両を特定し記録する方法であって、
前記検出装置が有するラインセンサカメラにより路上に違法駐車された車両に取り付けられたナンバープレートからナンバープレートの画像を撮影し、前記検出装置が有する位置情報発生手段による当該車両の位置の情報を読み込み、撮影したナンバープレートの画像、位置、及び日時情報それぞれを対応させてメモリ手段に記憶する第1のステップと、
前記検出装置が有する印刷装置によりメモリ手段に記憶した三つの情報のナンバープレートの画像及び日時情報を駐車違反であることを示すステッカに印刷する第2のステップと、
の処理を実行することを特徴とする方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-222794号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の(d)及び(e)の事項が記載されている。
(d)「【0013】図2を参照して更に詳細に説明する。車両側通信装置20(m)は、当該通信装置20(m)が装備されている車両2(m)の識別情報21を記憶した識別情報記憶部22と、通過したゲート10(n)に装備されているゲート側通信装置30(n)から送信された通行管理情報S1を受信する受信部23と、当該受信部23で受信した情報を記憶可能な受信情報記憶部24と、ゲート側通信装置30(n)からの応答要求信号Rを受信すると、識別情報21および受信情報記憶部24に保持されている情報を、当該ゲート側通信装置30に送信する送信部25とを備えている。」(第13段落)
(e)「【0024】なお、上述の説明においては、車両側通信装置20の送信および受信機構としてどのようなものを使用するのかについては言及しなかった。このような機構としては、例えば、近年普及が著しいPHS等の通信機能をそのまま採用することができる。
【0025】このような通信機能の代わり、磁気式等の非接触型センサを応用した検出機構を採用して、ゲートを通過する車両を特定するようにしてもよい。」(第24,25段落)

(3)原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-52198号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の(f)の事項が記載されている。
(f)「【0015】警察官は本携帯用端末装置を持って担当区域の巡回取締りを行う。ある所で駐車違反の車を見つけた時、携帯用端末装置のキーボード3の電源キーYを押す。箱体1の天面にある液晶表示パネル2には図13に示した様な表示が現れる。画面には「違法駐車標章管理」と「反則切符管理」を選択する画面が表示される。(以下略)」(第15段落)

(4)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-4484号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、以下の(g)及び(h)の事項が記載されている。
(g)「【0002】
【従来の技術】従来、警察官の活動を補佐するものとしては、携帯型無線通話装置や携帯用のコンピュータが用いられている。(中略)
【0003】携帯型コンピュータは、駐車違反者の摘発や反則切符の発行に用いられるものである。(以下略)」(第2,3段落)
(h)「【0088】S1920の駐車指導処理が起動されると、図45に示すように、まず駐車指導画面表示が行われる(S2000)。駐車指導画面631は、図46に示すように、駐車指導表示633と、運転者の氏名表示635と、警告書面の印刷表示641と、警告内容の記憶表示643と、警告内容の送信表示645と、運転者の氏名表示欄637と、不明表示639と、中止表示647とを備えている。
【0089】(中略)また、警告書面の印刷表示641が選択されていれば、次に警告書面の印刷を実行する(S2020)。警告内容の記憶表示643が選択された場合には、次に警告内容の記憶処理を行い(S2030)、警告内容の送信表示645が選択された場合には、警告内容の送信処理を行う(S2040)。S2020の警告書面の印刷処理では、車両ナンバ入力メモリ127Tの内容と、氏名入力メモリ127Uの内容とに基づいて、図示は省略するが車両名、車両ナンバ、所有者名、駐車違反の時と所のデータ内容と、駐車違反の警告記事とを印刷する。印刷は、プリンタユニット5によって実行する。車両名、所有者名は、車両ナンバに基づいて、ホストシステム458から入力する。駐車違反の位置は、GPSユニット3からの位置座標データNEに基づいて、ナビゲーションソフトが算出した地図データを印刷する。(以下略)」(第88,89段落)

2-4-3.対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
すると、引用発明の「ナンバープレートの画像」は、本願補正発明の「車両情報」に包摂されるから、引用発明の「駐車車両に取り付けられたナンバープレートからナンバープレートの画像を撮影するラインセンサカメラ」と、本願補正発明の「車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取る読取装置」とは、以下の相違点があるものの、「車両から車両情報を読み取る読取装置」である点において共通している。
また、引用発明の「位置の情報を発生する位置情報発生手段」は、本願補正発明の「位置情報を取得する位置情報取得装置」に相当するといえる。
また、引用発明の「メモリ手段」は、駐車違反車両に関する情報を格納して適宜読み出し可能に管理するためのものであるから、本願補正発明の「巡回記録データベース」に相当し、引用発明の「三つの情報」は、それぞれ対応付けられて記憶されている情報であるから、本願補正発明の「巡回記録レコード」に相当するといえる。
また、引用発明の「印刷手段」及び「操作入力装置」と、本願補正発明の「印刷装置」及び「警察官識別符号を入力する入力装置」とは、以下の相違点があるものの、「印刷装置」及び「入力装置」である点においてそれぞれ共通している。
また、引用発明の「情報処理を行う検出装置」と、本願補正発明の「データ処理を行う携帯情報端末」とは、以下の相違点があるものの、「データ処理を行うデータ処理装置」である点において共通している。
そして、引用発明の「方法」は、駐車違反車両を特定し記録するための手順であるのだから、以下の相違点があるものの、本願補正発明と同様に、「駐車違反車両検出記録方法」を発明の対象としているということができる。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「車両から車両情報を読み取る読取装置と、位置情報を取得する位置情報取得装置と、巡回記録レコードを格納する巡回記録データベースと、印刷装置と、入力装置とを有し、データ処理を行うデータ処理装置により、駐車違反車両を検出し記録する駐車違反車両検出記録方法であって、
前記データ処理装置が有する読取装置により駐車禁止場所に停められた車両から車両情報を読み取り、前記データ処理装置が有する位置情報取得装置により当該車両の位置情報を取得して、読み取った車両情報および取得した位置情報に日時情報を付加して巡回記録レコードとして巡回記録データベースに書き込む第1のステップと、
前記データ処理装置が有する印刷装置により巡回記録データベースに書き込んだ巡回記録レコードの車両情報および日時情報を印刷出力する第2のステップと、
の処理を実行することを特徴とする駐車違反車両検出記録方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明では、車両情報を、車両「に貼り付けられた電子チップ」から読み取っているのに対して、引用発明では、車両「に取り付けられたナンバープレート」から読み取っているが、車両「に貼り付けられた電子チップ」から読み取っているものではない点。

[相違点2]本願補正発明では、入力装置は「警察官識別符号を入力する」ものであって、入力装置「により入力された警察官識別符号」も巡回記録レコードに付加しているのに対して、引用発明では、そのようになっていない点。

[相違点3]前記データ処理装置が、本願補正発明では「携帯情報端末」であるのに対して、引用発明では「検出装置」であるが、前記「携帯情報端末」ではない点。

[相違点4]第2のステップにおいて、本願補正発明では、「駐車違反警告標章に」印刷出力しているのに対して、引用発明では、「駐車違反であることを示すステッカ」に印刷出力しているが、前記「駐車違反警告標章に」印刷出力しているのではない点。

2-4-4.判断
[相違点1について]
例えば、引用例2の前記摘記事項(d)及び(e)、特開平6-180775号公報第19?21段落及び特開平4-920号公報第1頁右下欄第13行?第2頁左上欄第3行に記載されているように、車両に付された電子部品から非接触で前記車両に係る情報を読み出す技術は、当業者に周知の技術にすぎないものである。
したがって、引用発明において、車両情報を「車両に貼り付けられた電子チップ」から読み取るような構成にすることは、当業者にとって格別の困難性を伴うことなくなし得ることにすぎない。
そうすると、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものというべきである。

[相違点2について]
一般に、責任の所在の特定等の必要に応じて、公務として作成する書面に作成者等を記すことは、通常の公文書作成業務では当然に行われており、公務に携わる警察官によって作成された記録においても、その必要に応じて、前記記録を作成した警察官を識別するための情報を付記することは自明である。
したがって、引用発明において、入力装置から「警察官識別符号」を「入力」させ、前記警察官識別符号を巡回記録レコードに「付加」するような構成にすることは、当業者にとって格別の困難性を伴うことなくなし得ることにすぎない。
そうすると、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものというべきである。

[相違点3について]
例えば、引用例3の前記摘記事項(f)、引用例4の前記摘記事項(g)及び特開平6-180775号公報第31段落に記載されているように、警察官が持ち運び可能な携帯型の情報処理端末を利用して、駐車違反対策等の公務を遂行する技術は、当業者に周知の技術にすぎないものである。
したがって、引用発明において、「携帯情報端末」により各処理を実行するような構成にすることは、当業者にとって格別の困難性を伴うことなくなし得ることにすぎない。
そうすると、相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものというべきである。

[相違点4について]
引用例4の前記摘記事項(h)には、駐車車両に対する警告書面を印刷する技術が記載されている。
したがって、引用発明において、車両情報および日時情報を「駐車違反警告標章」に印刷出力する構成にすることは、当業者にとって格別の困難性を伴うことなくなし得ることにすぎない。
そうすると、相違点4に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び引用例4に記載された技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものというべきである。

2-4-5.独立特許要件についてのまとめ
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明並びに引用例4に記載された技術及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-5.補正却下の決定についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年4月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年8月11日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取る読取装置と、位置情報を取得する位置情報取得装置と、巡回記録レコードを格納する巡回記録データベースと、印刷装置と、警察官識別符号を入力する入力装置を有し、データ処理を行う携帯情報端末により、駐車違反車両を検出し記録する駐車違反車両検出記録方法であって、
前記読取装置により駐車禁止場所に停められた車両に貼り付けられた電子チップから車両情報を読み取り、前記位置情報取得装置により当該車両の位置情報を取得して、読み取った車両情報および取得した位置情報に日時情報と前記入力装置により入力された警察官識別符号を付加して巡回記録レコードとして巡回記録データベースに書き込む第1のステップと、
巡回記録データベースに書き込んだ巡回記録レコードの車両情報および日時情報を駐車違反警告標章に印刷出力する第2のステップと、
を前記携帯情報端末が実行することを特徴とする駐車違反車両検出記録方法。」

4.引用文献に記載された事項について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献に記載された事項は、前記「2-4-2.」に摘記したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、各ステップの主体である読取装置、位置情報取得装置及び入力装置が「携帯情報端末が有する」ものであることや、「前記携帯情報端末が有する印刷装置により」第2のステップの処理が行われることを特定する上述の限定を省略したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2-4-5.」に記載したとおり、引用例1に記載された発明並びに引用例4に記載された技術及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明並びに引用例4に記載された技術及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-20 
結審通知日 2007-12-25 
審決日 2008-01-07 
出願番号 特願2000-294542(P2000-294542)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 信行  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 久保田 健
坂庭 剛史
発明の名称 駐車違反車両検出記録方法  
代理人 南野 貞男  

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