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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
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管理番号 | 1173558 |
審判番号 | 不服2005-3083 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-22 |
確定日 | 2008-02-21 |
事件の表示 | 特願2000- 16716「メモリカードおよびそのデータ書き込み・読み出しシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 3日出願公開、特開2001-209765〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件審判請求に係る特許出願は、平成12年1月26日の出願であって、平成16年3月23日付けで拒絶の理由が通知され、それに対して同年5月31日付けで手続補正がなされたものの、平成17年1月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年2月22日に審判請求がなされるとともに、同年3月15日付け及び同年3月22日付けで手続補正がなされたものである。 II.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年3月15日付けの手続補正及び平成17年3月22日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.平成17年3月15日付けの手続補正について (1)平成17年3月15日付けの手続補正(以下、「本件補正1」という。) 本件補正1により、特許請求の範囲の請求項1は、 「不揮発性メモリと、該不揮発性メモリへのデータの書き込みおよび読み出しを制御する制御部とを有したメモリカードであって、外部からの電力供給用発光ダイオードの光を受けて光起電力動作を行う起電力用発光ダイオードと、該起電力用発光ダイオードの起電力を電源電力として上記不揮発性メモリおよび制御部に供給する電力供給路と、光を利用して外部との信号の送信と受信を兼用して行う通信用発光ダイオードと、該通信用発光ダイオードと上記制御部を接続して上記送受信の信号を通す信号路とを有しており、前記起電力用発光ダイオードと通信用発光ダイオードとは並設されてユニット化されていることを特徴とするメモリカード。」 と補正された。 (2)補正内容の検討 本件補正1は、平成16年5月31日付けの手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)に記載した発明を特定するために必要な事項である「外部からの光」について「電力供給用発光ダイオードの」という限定を付加し、同じく「該起電力用発光ダイオードの起電力を上記不揮発性メモリおよび制御部に供給する」について「電源電力として」という限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正1による補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定された要件を満たすか)について以下に検討する。 (3)引用例に記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-242686号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (A)「(従来の技術) ICカードは、メモリー,cpuなどの半導体機能素子と電源を内蔵したカードであるため、情報の出し入れを行なう際に、外部との通信が必要になる。 従来のICカードの一例を第3図に示す。この図において、1はICカード本体、2はメモリー、3はcpu、4はインターフェイスであり、メモリー2とインターフェイス4はcpu3の制御下で動作する。5は情報用接点、6は電源用接点であり、共に露出する構造になっている。また、7は電池であり、その出力は電源8として各機能素子に供給される。このICカードと外部との情報のやりとりをする際は、情報用接点5と外部機器(ICカードリーダ,カードライタ)との接触により電気信号のままの情報通信を行なう。また、同時に電源用接点6を用いて外部から電源電力の供給を行なうようにする。 第4図は従来のICカードの他の例であり、この場合は、コイルによる電磁的な通信を行なうようにしたもので、第3図に示した例の情報用接点5,電源用接点6の代りに、情報用誘導コイル11,電源用誘導コイル12,整流回路13が用いられている。他の部分は第3図に示した部分と同様である。情報の通信は、外部機器に設けられたコイルと情報用誘導コイル11との間の電磁誘導を用いて非接触で行なわれる。なお、外部機器よりの給電も、電源用誘導コイル12と外部機器のコイルとの電磁結合により行なうことができる。」(1頁左下欄14行?2頁左上欄3行) (B)「(問題点を解決するための手段) そこで本発明は、発光素子により外部機器への情報通信を光で行なわせ、受光素子により外部機器からの情報通信を光で受けるようにしたものである。 (作 用) 発光素子と受光素子によって、外部機器との間を光により非接触で情報通信が行なえる。また、半導体で構成できるので、カードを小型にできる。 (実施例) 第1図は本発明の一実施例を示し、第3図および第4図に示した従来のものと同様な構成部分は同符号で示す。21は発光素子であって、ドライバ22によってドライブされる。23は受光素子であり、その出力はレシーバ24を経てインターフェイス4に入力されると同時に電源8としても用いられる。 次に、動作について説明する。このICカードよりの情報の読み出しは、発光素子21をドライバ22で駆動し、外部機器側では受光素子で受ける。外部機器からの情報入力は、変調された光入力を受光素子23で受け、レシーバ24により増幅,識別される。発光素子21にLEDを用いたとすると、駆動電流が数mAで充分な輝度が得られる。そこで、外部機器からの光入力を数10mW程度入力すれば、受光索子23を例えばフォトダイオードとしたときの量子効果を0.5としても、発光素子21の駆動電力を充分にまかなう電力を給電することができる。給電電圧が不足の場合は、受光素子23をシリーズに複数個接続すればよい。このように、光の形で外部機器から給電を受けながら、内蔵の電池7を消耗させることなく光による通信が行なえる。光通信であるため、情報伝達速度は素子の許す限り高くとることが可能となり、大量の情報伝送が可能となる。」(2頁左上欄17行?2頁左下欄10行) (C)「上記実施例では、情報通信用の受光素子と受電用受光素子とを共用させるようにしたが、第2図に示す実施例は、受光素子23を情報通信専用とし、電源電力受電用の受光素子30を別に設けたものである。この受光素子30は、外部機器より定常光を入力することにより直流電源として作用する。」(2頁左下欄11行?同欄16行) 上記(C)からみて、引用文献1の第2図に示す実施例は、受光素子23を情報通信用とし、受光素子30を電源電力受電用として別に設けたICカードである。 そして、第2図に示されるように、このICカードにおいても従来のものと同様な構成部分である電源8として各機能素子に供給される出力を行う電池7があって、さらに(B)の「光の形で外部機器から給電を受けながら、内蔵の電池7を消耗させることなく光による通信が行える。」との記載からすれば、電源電力受電用のフォトダイオード等の受光素子30の出力が電池7とともに電源とされ、明示されていない電源供給路を通じて半導体機能素子であるメモリーとcpu等に電源電力として供給されているものである。 さらに、ICカードリーダやカードライタとの情報の出し入れに伴ってcpuに制御されてメモリーへのデータの書き込みおよび読み出しが行われるものである。 してみると、上記(A)乃至(C)や図からみて、引用例には、 メモリーと、メモリーへのデータの書き込みおよび読み出しを制御するcpuとを有したICカードであって、外部機器から定常光を入力することにより直流電源として作用する電源電力受電用のフォトダイオードと、電源電力受電用のフォトダイオードの出力と電池の出力とを電源としてメモリーとcpu等に供給する電源供給路と、外部機器との間で光による情報通信を行う、LED及び情報通信用のフォトダイオードと、LED及び情報通信用のフォトダイオードと前記cpuを接続して通信された情報が入力されて前記cpuにより制御されるインターフェイスとを有する、ICカード の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (4)本件補正発明1と引用発明との対比 本件補正発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「ICカード」はメモリを備えたカードであるから、本件補正発明1の「メモリカード」に相当する。 そして、引用発明の「cpu」は、カード内のメモリへのデータの書き込みおよび読み出しを制御するものであり、本件補正発明1の「制御部」に相当し、引用発明の「メモリー」は、不揮発性でないものの、カード内のメモリであり、本件補正発明1の「不揮発性メモリ」に対応している。 引用発明の「電源電力受電用のフォトダイオード」は、光を入力して直流電源として作用するフォトダイオードであり、「発光」するか否かが明示されておらず、電力供給用発光ダイオードの光を受けるか否かが明らかでないものの、外部からの光を受けて光起電力動作を行う起電力用のダイオードである点で、本件補正発明1の「外部からの電力供給用発光ダイオードの光を受けて光起電力動作を行う起電力用発光ダイオード」に対応する。 そして、引用発明の「電源供給路」は、その起電力用のダイオードからメモリと制御部に電源電力を供給するものであり、本件補正発明1の「電力供給路」に相当する。 引用発明の「外部機器との間で光による情報通信を行う、LED及び情報通信用のフォトダイオード」は、信号の送信と受信を兼用して行うものではなく、またフォトダイオードが発光するか否かが明示されていないものの、光を利用して外部との信号の送信と受信を行うダイオードである点で、本件補正発明1の「光を利用して外部との信号の送信と受信を兼用して行う通信用発光ダイオード」に対応する。 そして、引用発明の「インターフェイス」は、制御部によってインターフェイスとして制御されて制御部と上記の信号の送信と受信を行うダイオードとをインターフェイスとして接続するので外部装置との情報通信の信号を通すものであって、本件補正発明1の「信号路」に相当する。 してみると、本件補正発明1と引用発明とは、 (一致点) メモリと、メモリへのデータの書き込みおよび読み出しを制御する制御部とを有したメモリカードであって、外部からの光を受けて光起電力動作を行う起電力用のダイオードと、該起電力用のダイオードの起電力を電源電力として上記メモリおよび制御部に供給する電力供給路と、光を利用して外部との信号の送信と受信を行う通信用のダイオードと、該通信用のダイオードと上記制御部を接続して上記送受信の信号を通す信号路とを有する、メモリカード である点で一致する。 そして、以下の5点で相違する。 (相違点) (あ)本件補正発明1のメモリは「不揮発性メモリ」であるのに対し、引用発明のメモリーは不揮発性メモリではない点。 (い)起電力用のダイオードが、本願発明では「起電力用発光ダイオード」であるのに対し、引用発明ではフォトダイオードであって「起電力用発光ダイオード」ではない点。 (う)光を利用して外部との信号の送信と受信を行う通信用のダイオードが、本件補正発明1では「送信と受信を兼用して行う」通信用のダイオードであるのに対し、引用発明では、個別に送信と受信を行うLED及び情報通信用のフォトダイオードである点。 (え)本件補正発明1では「起電力用発光ダイオードと通信用発光ダイオードとは並設されてユニット化されている」のに対し、引用発明では電源電力受電用のフォトダイオードとLED及び情報通信用のフォトダイオードとは並設されてユニット化されていない点。 (お)本件補正発明1の外部からの光は「電力供給用発光ダイオードの」光であるのに対し、引用発明の外部からの光は「電力供給用発光ダイオードの」光であるか否か明らかでない点。 (5)相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点(あ)について) ICカードのメモリをデータの書き込みおよび読み出し可能な不揮発性メモリによって構成し内部電源電力としてのバッテリーや電池を持たないように構成することは、特開平4-112288号公報の「メモリ4としてメモリ容量が中容量向きの不揮発性メモリを用いることにより、バックアップ電源が不要となることから、ICカード1の寿命は半永久的となる。」(4頁右下欄9?12行)の記載や、特開平8-329208号公報の「従来のICカードは、図2に示すようにメモリ素子(IC)1がカードの中に組み込まれており、・・・・メモリ素子1にフラッシュメモリ又はEEPROMを使用するときはバッテリバックアップは不要である。」(【0003】)の記載にあるごとく、周知技術である。 してみると、引用発明のICカードにおいて、メモリーをバックアップ用電池が不要の不揮発性メモリとすることは、当業者が容易になし得ることであり、相違点(あ)は格別のものでない。 (相違点(い)について) 一般に「フォトダイオード」は、PN接合の光電変換作用による光電変換素子であって、受光素子であるフォトダイオードもPN接合の光電変換作用による光電変換素子である以上は電圧を印加するとその光電変換作用によって発光素子として機能するものであり(特開平5-235410号公報の【0008】?【0010】を参照。)、また、発光ダイオードが光起電力効果を有することは、特開平3-76167号公報の2頁右下欄17行?3頁左上欄12行の記載、特開平5-299773号公報の【0013】の記載、特開平9-64411号公報の【0008】【0021】の記載にもあるごとく、当業者にとって周知である。 してみると、引用発明の起電力用のダイオードとして「起電力用発光ダイオード」を採用することは、格別のことではない。 (相違点(う)について) 送受信を兼用する通信用ダイオードは、上記の特開平3-76167号公報の「各光通信装置15,15’は、投光素子と受光素子とに兼用して用いた1個の発光ダイオード16,16’に対し、・・・」(第4頁左上欄4?9行)の記載にあるごとく当業者にとって周知技術であり、さらに、ICカードにおいて送受信を兼用する通信用ダイオードを用いることは、実願昭60-87092号(実開昭61-201868号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの「第1図Aは上記高密度LED形成ウエハー13から成る超微粒発光ダイオード群を入力及び出力素子(受光及び発光素子13a)として兼用した実施例を示す。」(第6頁5?8行)の記載にあるごとく当業者にとって周知技術である。 してみると、引用発明のICカードに使用する通信用ダイオードとして、送信と受信を兼用して行う通信用発光ダイオードを用いることは、当業者が容易になし得ることであり、相違点(う)は格別のものでない。 (相違点(え)について) 複数の受発光素子を並設して一体化することは、特開平6-85327号公報の「各受発光素子の実装を高精度に位置決めできるとともに、実装工程を簡略化できる」(段落【0006】)、「この結果、図3に示すように、2個の受発光素子3を有するSMD光半導体装置が得られる。」(段落【0012】)、「本実施例においては、受発光素子を2個有する場合をとりあげたが、2個以上の場合についても、・・・容易に実現できる。また、連結一体化する光半導体装置に搭載する素子は同一素子に限るものではなく、異なる種類の素子でもよい。」(段落【0014】)の記載と第3図の図示にあるごとく、周知技術であり、さらに、ICカードの外部電力供給用素子と通信用素子とを一体化することも、特開平3-169691号公報の「受光部49、発光部51、および電源部(隠れて見えない)を一体的に形成するとともに・・・」(第4頁右下欄6?12行)の記載と第1図及び第6図の図示や、実願昭59-155272号(実開昭61-70265号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの「太陽電池7の上にIC3とともに受光素子5および発光素子6をマウントすることができ、こうすれば配線が不要となる。」(第9頁1?4行)の記載と第3図及び第4図の図示にあるごとく、周知技術である。 してみると、引用発明において、これらの周知技術に倣って外部電力供給用素子である電源電力受電用フォトダイオードと情報通信用のフォトダイオードとを一体化して、起電力用発光ダイオードと通信用発光ダイオードとが並設されてユニット化されているものとして構成することは、当業者が容易になし得ることであり、相違点(え)は格別のものでない。 (相違点(お)について) ICカードの外部光源として発光ダイオードを用いることは、特開昭61-48081号公報の「カードAを第2図に示す如くカード使用端末機のカード挿入部Cに挿入したときにカードAの光起電素子2と対応する位置に例えば白色ランプ、高出力半導体レーザ、高出力発光ダイオード等の強い光を発する光源5が設けられ」(第2頁右上欄4?11行)の記載及び第2図の図示に示されるごとく、周知技術である。 してみると、引用発明の外部機器からの定常光として、この周知技術を採用して、電力供給用発光ダイオードの光であるとすることは、当業者が容易に為し得ることであり、相違点(お)は格別のものでない。 そして、本件補正発明1の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (6)むすび したがって、本件補正発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正1は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 2.平成17年3月22日付けの手続補正について (1)平成17年3月22日付けの手続補正(以下、「本件補正2」という。) 本件補正2により、特許請求の範囲の請求項1は、 「不揮発性メモリと、該不揮発性メモリへのデータの書き込みおよび読み出しを制御する制御部とを有したメモリカードであって、外部からの電力供給用発光ダイオードの光を受けて光起電力動作を行う起電力用発光ダイオードと、該起電力用発光ダイオードの起電力を電源電力として上記不揮発性メモリおよび制御部に供給する電力供給路と、光を利用して外部との信号の送信と受信を兼用して行う通信用発光ダイオードと、該通信用発光ダイオードと上記制御部を接続して上記送受信の信号を通す信号路とを有しており、前記起電力用発光ダイオードと通信用発光ダイオードとは並設されてユニット化されていることを特徴とするバッテリーを有しないメモリカード。」 と補正された。 (2)補正内容の検討 平成17年3月15日付けの手続補正は上記1.のとおり却下されたので、本件補正2による補正の判断の基準となる明細書及び図面は、平成16年5月31日付けの手続補正による補正後の明細書及び図面となる。 そして、本件補正2は、平成16年5月31日付けの手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1(「補正前の請求項1」)に記載した発明を特定するために必要な事項である「外部からの光」について「電力供給用発光ダイオードの」という限定を付加し、同じく「該起電力用発光ダイオードの起電力を上記不揮発性メモリおよび制御部に供給する」について「電源電力として」という限定を付加したものである上記本件補正発明1に、さらに発明を特定するために必要な事項である「メモリカード」について「バッテリーを有しない」という限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正2による補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定された要件を満たすか)について以下に検討する。 (3)引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び引用例に記載された発明(上記「引用発明」)その他の記載事項は、上記1.(3)に記載したとおりである。 (4)本件補正発明2と引用発明との対比 本件補正発明2と引用発明とを対比すると、両者は、上記1.(4)で認定した一致点で一致する。 そして、以下の6点で相違する。 (相違点) (あ)?(お) 上記1.(4)の相違点(あ)?(お)に同じ。 (か)本件補正発明2のメモリカードは「バッテリーを有しない」のに対し、引用発明のICカードは電池を有する点。 (5)相違点の判断 相違点(あ)?(お)については、上記1.(5)で検討したとおり、いずれも格別のものでない。 (相違点(か)について) 上記1.(5)(相違点(あ)について)でも示したように、ICカードのメモリをデータの書き込みおよび読み出し可能な不揮発性メモリによって構成し内部電源電力としてのバッテリーや電池を持たないように構成することは、特開平4-112288号公報の「メモリ4としてメモリ容量が中容量向きの不揮発性メモリを用いることにより、バックアップ電源が不要となることから、ICカード1の寿命は半永久的となる。」(4頁右下欄9?12行)の記載や、特開平8-329208号公報の「従来のICカードは、図2に示すようにメモリ素子(IC)1がカードの中に組み込まれており、・・・・メモリ素子1にフラッシュメモリ又はEEPROMを使用するときはバッテリバックアップは不要である。」(【0003】)の記載にあるごとく、周知技術である。 してみると、引用発明のICカードにおいてメモリーをバックアップ用電池が不要の不揮発性メモリとして、引用発明のICカードをバッテリーを有しないものとすることは、当業者が容易になし得ることであり、相違点(か)も格別のものでない。 そして、本件補正発明2の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (6)むすび したがって、本件補正発明2は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正2は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明の認定 平成17年3月15日付けの手続補正及び平成17年3月22日付けの手続補正は上記II.のとおり却下されたので、本件審判請求に係る特許出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年5月31日付けの手続補正による補正後の請求項1(II.における「補正前の請求項1」)に記載された事項による特定される以下のとおりのものである。 「不揮発性メモリと、該不揮発性メモリへのデータの書き込みおよび読み出しを制御する制御部とを有したメモリカードであって、外部からの光を受けて光起電力動作を行う起電力用発光ダイオードと、該起電力用発光ダイオードの起電力を上記不揮発性メモリおよび制御部に供給する電力供給路と、光を利用して外部との信号の送信と受信を兼用して行う通信用発光ダイオードと、該通信用発光ダイオードと上記制御部を接続して上記送受信の信号を通す信号路とを有しており、前記起電力用発光ダイオードと通信用発光ダイオードとは並設されてユニット化されていることを特徴とするメモリカード。」 2.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び引用例に記載された発明(上記「引用発明」)その他の記載事項は、上記II.の1.(3)に記載したとおりである。 3.本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明は、上記II.の1.で検討した本件補正発明1から「外部からの電力供給用発光ダイオードの光」という発明特定事項における「電力供給用発光ダイオードの」という限定を省き、同じく「該起電力用発光ダイオードの起電力を電源電力として上記不揮発性メモリおよび制御部に供給する」という発明特定事項における「電源電力として」という限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を限定する事項を付加したものに相当する本件補正発明1が、上記II.の1.(4)及びII.の1.(5)において示したとおり引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-13 |
結審通知日 | 2007-12-18 |
審決日 | 2008-01-08 |
出願番号 | 特願2000-16716(P2000-16716) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06K)
P 1 8・ 575- Z (G06K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 前田 浩 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
相崎 裕恒 桑江 晃 |
発明の名称 | メモリカードおよびそのデータ書き込み・読み出しシステム |
代理人 | 五十嵐 清 |