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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B41N
管理番号 1173597
審判番号 不服2004-25166  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-09 
確定日 2008-02-22 
事件の表示 平成10年特許願第 67092号「印刷版用材料」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月 2日出願公開、特開平10-315644〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年3月17日(優先権主張:平成9年3月17日)の出願であって、平成16年10月29日付けで同年9月24日付け手続補正が補正却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月9日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年1月11日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.本願発明
平成17年1月11日付けの手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当するから、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年1月11日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲(全請求項数1)の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「空隙層及び感光層又は感熱層を有する印刷版用材料において、前記空隙層が0.1?20g/m^(2)の親水性バインダー及び平均粒径3?200nmの微粒子を含有し、該親水性バインダーに対する該微粒子の重量比が0.5?15であり、かつ該空隙層の空隙容量が0.2?15ml/m^(2)であり、かつ該空隙層の空隙部分が空隙層の基体側の表面、又は空隙層の基体とは反対側の表面に二つ以上の開口部分を有する事を特徴とする印刷版用材料。」

3.先願発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平7-282495号(特開平9-99662号公報参照。)の願書に最初に添附した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の記載が図示とともにある。(なお、丸付き数字を『』付き数字で表した個所がある。)
ア.【請求項1】 支持体、及びその上に設けられた画像受容層からなるオフセット印刷版用基板において、
該画像受容層が、空隙率30?80%を有する三次元網目構造の層であり、そして該三次元網目構造が、平均1次粒子径が100nm以下の無機微粒子と水溶性樹脂とから形成されていることを特徴とするオフセット印刷版用基板。
イ.【請求項2】 三次元網目構造の空隙を形成する細孔が、10?100nmの平均直径を有する請求項1に記載のオフセット印刷版用基板。
ウ.【請求項4】 無機微粒子と水溶性樹脂の重量比が、1.5:1?10:1の範囲にある請求項1に記載のオフセット印刷版用基板。
エ.【請求項5】 水溶性樹脂が、ポリビニルアルコールであり、且つ硬化されている請求項1に記載のオフセット印刷版用基板。
オ.【請求項8】 請求項1に記載のオフセット印刷版用基板の該画像受容層の表面に、シート上に感熱転写層を設けてなる感熱転写シートの該感熱転写層を密着させた後、該シート側からサーマルヘッドまたはレーザ光により画像様に加熱することにより該画像受容層上に該加熱部分に対応する感熱転写層を転写して、該画像受容層表面の一部に感熱転写層からなる親油性の画像層を形成することからなるオフセット印刷版の製造方法。
カ.【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、支持体、及びその上に設けられた画像受容層からなるオフセット印刷版用基板において、該画像受容層が、空隙率30?80%を有する三次元網目構造の層であり、そして該三次元網目構造が、平均1次粒子径が100nm以下の無機微粒子と水溶性樹脂とから形成されていることを特徴とするオフセット印刷版用基板により達成することができる。
キ.【0009】上記本発明のオフセット印刷版用基板の好ましい態様は下記のとおりである。
1)三次元網目構造の空隙を形成する細孔が、10?100nmの平均直径(好ましくは10?30nm)を有する。
2)無機微粒子が、シリカまたはアルミナからなる(好ましくはシリカ、特に無水シリカ)。
3)無機微粒子と水溶性樹脂の重量比が、1.5:1?10:1の範囲(無機微粒子:水溶性樹脂)にある.
4)水溶性樹脂が、ポリビニルアルコールであり、且つ硬化されている。
5)支持体が、プラスチックシートである。
ク.【0010】6)三次元網目構造の空隙を形成する細孔が、0.5?0.9ml/gの細孔容量を有する。
7)無機微粒子(特にシリカ微粒子)が、表面に1nm^(2 )当たり2?3個のシラノール基を有する。
8)三次元網目構造が、無機微粒子(特にシリカ微粒子)が凝集した10?100nmの粒径を有する二次粒子の連結により形成される鎖からなる。
9)画像受容層の層厚が、5?30μmである。
ケ.【0036】[実施例1]
(1)下塗層形成用塗布液(以下の全ての塗布液の配合量を示す重量部の値は全て固形分又は不揮発分を表わす)
水分散性ポリエステル樹脂 3重量部
(ペスレジンA-515G、高松油脂(株)製)
非イオン界面活性剤 0.1重量部
(エマレックス/NP8.5、日本エマルジョン(株)製)
水 100重量部
この塗布液を100μmの厚みの二軸延伸したポリエチレンテレフタレート表面をコロナ放電処理し、その表面にエアーナイフコーターを用いて塗布し、熱風乾燥機により70℃で1分間乾燥した。これにより乾燥膜厚が0.1μmの下塗層を形成した。
コ.【0037】(2)画像受容層形成用塗布液の組成
『1』乾式シリカ微粒子(平均1次粒子径:7nm; 10重量部
屈折率:1.45;表面シラノール基:2?3/nm^(2);
アエロジルA300(日本アエロジル(株)製))
『2』ポリビニルアルコール(鹸化度88%; 3.3重量部
重合度3500;PVA235(クラレ(株)製))
『3』グルタルアルデヒド 0.2重量部
『4』イオン交換水 136.0重量部
『1』のシリカ微粒子を、『3』のイオン交換水(73.3重量部)中に添加して、高速回転湿式コロイドミル(クレアミックス(エム・テクニック(株)製))を用いて、10000rpmの条件で20分間分散させた後、ポリビニルアルコール水溶液(イオン交換水の残り62.7重量部に溶解させたもの)を加えて更に、更に上記と同じ条件で分散を行ない、さらにグルタルアルデヒドを加え、ついでpHを4?5に調整して画像受容層形成用塗布液を得た。
サ.【0038】この塗布液を上記ポリエチレンテレフタレートの下塗層上に、エアーナイフコーターを用いて塗布し、熱風乾燥機により70℃(風速5m/秒)で1分間乾燥した後、更に150℃で10分間乾燥した。これにより乾燥膜厚が30μmの画像受容層を形成した。これにより、本発明のオフセット印刷版用基板を得た。得られた画像受容層の表面及び断面の走査型電子顕微鏡写真(100000倍)を、それぞれ図2及び図3に示す。これらの写真より、得られた画像受容層は三次元網目構造を有することが分かる。
シ.【0039】(3)画像層(親油性層)の形成
画像形成用基板の画像受容層上に、インクジェット方式のファクシミリ受信機を用いて電気信号によって画像様にインキ画像を形成した。インキとしては、エチレングリコールジメタクリレート100重量部とジエトキシアセトフェノン5重量部の組成を有するものを用いた。形成されたインキ画像上から、5kWのキセノン灯を、20cmの距離から5分間照射し、インキ画像を硬化させて画像層を形成した。これによりオフセット印刷版を得た。
ス.【0041】[実施例3]実施例1と同様にしてオフセット印刷版用基板を得た。そして、(3)画像層の形成を下記のように行なった。
(3)画像層(親油性層)の形成
厚さ3μmのポリエステルフィルムの一面にエチレン/酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる感熱転写層を層厚2μmにて形成し、感熱転写シートを得た。次に、画像形成用基板と感熱転写シートとを、画像形成用基板の画像受容層と感熱転写シートの感熱転写層が密着するように重ねて、ワードプロセッサに付属した感熱プリンターに装着し、プリンターを作動させた。プリンター内においてはワードプロセッサー中に納められている画像情報に基づいてサーマルヘッドが作動し、感熱転写シートが部分的に加熱されて、画像形成用基板の画像受容層上に感熱転写層が転写され、画像様の親油性層が形成された。こうしてオフセット印刷版を得た。
セ.【0045】上記実施例1で得られたオフセット印刷版用基板の画像受容層について、以下の測定方法によってその物理特性を評価した。
(1)平行光線透過率
ヘイズメーター(HGM-2DP;スガ試験機(株)製)を用い平行光線透過率を測定した。
(2)平均細孔径、(3)空隙率、(4)細孔比容積及び(5)比表面積は水銀ポロシメータ(ポアサイザー9320-PC2;島津製作所(株)製)を用いて測定し、それぞれの分布を得て、平均値を計算した。
(6)シリカ粒子の二次粒径
得られた色材受容層を走査型電子顕微鏡で観察することにより求めた。上記評価の結果を下記の表1に示す。





ソ.【0046】
【表1】
表1
─────────────────────────────────
透過率 細孔径 空隙率 細孔比容積 比表面積 二次粒径
(%) (nm) (%(V/V)) (ml/g) (m^(2)/g) (nm)
─────────────────────────────────
実施例1 81.3 15 61 0.77 162 40
─────────────────────────────────
タ.【図2】から、画像受容層の表面には、細孔の開口部分が二つ以上形成されていることが看取できる。

上記オ.、ス.の記載から、支持体、及びその上に設けられた画像受容層からなるオフセット印刷版用基板の画像受容層に、感熱転写層を設けてなる感熱転写シートの感熱転写層を重ねたもの(以下、「印刷版用材」と称する。)を認識できる。
上記カ.、キ.、ク.の記載から、空隙率30?80%を有する三次元網目構造の層であり、そして該三次元網目構造が、平均1次粒子径が100nm以下の無機微粒子と水溶性樹脂とから形成され、無機微粒子と水溶性樹脂の重量比が、1.5:1?10:1の範囲(無機微粒子:水溶性樹脂)であり、層厚(以下、画像受容層の乾燥膜厚を「H(μm)」で表す。)が、5?30μmである画像受容層を認識でき、更に、該無機微粒子と水溶性樹脂からなる画像受容層として、上記コ.記載の画像受容層形成用塗布液を塗布し乾燥したものを想定できる。コ.記載の画像受容層形成用塗布液を塗布し乾燥して画像受容層を形成すると、ポリビニルアルコールに対する乾式シリカ微粒子の重量比は、おおよそ、10÷3.3=3.0となり、空隙容量(ml/m^(2))=空隙率×層厚(μm)であるから、0.61H(ml/m^(2))となり、単位面積当たりのポリビニルアルコールの重量(g/m^(2))は、おおよそ、空隙容量(ml/m^(2))÷細孔比容積(ml/g)×ポリビニルアルコールの重量比÷(ポリビニルアルコールの重量比+乾式シリカ微粒子の重量比)であるから、おおよそ、0.61H(ml/m^(2))÷0.77(ml/g)×3.3÷(3.3+10)=0.20H(g/m^(2))となる。
上記サ.、タ.の記載から、画像受容層の細孔が画像受容層の支持体とは反対側の表面に二つ以上の開口部分を有するものと認められ、これは、画像受容層の表面の状態であるから、画像受容層の厚さの如何に関わるものではないことは明らかである。
以上により、上記記載を含めた明細書及び図面全体の記載から、上記先願明細書には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が開示されていると認められる。

「支持体、及びその上に設けられた画像受容層からなるオフセット印刷版用基板の画像受容層に、感熱転写層を設けてなる感熱転写シートの感熱転写層を重ねた印刷版用材において、前記画像受容層の乾燥膜厚Hが5?30(μm)であり、前記画像受容層が0.20H(g/m^(2))のポリビニルアルコール及び平均1次粒子径7nmの乾式シリカ微粒子を含有し、該ポリビニルアルコールに対する該乾式シリカ微粒子の重量比が3.0であり、かつ該画像受容層の空隙容量が0.61H(ml/m^(2))であり、かつ該画像受容層の細孔が画像受容層の支持体とは反対側の表面に二つ以上の開口部分を有する印刷版用材。」

4.対比
本願発明と先願発明とを対比する。
本願発明の「空隙層及び感光層又は感熱層を有する印刷版用材料」が何を意味するか必ずしも明らかではないが、本願明細書段落【0115】の「本発明の印刷版用材料を用いて印刷版を作製するもう一つの態様を説明する。それは、印刷版用材料の空隙層のある側と、基体上に少なくとも1層の転写性物質を含む感熱転写層(以下、単に転写層又は画像層ともいう)を有するドナーシートの転写層とを重ね合わせ、熱、光及び圧力の少なくとも一つを用いて画像様に転写する方法である。」との記載、段落【0272】の「実施例5 実施例3において、印刷版用支持体IをIIIに、又、ドナーシートIをIVに変えた他は同様にして、印刷版試料31を作製した。又、印刷版用支持体IをIVに、ドナーシートIをIVに変えた他は同様にして印刷版試料32を作製した。」との記載から、空隙層と感熱層を重ねたものを含んでいるものと認められる。そして、先願発明の「画像受容層」は、細孔を有しているから、先願発明の「画像受容層」、「感熱転写層」及び「印刷版用材」は、本願発明の「空隙層」、「感熱層」及び「印刷版用材料」に相当し、先願発明の「支持体、及びその上に設けられた画像受容層からなるオフセット印刷版用基板の画像受容層に、感熱転写層を設けてなる感熱転写シートの感熱転写層を重ねた印刷版用材」は、本願発明の「空隙層及び感光層又は感熱層を有する印刷版用材料」に含まれる。
本願明細書段落【0239】の「(印刷版用支持体Iの作製) 平均粒径が約7nmの1次微粒子シリカ粉末150gを純水1リットル中に添加し、高速ホモジナイザーで分散して青白い透明な分散液を得た。次に、この分散液中に、平均重合度4000、鹸化度88%の2%ポリビニルアルコール水溶液(酢酸エチル3重量%含有)1リットルを徐々に添加した。次いで、硬膜剤として4%硼砂水溶液28mlを添加し、高速ホモジナイザーにて分散して白色半透明の塗布液を得た。この液は、シリカをポリビニルアルコールに対して重量比で7.5倍含有する。」との記載から、本願発明の「親水性バインダー」には、ポリビニルアルコールが含まれ、本願発明の「微粒子」にはシリカ粉末が含まれているから、先願発明の「ポリビニルアルコール」及び「乾式シリカ微粒子」は、本願発明の「親水性バインダー」及び「微粒子」に相当し、7nmは、3?200nmの範囲内であるから、先願発明は、平均粒径3?200nmの微粒子を含有しているものである。
先願発明のポリビニルアルコールに対する該乾式シリカ微粒子の重量比3.0は、本願発明の親水性バインダーに対する該微粒子の重量比0.5?15の範囲内であるから、先願発明は、親水性バインダーに対する微粒子の重量比が0.5?15であるといえる。
先願発明の「細孔」及び「支持体」は、本願発明の「空隙部分」及び「基体」に相当し、先願発明の「画像受容層の細孔が画像受容層の支持体とは反対側の表面に二つ以上の開口部分を有する」は、本願発明の「空隙層の空隙部分が空隙層の基体側の表面、又は空隙層の基体とは反対側の表面に二つ以上の開口部分を有する」に含まれる。
以上より、両者は、
「空隙層及び感光層又は感熱層を有する印刷版用材料において、前記空隙層が親水性バインダー及び平均粒径3?200nmの微粒子を含有し、該親水性バインダーに対する該微粒子の重量比が0.5?15であり、かつ該空隙層の空隙部分が空隙層の基体側の表面、又は空隙層の基体とは反対側の表面に二つ以上の開口部分を有する印刷版用材料。」
の点で一致し、次の点で一応相違している。
[相違点]親水性バインダーの単位面積当たりの重量に関して、本願発明は、0.1?20g/m^(2)であるのに対し、先願発明は、0.20H(g/m^(2))であり、空隙容量に関して、本願発明は、0.2?15ml/m^(2)であるのに対し、先願発明は、0.61H(ml/m^(2))である点。

5.判断
上記相違点について検討する。
先願発明の画像受容層の乾燥膜厚Hは、5?30(μm)であるから、先願発明のポリビニルアルコール(本願発明の「親水性バインダー」)の単位面積当たりの重量0.20H(g/m^(2))は、1.0?6.0(g/m^(2))となり、本願発明の0.1?20g/m^(2)の範囲内となり、相違しない。
また、先願発明の画像受容層の乾燥膜厚Hは、5?30(μm)であるから、先願発明の空隙容量0.61H(ml/m^(2))は、3.05?18.3(ml/m^(2))となり、本願発明の0.2?15ml/m^(2)の範囲と3.05?15ml/m^(2)の範囲で一致している。
そうすると、両発明は実質的に同一の発明といわざるを得ない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-14 
結審通知日 2007-12-25 
審決日 2008-01-07 
出願番号 特願平10-67092
審決分類 P 1 8・ 161- Z (B41N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 裕子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 七字 ひろみ
菅藤 政明
発明の名称 印刷版用材料  

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