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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1173599
審判番号 不服2005-4045  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-09 
確定日 2008-02-22 
事件の表示 特願2002-240014号「側部用エアバッグ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年3月12日出願公開、特開2003-72503号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成8年10月24日に出願された特願平8-301065号の一部を平成14年8月21日に新たな特許出願としたものであって、平成17年2月4日付けで拒絶査定がなされたところ、同年3月9日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年4月1日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成17年4月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年4月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1. 補正後の本願発明
(1) 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「内面に形成されたコーティング層でほぼ気密にシールした布を重合しまたは折り重ねて、その外周部を接合することにより袋部を形成し、この袋部を車両の窓部側方に展開させる側部用エアバッグにおいて、前記外周部は上記コーティング層同士が気密に接着された接合面に布同士を縫合する縫製部が施されていることを特徴とする側部用エアバッグ」
と補正された。

(2) 上記補正は、発明を特定する事項である「接着された接合面」につき「気密に」と限定するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、即ち、本件補正が平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものでないか否かにつき以下に検討する。

2. 引用刊行物とその記載内容
刊行物1:特開平2-175352号公報

(1) 原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1には、発明の名称を「エアバッグの製造方法」と題して図面とともに次の記載がある。
(ア) 「これらのバツグ基材2・3は、従来と同様に、可撓性を有するナイロンやポリエステル等の織布を基布2a・3aとして、それぞれの基布2a・3aのエアバツグ11内周面側にあたる部位に、ブチルゴムやクロロプレンゴム等の耐熱性ゴムをコーテイングされてなる耐熱性ゴム層2b・3bが形成されて構成されている。
また、・・・エアバツグ11が膨らんだ後にガス発生器6からのガスをエアバツグ11外に逃す排出孔15とが穿設されている。」(第3頁左上欄17行から第3頁右上欄12行)。
(イ) 「そして、上下二枚のバツグ基材2・3の縫合部位における内周面側全周に、上下二枚のバツグ基材2・3にわたつて、その縫合部位を覆う保護カバー17が接着剤を利用して接着されている。」(第3頁右上欄18行から第3頁左下欄1行)。
(ウ) 「そして、実施例のエアバツグ11を製造する工程を説明すると、各部材が未加硫の場合には、まず、バツグ基材3と補強布16との貼り合せ部に同種のゴム糊(未加硫ゴムを溶剤に溶かしたもの)を塗つて圧着する。その後、上下のバツグ基材2・3と保護カバー17とを所定の形状で同様に圧着する。
その後、バツグ内の所定部位に接着を防ぐマスキング剤を塗布し、必要な温度と時間をかけて、加硫および加硫接着する。
そして、バツグ基材2・3の周縁を、縫合糸4により縫合して製造する。」(第3頁右下欄10行から第4頁左上欄1行)。
(エ) 「さらに、製造されたエアバツグ11では、保護カバー17が、上下のバツグ基材17(「2・3」の誤記と認められる。)を縫合した部位を、上下バツグ基材2・3にわたつて覆つており、縫合部位における上下バツグ基材2・3の縫目間が保護カバー17により完全に覆われていることから、この縫合部位の縫目間からのガスの漏れを防ぐことができる。この場合、保護カバー17は、編組補強層19を含んでいることから、エアバツグ11内に急激にガス発生器6からのガスが注入される際、瞬間的に引つ張られても、剥れが生じない。」(第4頁右上欄15行から第4頁左下欄5行)
ここで、刊行物1は、主に方法の発明について記載されているところであるが、上記の(ア)ないし(エ)の記載等からは、エアバッグという物の発明についても開示されているということができる。そしてこの場合、エアバッグは、上下バッグ基材2・3を重合させ、その周縁を接合することにより、袋部を形成するものであることが明らかである。

(2) すると、刊行物1には、
「内周面側にあたる部位にコーティングされてなる耐熱性ゴム層2b、3bが形成された上下のバッグ基材2、3を重合し、その周縁を接合することにより袋部を形成し、この袋部を展開させるエアバッグにおいて、周縁はバッグ基材2、3同士を縫合する縫合部位が施されているとともに、その縫合部位を覆う保護カバー17が接着されているエアバッグ。」
との発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。

3. 本願補正発明と引用発明との対比
(1) 両発明の対応関係
後者の「上下のバッグ基材2、3」とその「内周面側にあたる部位」とは、前者の「布」とその「内面」に相当する。同様に、「コーティングされてなる耐熱性ゴム層2b、3b」は「コーティング層」に、「周縁」は「外周部」に、「縫合部位」は「縫製部」に、それぞれ相当する。

(2) 両発明の一致点
「内面にコーティング層が形成された布を重合して、その外周部を接合することにより袋部を形成し、この袋部を展開させるエアバッグにおいて、前記外周部は布同士を縫合する縫製部が施されているエアバッグ」

(3) 両発明の相違点
(ア) 本願補正発明のエアバッグが、「袋部を車両の窓部側方に展開させる側部用」であるのに対して、引用発明のものは、袋部の展開する方向や用途について明らかではない点。
(イ) 内面に形成されたコーティング層について、本願補正発明が、「ほぼ気密にシールした」ものであるのに対して、引用発明のものは、気密の度合いが明らかでない点。
(ウ) 縫製部が施されている箇所について、本願補正発明は「コーティング層同士が気密に接着された接合面」であるのに対し、引用発明は、接着された接合面の存在が不明である点。

4. 相違点についての検討
(1) 相違点(ア)について
一般に、側部用のエアバッグは周知であって、例えば、実願平3-1294号(実開平4-95829号)のマイクロフィルムや実願平2-125644号(実開平4-81854号)のマイクロフィルムなどに記載のものは、車両側部の窓部に向けて展開させるエアバッグに関するものであり、また、側部窓ガラスに展開させるものとしては、特開平8-175311号公報や特開平8-026062号公報などに記載がある。
ここで、引用発明のエアバッグは、側部用ということではないものの、引用発明のものにおいて、そこに開示されているエアバッグに気密性をもたせる技術に関する限り、側部用であると正面用であるとを問わず、いずれのエアバッグにも適用可能であることが明らかであるから、引用発明のエアバッグを、車両の窓部側方に展開させる側部用とすることは、当業者にとって容易である。

(2) 相違点(イ)について
引用発明のものも、具体的には、ブチルゴムやクロロプレンゴム等でエアバッグの内周面側をコーティングしているのであるから、エアバッグの基布をほぼ気密にシールしているということもでき、このような構成とすることに格別の困難性があったものとはいえない。

(3) 相違点(ウ)について
一般的に、エアバッグにおける上下バッグ基材の周縁接合面の接合に関し、接着によるものも、縫合によるものも周知の技術である。例えば、実願昭61-128871号(実開昭63-34751号)のマイクロフィルムなどには、その接合に関する従来技術として、接着によるもの、縫合によるものなどがあるとした上で、縫合部位が内周面側に位置するものであるが、縫合する部位を接着してさらに縫合するものの例が記載されている。
ところで刊行物1に記載のエアバッグは、ガスを逃がす排出孔15が設けられているとされており、これによって、引用発明のものは、そのバッグ基材の内周面側にゴム層が施され、縫合部位の縫目間が保護カバーにより完全に覆われた構造とされている。
このような構造を有する引用発明のものにおいて、その具体的な製造過程が刊行物1の前記記載内容(ウ)にあるように、上下のバッグ基材と保護カバーとを圧着し、その後、バッグ内の所定部位に接着を防ぐマスキング剤を塗布し、加硫および加硫接着し、そして、バッグ基材の周縁を縫合糸により縫合するなどと記載されている。ここにおいて、上下のバッグ基材と保護カバーなどとを接着するに当たり、接着を行わない部位には接着を防ぐマスキングを施すというのであるが、縫合部位からのガス漏れを防止するとの観点からすれば、保護カバーを接着するときに、縫合部位についてあえて接着しないとする理由はなく、むしろ、保護カバーを接着すると同時に周縁も接着するということが容易に考えられる。
そうすると、引用発明において、保護カバーを接着するにあたり、縫合部位である周縁についてもあわせて接着し、その上で縫合糸により縫合するようにすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(4) 相違点を含めた全体判断
本願補正発明の作用効果は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術から当業者が予測できた範囲のものといえる。
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5. むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

第3 本願発明について
1. 本願発明
平成17年4月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「内面に形成されたコーティング層でほぼ気密にシールした布を重合しまたは折り重ねて、その外周部を接合することにより袋部を形成し、この袋部を車両の窓部側方に展開させる側部用エアバッグにおいて、前記外周部は上記コーティング層同士が接着された接合面に布同士を縫合する縫製部が施されていることを特徴とする側部用エアバッグ」

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその開示事項は、前記「第2 2.」に記載したとおりである。

3. 対比・判断
本願発明は、前記「第2」において検討した本願補正発明から、「接着された接合面」について、「気密に」との限定を省いたものである。
すると、本願発明1の構成要素の全てを含む本願補正発明が、前記「第2 4.」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明についても、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
以上、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-03 
結審通知日 2007-12-11 
審決日 2007-12-26 
出願番号 特願2002-240014(P2002-240014)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
P 1 8・ 575- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西本 浩司  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 柿崎 拓
柴沼 雅樹
発明の名称 側部用エアバッグ  
代理人 飯田 昭夫  

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