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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1173697
審判番号 不服2004-7380  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-12 
確定日 2008-02-25 
事件の表示 平成 6年特許願第 20824号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月29日出願公開、特開平 7-227457〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年2月18日の出願であって、平成16年3月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年4月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「フロントパネルに設けた画像表示部に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである特別賞態様であった場合に、遊技者に特別遊技を行わせるスロットマシンにおいて、
画像表示部における図柄の停止表示態様を判断する図柄判断手段と、
該図柄判断手段が特別賞態様であると判断した場合に、特別遊技で使用する画像表示部の特定領域を強調表示させる特定領域強調手段と、を有し、
前記特定領域の強調表示は、特別遊技の遊技態様に応じて変更可能に形成されたことを特徴とするスロットマシン。」

2.引用発明
引用刊行物
1.特開昭61-85978号公報
2.特開平4-220276号公報
3.実公平5-45344号公報
4.特開平4-220274号公報

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された上記の各刊行物には、それぞれ次の発明が記載されている。

(i) 特開昭61-85978号公報
特開昭61-85978号公報(以下、「引用例1」という。)には以下の記載がある。
1-a「シンボル列をそれぞれ持つた複数のリールを表示するCRTを備え、移動中の各リールが停止した後に、各リールと入賞ラインとの交点にある複数のシンボルの組合せが複数の入賞シンボル配列のいずれか1つと一致した場合に、その入賞シンボル配列に応じた枚数のコインが排出されるビデオタイプスロットマシンにおいて、整数Mから整数Nまでの乱数エリアの中から1個の乱数を取り出す手段、前記複数の入賞シンボル配列を複数のグループに分類し、これらの入賞グループの種類と前記乱数エリアに属する少なくとも1個の乱数値との関係を記憶した入賞確率テーブルメモリ、前記入賞確率テーブルメモリを参照し、前記取り出した乱数値が属するグループの種類を判定する判定手段、前記判定手段で判定されたグループに応じたヒットリクエスト信号を発生するヒットリクエスト信号発生手段、及び前記ヒットリクエスト信号に応じて前記各リールの停止をコントロールする手段、を備えてなることを特徴とするビデオタイプスロットマシン。」(特許請求の範囲の請求項1)
1-b 「本体10の上方に表示パネルllが取り付けられており、・・・前面ドア20は、・・・ヒンジ12により本体10に対して開閉することができる。前記前面ドア20には、CRT21に合致する部分に窓20aが形成されており、この窓20aを通してCRT21の画面に表示された3個のリール・・・R1?R3を観察することができる。」(第3頁右上欄第9行-左下欄第1行)
1-c「このビデオタイプスロットマシンでは、ゲーム開始に先立って投入されたコイン枚数に応じて、入賞ライン数を選択できるようになっている。すなわち、CRT21に表示されたり-ルR1?R3は、シンボル4が3個ずつ持っているが、コインを1枚投入した場合にはラインlのみが入賞判定にあたり有効化され、2枚の場合にはライン1、ライン2a、2bの合計3ライン、3枚投入の場合にはさらにライン3a、3bの合計5ラインが有効化されることになる。なお、ランプ5は、投入コイン枚数に応じて有効化されるラインを点灯により表示する。」(第3頁右下欄第3-15行)
1-d「大、中、小の各ヒツトの例としては、大ヒツトが15枚のコイン支払いの後ボーナスゲームができるようになるもの、中ヒツトがl0?15板のコイン支払い、小ヒツトが2?5枚程度のコイン支払など適宜設定される。
ボーナスゲームとしては、例えばコイン1枚の投入毎にl個のリールを低速で移動させてゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボル「JAC」が出ればそのまゝ15枚のコイン支払いがなされ、このような手順で数回のゲームができるようにする。」(第6頁左下欄第1-11行)

上記の記載によれば、引用例1(特開昭61-85978号公報)には次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。
「本体10に開閉可能に形成した前面ドア20の窓20aを通してCRT21の画面に表示されたシンボル列をそれぞれ有する3個のリールR1?R3を観察することができ、移動中の各リールが停止した後に、各リールと入賞ラインとの交点にある複数のシンボルの組合せが複数の入賞シンボル配列のいずれか1つと一致した場合に、その入賞シンボル配列に応じた枚数のコインが排出されるビデオタイプスロットマシンにおいて、入賞確率テーブルメモリを参照し、乱数エリアの中から取り出した乱数値が属する入賞グループの種類を判定する判定手段を備え、ゲーム開始に先立って投入されたコイン枚数に応じて有効化されるラインをランプ5の点灯により表示し、判定手段により大ヒツトと判定されると、15枚のコイン支払いの後ボーナスゲームができるようになり、ボーナスゲームとしては、コイン1枚の投入毎にl個のリールを低速で移動させてゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボル「JAC」が出ればそのまゝ15枚のコイン支払いがなされ、このような手順で数回のゲームができるようにする、ビデオタイプスロットマシン。」

(ii) 特開平4-220276号公報
特開平4-220276号公報(以下、「引用例2」という。)には以下の記載がある。
2-a「液晶シャッターにて形成される表示窓10と、その液晶シャッターを透明とするか不透明とするかの制御を行わせるための制御部とからなり、表示窓10は回転リールの前方に位置し、その表示窓10には各回転リールの絵柄が3個ずつ、即ち9個の絵柄が見えるように形成され、制御部は、液晶シャッターたる表示窓10を透明とするか不透明とするかについて回転リールの各絵柄毎に制御できるよう形成され、且つ 入賞の組合せの絵柄に対応する部分のみを透明とするよう制御する。即ち、表示窓10の9箇所を個別に制御する。」(第1頁【構成】)
2-b「・・・本実施例に係るスロットマシンの表示装置は、液晶シャッターにて形成される表示窓10と、その液晶シャッターを透明とするか不透明とするかの制御を行わせるための・・・制御部とからなる。・・・ゲーム開始時には、制御部は、表示窓10の全ての部分を透明とするよう制御する。ゲーム終了時に入賞の絵柄の組合せがある場合には、制御部は、入賞の組合せに無関係な絵柄に対応する表示窓10の部分を不透明にするよう制御する。」(段落【0008】)

上記の記載によれば、引用例2(特開平4-220276号公報)には次の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。
「液晶シャッターにて形成される表示窓10と、その液晶シャッターを透明とするか不透明とするかの制御を行わせるための制御部とからなり、表示窓10は回転リールの前方に位置し、その表示窓10には各回転リールの絵柄が3個ずつ、即ち9個の絵柄が見えるように形成され、制御部は、液晶シャッターたる表示窓10を透明とするか不透明とするかについて回転リールの各絵柄毎に制御できるよう形成され、ゲーム開始時には、制御部は、表示窓10の全ての部分を透明とするよう制御し、ゲーム終了時に入賞の絵柄の組合せがある場合には、入賞の組合せに無関係な絵柄に対応する表示窓10の部分を不透明にするよう制御する、スロットマシン。」

(iii) 実公平5-45344号公報
実公平5-45344号公報(以下、「引用例3」という。)には以下の記載がある。
3-a「数字をランダムに可変表示する表示部を縦に二列以上横に二行以上並べて配設し、該表示部の数字が停止した状態での組合せを判断して予じめ設定された組合せの成立により特賞遊技状態を開始するようにしたパチンコ機用入賞装置において、電圧をかけることによつて透明から半透明又は透明から不透明に変化させられる瞬間調光板を前記表示部の前面に配置し、個々の表示部に対応する部分の瞬間調光板を必要に応じて透明と半透明又は透明と不透明に変化させるようにしたことを特徴とするパチンコ機用入賞装置。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
3-b「遊技部6の略中央には数字を可変表示する表示部12,12…を縦に三列、横に三行の計九個配置して形成された可変表示器13が配置されている。該可変表示器13は、遊技部6に設けた始動入賞口14,14へパチンコ球が入賞すると各表示部12,12…が「0」?「9」の範囲でランダムに変動し、一定時間の経過或いは前面枠2の下部隅角部に設けたストツプボタン15のキー入力により各表示部12,12…が停止する。この停止状態での各表示部12,12…の数字の配列が、例えば縦、横のいずれかが「7,7,7」であれば特賞遊技状態となる」(第2頁第3欄第31-42行)
3-c「可変表示器13の表示部12,12…の前面には瞬間調光板17,17…が取付けられている。該瞬間調光板17は、第3図に示すように、2枚の透明板17a,17aの間に中間膜17b,17bを介して分散型液晶シート17cをラミネートしたもので、液晶シート17cに電圧を印加することによつて液晶の配列状態をコントロールし、瞬時に透視度を変化させることができるものである。本実施例においては、表示部12,12…の配列に合わせた格子上の前フレーム18に瞬間調光板17,17…を取付け、この前フレーム18を配線板として個々の瞬間調光板17,17…がコンピユータ(図示せず)に結線されて夫々独立して制御される。」(第2頁第4欄第5-18行)
3-d 「次に瞬間調光板17の制御態様につき説明する。」(第2頁第4欄第19-20行)
3-e「第三に、第7図に示したように例えば上段横一行の数字が「7,7,2」と揃つた場合には上段横一行の「7,7」の表示を一旦固定し、次にこの「2」を含む縦一列の瞬間調光板17,17,17を透明にしてこれに対応する表示部12,12,12のみを変動させる。そして、該縦の表示部12,12,12の前記「2」を表示していた上部角部の表示部12が「7」で停止すれば上段横一行が「7,7,7」と揃つて特賞遊技状態となるのである。」(第3頁第5欄第10-19行、第7図)
3-f「第四に、第8図イのように先ず上段の横一行の瞬間調光板17,17,17のみ透明になし、表示部12,12,12が停止した後「7」を表示するもののみ残して他の瞬間調光板17,17を不透明にし、上段横一行をこの状態で固定して中段横一行のみの表示部12,12,12を変動させ、該表示部12,12,12が停止した後(第8図ロ)「7」を表示するもののみを残して他の瞬間調光板17を不透明にし、最後に下段横一行のみの表示部12,12,12を変動させこれが停止したとき第8図ハのように縦一列で「7,7,7」と揃つた場合に特賞遊技状態とするのである。」(第3頁第5欄第20-32行、第8図)

上記の記載によれば、引用例3(実公平5-45344号公報)には次の発明(以下、「引用発明3」という)が記載されていると認められる。
「遊技部6の略中央には数字を可変表示する表示部12,12…を縦に三列、横に三行の計九個配置して形成された可変表示器13が配置され、一定時間の経過或いはストツプボタン15のキー入力により各表示部12,12…が停止して、各表示部12,12…の数字の配列が、例えば縦、横のいずれかが「7,7,7」であれば特賞遊技状態を開始するようにしたパチンコ機用入賞装置において、可変表示器13の表示部12,12…の前面には2枚の透明板17a,17aの間に中間膜17b,17bを介して分散型液晶シート17cをラミネートした瞬間調光板17,17…が取付けられ、液晶シート17cに電圧を印加することによつて透明から半透明又は透明から不透明に変化させるように夫々独立して制御され、瞬間調光板17の制御態様としては、上段横一行の数字が「7,7,2」と揃つた場合には上段横一行の「7,7」の表示を一旦固定し、次にこの「2」を含む縦一列の瞬間調光板17,17,17を透明にしてこれに対応する表示部12,12,12のみを変動させ、該縦の表示部12,12,12の前記「2」を表示していた上部角部の表示部12が「7」で停止すれば上段横一行が「7,7,7」と揃つて特賞遊技状態となるよう制御する制御態様(第7図)や、先ず上段の横一行の瞬間調光板17,17,17のみ透明になし(第8図イ)、表示部12,12,12が停止した後「7」を表示するもののみ残して他の瞬間調光板17,17を不透明にし、上段横一行をこの状態で固定して中段横一行のみの表示部12,12,12を変動させ、該表示部12,12,12が停止した後(第8図ロ)「7」を表示するもののみを残して他の瞬間調光板17を不透明にし、最後に下段横一行のみの表示部12,12,12を変動させこれが停止したとき縦一列で「7,7,7」と揃つた場合(第8図ハ)に特賞遊技状態とするよう制御する制御態様(第8図)を含む、パチンコ機用入賞装置。」

(iv) 特開平4-220274号公報
特開平4-220274号公報(以下、「引用例4」という。)には以下の記載がある。
4-a 「【請求項1】投入口へのゲーム媒体の投入とゲーム開始スイッチの操作により複数の絵柄を変化させ、所定の停止タイミングで各絵柄の変化を停止させるスロットマシンにおいて、正面に設けられた複数の液晶表示器と、各液晶表示器に前記絵柄を表示させる表示制御手段とを有することを、特徴とするスロットマシン。
・・・
【請求項4】
変化を停止後の各絵柄の組合せが所定の賞出組合せと一致するか否かを判断する賞出判断手段を有し、前記表示制御手段は、前記賞出判断手段が前記賞出組合せと一致すると判断したとき、前記液晶表示器に所定の賞出表示を表示させる構成を有することを、特徴とする請求項1,2または3記載のスロットマシン。」(特許請求の範囲の請求項1、請求項4)
4-b 「また、表示制御手段31は、液晶表示器20a,20b,20cに、賞出組合せ設定手段32により設定された賞出組合せの各絵柄24の配列に沿ったライン表示35を表示させるようになっている。
また、表示制御手段31は、賞出判断手段33が賞出組合せと一致すると判断したとき、液晶表示器20a,20b,20cに所定の賞出表示を表示させるようになっている。所定の賞出表示としては、賞出判断手段33が賞出組合せと一致すると判断した各絵柄24の配列に沿ったライン表示35の点滅表示と、液晶表示器20a,20b,20cの、賞出判断手段33が賞出組合せと判断した各絵柄24のバック部26の点滅表示と、液晶表示器20a,20b,20cの、賞出判断手段33が賞出組合せと判断した各絵柄24を囲んで点滅する枠表示36のどれか一つまたは複数の組合せで表示されるようになっている。」(段落【0027】【0028】)

上記の記載によれば、引用例4(特開平4-220274号公報)には次の発明(以下、「引用発明4」という)が記載されていると認められる。
「投入口へのゲーム媒体の投入とゲーム開始スイッチの操作により複数の絵柄を変化させ、所定の停止タイミングで各絵柄の変化を停止させるスロットマシンにおいて、正面に設けられた複数の液晶表示器20a,20b,20cと、各液晶表示器20a,20b,20cに前記絵柄を表示させる表示制御手段31と、変化を停止後の各絵柄の組合せが所定の賞出組合せと一致するか否かを判断する賞出判断手段33を有し、表示制御手段31は、液晶表示器20a,20b,20cに、賞出組合せ設定手段32により設定された賞出組合せの各絵柄24の配列に沿ったライン表示35を表示させ、また、賞出判断手段33が賞出組合せと一致すると判断したとき、液晶表示器20a,20b,20cに所定の賞出表示を表示させるようになっており、所定の賞出表示としては、賞出判断手段33が賞出組合せと一致すると判断した各絵柄24の配列に沿ったライン表示35の点滅表示と、液晶表示器20a,20b,20cの、賞出判断手段33が賞出組合せと判断した各絵柄24のバック部26の点滅表示と、液晶表示器20a,20b,20cの、賞出判断手段33が賞出組合せと判断した各絵柄24を囲んで点滅する枠表示36のどれか一つまたは複数の組合せで表示される、スロットマシン。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比すると、両者はともにスロットマシンであって、引用発明1について以下のことがいえる。
(i) 引用発明1は、「本体10」の「前面ドア20」の「窓20aを通してCRT21の画面に表示されたシンボル列をそれぞれ有する3個のリールR1?R3を観察することができ、移動中の各リールが停止した後」に、「入賞シンボル配列に応じ」て「コインが排出される」ものであり、引用発明1における上記「前面ドア20」は本願発明における「フロントパネル」に相当しており、同様に、「CRT21」は「画像表示部」に、「シンボル」は「図柄」に、「シンボル列」は「複数の図柄」に、それぞれ相当している。
そして、引用発明1における上記「3個のリールR1?R3」は、順次高速で「移動」して「シンボル列」(「複数の図柄」)を移動表示した後、「シンボル」(「図柄」)の移動表示を停止させるものであり、同引用発明1は、本願発明における「フロントパネルに設けた画像表示部に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、該図柄の移動表示を停止させ」の構成に相当する構成を備えている。

(ii) 引用発明1に係る「スロットマシン」は、「移動中の各リールが停止し」て、「シンボルの組合せ」が「大ヒツトと判定される」と「ボーナスゲームができる」ものであり、引用発明1における上記「(リールが停止したときの)シンボルの組合せ」は本願発明における「停止表示態様」に相当しており、同様に「大ヒツト」は、その技術的意義に照らすと、「予め定めた一定の図柄の組み合わせである特別賞態様」に、「ボーナスゲーム」は「特別遊技」に、それぞれ相当している。
すなわち、同引用発明1は、「(リールが停止したときの)シンボルの組合せ」(「停止表示態様」)が「大ヒツト」(「予め定めた一定の図柄の組み合わせである特別賞態様」)であった場合に、遊技者に「ボーナスゲーム」(「特別遊技」)を行わせるスロットマシンであり、本願発明における「該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである特別賞態様であった場合に、遊技者に特別遊技を行わせるスロットマシン」に相当する構成を備えている。

(iii) 引用発明1は、「CRT21」(「画像表示部」)の「画面に表示され」た「(リールが停止したときの)シンボルの組合せ」(「停止表示態様」)が「複数の入賞シンボル配列のいずれか1つと一致した」ことを「判定する判定手段を備え」ており、上記「判定手段」は、その機能に照らすと、本願発明における「(画像表示部における図柄の停止表示態様を判断する)図柄判断手段」に相当するものであり、同引用発明1は、本願発明における「画像表示部における図柄の停止表示態様を判断する図柄判断手段」に相当する構成を備えている。

以上の事項より、本願発明と引用発明1とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。
一致点;
フロントパネルに設けた画像表示部に複数の図柄を順次高速で移動表示した後、該図柄の移動表示を停止させて、該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである特別賞態様であった場合に、遊技者に特別遊技を行わせるスロットマシンにおいて、画像表示部における図柄の停止表示態様を判断する図柄判断手段を有するスロットマシン、である点。

相違点;
本願発明は、図柄判断手段が特別賞態様であると判断した場合に、特別遊技で使用する画像表示部の特定領域を強調表示させる特定領域強調手段を有し、前記特定領域の強調表示は、特別遊技の遊技態様に応じて変更可能に形成されているのに対して、引用発明1は、特別遊技で使用する画像表示部の特定領域を強調表示させる特定領域強調手段を有しておらず、特別遊技の遊技態様に応じて特定領域の強調表示を変更可能に形成するものではない点。

上記の相違点について検討する。
引用発明3は、「表示部12,12…」を「縦に三列、横に三行の計九個配置」した「可変表示器13」の「前面」に「瞬間調光板17」を「取付け」て、「瞬間調光板17」の「液晶シート17cに電圧を印加することによつて透明から半透明又は透明から不透明に変化させるように夫々独立して制御」するものであり、「制御」の態様として、
(i)「上段横一行の数字が「7,7,2」と揃つた場合には上段横一行の「7,7」の表示を一旦固定し、次にこの「2」を含む縦一列の瞬間調光板17,17,17を透明にしてこれに対応する表示部12,12,12のみを変動させ」ることで、以降の遊技で使用する表示部の特定領域を「透明にし」て強調表示させる態様(引用例3の第7図。以下、「第1の態様」という。)や、
(ii)「先ず上段の横一行」のみを「透明になし(引用例3の第8図イ)」て当該「上段横一行」の領域を「変動」させ、「変動」が「停止した後「7」を表示する」領域のみを残して他の領域を「不透明」にし、続いて「中段横一行」のみを「透明になし」て当該領域を「変動」させ、「変動」が「停止した後(同第8図ロ)に、「7」を表示する」領域のみを残して他の領域を「不透明」にし、最後に「下段横一行」のみを「透明になし」て当該領域を「変動」させ、「変動」が「停止したとき縦一列で「7,7,7」と揃つた場合(同第8図ハ)に特賞遊技状態とする」ことで、遊技で使用する表示部の特定領域を「透明になし」て強調表示させる態様(以下、「第2の態様」という。)を含むものである。
すなわち、引用発明3は、遊技で使用する表示部の特定領域を「瞬間調光板17」により強調表示させるものであり、「瞬間調光板17」は特定領域を強調表示させるための特定領域強調手段であるということができるとともに、強調表示は、少なくとも上記した「第1の態様」と「第2の態様」を含み、これらは遊技の態様に応じて変更可能に形成されているといえる。
ここで、引用発明3はパチンコ機に関する発明であり、「特賞遊技状態」となったときに遊技者に特別遊技を行わせるスロットマシンではないが、引用発明2及び4は、スロットマシンが備える画像表示部に表示される各図柄に対応させて、それぞれ独立して図柄の強調表示を行う強調手段を備えており、スロットマシンにおいても、図柄に対応した表示領域を独立して強調表示する強調手段はよく知られた技術手段である。
ところで、引用発明1における「ボーナスゲーム」(「特別遊技」)は、「コイン1枚の投入毎にl個のリールを低速で移動させてゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボル「JAC」が出ればそのまゝ15枚のコイン支払いがなされ、このような手順で数回のゲームができる」(摘示1-d)ものであり、「コイン1枚の投入毎」に行われる「ゲーム」は、「CRT21の画面に表示された3個のリール」(摘示1-c)により形成される領域のうちの特定の領域を使用して行われるものであるといえる。
そうすると、引用発明2及び4に例示される、スロットマシンにおける表示領域の強調表示手段を技術的前提として、引用発明1において、「ボーナスゲーム」(「特別遊技」)で使用する「CRT21」(「画像表示部」)の特定領域に、引用発明3が備える上記した特定領域強調手段を適用することは、当業者にとって容易に想到することができたものである。
そして本願発明が奏する効果も、引用発明1並びに、引用発明2ないし4が本来奏する効果から、当業者が予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明1並びに、引用発明2ないし4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-28 
結審通知日 2007-11-29 
審決日 2008-01-11 
出願番号 特願平6-20824
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
渡部 葉子
発明の名称 スロットマシン  
代理人 竹山 宏明  
代理人 米山 淑幸  

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