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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M |
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管理番号 | 1173742 |
審判番号 | 不服2005-18985 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-03 |
確定日 | 2008-02-28 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 588号「複数装置へのメッセージ・ルーチング方法およびそのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月11日出願公開、特開平10-215330〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年1月6日(パリ条約による優先権主張1997年1月6日、米国)の出願であって、平成17年8月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年10月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成19年10月16日付けで拒絶理由通知がなされ、平成19年12月4日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「送信元装置からディジタル・メッセージをPSTNを介して接続された中継装置に送出し、該中継装置からネットワークを介して接続された複数の送信先装置にルーチングするメッセージ・ルーチング方法であって、 上記送信元装置は、 ユーザに対して、上記ディジタル・メッセージのルーチングに用いる複数の送信先装置の各識別子の入力を、各識別子間を区切る記号の入力毎に順次に促すステップと、 上記複数の送信先装置の各識別子の入力後、上記複数の送信先装置へのルーチングに共通に用いられる上記中継装置の電話番号をユーザに入力させるステップと、 上記ユーザから入力された上記複数の送信先装置の各識別子と各識別子間を区切る記号を含んだディジタル・メッセージを生成するステップと、 生成したディジタル・メッセージを上記電話番号に従って中継装置に送信するステップとを行い、 上記中継装置は、 受信したディジタル・メッセージに含まれる上記記号で区切られた各識別子を抽出して対応するネットワークアドレスに変換するステップと、 変換したネットワークアドレスの各送信先装置に上記ディジタル・メッセージを転送するステップとを行う ことを特徴とする複数装置へのメッセージ・ルーチング方法。」 3.引用例に記載された発明 当審で通知した拒絶の理由に引用された特表平8-505738号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (イ)「1.各人がローカル・エリア・ネットワークの参加者である複数のユーザ環境のなかで、ファクシミリ通信を目的とする受信側に向ける方法において、 個々のユーザに識別番号を付与し、 装置同士のハンドシェイクの間に送信するデータ・フィールドの領域を、非破壊的な方法で修正して、前記の識別番号の一つを受け入れるのに適した領域を含み、 目的の受信側の識別番号を前記の修正領域に挿入し、 前記の修正領域をハンドシェイクのデータ・フィールドの一部として送信することを含めて、ファクシミリ通信を目的の受信側の位置する装置に送信し、 受信側の位置で、修正領域を識別し、その中から識別番号を引出し、 ファクシミリ画像を、前記の識別番号を付与したロケーションに送信することを含む方法。」(2頁2?13行) (ロ)「1対のファクシミリ装置で相互に通信するためには、装置同士を連結してデータの互換性のある方法で送受信できるようにしなければならない。ハンドシェイク信号を使用すれば、装置同士を連結することができるが、ハンドシェイク信号は、ファクシミリ画像データの作成から実際の送信までの装置同士の最初のデータの交換からなる。 ハンドシェイク信号は、国際電信電話諮問委員会の基準に従い、さまざまなメーカーの装置の間に互換性があるようになっている。 ハンドシェイクの手順は、一部ユーザが提供し、典型的にはファクシミリ装置にプログラム化され格納された情報の転送から成り立っている。ユーザが通常提供する情報は、会社名などのファクシミリの装置を配備した場所の識別子と同じく、ファクシミリ装置の電話番号などを含む。ハンドシェイック・データのこの部分は、TTI(Transmit Terminal Identifier)あるいは、CSID(Carrier Sense Identifier)として知られている。このデータは、受信側にはハードコピーのファクシミリ画像として出現する場合もあれば、出現しない場合もある。そしてファクシミリのメッセージの画像データと比べると、データ処理との互換性のある方法で送信される。 本発明では、TTIのデータ・フィールド内や、ハンドシェイクの間に使用されたデータ・フィールドのその他の部分に配置された文字を使用し、そのようなデータを認識し、付随するファクシミリ・メッセージの方向転換できる方法でそのデータを解釈する受信側のルーチンを含む。選ばれたフィールドやその修正は“非破壊的”であるというものであり、すなわち、ファクシミリ文書の受信には実際的な影響を与えるものではない。特に図1に示すように、TTI識別子のフィールド10は20文字のデータ・フィールドをなし、典型的には、送信側の電話番号12や送信側の識別子14などを含む。この情報は、ファクシミリ装置を操作するように配列する際に、ユーザが入力するの普通である。 図2に示すように、このフィールドを修正し、新しいサブフィールド16を含む。この新しいサブフィールドは、多数の端末位置(端末ロケーション)で目的とする受信側を識別するための文字列を有している。図面に示す実施例では、5つの文字を収納している。この新たに追加になったフィールド16は、*(星印)、あるいは#(囲い印)など独特な制御文字18で開始している。この制御文字によって、受信回路が電話番号12の終了を認識し、付加したデータの開始を認識する。制御文字は、地域番号、国際ダイヤル・コードなどの長さがいろいろ異なる先行電話番号を収納するために必要である。星印や囲い印の制御文字は、標準的なデュアルトーン多周波式(DTMF)やタッチトーン式電話機のキーパッドによって、プログラム化するために特に好適であるが、次の4文字コードの表示は、電話キーパッドによって入力できる桁数であることが好適である。 制御文字の後に続くデータ・フィールド20は、ファクシミリ画像の送信相手である具体的な受信側の位置の識別子を表示する。本発明による好適実施例において、ファクシミリの送受信の技術として公知のコンピュータ・システムに関連して使用しているのが、識別番号であり、送信側が格納し、記憶の中から呼び出して送信に関連して必要なものとして挿入していく。あるいは、識別番号は送信先になる電話番号の入力に関連して、ファクシミリ送信を行う際に手動で入力することができる。 本発明に使用するコンピュータ・システムを図3に示す。図示するように、ネットワーク・サーバ・コンピュータ22は、公共の電話システム24に連結し、当業者に公知のファクシミリ・ボードを備え、ファクシミリ互換性のあるデータを供給(送信)することができる。サーバ・コンピュータは、端末とサーバ・コンピュータとの間でデータ交換できるネットワーク30により、遠く離れた複数の端末26に連結する。個々の端末26には独特な識別番号32をつけ、その番号はデータ・フィールド20の手元にある数値に対応している。識別番号を含み、ファクシミリ送信が完了するとサーバ・コンピュータ22により、メッセージは適切なロケーション26に向かう。 図4に示すように、識別番号32を目的とする受信側の電話番号に対する5桁からなるサフィックスとして34の送信側の装置のメモリに、挿入することでコンピュータの環境の中で開始できる。この5桁のサフックスは、ファクシミリ・システムのダイヤル装置用の電話番号データベースに格納している。あるいは、識別番号ダイヤルを回す工程で、手動で36に入力する。いずれの場合も、送信システムは、38で入力したデータを受信、格納する。 ファクシミリ送信をしたい場合には、格納した組み合わせ電話番号と識別番号を40で呼び出す。識別番号部は、42に位置し、44で図1に示す送信側の“通常”のCSIDと組み合わされて、図2に示す修正CSIDを形成する。識別番号は、電話番号の後に記載することができ、その場合制御文字18はフィールドのヘッド部に保持される。また識別番号は、電話番号に先行し、その場合制御文字は、フィールドの後部に移行する。いずれの場合も、識別番号をCSIDの電話番号から分離するのに役立つ。受信装置はクレームの位置決めに従い、プログラム化する。 修正したCSIDは46に格納する。送信装置は48でダイヤルし、受信装置との接続を50で開始する。送信装置は、そのCSIDの要請を待機し、52で修正したCSIDを送信する。元来のCSIDの長さと用いた具体的な処理により、元来のCSIDのは送受信が出来ない。CSIDのデータは、ファクシミリ・データの処理の一部として、受信側は使用しない。しかし、元来のデータ・フィールドの一部を欠落させると同じように、受信側の識別番号を含めることは、システム操作の材料変更にはならず、ファクシミリ・データのその後の処理に影響することはない。方向転換をしない場合、通常の送信をわずかに変更すれば、受信側の装置の受信ジャーナルにある程度認識できない進入をすることになるだろう。CSIDの送信の後、ファクシミリ・データの通信と送信が54で通常のやり方で継続することになるだろう。 図5に示すように、受信側の識別データを含むファクシミリ送信をネットワーク装置の受信が通常の方法で始まり、装置同士の連結は、56で確立する。受信装置は、58で、送信側のCSIDを要求するが、60で格納し、さらには要求に応じて62でジャーナル入力をプリントしたり格納したりする。64において、通常の方法で受信装置がファクシミリの画像を受信したり格納する間にファクシミリのハンドシェイクが継続する。 送信の終りに、格納したCSIDを66において検査し、識別番号を送信されたフィールドの残りの部分から分離する。68において受信した識別番号と識別番号位置データベースとの間で、自動照合機能が働き、識別場番号と受信側ロケーションとの関連がわかる。そして70でファクシミリ画像が、その位置までルーチンする。受信側は、所望の画像を観たり、プリントしたり、格納することができる。」(6頁24行?9頁27行) 引用例の(ロ)には、「あるいは、識別番号は送信先になる電話番号の入力に関連して、ファクシミリ送信を行う際に手動で入力することができる。」と記載されており、図3を参照すると、サーバ・コンピュータ(ネットワークサーバ22)は公共の電話システム24に接続されていることが理解されるから、引用例の「送信先」とは「サーバ・コンピュータ」のことであり、サーバ・コンピュータの電話番号と端末の識別番号はユーザに入力させるものであるといえる。 また、引用例の(ロ)には、「送信の終りに、格納したCSIDを66において検査し、識別番号を送信されたフィールドの残りの部分から分離する。68において受信した識別番号と識別番号位置データベースとの間で、自動照合機能が働き、識別場番号と受信側ロケーションとの関連がわかる。そして70でファクシミリ画像が、その位置までルーチンする。」と記載されており、ファクシミリ・データ(ファクシミリ画像)を端末までルーチンするのは、サーバ・コンピュータが行うものであることは、当業者に自明の事項である。 したがって、引用例のサーバ・コンピュータは、受信した修正CSIDに含まれる識別番号を抽出して、対応する受信側ロケーションに変換するステップと、変換した受信側ロケーションの端末にファクシミリ・データをルーチンするステップとを行うものであるといえる。 したがって、引用例には、 「送信装置からファクシミリ・データを公共の電話システムを介して接続されたサーバ・コンピュータに送出し、該サーバ・コンピュータからネットワークを介して接続された複数の端末の内の一つに送信する方法であって、 上記送信装置は、 サーバ・コンピュータの電話番号と端末の識別番号とをユーザに入力させるステップと、 一つの端末の識別番号を含んだ修正CSIDを生成するステップと、 生成した修正CSIDを上記電話番号をダイヤルしてサーバ・コンピュータに送信するステップとを行い、 サーバ・コンピュータにダイヤルして、修正CSIDとファクシミリ・データとを送信するステップとを行い、 上記サーバ・コンピュータは、 受信した修正CSIDに含まれる識別番号を抽出して、対応する受信側ロケーションに変換するステップと、 変換した受信側ロケーションの端末にファクシミリ・データをルーチンするステップとを行うものである端末へのファクシミリ・データの送信方法。」 との発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。 4.対比 本願発明と引用例発明とを対比すると次のことが認められる。 引用例発明の「送信装置」「ファクシミリ・データ」「公共の電話システム」「サーバ・コンピュータ」「端末」「受信側ロケーション」は、本願発明の「送信元装置」「ディジタル・メッセージ」「PSTN」「中継装置」「送信先装置」「ネットワークアドレス」にそれぞれ相当するものである。 引用例発明は、「ディジタル・メッセージ」を複数の「送信先装置」の内の一つに送信するものであるから、引用例発明は「メッセージ・ルーチング方法」に関するものであるといえる。 また、引用例発明の「識別番号」は、「送信先装置」を識別するものであるから、本願発明の「識別子」に相当するものであり、引用例発明の「修正CSID」は、一つの送信先装置の識別子を含んだディジタル・メッセージであるということができる。 また、引用例発明のディジタル・メッセージを「ルーチンする」ことは、本願発明のディジタル・メッセージを「転送する」ことに相当する。 以上の対比によれば、本願発明と引用例発明とは、 「送信元装置からディジタル・メッセージをPSTNを介して接続された中継装置に送出し、該中継装置からネットワークを介して接続された送信先装置にルーチングするメッセージ・ルーチング方法であって、 上記送信元装置は、 上記ディジタル・メッセージのルーチングに用いる送信先装置の識別子と、上記送信先装置へのルーチングに共通に用いられる上記中継装置の電話番号とをユーザに入力させるステップと、 上記ユーザから入力された送信先装置の識別子を含んだディジタル・メッセージを生成するステップと、 生成したディジタル・メッセージを上記電話番号に従って中継装置に送信するステップとを行い、 上記中継装置は、 受信したディジタル・メッセージに含まれる識別子を抽出して対応するネットワークアドレスに変換するステップと、 変換したネットワークアドレスの送信先装置に上記ディジタル・メッセージを転送するステップとを行うメッセージ・ルーチング方法。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] ディジタル・メッセージのルーチングについて、本願発明では、複数の送信先装置にルーチングするのに対して、引用例発明では、複数の送信先装置の内の一つにルーチングするものである点。 [相違点2] ユーザから入力された送信先装置の識別子を含んだディジタル・メッセージについて、本願発明は、ディジタル・メッセージが複数の送信先装置の各識別子と各識別子間を区切る記号を含んだものであるのに対して、引用例発明では、一つの送信先装置の識別子を含んだものである点。 [相違点3] 「上記ディジタル・メッセージのルーチングに用いる送信先装置の識別子と、上記送信先装置へのルーチングに共通に用いられる上記中継装置の電話番号とをユーザに入力させるステップ」について、本願発明では、「ユーザに対して、上記ディジタル・メッセージのルーチングに用いる複数の送信先装置の各識別子の入力を、各識別子間を区切る記号の入力毎に順次に促すステップ」と、「上記複数の送信先装置の各識別子の入力後、上記複数の送信先装置へのルーチングに共通に用いられる上記中継装置の電話番号をユーザに入力させるステップ」からなるものであるのに対して、引用例発明の当該ステップは、そのように特定されたものではない点。 5.当審の判断 [相違点1、2]について ファクシミリ・データ等のディジタル・メッセージを複数の送信先装置にルーチングすることは、当審の拒絶の理由で引用した特開平5-83417号公報及び特開平5-316260号公報(0013段落)に示されているように周知事項と認められ、当該周知技術を引用例発明に適用して、ディジタル・メッセージを複数の送信先装置にルーチングするように構成することに困難性は認められない。そのような構成を採用した場合、複数の送信先装置に対応した複数の識別子を入力することは当然であり、複数のデータの入力を行う場合に、データを区切るために「*」等の記号を用いることは常套手段(特開平4-21249号公報、特開平3-270564号公報参照)であることからすれば、相違点1、2に係る構成に困難性は認められない。 [相違点3]について 複数のデータの入力を行う場合に、ユーザに対してデータの入力毎に順次に促すことは常套手段(特開平4-21249号公報、特開平1-269355号公報参照)であり、複数の識別子を各識別子を区切る記号を伴って入力するようにした場合に、当該常套手段を適用して、ユーザに対して、複数の送信先装置の各識別子の入力を、各識別子間を区切る記号の入力毎に順次に促すステップを設けるようにすることに格別の困難性は認められない。 また、送信先装置の識別子と、中継装置の電話番号をユーザに入力させる際に、どのような順序でユーザに入力させるかは設計的事項にすぎない。 したがって、相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-28 |
結審通知日 | 2008-01-04 |
審決日 | 2008-01-16 |
出願番号 | 特願平10-588 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 戸次 一夫 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
梶尾 誠哉 萩原 義則 |
発明の名称 | 複数装置へのメッセージ・ルーチング方法およびそのシステム |
代理人 | 磯村 雅俊 |
代理人 | 渡邉 昌幸 |