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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03D
管理番号 1173745
審判番号 不服2006-4750  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-15 
確定日 2008-02-28 
事件の表示 平成 9年特許願第110004号「無臭システムトイレ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月14日出願公開、特開平10-183720〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成9年3月25日(優先権主張平成8年10月29日)の出願であって、平成18年1月4日付けで拒絶査定がなされたところ、これに対し平成18年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

(本願発明)
「上下前後左右の6面に囲まれ、大小便用の便器(4)・便座(5)が一つ以上複数内在するトイレにおいて、
大小便時における人の嗅覚器官の位置(A)より上方に新鮮な外気を吸引する吸気口(3)と、
臭覚器官の位置(A)より下方に大小便の臭気を外部に排出する排気口(1)・排気ファン(2)と、
を具備したことを特徴とした無臭システムトイレ。」

2.刊行物に記載された事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭62-101507号(実開昭64-5978号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、「無臭トイレ」に関し、第1図?第2図とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「2.実用新案登録請求の範囲
(1)背後に給気ファンを有する下向きの一様流吹出口をトイレ内空間の天井全面に設け、便器より下方又は横に空気吸込口を設け、空気吸込口を排気ファンに接続したことを特徴とする無臭トイレ。・・・
(3)空気吸込口がトイレ内空間の底部側壁に設けてある実用新案登録請求の範囲第1項記載の無臭トイレ。」(明細書第1ページ4行?15行)

(イ)「(産業上の利用分野)
本考案は主として大便用の便器を有するトイレ(便所)の換気に改善を加えた無臭トイレの構造に関する。
(従来技術)
一般に家庭用の大便トイレでは、排気ファンは上部に設けてあるため、使用中には便器周辺の臭気が使用者の体に沿い上昇する形になり、不快になりやすい。又使用後も便器周辺及びその上方に浮遊した臭気を全量換気するのに時間がかかり、次の人が快適に使用できるまでに暇がかかる不具合が避けられない。」(同第1ページ17行?第2ページ8行)

(ウ)「(実施例)・・・1は無臭トイレユニット、2はトイレユニット1内の空間3の底部に設けた大便器、4はトイレユニット1の上端部に設けた一様流吹出ユニットである。トイレユニット1は建物内の隣接した室5の隅部又は隣接した適当な場所に設置され、・・・。
一様流吹出ユニット4は下端の一様流吹出口9から同一速度の層流(一様流)10が下向きに流出するように、下端部にハニカム状の整流板11を備え、・・・その上方の小室14の中央部に給気ファン15を備え、小室14の天井は空間7に連通する空気取入口16(第1図)となっている。天井裏空間7は隣室5の天井6等に設けた換気口17に連通している。・・・
トイレユニット1の両側壁19内は中空の通路20となっており、この通路20の下端部は側壁19に設けた空気取入口21を介してトイレ内空間3の底部に連通し、上端部は排気ファン22を有する排気ダクト23に連通している。」(同第3ページ7行?第4ページ15行)

(エ)「(考案の効果)
以上説明したように本考案によると、トイレ内空間3の天井全面の一様流吹出口9から一定流速の層流10が下向きに流出し、使用者の体と大便器2を包むように下降し(矢印)、便器2の下側で通路20内に入り、外部へ排出されるので、便器2の周辺で発生した臭気は使用者の鼻の周囲に到達することがなく、完全な無臭状態で使用することができる。しかも一様流吹出ユニット4からの一様流(層流10)により臭気を下方へ押え込む形式であるため、空間3内で乱れが最少となり、臭気が上方へ巻き上がる恐れがないため、給気ファン15の容量は少なくてすむ。」(同第5ページ16行?第6ページ8行)

(オ)第1図には、トイレユニット1内の底部、側壁及び一様流吹出口9で囲まれた空間3の底部に座式の大便器が一つ設置された態様が示されている。

そして、上記引用文献1に記載された事項(ア)?(オ)並びに図面に記載された事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明1)
「トイレユニット1内の天井にあって、背後に給気ファン15を有し、下端部にハニカム状の整流板11を備える下向きの一様流吹出口9をトイレ内空間3の天井全面に設け、底部、側壁及び一様流吹出口9で囲まれた空間3の底部に座式の大便器を1つ設置し、一様流吹出口9は換気口17に連通し、便器より下方のトイレ内空間の底部側壁に空気吸込口を設け、トイレユニット1の両側壁19内を中空の通路20とし、この通路20の下端部は側壁19に設けた空気吸込口を介してトイレ内空間3の底部に連通し、上端部を排気ファン22を有した排気ダクト23に連通し、
トイレ内空間3の天井全面の一様流吹出口9から一定流速の層流10が下向きに流出し、使用者の体と大便器2を包むように下降し、便器2の下側で通路20内に入り、外部へ排出され、便器2の周辺で発生した臭気が使用者の鼻の周囲に到達することがないようにした、無臭トイレ。」

3.対比
本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「無臭トイレ」は、無臭化をするための機構いいかえれば「システム」を有しているのだから、本願発明の「無臭システムトイレ」に相当する。
また、引用発明1の「一様流吹出口9」は、天井にあって一定流速の層流10を下向きに流出しているから、本願発明の「人の嗅覚器官の位置(A)より上方に新鮮な外気を吸引する吸気口(3)」に相当するといえる。
また、引用発明1の「便器より下方のトイレ内空間の底部側壁」の「空気吸込口」は、本願発明の「臭覚器官の位置(A)より下方に大小便の臭気を外部に排出する排気口(1)」に相当する。

ところで、本願発明の「大小便用の便器(4)・便座(5)」の数に関する「一つ以上複数」との事項が、「一つ以上」いいかえれば単数である「一つ」を含んでいるのか、「複数」でなければならないものなのか定かでないことから、本願の明細書及び図面を参酌すると、本願の明細書の段落【0011】には、「以下、図面に示す実施の形態により、本発明を詳細に説明する。図1に実施例1を示す。」と記載され、図1には、便座5を有する便器4が1つのみ記載されている。
そうすると、本願発明の「大小便用の便器(4)・便座(5)」の数に関する「一つ以上複数」との事項は「一つ」であることを含んでいると解することができる。なお、大便の用を足すことが可能な便座を有する便器において、上下前後左右の6面に囲まれた空間内の内在個数を一つとすることは、社会常識とも合致する。
一方、一般に「座式の大便器」が小便の用も足しうるものであることは自明の事項であるから、引用発明1の「下端部にハニカム状の整流板11を備える下向きの一様流吹出口9をトイレ内空間3の天井全面に設け、底部、側壁及び一様流吹出口9で囲まれた空間3の底部に座式の大便器を1つ設置し」した「トイレユニット1」は、本願発明と、「上下左右の面に囲まれ、大小便用の便器が一つ内在するトイレ」である点において共通するといえる。
してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「上下左右の面に囲まれ、大小便用の便器が一つ内在するトイレにおいて、大小便時における人の嗅覚器官の位置より上方に新鮮な外気を吸引する吸気口と、臭覚器官の位置より下方に大小便の臭気を外部に排出する排気口を具備し、排気ファンを具備した無臭システムトイレ。」

(相違点1)
本願発明のトイレは、「上下前後左右の6面に囲まれ」たものであるのに対し、引用発明1は、前後面を含めた6面が囲まれているか定かでない点。

(相違点2)
本願発明のトイレは、便座を一つ以上複数内在しているのに対し、引用発明1のトイレは便座を有しているのか定かでない点。

(相違点3)
本願発明は、下方に排気口・排気ファンを具備しているのに対し、引用発明1は、排気口は下方に具備しているものの、排気ファンは下方ではない点。

4.当審の判断
上記の相違点について検討する。

(相違点1及び2について)
座式の大便器を有するトイレ一般において、便器を前後を含む6面で囲むようにして設置することは、説明するまでもなく普通に行われていることであり、引用発明1のトイレにおいても、前後を含む上下左右の6面を囲むようにすることは、当業者が普通に行う事項にすぎない。
さらに、座式の大便器を内在するトイレにおいて、一つの便器の上部に一つの便座を設けること、いいかえれば、便座をトイレに一つ内在させることが、説明するまでもなく普通の態様であることからすれば、便座をトイレに一つ内在させることについても、当業者が普通に行う事項にすぎない。

(相違点3について)
トイレにおける臭気を外部に排出する排気口において、排気口の位置に排気ファンを設置して屋外に臭気を排出することが、例えば実願昭51-150397号(実開昭53-67354号)のマイクロフィルム等にもみられるように従来より周知であることを考慮すれば、下方に排気口を具備する引用発明1において、同じく下方に臭気を外部に排出する排気ファンも具備するようにすることは、当業者が容易に想到しうることである。

そして、本願発明が奏する作用・効果を検討してみても、引用発明1及び従来より周知の技術から、当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものとみることはできない。

なお、審判請求人は、平成18年5月25日付けの上申書において、補正案を添付するとともに、補正案のとおり明細書を補正をする用意があるので、補正する機会を求める旨を主張しているので、上記補正案の請求項1に係る発明(以下、「補正案発明」という。)について、以下に検討してみる。

(補正案発明)
「上下前後左右の6面に囲まれ、大小便用の便器(4)・便座(5)が一つ以上複数内在するトイレにおいて、
大小便時における人の嗅覚器官の位置(A)より上方に新鮮な外気を吸引する吸気口(3)を設け、かつ、排気ファン(2)付き便漕(8)につながる排気口(1)に排気孔(6)を設けた排便蓋(7)を有し排気する乃至は便器(4)あるいは便座(5)の側面に排気口(1)を設け直接排気することを特徴としたトイレ。」

(1)刊行物に記載された事項
引用文献1に記載された「引用発明1」は、上記2.のとおりである。
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願平1-101348号(実開平3-40374号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、「大便器の排気装置」に関し、第1図?第10図とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「2 実用新案登録請求の範囲
1 大便器または便座若しくは該便座に嵌載の嵌筒に、大便器内の臭気を強制的に吸入するための吸入口を有する吸気ダクトを設け、吸気ファンを介して排気管に接続してなる大便器の排気装置。
2 吸気ダクトが空洞を形成の吸入口を有する便座自体である請求項1記載の大便器の排気装置。」(明細書第1ページ4行?12行)

(イ)「(従来の技術)
従来、用便時、とりわけ大便時に発生する悪臭はトイレ内に充満した後、自然換気(ベンチレーター)か、機械的換気扇にて屋外へ排気されているのが現状である。
(考案が解決しようとする問題点)
即ち、従来はトイレ室内に充満した臭気を自然手段または機械的手段での給気または排気による室内空気の稀釈,交換で逐次臭気を外界へ排出して行くものであって、臭気の排気効率はきわめて劣り、その悪臭は長く室内にこもり、自家用トイレ及び公衆トイレを問わずきわめて不快感を与え、環境上好ましくなく非衛生的なものであった。」(同第2ページ4行?16行)

(ウ)「〔実施例〕
先ず第1,2図の実施例において、2は大便器1の上面に枢着部3によって枢着された便座であるが、この便座2は第2図に示すように内部に空洞4を有する吸気ダクトAを構成し、複数個の吸入口5が設けられている。なお上記便座2の枢着部に吸気ヘッダー6が設けられ、これに便座2の空洞4が連通管7,7によって連通されている。そして吸気ヘッダー6は吸入筒8によって吸気ファン9を介して排気管10に接続されている。そこで吸気ファン9を始動すると、大便器1内の臭気は各吸入口5から吸気ダクトA,吸気ヘッダー6を経て吸入筒8から排気管10を経て外気に排出される。」(同第3ページ13行?第4ページ6行)

(エ)「また第6,7図の実施例では洋式,和式大便器1に直接吸気管14が連通され、該吸気管14が吸気ダクトAとなって吸気ファン9を介して排気管10に夫々接続されている。」(同第4ページ14行?18行)

(オ)「(考案の効果)
この考案は叙上のように大便器または便座若しくは該便座に嵌載の嵌筒に、大便器内の臭気を強制的に吸入するための吸入口を有する吸気ダクトを設け、吸気ファンを介して排気管に接続したものであるから、用便時の悪臭がトイレ室内に充満する前に臭いの発生源にもっとも近い大便器内にて臭気を自動強制的に吸収排気することができ、臭気の排気効率がきわめて良く、不快感を与えず環境衛生上有益である卓抜した効果がある。」(同第5ページ7行?16行)

そして、上記記載事項(ア)?(オ)並びに図面に記載された内容を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明2)
「大便器または便座に、大便器内の臭気を強制的に吸入するための吸入口を有する吸気ダクトを設け、吸気ファンを介して排気管に接続してなり、大便器内の臭気は吸気ダクトを経て吸入筒から排気管を経て外気に排出される、大便器の排気装置であって、
大便器に直接吸気管が連通され、該吸気管が吸気ダクトAとなって吸気ファンを介して排気管に夫々接続するか、または、便座に複数個の吸入口を設け、便座の内部に空洞を有する吸気ダクトAを構成した、大便器の排気装置。」

(2)対比・判断
ところで、補正案発明の、「大小便時における人の嗅覚器官の位置(A)より上方に新鮮な外気を吸引する吸気口(3)を設け、かつ、排気ファン(2)付き便漕(8)につながる排気口(1)に排気孔(6)を設けた排便蓋(7)を有し排気する乃至は便器(4)あるいは便座(5)の側面に排気口(1)を設け直接排気する」トイレについて、本願の出願当初の明細書をみると、「排気ファン(2)付き便漕(8)につながる排気口(1)に排気孔(6)を設けた排便蓋(7)を有し排気」し、さらに「便器(4)あるいは便座(5)の側面に排気口(1)を設け直接排気」するようなトイレは、記載もされていないし、また示唆もない。さらに、「排気ファン(2)付き便漕(8)」を有したうえで、「便器(4)あるいは便座(5)の側面に排気口(1)を設け直接排気する」ようなトイレもまた記載されていないし、示唆もない。そうすると、補正案発明は、
「上下前後左右の6面に囲まれ、大小便用の便器(4)・便座(5)が一つ以上複数内在するトイレにおいて、
大小便時における人の嗅覚器官の位置(A)より上方に新鮮な外気を吸引する吸気口(3)を設け、かつ、排気ファン(2)付き便漕(8)につながる排気口(1)に排気孔(6)を設けた排便蓋(7)を有し排気することを特徴としたトイレ。」(以下、「補正案前者発明」という。)と、
「上下前後左右の6面に囲まれ、大小便用の便器(4)・便座(5)が一つ以上複数内在するトイレにおいて、
大小便時における人の嗅覚器官の位置(A)より上方に新鮮な外気を吸引する吸気口(3)を設け、かつ、便器(4)あるいは便座(5)の側面に排気口(1)を設け直接排気することを特徴としたトイレ。」(以下、「補正案後者発明」という。)を、択一的に記載したものと解することができる。

さらに、前記補正案後者発明のトイレは、「直接排気する」ものであるところ、直接排気とは如何なる態様を指しているのか定かでないことから、同じく本願の出願当初の明細書を参酌してみると、補正案後者発明の「直接排気」とは、便座または便器自身に吸気孔を設けた実施例において、排気管で排気口に連結し、実質的に臭気の排出口を便器内に延長した態様も含んでいるものと解することができる。

上記理解に基づき、補正案発明の択一的記載のうちの一方である補正案後者発明と、引用発明1とを対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「上下左右の面に囲まれ、大小便用の便器が一つ内在するトイレにおいて、大小便時における人の嗅覚器官の位置より上方に新鮮な外気を吸引する吸気口を設け、外部に排出する排気口を設けたトイレ。」
(相違点A)
補正案後者発明のトイレは、「上下前後左右の6面に囲まれ」たものであるのに対し、引用発明1は、前後面を含めた6面が囲まれているか定かでない点。
(相違点B)
補正案後者発明のトイレは、便座を一つ以上複数内在しているのに対し、引用発明1のトイレは便座を有しているのか定かでない点。
(相違点C)
補正案後者発明は、便器あるいは便座の側面に排気口を設け、直接排気するのに対し、引用発明1は、そのようになっていない点。

上記相違点のうち、相違点A及びBは、上記相違点1及び2とそれぞれ一致しており、それに対する判断は上記4.(相違点1及び2について)にて説示したとおりであるので、相違点Cについて以下検討する。
引用発明2の「大便器」、「吸気口」、「外気に排出」は、それぞれ、補正案後者発明の「便器」、「排気口」、「排気」に相当するので、引用発明2より、「便器あるいは便座に排気口を設け、排気する」ことは、本願優先日前において、既に公知であったということができる。
そして、引用発明1と引用発明2は、ともにトイレの悪臭を排気する機構である点で共通しているのだから、引用発明1の便器に引用発明2の排気装置を適用して、便器あるいは便座に排気口を設けて排気するようにすることは、当業者が容易に想到しうることである。
さらに、便器あるいは便座に排気口を設けるにあたり、便器あるいは便座の「側面」に排気口を設けることが、例えば、実願平3-100561号(実開平5-71277号)のCD-ROMや、実願平5-39334号(実開平7-7597号)のCD-ROMにみられるように従来より周知であり、さらに、排気にあたって、臭気の排出口を排気管で排気口に連結し実質的に臭気の排出口を便器内に延長すること、いいかえれば「直接排気」することが、特開平5-156687号公報や、実願平5-35471号(実開平6-84999号)のCD-ROMにみられるように従来より周知であることを考慮すれば、引用発明1の便器に引用発明2の排気装置を適用する際に、便器あるいは便座の側面に排気口を設け、直接排気するようにすることは、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎない。

そして、補正案後者発明が奏する作用・効果について検討してみても、引用発明1、引用発明2及び従来より周知の技術から、当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものとみることはできない。

したがって、補正案発明の択一的に選択される一方である補正案後者発明が、引用発明1、2及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるのだから、補正案発明の択一的に選択される他方である本願前者発明について検討するまでもなく、補正案発明は引用発明1、2及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
してみれば、仮に、本願発明が、審判請求人が上申書に添付した補正案に記載されるような補正案発明であったとしても、前記補正案発明が、引用発明1、引用発明2及び従来より周知の技術に基づいて、当業者が容易に想到するものであるといわざるを得ないのだから、審判請求人に補正案のとおりに明細書を補正する用意があるとしても、当審よりさらなる通知をすべき特別な事情を見出すことはできない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1及び従来より周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願の他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-07 
結審通知日 2007-12-18 
審決日 2008-01-04 
出願番号 特願平9-110004
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 五十幡 直子
石井 哲
発明の名称 無臭システムトイレ  

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